コンテンツにスキップ
緑内障

眼内レンズ挿入眼・無水晶体眼緑内障(白内障術後緑内障)

1. 眼内レンズ挿入眼・無水晶体眼緑内障とは

Section titled “1. 眼内レンズ挿入眼・無水晶体眼緑内障とは”

眼内レンズ挿入眼緑内障(pseudophakic glaucoma)は白内障手術後のIOL挿入眼に生じる緑内障であり、無水晶体緑内障(aphakic glaucoma)はIOLを挿入していない無水晶体状態で生じる緑内障である。いずれも続発緑内障に分類される1)2)3)緑内障診療ガイドライン第5版では白内障術後の緑内障は独立した分類項目として記載されており、成人・小児ともに臨床上重要な合併症である1)

発症機序により開放隅角機序と閉塞隅角機序に大別される6)。開放隅角機序には粘弾性物質残留・術後炎症・水晶体粒子・色素分散・ステロイド緑内障ゴースト細胞緑内障が含まれる。閉塞隅角機序には瞳孔ブロック硝子体脱出・周辺虹彩前癒着UGH症候群がある。白内障術後の炎症性緑内障は炎症細胞や蛋白質による線維柱帯閉塞、線維柱帯炎、周辺虹彩前癒着形成など複数の機序が重なって発症する6)

術後の一過性眼圧上昇は術後1日目に29〜50%に認められる4)。ただしその大半は数日以内に自然軽快する。標準的な嚢外摘出術後の慢性緑内障の有病率は2.1〜4%と報告されている。無水晶体眼における術後慢性緑内障の有病率は約3%である。超音波乳化吸引術の普及により無水晶体眼の頻度は著しく減少したが、後嚢破損眼内レンズ挿入困難例では依然として生じうる。

白内障手術後の眼圧変動は発症時期によって機序が異なる。

時期主な機序
術後数時間〜1日粘弾性物質OVD)残留
術後1〜7日炎症・出血・水晶体粒子
術後1〜7週ステロイド点眼による眼圧上昇
術後数週〜数か月UGH症候群IOL偏位)
術後数か月〜年単位色素分散・周辺虹彩前癒着
術後長期Iris chafing症候群

小児白内障術後の緑内障は重要な合併症であり、先天白内障術後18〜26%に発症する。生後9ヶ月未満での手術では発生率が最大50%に達する2)房水流出路の発達異常を伴うことがあり、リスクは生涯にわたって持続する1)。若年手術・小角膜・小眼球がリスク因子である。

IRIS Registry 750万例以上の大規模データでは、白内障術後の遷延性偽水晶体虹彩毛様体炎(PUPPI)の発生率が1.68%と報告されている5)。糖尿病患者では発症リスクが1.87倍に上昇する5)

Q 現代の白内障手術でも術後緑内障は起きますか?
A

現代の小切開超音波乳化吸引術でも術後眼圧上昇は生じうる。ただし一過性であることが多く、慢性緑内障への移行率は2〜4%と低い。粘弾性物質の確実な除去・愛護的な組織操作・術後早期の眼圧モニタリングにより、リスクを最小限に抑えることができる。既存の緑内障を有する患者では術後早期の眼圧上昇が視神経障害を進行させる可能性があるため、「原因とリスク要因」の項に記載のとおり注意深い管理が必要である4)

眼内レンズ挿入眼緑内障で浅前房と毛様体突起前方回旋を示すUBM画像
Parivadhini A, et al. Management of Secondary Angle Closure Glaucoma. J Curr Glaucoma Pract. 2014. Figure 1C. PMCID: PMC4741163. License: CC BY.
前眼部UBM前房の著明な浅化と毛様体突起の前方回旋が見える。白内障術後の眼内レンズ挿入眼・無水晶体眼緑内障でみられる前房狭小化の診断所見を示す画像である。
  • 術後早期の一過性眼圧上昇眼痛霧視角膜浮腫による視力低下を認めることがある。粘弾性物質残留や炎症が原因の場合は術後数時間〜数日で症状が出現する
  • 慢性の経過緑内障一般と同様に初期は無症状であり、進行すると視野欠損(暗点)を自覚する。視野障害が高度になるまで気づかれないことが多い
  • 急性瞳孔ブロック:激しい眼痛・頭痛・嘔気を伴い、急性緑内障発作と同様の症状を呈する。虹彩膨隆と著明な浅前房を認める
  • UGH症候群:再発性の前房出血に伴う一過性の視力低下が特徴的である。霧視充血を繰り返す
  • ステロイド緑内障:術後ステロイド点眼中に自覚症状なく眼圧が上昇することが多く、定期的な眼圧測定でのみ発見される場合がある

開放隅角機序の所見

粘弾性物質残留:術後早期に前房内に粘弾性物質の残留を認める。分散型は線維柱帯メッシュ内に入り込みやすく、凝集型より除去が困難で眼圧上昇を起こしやすい

術後炎症前房内炎症細胞・フレアの増加。過剰な炎症は線維柱帯の閉塞と線維化を引き起こす2)3)

ステロイド緑内障:術後ステロイド点眼中の眼圧上昇。力価はデキサメタゾン ≥ ベタメタゾン > フルオロメトロンの順。用量依存性があり若年者ほど反応性が顕著

水晶体粒子前房内に白色粒子が浮遊。嚢外摘出術後・YAGレーザー後嚢切開後に残存皮質・核破片が線維柱帯を閉塞する

色素分散虹彩透照欠損・線維柱帯の色素沈着。ワンピースIOL毛様体溝配置で特に問題となる

閉塞隅角機序の所見

瞳孔ブロック虹彩膨隆・浅前房前房IOL毛様体IOLで発生しうる2)

UGH症候群ぶどう膜炎緑内障前房出血の三徴。IOLの支持部が虹彩や周囲組織と直接接触し、虹彩を擦過することで発症する。脱出した虹彩色素が線維柱帯に詰まり色素性緑内障を起こす2)3)

Iris chafing症候群虹彩萎縮と再発性前房出血を主所見とする。嚢外挿入した後房IOLの支持部あるいは光学部縁が持続的に虹彩隅角周囲の血管を擦過して生じる。抗凝固薬使用者で出血が起こりやすい

硝子体脱出前房硝子体による急性隅角閉塞

周辺虹彩前癒着:術後炎症と浅前房による慢性隅角閉塞

白内障手術後の眼圧上昇を引き起こす機序は多岐にわたる2)3)眼圧スパイクの原因は多因子であり、手術外傷・水晶体物質残留・OVD残留・既存の流出路障害・虹彩色素の放出・前房出血・炎症が複合的に関与する4)

主なリスク要因として以下が挙げられる。

  • 既存の緑内障:術後眼圧上昇が視神経障害を悪化させる。落屑症候群PEX)合併例では術後24時間以内の眼圧上昇リスクが特に高い4)9)
  • IOLの不適切な配置:ワンピースアクリルIOL毛様体溝配置は色素分散・UGH症候群のリスクが高い。シングルピースIOLの嚢外挿入でUGH症候群が発生しうる
  • 術後ステロイド点眼ステロイドの力価と用量に依存して眼圧が上昇する。デキサメタゾンやベタメタゾンはフルオロメトロンより眼圧上昇作用が強い。トリアムシノロンでは9〜12か月にわたり眼圧上昇が持続する
  • 小児白内障手術:特に生後9ヶ月未満での手術は緑内障リスクが著しく高い2)。小角膜・小眼球も独立したリスク因子である
  • 後嚢破損硝子体脱出・水晶体粒子の残留につながる
  • 落屑症候群Zinn小帯脆弱IOL不安定による色素分散やUGH症候群のリスク4)
  • Nd:YAGレーザー後嚢切開:一過性の眼圧上昇を引き起こしうる2)3)水晶体粒子が遊出し線維柱帯を閉塞することがある。既存の緑内障や高度近視の患者ではリスクが高い
  • 抗凝固薬使用:Iris chafing症候群において前房出血が起こりやすくなる
  • IOL素材・形状:シングルピースアクリルIOLは嚢外挿入時にUGH症候群を起こしやすい。スリーピースIOLでも支持部の角度や長さによって虹彩接触のリスクが異なる

眼圧上昇の機序を特定するために以下の検査を行う。

  • 隅角検査隅角の開放・閉塞の判定、周辺虹彩前癒着の有無、線維柱帯の色素沈着の程度、水晶体粒子・落屑物質の確認
  • 細隙灯顕微鏡検査前房内炎症・出血・粘弾性物質残留・IOLの位置と安定性の評価。IOL偏位・傾斜の有無、嚢収縮との関連、毛様体溝固定IOLの正位確認が重要である。Elschnig pearls・後嚢線維化・嚢収縮の評価も行う
  • UBM超音波生体顕微鏡IOL支持部と虹彩毛様体の接触関係の評価。UGH症候群やIris chafing症候群の確認に有用である
  • 眼圧検査Goldmann圧平眼圧計が標準である1)。反跳式iCare・トノペンも使用される。角膜浮腫がある場合は測定精度に注意する。角膜厚補正値で評価する
  • 視神経・視野評価:既存の緑内障の進行評価および新たな緑内障性変化の検出。OCTによる網膜神経線維層RNFL)厚の測定が早期変化の検出に有用である
  • 前房フレア値測定レーザーフレアメーターにより前房内の炎症を定量的に評価できる。術後炎症の経時的モニタリングに役立つ

鑑別診断では以下の各機序を系統的に除外する。

鑑別疾患特徴的所見
粘弾性物質残留術後数時間〜1日で発症・自然消退
ステロイド緑内障ステロイド使用中・中止で正常化
水晶体粒子緑内障前房内白色粒子浮遊・一過性
UGH症候群再発性前房出血・色素分散
Iris chafing症候群虹彩萎縮・再発性前房出血
悪性緑内障前房全体が浅い・後方偏位

ステロイド緑内障の診断は、ステロイド使用中の患者で高眼圧を生じ、ステロイドの中止により眼圧が正常化すれば確定する。眼圧正常化までの期間はステロイドの投与期間に比例する。トリアムシノロン使用後は9〜12か月にわたり眼圧上昇が持続するため、長期にわたる経過観察が必要である。

水晶体粒子緑内障の診断では、嚢外摘出術や外傷後の数日〜数週間の高眼圧に加え、前房内に水晶体物質と思われる大きな白色粒子の浮遊を確認する。前房炎症を伴うことが多いが、水晶体融解緑内障水晶体アナフィラキシー性緑内障との鑑別が重要である。

Q UGH症候群はどのように診断しますか?
A

UGH症候群ぶどう膜炎緑内障前房出血の三徴を特徴とする2)3)。再発性の前房出血が最も特徴的な所見である。UBM検査でIOLの支持部と虹彩毛様体の接触を確認することが重要である。前房IOL毛様体溝配置のIOLで生じやすいが、落屑症候群に伴うZinn小帯不安定がある場合はin-the-bag IOLでも発生しうる。虹彩新生血管や他の出血原因との鑑別が必要である。Iris chafing症候群では虹彩萎縮が主所見であり、前房出血が繰り返す点は共通するがIOL偏位の関与がより大きい。

眼圧上昇の機序に応じた治療選択が重要である1)2)3)

一過性眼圧上昇(粘弾性物質残留・術後炎症)

Section titled “一過性眼圧上昇(粘弾性物質残留・術後炎症)”

粘弾性物質残留や術後炎症による一過性の眼圧上昇は、緑内障点眼薬β遮断薬炭酸脱水酵素阻害薬点眼)や炭酸脱水酵素阻害薬アセタゾラミド)内服による保存的治療で多くの場合軽快する。著しい眼圧上昇(40mmHg以上)がある場合は前房穿刺による減圧を考慮する11)。術後早期に炭酸脱水酵素阻害薬β遮断薬を予防的に投与することで、術後5時間以降の眼圧上昇を抑制できるとの報告がある4)

白内障術後・外傷後・YAGレーザー後嚢切開後に水晶体物質が遊出し、線維柱帯を閉塞して眼圧が上昇する。術後数日で発症し、眼圧上昇は残存水晶体小片の量に比例する。一過性であることも多い。

  • 消炎・眼圧降下薬ステロイド点眼と眼圧降下薬の併用
  • 前房洗浄:薬物療法で奏効しない場合に施行する
  • 水晶体皮質完全除去:皮質が残存している場合は完全に除去する

白内障術後のステロイド点眼管理中に発症する頻度の高い機序である。線維柱帯細胞における細胞外マトリックス産生の亢進と細胞骨格の変化が眼圧上昇に関与する。

  • ステロイドの減量・中止:可能な限りステロイドを減量または中止する。原疾患の炎症管理との兼ね合いで判断する
  • 眼圧降下薬:各種点眼薬・炭酸脱水酵素阻害薬内服
  • 外科的治療(薬物コントロール不良・視機能障害進行時):
    • 線維柱帯切開術:若年例が多く合併症が少ないため第一選択。術後管理が容易である
    • 線維柱帯切除術:より低い術後眼圧が必要な場合に選択する
    • トリアムシノロン使用例硝子体内残留物の除去やTenon嚢下塊の摘除が有効な場合がある
  • 流出路再建術はPOAGよりも大きな眼圧下降効果が得られるとの報告がある(エビデンスレベル1B)1)
  • レーザー線維柱帯形成術が有効であるとの報告もある1)

IOL虹彩の接触状態に応じた段階的治療を行う。

  • IOL虹彩が癒着していない場合散瞳して仰臥位で自然整復を試みる
  • 散瞳で回復しない場合:観血的整復を行う
  • 虹彩と嚢が強く癒着・IOL前房内脱臼IOLの交換が必要である
  • IOL縫着・強膜内固定後の瞳孔捕捉再発:逆瞳孔ブロックが原因の場合はイリデクトミーが有効
  • 支持部が前房内に出て角膜内皮に接触する場合:なるべく早く整復する

ステロイド点眼やアトロピン点眼の長期的効果は低い。確実な診断がつけば虹彩を刺激しているIOLの摘出が第一選択である。摘出後は縦径が短めのIOLを挿入するか、IOL縫着・強膜内固定を行う。

  • 急性例急性緑内障発作に準じてマンニトール点滴・ピロカルピン頻回点眼を行う
  • 水晶体レーザー虹彩切開術LPI)または手術的前部硝子体切除
  • 水晶体:Nd:YAGレーザーによる後嚢切開後の前部硝子体破砕術が有効な場合がある
  • 悪性緑内障硝子体切除術が必要となることが多い2)

開放隅角機序ではPOAGに準じた薬物治療を行う1)

  • プロスタグランジン(PG)製剤眼圧下降効果が大きく第一選択として頻用される
  • β遮断薬:チモロール0.5%等
  • 炭酸脱水酵素阻害薬ドルゾラミドブリンゾラミド等の点眼、アセタゾラミド内服
  • α2作動薬:ブリモニジン

薬物療法で管理不能な場合は手術治療を行う2)3)

Q 白内障手術後の慢性緑内障にはどう対処しますか?
A

まず眼圧上昇の機序を特定する。開放隅角機序であればPOAGに準じた薬物治療を行う1)。閉塞隅角機序ではLPI隅角癒着解離術を考慮する。ステロイド緑内障ではステロイドの減量・中止が最も重要であり、外科治療が必要な場合は線維柱帯切開術が第一選択である。薬物療法で不十分な場合は手術治療に進むが、偽水晶体眼では線維柱帯切除術の成績が不良であるため緑内障ドレナージデバイスの使用も検討する2)IOL関連の問題(色素分散・UGH症候群)が原因の場合はIOLの交換が根本的治療となる。

Q 白内障手術後に緑内障の目薬を使う際の注意点は?
A

オミデネパグ(エイベリス)はIOL挿入眼・無水晶体眼が禁忌であり使用できない。片眼が有水晶体眼であっても患者単位で禁忌となるため、エイベリスは処方できない。それ以外のPG製剤(ラタノプロスト・トラボプロストなど)・β遮断薬炭酸脱水酵素阻害薬・α2作動薬はPOAGに準じて使用可能である1)。術後ステロイド点眼中はステロイド緑内障のリスクがあるため、ステロイドの力価・用量・期間と眼圧の推移を注意深く観察する。

6. 病態生理学・詳細な発症機序

Section titled “6. 病態生理学・詳細な発症機序”

白内障手術後の眼圧上昇は、房水流出路の一過性または持続性の障害によって生じる2)3)

開放隅角機序では、粘弾性物質・炎症細胞・色素顆粒・水晶体粒子・ゴースト細胞などが線維柱帯を閉塞する。線維柱帯への持続的な刺激は線維化を引き起こし、慢性的な房水流出抵抗の増大につながる。

粘弾性物質:分散型OVDは粒子径が小さく線維柱帯メッシュ内に入り込みやすいため、凝集型と比較して術後眼圧上昇のリスクが高い。凝集型は一塊として除去しやすいが、隅角に残留すると同様に眼圧を上昇させる。

ステロイド緑内障線維柱帯細胞における細胞外マトリックス産生の亢進と細胞骨格の変化が病態の中心である。反応性には個人差が大きく、小児と高齢者に生じやすい。ステロイドの抗炎症力価に比例して眼圧上昇作用が強くなり、デキサメタゾン ≥ ベタメタゾン > フルオロメトロンの順である。用量依存性があり、若年者ほど反応が顕著である。トリアムシノロンでは薬物が眼内に長期残留するため、9〜12か月にわたり眼圧上昇が持続する。

色素分散IOLの支持部や光学部縁が虹彩後面と接触し、虹彩色素上皮が機械的に剥離される。遊離した色素顆粒が線維柱帯に蓄積し房水流出抵抗を増大させる。ワンピースアクリルIOL毛様体溝配置で特に問題となる。

虹彩硝子体前面の癒着(無水晶体眼)やIOLによる瞳孔ブロック前房IOL毛様体IOL・逆挿入IOL)が房水前房への流出を阻害する2)。術後の浅前房・炎症は周辺虹彩前癒着形成を促進し、慢性閉塞隅角緑内障の原因となる。

UGH症候群の病態IOLが嚢外固定や非対称固定になると、支持部が虹彩や周囲組織と直接接触する。虹彩擦過により虹彩色素が線維柱帯に詰まり色素性緑内障を生じる。虹彩障害が著しい場合には虹彩毛様体炎と前房出血を合併する2)3)。従来は前房IOLで起こりやすかったが、後房IOLの嚢内固定が標準となった現在では頻度はまれである。シングルピースアクリルIOLの嚢外挿入で発生しうる。

Iris chafing症候群の病態:嚢外挿入した後房IOLの支持部あるいは光学部縁が、持続的に虹彩隅角周囲の血管を擦過して生じる。角度付きループや縦径の長いIOLに多いとされたが、実際にはIOLの偏位が原因の場合が多い。虹彩色素の散布や前房出血により二次的に高眼圧を呈する。嚢内固定が一般的な現在ではごくまれである。

白内障手術による眼圧への影響

Section titled “白内障手術による眼圧への影響”

白内障手術後は水晶体の除去による前房深化と隅角開大により、眼圧が下降することが知られている8)10)閉塞隅角緑内障でより顕著な眼圧下降が得られる4)開放隅角緑内障でも術前の眼圧が高い症例ではより大きな眼圧下降を示す10)。Poleyら(2009)は1年時の眼圧下降が10年間維持されることを報告している8)

Hayashiら(2001)は緑内障患者における白内障手術後の眼圧コントロールを検討し、水晶体超音波乳化吸引術とIOL挿入により有意な眼圧下降が得られることを示した7)

IRIS Registry 750万例以上を解析したAcharyaら(2024)は、遷延性偽水晶体虹彩毛様体炎(PUPPI)の発生率が1.68%であり、糖尿病(IRR 1.87)・人種・性差がリスク因子であることを報告した5)

小児期に白内障手術を必要とする症例では房水流出路の発達異常を伴うことがある1)水晶体除去に伴う前眼部の解剖学的変化も関与する。無水晶体眼でも偽水晶体眼でも、開放隅角でも閉塞隅角でも生じうる。中心角膜が厚いため見かけ上の高眼圧になっている場合もあり、注意が必要である1)

近年の前眼部光干渉断層撮影OCT)やUBMの進歩により、術後の隅角および虹彩-IOL関係の評価が精密化しつつある。IOL虹彩の接触やtilt・decentration(傾斜・偏心)を定量的に評価することで、UGH症候群やIris chafing症候群の早期診断と予防的介入が期待される。前眼部OCTでは非接触・非侵襲的に隅角構造を高解像度で描出でき、術後の隅角変化の経時的モニタリングに有用である。

IOL設計およびサイジングアルゴリズムの改善により、色素分散やUGH症候群のリスクは著しく低下している。眼軸長前房深度に基づいたIOLサイジングの最適化、素材やループ設計の改良が進んでいる。ただし落屑症候群強度近視に伴うZinn小帯脆弱など、予測困難なリスク因子に対する対策が今後の課題である。

MIGS低侵襲緑内障手術)の発展により、白内障手術との同時手術で術後の眼圧管理を行う選択肢が広がりつつある。既存の緑内障を有する患者に対して白内障手術と同時にMIGSデバイスを挿入することで、術後の眼圧コントロールの改善が期待される。

小児白内障術後の緑内障に対しては、ロングチューブドレナージデバイスの長期成績が報告されており、薬物療法のみでは困難な症例における重要な治療選択肢となっている2)

Acharyaら(2024)は IRIS Registry 750万人以上のデータからPUPPIの発生率を1.68%と算出した5)。糖尿病(IRR 1.87)、女性、アフリカ系人種が独立したリスク因子であり、大規模リアルワールドデータによる術後合併症のサーベイランスの有用性が示された。

Levkovitch-Verbinら(2008)は緑内障またはPEX患者における白内障術後24時間以内の眼圧上昇を検討し、術後早期の眼圧モニタリングの重要性を報告した9)

Chenら(2015)はAAOの報告として、白内障超音波乳化吸引術後の眼圧変化を系統的にレビューし、緑内障患者での中期的な眼圧下降効果を確認した10)


  1. 日本緑内障学会緑内障診療ガイドライン改訂委員会. 緑内障診療ガイドライン(第5版). 日眼会誌. 2022;126(2):85-177.
  2. European Glaucoma Society. European Glaucoma Society Terminology and Guidelines for Glaucoma, 5th Edition. Br J Ophthalmol. 2021 Jun;105(Suppl 1):1-169. doi:10.1136/bjophthalmol-2021-egsguidelines. PMID:34675001.
  3. Pazos M, Traverso CE, Viswanathan A; European Glaucoma Society. European Glaucoma Society - Terminology and guidelines for glaucoma, 6th Edition. Br J Ophthalmol. 2025;109(Suppl 1):1-212. doi:10.1136/bjophthalmol-2025-egsguidelines. PMID:41026937.
  4. European Society of Cataract & Refractive Surgeons. ESCRS Clinical Guidelines: Cataract Surgery.
  5. Acharya B, Hyman L, Tomaiuolo M, Zhang Q, Dunn JP. Prolonged Undifferentiated Postoperative Pseudophakic Iridocyclitis. Ophthalmology. 2025;132(4):504-506. doi:10.1016/j.ophtha.2024.12.012. PMID:39672310.
  6. Bodh SA, Kumar V, Raina UK, et al. Inflammatory glaucoma. Delhi J Ophthalmol. 2011;21:37-41. doi:10.4103/0974-620x.77655.
  7. Hayashi K, Hayashi H, Nakao F, et al. Effect of cataract surgery on intraocular pressure control in glaucoma patients. J Cataract Refract Surg. 2001;27:1779-86. doi:10.1016/s0886-3350(01)01036-7.
  8. Poley BJ, Lindstrom RL, Samuelson TW, Schulze R Jr. Intraocular pressure reduction after phacoemulsification with intraocular lens implantation in glaucomatous and nonglaucomatous eyes: evaluation of a causal relationship between the natural lens and open-angle glaucoma. J Cataract Refract Surg. 2009;35(11):1946-55. doi:10.1016/j.jcrs.2009.05.061. PMID:19878828.
  9. Levkovitch-Verbin H, Habot-Wilner Z, Burla N, et al. Intraocular pressure elevation within the first 24 hours after cataract surgery in patients with glaucoma or exfoliation syndrome. Ophthalmology. 2008;115:104-8. doi:10.1016/j.ophtha.2007.03.058.
  10. Chen PP, Lin SC, Junk AK, Radhakrishnan S, Singh K, Chen TC. The Effect of Phacoemulsification on Intraocular Pressure in Glaucoma Patients: A Report by the American Academy of Ophthalmology. Ophthalmology. 2015;122(7):1294-1307. doi:10.1016/j.ophtha.2015.03.021. PMID:25943711.
  11. Hildebrand GD, Wickremasinghe SS, Tranos PG, Harris ML, Little BC. Efficacy of anterior chamber decompression in controlling early intraocular pressure spikes after uneventful phacoemulsification. Journal of cataract and refractive surgery. 2003;29(6):1087-92. doi:10.1016/s0886-3350(02)01891-6. PMID:12842672.

記事の全文をコピーして、お好みのAIに貼り付けて質問できます