角膜所見
原発先天緑内障
1分でわかる原発先天緑内障
本編へどんな病気?
原発先天緑内障は、生まれつき目の中の水の流れが悪く、目の圧(眼圧)が高くなるまれな病気です。1)光を嫌がる、涙が多い、まぶたを強く閉じるといった様子が初期のサインになります。1)
- 子どもにどんな様子があれば気づきますか?
- 光を嫌がって屋外で目を細めたり、涙が多かったり、まぶたを強く閉じたりします。1)保護者が「目が白い」「目が大きい」「目が青っぽい」と気づいて受診することが多いです。
- 治療はどのように進めますか?
- 治療の第一選択は手術で、薬は補助的に使われます。2)早期に診断して治療を始めることが、見え方の将来を左右します。
- 気づいたときはどうすればよいですか?
- 「目が大きい」「目が白い」「涙が多い」「光を嫌がる」などの様子に気づいたら、速やかに眼科を受診してください。
本編
もっと詳しく知りたい方へ
ここからは、このテーマについて、さらに詳しく解説します。
1. 原発先天緑内障とは
Section titled “1. 原発先天緑内障とは”発達緑内障(developmental glaucoma)は、房水流出路の発育異常に基づく緑内障の総称であり、発症時期により早発型と遅発型に分類される。早発型発達緑内障は従来の「原発先天緑内障」に相当し、眼圧上昇の原因が線維柱帯の発達異常に限定される。遅発型発達緑内障は隅角の発達異常の程度が軽度であるため発症が遅れ、隅角鏡検査で異常を見つけることは困難で、角膜径の拡大やHaab線条もない場合が多い。
原発先天緑内障(primary congenital glaucoma; PCG)は、他の眼球または全身の発達異常を伴わずに、遺伝的に決定された線維柱帯(trabecular meshwork)および前房隅角の異常によって眼圧が上昇する稀な疾患である。以前は線維柱帯形成不全(trabeculodysgenesis)、隅角形成不全(goniodysgenesis)、原発乳児緑内障などの用語が用いられていたが、2013年の小児緑内障研究ネットワーク(CGRN)による国際分類で原発先天緑内障に統一された1)。
原発先天緑内障は原発小児緑内障の中で最も一般的な形態であり、発症時期に基づき以下の4型に分類される1)。
- 新生児期発症(0〜1か月):最も重症な型である。
- 乳児期発症(1か月超〜24か月):最も頻度が高い。生後3〜9か月に好発する。
- 遅発性(遅延認知型)(2歳超):発症時期が遅いほど症状・所見が乏しくなる。
- 自然停止型:極めて稀。眼圧は正常であるが牛眼やHaab線条など原発先天緑内障の典型的所見を認める。
白人ヨーロッパ人における発症率は12,000〜18,000出生に1人である1)。東欧の一部地域では1,250人に1人と高率である。近親婚がある場合、発症率は5〜10倍に増加する1)。65〜80%の症例が両眼性であり、男女比は約3:2と男性に多い1)。
原発先天緑内障は全眼疾患患者の0.01%未満であるが、世界の小児失明の5%を占めるとされている。75%が両眼性、65%が男児、80%が生後1年以内に発症する。
ANZRAGの大規模コホート(290例の小児緑内障)ではPCGが最多57.6%(167/290例)を占め、乳児期発症PCGが最多53.3%(89/167例)であった。PCGの男女比は1.46:1、診断年齢中央値は0.25歳(IQR 0〜0.6歳)と報告されている7)。
小児続発緑内障の分類(WGA)
Section titled “小児続発緑内障の分類(WGA)”先天緑内障には原発先天緑内障のほか、続発性のものも含まれる。World Glaucoma Association(WGA)による小児続発緑内障の4分類を以下に示す。
| 分類 | 主な疾患 |
|---|---|
| 先天的な眼の異常を伴う緑内障 | Axenfeld-Rieger異常、Peters異常、先天無虹彩など |
| 先天性の全身異常を伴う緑内障 | Down症候群、Sturge-Weber症候群、神経線維腫症など |
| 後天性の疾患や薬物に続発した緑内障 | ぶどう膜炎後、ステロイド誘発性など |
| 先天白内障術後の緑内障 | 手術時低年齢、小眼球が危険因子 |
白人では12,000〜18,000出生に1人とされるが、近親婚が多い地域では1,250人に1人にまで上昇する。65〜80%が両眼性である1)。
2. 主な症状と臨床所見
Section titled “2. 主な症状と臨床所見”
原発先天緑内障患者は眼圧上昇に伴う角膜浮腫による刺激症状として、以下の「臨床的三徴」のうち1つ以上を呈する1)。
- 羞明(photophobia):光を嫌がり、屋外で目を細める。
- 流涙(epiphora):眼脂を伴わない涙が特徴的。鼻涙管閉塞との鑑別が重要である。
- 眼瞼痙攣(blepharospasm):まぶたを強く閉じる。
角膜浮腫・混濁による視力低下、進行性の近視、乱視なども生じる。乳幼児では、保護者が「目が白い」「目が大きい」「目が青っぽい」と気づいて受診するきっかけとなることが多い。
臨床所見(医師が診察で確認する所見)
Section titled “臨床所見(医師が診察で確認する所見)”眼球・視神経所見
牛眼(buphthalmos):眼圧上昇による眼球全体の拡大。角膜拡大は3歳頃まで、強膜伸展は10歳頃まで進行しうる。
視神経乳頭陥凹:乳児ではC/D比0.3以上で緑内障を疑う。眼圧正常化により陥凹が改善(reversal)することがある。
眼軸長増大:出生時20 mm超、1歳以降22 mm超で異常1)。
Haab線条について:急速に角膜径が大きくなるとDescemet膜の伸展性が追いつかずに裂け目ができる。これがHaab線条(Haab striae)であり、角膜乱視を生じて視力の発達を妨げる要因の一つになる。
角膜径正常値の目安として、新生児ではおよそ9.5〜10.5 mmであり、生後1年頃までに10.0〜11.5 mmに増加する。生直後に12.0 mmを超える場合は本症を強く疑う。
診断基準(緑内障診療ガイドライン準拠)
緑内障診療ガイドラインでは、以下の4項目のうち少なくとも1つの所見が存在することを診断の根拠とする。
- 22 mmHg以上の眼圧が2回以上の機会で測定されること
- 陥凹乳頭比(C/D比)が大きいこと(0.3以上、または左右差0.2以上)
- 緑内障を疑わせる視野障害があること
- 角膜径や眼軸長が大きくなること
EGS第6版では、以下の5項目中2項目以上を満たす場合に原発先天緑内障と診断する1)。
- 眼圧:21 mmHgを超える
- 角膜所見:Haab線条、角膜浮腫、角膜径増大(新生児≧11 mm、1歳≧12 mm、年齢問わず>13 mm)
- 視神経乳頭陥凹:進行性のrim減少、左右C/D差≧0.2
- 進行性近視:年齢不相応な眼軸長増大
- 隅角所見:虹彩の高位付着、残存ぶどう膜組織、線維柱帯形成不全
3. 原因とリスク要因
Section titled “3. 原因とリスク要因”原発先天緑内障の大多数は孤発性(家族歴なし)であるが、約10〜40%は家族性であり、浸透率40〜100%の常染色体劣性遺伝形式をとる1)。連鎖解析により5つの遺伝子座が同定されている。
主要な原因遺伝子は以下のとおりである。
| 遺伝子 | 遺伝子座 | 染色体 | 機能 |
|---|---|---|---|
| CYP1B1 | GLC3A | 2p22-p21 | 脂肪酸・ビタミン代謝酵素 |
| LTBP2 | GLC3D | 14q24.2-q24.3 | 潜在型TGF-β結合タンパク |
| TEK/TIE2 | GLC3E | 9p21 | Schlemm管発達シグナル |
- CYP1B1(GLC3A):最も一般的な原因遺伝子である。胎児・成人の神経上皮や毛様体で発現し、眼の発達に不可欠な化合物を代謝する。CYP1B1欠損マウスでは重度の線維柱帯萎縮がみられる。CYP1B1変異例は比較的早期に発症し、両眼性で典型的な経過をたどりやすいとされる。
- LTBP2(GLC3D):線維柱帯や毛様突起で発現するが、眼における役割は完全には解明されていない。
- TEK/TIE2(GLC3E):アンジオポエチン/TEKシグナル伝達経路はSchlemm管の発達に必須であり、TEKノックアウトマウスではSchlemm管が欠損する。
- MYOC:原発先天緑内障症例の最大5.5%に関与する可能性がある。
- EFEMP1も候補遺伝子として報告されている1)。
ANZRAGコホートによる遺伝子診断率の報告では、全体の24.7%(125/506例)で分子診断が得られた。PCGでは30.4%(41/135例)に分子診断が可能であり、内訳はCYP1B1両アレル変異15.6%(21例)、TEKヘテロ変異5.9%(8例)、CPAMD8 3.7%(5例)、FOXC1ヘテロ変異3.7%(5例)であった。遺伝子診断によるPCGの病型再分類が10.4%で生じた(FOXC1変異例はARS、CPAMD8変異例はASDとして再分類)7)。CYP1B1両アレル変異はPCG女性に多い傾向があった(66.7% vs 33.3%, P=0.02)7)。
遺伝子検査で原因を特定できる確率は約24〜40%である。遺伝子検査は他の先天異常の除外と家族計画のために推奨される1)。
近親婚は疾患の重症化および予後不良因子とされる1)。原発先天緑内障患者の第2子が罹患する確率は通常3%以下であるが、すでに2人の子が罹患している場合は常染色体劣性遺伝を仮定すると25%に上昇する。
EGSガイドラインでは、他の先天異常の除外と家族計画の観点から遺伝子検査が推奨されている1)。ANZRAGコホートではPCGの遺伝子診断率は30.4%であり、遺伝子診断により10.4%で病型が再分類されることが示されている7)。検査陰性でも原発先天緑内障は否定できないが、診断精度と適切な管理に貢献する可能性がある。
4. 診断と検査方法
Section titled “4. 診断と検査方法”原発先天緑内障の診断は、眼圧測定値が正確でなくても臨床的に下せることが多い。Haab線条の存在は先天緑内障の強い指標である1)。
- 眼圧測定:覚醒下の安静時にハンドヘルド眼圧計(リバウンド眼圧計を含む)で測定するのが最良である1)。泣いている児では偽高値となり、全身麻酔薬は偽低値を生じるため注意が必要である。リバウンド眼圧計は在宅測定にも使用可能である1)。全身麻酔下で用いられる薬剤はすべて眼圧を下降させる。唯一の例外は解離性麻酔薬のケタミン塩酸塩であり、眼圧を軽度上昇させる可能性がある。セボフルレン麻酔下で20 mmHgの眼圧であれば、覚醒時には30 mmHgを超える眼圧を示す。セボフルレン麻酔下では15 mmHgあるいは12 mmHgを正常上限とする意見がある。
- 角膜径・角膜厚測定:角膜径は経時的にモニタリングし、年齢相応の正常範囲を超える場合は眼圧コントロール不良を疑う。中心角膜厚は浮腫がなくても増加していることがあり、眼圧測定値に影響を与えうる1)。
- 眼軸長測定:診断・経過観察に不可欠である。近視の進行と眼軸長増大は緑内障進行を示唆する。
- 隅角検査:病型診断と治療法選択に不可欠であるが、乳幼児では全身麻酔を要することが多い。角膜混濁で隅角鏡観察が困難な場合は超音波生体顕微鏡(UBM)が有用である。
- 視神経乳頭評価:ベースラインの眼底写真を記録しておくべきである。眼圧下降により乳頭陥凹の改善がみられることが多い。特に1歳未満で外科的治療により良好な眼圧コントロールが得られた症例の約50%でC/D比が0.2以上減少するとの報告があり、小児の視神経乳頭陥凹は成人と異なり可逆性を有する。
- 視力・屈折検査:不正乱視、角膜混濁、Haab線条は弱視の原因となるため、屈折検査は経過観察中に眼圧測定と並行して定期的に行う。
原発先天緑内障と紛らわしい疾患を以下に示す1)。
| 鑑別疾患 | 鑑別のポイント |
|---|---|
| 結膜炎 | 眼脂・充血あり、角膜径正常 |
| 鼻涙管閉塞 | 眼脂あり、角膜径正常 |
| PPMD | 角膜後面の小胞状変化 |
| CHED | 両眼性角膜浮腫、眼圧正常 |
| X連鎖巨大角膜 | 角膜径増大、眼圧正常 |
| 出生時外傷 | 外傷歴、Haab線条は通常垂直 |
5. 標準的な治療法
Section titled “5. 標準的な治療法”治療の第一選択は手術である2)。原発先天緑内障の原因が隅角の発育異常であり手術的に解決可能なこと、乳幼児では薬物治療の実効確認が困難なこと、保護者依存のアドヒアランスに問題があることが理由である2)。薬物療法は周術期ないし術後の補助手段として用いる2)。
小児眼科および緑内障治療に十分な経験を有する施設で行うべきであり、再手術や長期にわたる経過観察、弱視治療を含む包括的管理が必要である2)。
- 線維柱帯切開術(trabeculotomy):角膜透見が困難でも施行できる利点がある2)。結膜弁・強膜弁の作製が必要であり、将来の濾過手術の施行を困難にする可能性がある。マイクロカテーテルを用いた360°線維柱帯切開術も試みられている2)。生後2か月までの発症例での成功率は78%とやや低いが、それ以降の発症例では96%と良好である。
- 隅角切開術(goniotomy):透明な角膜を有する症例が適応である2)。1回の手術で90〜120°の切開が可能であり、3回まで別の部位からアプローチできる2)。生後1か月〜2歳での成功率は94%と特に良好である。ただし生後1か月未満の発症例では26%、2歳以降の発症例では38%と低い。
- 生後3〜12か月に発症した原発先天緑内障では、隅角切開術・線維柱帯切開術ともに同様の成功率(70〜90%)である2)。術式の選択は術者の経験による。不成功の危険因子は隅角の未発達の程度と前眼部の過剰拡大である2)。
- 濾過手術(trabeculectomy):隅角手術が無効な症例が適応となる2)。原発先天緑内障患者の強膜は薄く弁作製が困難であり、代謝拮抗薬を併用しても濾過胞形成が困難な場合がある。1年後成功率は50〜87%と成人に比べ不良である2)。
- プレート付きチューブシャント手術(GDD):濾過手術が無効な症例に使用される。Ahmed弁とBaerveldt implantを対象とした32研究1,221眼のメタ解析では、術前平均IOP 31.8±3.4 mmHgに対し術後12か月の平均IOP 16.5 mmHg(95% CI 15.5〜17.6)に低下した8)。成功率は12か月87%(95% CI 0.83〜0.91)、24か月77%(95% CI 0.71〜0.83)、120か月37%と経年的に低下した。Ahmed群とBaerveldt群の成功率に有意差はなく8)、主な合併症は前房浅化13.6%、低眼圧11.7%、脈絡膜滲出8.3%であった。
- 毛様体破壊術:上記すべての治療で眼圧コントロールが得られない場合に考慮する2)。
薬物療法は手術までの短期間の眼圧下降および術後の眼圧コントロールを目的として行う補助的治療である2)。原発開放隅角緑内障に準じて薬物を組み合わせて使用するが、以下の注意が必要である。
- 乳幼児では体重・体表面積に比して投与量が過大となりやすいため、可能な限り低濃度薬剤から開始する。
- アセタゾラミド内服(炭酸脱水酵素阻害薬):5〜10 mg/kgを6〜8時間ごとに投与する。術前の緊急的眼圧下降に有用である2)。
- β遮断薬(チモロールなど):気管支喘息・徐脈の副作用について保護者への説明が必要。新生児では無呼吸の報告があり使用に注意が必要である。
- 交感神経α₂受容体作動薬(ブリモニジンなど)は2歳未満で絶対禁忌である。精神神経症状(傾眠・徐脈・低血圧など)を引き起こす1)2)。
- プロスタノイドFP受容体作動薬の小児における効果は成人に比べ弱い2)。小児ではぶどう膜強膜流出路が未発達なためノンレスポンダーが多いが、β遮断薬よりは眼圧下降効果がやや優れるとされる。
- 点眼薬は涙嚢・鼻腔粘膜から直接全身循環に入るため、小児では1滴でも重篤な全身性副作用をきたしやすい。点眼後の涙嚢部圧迫の指導が推奨される。
生涯にわたる眼圧経過観察が必須であり、屈折矯正と弱視治療による最適な視覚発達の支援も不可欠である1)。
原発先天緑内障の原因は隅角の発育異常であり、手術で解決可能である。乳幼児では薬物の効果確認が困難であり、アドヒアランスにも問題がある。また、α₂受容体作動薬の禁忌やプロスタノイドの効果減弱など、小児に使用可能な薬剤が限られている2)。
6. 病態生理学・詳細な発症機序
Section titled “6. 病態生理学・詳細な発症機序”原発先天緑内障における眼圧上昇は、前房隅角の異常発達に伴う房水流出障害によって生じる1)。
1950〜60年代には前房隅角を覆う非穿孔性の膜(Barkan膜)が原因と説明されていたが、その後の組織学的調査でそのような膜の存在は否定された。現在は流出障害が線維柱帯自体に起因すると考えられている。
Andersonの仮説
Section titled “Andersonの仮説”通常、妊娠第3三半期に毛様体と周辺部虹彩は角膜・強膜から離れるように後方へ移動する。原発先天緑内障では線維柱帯内でのコラーゲン梁の過剰または早期の蓄積がこの後方移動を妨げ、虹彩根部や毛様体筋が前方に付着したまま残り、線維柱帯を閉塞させたりSchlemm管を圧迫したりすると提唱されている。
組織病理学的知見
Section titled “組織病理学的知見”Rao(2025)は原発先天緑内障患者4名から得た線維柱帯標本の組織学的解析を行い、傍管部(juxtacanalicular meshwork: JCM)および角膜強膜部(corneoscleral meshwork)の拡大、TM梁の肥厚、紡錘形核の増加(上皮間葉転換の示唆)、ならびにJCM内に形態学的に異なる2つのゾーンが存在することを報告した3)。これらの所見は、原発先天緑内障におけるTM各領域の異常な分化と分化異常の不均一性を示唆している。
7. 最新の研究と今後の展望(研究段階の報告)
Section titled “7. 最新の研究と今後の展望(研究段階の報告)”GATT(隅角鏡下経管的線維柱帯切開術)
Section titled “GATT(隅角鏡下経管的線維柱帯切開術)”GATT(gonioscopy-assisted transluminal trabeculotomy)は、角膜切開から隅角鏡下にSchlemm管にマイクロカテーテルまたは縫合糸を挿入し、全周の線維柱帯を切開する比較的新しい手技である。成人緑内障では有効性が確立されつつあり、小児への応用が進んでいる。
Songら(2022)は、3歳の原発先天緑内障男児に対しGATTを施行した症例を報告した。虹彩がSchwalbe線まで隅角全体を覆い、通常の隅角構造が不可視であったが、フック操作で虹彩を剥離してSchlemm管を同定し、GATTを成功させた。術後6か月の眼圧は安定していた4)。
Elhusseinyら(2023)は、過去に緑内障手術歴のある原発先天緑内障患者6名7眼に対するGATTの1年成績を報告した。平均眼圧は術前25.7±5.9 mmHgから12か月後に12.0±1.5 mmHgへ有意に低下した。完全成功率は85.7%(6/7眼)、限定的成功を含めると100%であり、追加の緑内障手術を要した眼はなかった。重篤な合併症は認めなかった5)。
内視鏡補助下隅角切開術
Section titled “内視鏡補助下隅角切開術”Dadaら(2022)は、角膜混濁を伴う原発先天緑内障に対し、23Gレーザー内視鏡プローブを用いて隅角構造を可視化しながら隅角切開術を施行する新技術を報告した6)。従来、隅角切開術は透明角膜が適応条件であったが、内視鏡の補助により角膜混濁眼でも施行可能となる可能性が示された。
遺伝子スクリーニング
Section titled “遺伝子スクリーニング”家族歴がある場合や近親婚が多い地域などのハイリスク群に対して、将来的に出生前遺伝子スクリーニングが予防的手段として浮上する可能性がある。ANZRAGコホートでは遺伝子診断によりPCGの病型が10.4%で再分類されており、遺伝子診断が精度の高い診断と適切な管理に貢献することが示唆されている7)。今後の大規模国際コホートによるエビデンスの蓄積が期待される。
QOL評価の課題
Section titled “QOL評価の課題”小児緑内障患者のQOLに関するシステマティックレビューでは、10種類の患者報告アウトカム指標(PROMs)が使用されているが、小児緑内障に特化した質問票は現時点で存在しない9)。IVI_C・CVAQC・LVP-FVQ-IIが視覚特異的小児用として比較的高評価(5/7ポイント)を得ている。小児緑内障患者は将来の不安(就労・家族計画・手術への恐怖)を抱えており、既存PROMs では十分にカバーされない9)。小児緑内障特異的PROMs の開発が今後の課題である。
8. 予後と長期管理
Section titled “8. 予後と長期管理”手術成功例では長期的な視力予後は比較的良好である。隅角切開術・線維柱帯切開術いずれの術式でも、手術成功例のほぼ60%が矯正視力0.5以上を保持する。
- できるだけ早期に屈折検査・屈折矯正を行い、度数の変化に対応すべく頻回に屈折検査を施行する。
- Haab線条による角膜乱視は弱視の原因となるため、乱視管理と弱視治療を並行して行う。
- 生涯にわたる眼圧モニタリングが必須である。
小児緑内障患者のHealth-Related QoL(HRQoL)は先天性心疾患や急性リンパ性白血病の患児と同等(PedsQL 4.0スコア約76〜79/100)とされる。視力良好群・原発型・片眼性の方がQoL良好であり、手術回数・点眼数・両眼性がQoL低下に関連する9)。
9. 参考文献
Section titled “9. 参考文献”- Pazos M, Traverso CE, Viswanathan A; European Glaucoma Society. European Glaucoma Society - Terminology and guidelines for glaucoma, 6th Edition. Br J Ophthalmol. 2025;109(Suppl 1):1-212. doi:10.1136/bjophthalmol-2025-egsguidelines. PMID:41026937.
- 日本緑内障学会緑内障診療ガイドライン改訂委員会. 緑内障診療ガイドライン(第5版). 日眼会誌. 2022;126(2):85-177.
- Rao A. Histopathological changes in the trabecular meshwork in primary congenital glaucoma. American journal of ophthalmology case reports. 2025;38:102340. doi:10.1016/j.ajoc.2025.102340. PMID:40475128; PMCID:PMC12138567.
- Song Y, Zhang X, Weinreb RN.. Gonioscopy-assisted transluminal trabeculotomy in primary congenital glaucoma. Am J Ophthalmol Case Rep. 2022;25:101366. doi:10.1016/j.ajoc.2022.101366. PMID:35146211; PMCID:PMC8818529.
- Elhusseiny AM, Aboulhassan RM, El Sayed YM, Gawdat GI, Elhilali HM. Gonioscopy-Assisted Transluminal Trabeculotomy following Failed Glaucoma Surgery in Primary Congenital Glaucoma: One-Year Results. Case reports in ophthalmological medicine. 2023;2023:6761408. doi:10.1155/2023/6761408. PMID:37304219; PMCID:PMC10250098.
- Dada T, Satpute K, Bukke AN, Verma S. Endoscope-assisted goniotomy in primary congenital glaucoma with corneal opacification. BMJ case reports. 2022;15(11). doi:10.1136/bcr-2022-252958. PMID:36357114; PMCID:PMC9660561.
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