この疾患の要点
近視は眼軸長 に対して屈折 力が過剰で、遠方からの光が網膜 手前に焦点を結ぶ屈折 異常である。
世界人口の1/5以上が近視を有し、2050年には半数に達すると予測される。1)
病的近視 (等価球面度数 >6D・眼軸長 >26.5mm)では、黄斑 変性・網膜剥離 ・緑内障 などの合併症リスクが高い。
小児の近視診断には調節麻痺下屈折 検査がゴールドスタンダードである。
近視進行抑制には低濃度アトロピン点眼 ・オルソケラトロジー ・近視抑制眼鏡レンズなど複数の選択肢がある。
屋外活動の増加は近視発症を最大50%低減する、最も簡便な予防的介入である。1)
COVID-19流行期の近業増加・屋外活動減少により、小児近視 の進行が加速した。1)
近視(myopia )は、無限遠からの平行光線が網膜 手前で焦点を結ぶ屈折 異常である。眼の屈折 力が眼軸長 に対して過剰な状態で、遠方視力 の低下を特徴とする。
病的近視 (悪性近視・変性近視・強度近視 )は、眼底後極部に変性をきたす近視であり、正視眼の眼軸長 の正規分布曲線の平均値から標準偏差の3倍以上離れたものを指す。
良性近視(単純近視・学校近視)は病的近視 に対される近視で、眼組織の器質的異常を伴わず、多くは軽度〜中等度近視である。学校近視は近業作業に関係していると考えられ、学齢期または思春期に発症する。
高度近視の定義は一定していないが、おおよそ −6D以上の強い近視を指すことが多い。そのなかでも後極部眼底病変を伴うものを特に病的近視 とよぶ。
重症度分類(庄司分類)
分類 等価球面度数 弱(軽)度 −3D以下 中等度 −3Dを超え −6D以下 強度 −6Dを超え −10D以下 最強度 −10Dを超えるもの
年齢別病的近視 診断基準
年齢 屈折 度矯正視力 5歳以下 −4.0Dを超えるもの 0.4以下 6〜8歳 −6.0Dを超えるもの 0.6以下 9歳以上 −8.0Dを超えるもの 0.6以下
病因による分類
偽近視の原因としては、脳炎・脳腫瘍・頭部外傷などの中枢性調節けいれん、縮瞳薬・アセタゾラミド ・サルファ薬・ステロイド ・有機リン剤の投与、間欠性外斜視 による過剰調節などがある。
世界人口の1/5以上が近視を有し、2050年には半数に達すると予測されている1) 。Holden et al.(2016)の系統的予測研究では、2000年から2050年にかけて世界の近視人口が13億人から49億人、強度近視 は1.6億人から9.4億人に急増すると試算されている12) 。生産性損失は年間2,500億ドル、近視性黄斑 変性による損失は60億ドルと試算される1) 。アジアの一部地域では子供の80〜90%が近視を有し、公衆衛生上の重大な懸念となっている。
高度近視の発症にはアジア人に特に多い人種差がある。−8Dを超える病的近視 は一般人口の約1%を占め、近視全体の約5%にあたる。
日本の学校統計(文部科学省)では、高校生の裸眼視力 1.0未満割合は約63%(平成26年度)、中学生は約53%、小学生は約30%と報告されている。近年の文科省近視実態調査では低年齢の児童生徒で近視の重症化が進んでいることが示唆されており、将来の視機能合併症リスクが懸念されている2) 。
久山町研究では、成人における近視性黄斑 症の有病率増加が確認されており、長眼軸長 が発症の独立した危険因子であることが示されている14) 。強度近視 における近視性黄斑 症の5年累積発症率は一般人口を大きく上回り、近視進行抑制の医学的意義を裏付ける疫学的根拠となっている。
Q
近視はどのくらい一般的ですか?
A
世界人口の1/5以上が近視を有し、2050年には約半数が近視になると予測されている1) 。アジア地域では特に有病率が高く、台湾の子供では約80%に認められる。日本でも高校生の約63%が裸眼視力 1.0未満であり、近年は低年齢からの重症化が懸念されている2) 。
近視眼の周辺部網膜裂孔と浅い網膜剥離
Liu L, et al. The application of wide-field laser ophthalmoscopy in fundus examination before myopic refractive surgery. BMC Ophthalmol. 2017. Figure 1. PM
CI D: PMC5732481. License: CC BY.
遠方視力 のぼやけ :最も特徴的な症状。近くは比較的よく見えるが、遠方がかすんで見える。
目を細める :ピンホール効果で視力 改善を試みるための行動。
変視症 :病的近視 で網膜 病変を合併した場合に出現する。
非病的近視
眼底所見 :軽度の近視性円弧(視神経乳頭 周囲の萎縮弧)が認められる。乳頭耳側コーヌスと豹紋眼底(tigroid fundus)が特徴的。
眼軸長 :26.5mm未満が多い。
矯正視力 :良好に保たれる。
病的近視
後部ぶどう腫 :眼球後極部の局所的な外方膨隆。強膜 が拡張して後方に突出する。
近視性黄斑 変性 :Fuchs斑・脈絡膜新生血管 (CNV )・網膜 出血・萎縮を含む黄斑 病変。Bruch膜断裂による線状黄色調病変(lacquer crack lesion)も特徴的。
黄斑 分離症(MRS) :後部ぶどう腫 を有する病的近視 眼の9〜34%に認められる4) 。
周辺部変化 :white without pressure・格子状変性 ・円孔。
高度近視の主な合併症は以下の通りである。
1D追加ごとの疾患リスク増加は、近視性黄斑 症58%・開放隅角緑内障 20%・後嚢下白内障 21%・網膜剥離 30%と推計されている5) 。Haarmanらのメタ解析では、近視(−1Dから−3D)でも非近視と比較して網膜剥離 リスクが3倍、近視性黄斑 症は9倍にのぼることが示されている13) 。こうした合併症リスクの定量化が、近視進行抑制介入の医学的根拠となっている。
Q
病的近視ではどのような眼底変化が起こりますか?
近視の病因は多因子的で、遺伝的要因と環境要因が複雑に関与する。
遺伝形式 :非症候群性強度近視 は常染色体優性遺伝 が最多で、遺伝的異質性がある。中等度近視は常染色体劣性・優性・多因子性。
双生児研究 :一卵性双生児の一致率は二卵性を大きく上回り、遺伝の寄与を示す。
家族歴 :両親が近視の場合に子供のリスクが増加する。
民族差 :中国系の子供で、シドニー在住(3.3%)よりシンガポール在住(29.1%)での近視有病率が高く、同一民族でも環境が大きく影響する。
屋外活動の不足 :近視発症を最大50%低減する最重要な予防因子。1) 網膜 ドーパミン放出を促進するとされる。
近業作業 :弱い相関が報告されているが、PC使用との有意な相関は確認されていない。調節ラグが関与するとの説がある。
都市化 :都市の子供は農村の約2倍の近視有病率との報告がある。
教育 :長時間の読書・高等教育がリスク要因として指摘されている。IQの高い児童での近視有病率が高い傾向がある。
栄養 :飽和脂肪・コレステロール摂取量と眼軸長 の相関が報告されている。
なお、未熟児近視 (Myopia of Prematurity: MOP)は、通常の近視とは発症機序が異なる独立した疾患概念である。眼軸長 の延長ではなく、角膜 曲率の増大・水晶体 の肥厚・前房 の浅小化など前眼部の発達異常が主因であり、未熟児網膜症 (ROP )の重症度や治療法の種類(冷凍凝固 > レーザー光凝固 > 抗VEGF療法 の順に近視リスクが高い)が屈折 予後に大きく影響する。
その他の関連疾患:先天緑内障 ・未熟児網膜症 ・網膜色素変性 ・白内障 ・先天静止性夜盲 ・円錐角膜 ・スティックラー症候群 ・マルファン症候群 ・ワイル・マルケサニ症候群 。
予防・日常のケア
毎日2時間以上の屋外活動が近視発症リスクを下げると考えられています。
読書やスマートフォンは30cm以上離して使用し、適宜休憩を取りましょう。
適切な照明環境で学習しましょう。
定期的な眼科検診を受けて視力 変化を早期に把握しましょう。
Q
屋外活動で本当に近視予防できますか?
A
屋外活動の増加は近視の発症を最大50%低減するとの報告がある1) 。屋外の高輝度光が網膜 ドーパミンの放出を促し、眼軸 延長を抑制すると考えられている。近視進行抑制の中でも最も簡便かつ副作用のない介入であり、76分/日の増加で50%低減効果が示されている1) 。
高度近視自体の診断は、屈折 検査ならびに眼軸長 測定により行う。高度近視の病態はあくまで眼軸 の異常な延長であるため、眼軸長 測定は必須である。
学校健診・小児科での視力検査 が最初の検出機会となる。フォトスクリーニング やオートレフラクトメーターによる検出は可能だが、定量的な屈折 度数の確定には不十分である。
検査法 内容・目的 調節麻痺下屈折 検査 小児のゴールドスタンダード。サイクロペントレート10分おき2回点眼、初回45〜60分後にオートレフ実施2) 眼軸長 測定光学式眼軸長測定 装置で計測。近視進行モニタリングに重要散瞳 下眼底検査 後部ぶどう腫 ・Fuchs斑・網膜裂孔 の確認に必須OCT 黄斑 分離症・脈絡膜新生血管 の早期検出に有用蛍光眼底造影 CNV と単純型黄斑 出血の鑑別に有用視野検査 近視性視神経症 の評価に用いる
調節麻痺下屈折 検査が小児のゴールドスタンダードである 。調節の影響を排除しないと、調節力の強い小児では過剰なマイナス処方が生じやすい。幼小児では1%サイクロペントレート(サイプレジン®)点眼が第一次選択であり、眼軸長 のパーセンタイル曲線での管理も近視進行モニタリングに有用である2) 。
鑑別診断の要点 : 偽近視(調節けいれん)との鑑別のため調節麻痺下屈折 検査を必ず行う。急速に進行する近視や系統的疾患(スティックラー症候群 ・マルファン症候群 など)を示唆する所見がある場合は全身精査を行う。
低濃度アトロピン点眼 適応を評価する際、6か月間に屈折 度数 >0.5D の進行または眼軸長 >0.3mm の延長を進行の目安とする。
近視進行のモニタリングには2つのアプローチがある2) :
絶対値比較法 :日本人を対象とした疫学研究(Itoi 2021)の年齢別眼軸長 進行速度と比較する方法。治療中の進行速度と無治療の自然進行を対比して評価する。
パーセンタイル曲線法 :正視眼を含む眼軸長 パーセンタイル曲線(文科省データに基づく)を参照し、眼軸長 が曲線上でどの位置にあるかを確認する方法。スマートフォンアプリや眼軸長 測定装置付属ソフトで利用可能。
近視進行管理においては、これらのモニタリングツールを使って患者と保護者に治療効果を視覚的に示すことが、治療継続のモチベーション維持に有効である2) 。
近視の治療は、①屈折 矯正による視力 の確保、②近視進行の抑制、③強度近視 の合併症治療の3つに大別される。
眼鏡(凹レンズ) :小児近視 の標準的な矯正法。安全性が高く、第一選択となる。日本では調節麻痺下屈折 度数をもとに処方する。
コンタクトレンズ(CL) :10代前半以降が一般的な適応年齢。矯正は可能だが、小児には管理面での注意が必要。
近視進行抑制の各介入の効果比較を以下に示す。
介入 屈折 抑制効果眼軸 抑制効果低濃度アトロピン0.05% 最大67%1) — オルソケラトロジー — 32〜59%1) MiSight 1 day(+2.00D加入) 59%6) 52%6) DIMS 眼鏡レンズ(MiYOSMART®) 55〜59%3) —
低濃度アトロピン点眼 は、近視進行抑制において最もエビデンスが蓄積された薬物療法である1) 。アトロピンはムスカリン受容体の可逆的拮抗薬であり、網膜 ・強膜 に存在するムスカリン受容体(M1/M4受容体が主候補)を介して強膜 リモデリングに関与し、眼軸 延長を抑制するとされるが、詳細機序は未解明である2) 。
濃度別の特徴比較(LAMP試験)
濃度 近視進行抑制率 副作用 0.01% 約49%1) 最小限 0.025% 約62%(中間)2) 軽微 0.05% 最大67%1) 羞明 ・霧視 やや増
治療推奨対象は両親が近視、屋外活動時間が少ない、低年齢で近視を発症した小児(近視発症が早いほど将来の近視度数が強くなるリスクが高い)2) 。治療開始後は1週〜1か月後に初回フォローを行い、その後3〜6か月ごとに定期観察する。近視の進行が安定する10代後半まで継続することが望ましく、中止後にリバウンドが生じる場合があるため終了後も経過観察を継続する2) 。
低濃度アトロピンの副作用と禁忌
羞明 ・近見障害(霧視 )が主な副作用。点眼開始後数週間で軽減することが多い。就寝前点眼で副作用を軽減できる。
閉塞隅角緑内障 ・アトロピン過敏症は禁忌。
日本では0.025%リジュセア®ミニ点眼液が2024年12月に承認(近視進行抑制効能では国内初)。0.05%は保険適用外。2)
5歳未満への処方は、正確な屈折 評価が困難であること・視機能発達段階であることから慎重に判断する。
就寝中に特殊なリジッドレンズを装用し、角膜 中央部を一時的に平坦化する手法。中間周辺角膜 の増厚が周辺近視性デフォーカスを生じ、眼軸 延長を抑制する。
効果 :メタ解析では、オルソケラトロジー が単焦点CLより眼軸 延長を抑制する傾向が示されている15) 。ROMIO study(Cho 2012)では6〜10歳の小児でオルソケラトロジー が単焦点CLと比較して有意な眼軸 延長抑制を示した10) 。日中は裸眼で過ごせるため、活発な小児や運動をする小児に特に適している。
安全性 :日本多施設研究(1,438名)でのMK(微生物性角膜 炎)発生率は5.4/10,000 patient-yearsであった1) 。水道水でのレンズ洗浄はアカントアメーバ角膜炎 の主因となるため厳禁である。
処方範囲 :−4D程度までの近視が主な適応。角膜 乱視 1.5D以上の症例にはトーリックOKレンズが推奨される。
中止後の変化 :角膜 形状は装用中止後数日〜2週間で可逆的に回復する。得られた眼軸 延長抑制効果は中止後も維持される部分がある。
周辺遠視 性デフォーカスを軽減し眼軸 延長を抑制する設計のCL。AAO のOphthalmic Technology Assessmentでは、11件のLevel 1試験を含む12件のRCTが近視進行・眼軸 延長の有意な抑制を示すことを確認している6) 。
MiSight 1 day (+2.00D加入):3年間の二重盲検RCTで屈折 進行と眼軸 延長を有意に抑制した(Chamberlain 2019)9) 。AAO の評価では、複数のRCTで多焦点ソフトCLによる近視進行抑制が確認されている6) 。
+2.50D加入レンズ :3年間で屈折 43%・眼軸 36%の抑制1) 。
重篤な有害事象は試験を通じて報告されていない6) 。
周辺デフォーカス制御設計の特殊眼鏡レンズ群(多分割レンズ)は、日本近視学会が2025年にガイドライン(第1版)を策定し、標準治療の一つとして位置づけられた。3)
DIMS (Defocus Incorporated Multiple Segments; MiYOSMART®, HOYA社):6〜18歳を対象とした2年間RCTで屈折 進行と眼軸 伸長を有意に抑制した8) 。
HALT (Highly Aspherical Lenslet Target; Essilor® Stellest®):2年間でフルタイム装用により屈折 67%・眼軸 60%抑制(Bao 2022)。処方範囲はS −12.00D〜+2.00D、C −4.00D〜0.00D。
DOT (Diffusion Optics Technology):2年間で屈折 59%・眼軸 38%抑制(Rappon 2022)。
二重焦点・累進多焦点眼鏡 :近視進行抑制の臨床的意義は乏しい(COMET試験, 2003)。
近視管理用眼鏡レンズの終了基準は、18歳±2歳で近視進行が安定することを目安とし、6か月ごとのフォローアップで2回連続して屈折 度数・眼軸長 に変化が認められない場合に装用中止を考慮する3) 。装用中止後のリバウンドは認められない。
Ortho-K+0.01%アトロピン :Kinoshita et al.(2020)の2年間RCTでは、併用群の眼軸 伸長がオルソケラトロジー 単独群より小さいと報告された16) 。
デュアルフォーカスCL+0.05%アトロピン 、Ortho-K+反復低強度赤色光(RLRL ) :急速進行例に有効。1)
0.01%アトロピン+MiSight :追加効果は認められなかったとの報告がある(Erdinest 2022)。1)
治療における注意点
低濃度アトロピン点眼 は0.01%は保険適用外であり、0.025%(リジュセア®ミニ)のみ承認済み。2)
オルソケラトロジー は感染リスク管理が重要。水道水でのレンズ洗浄は絶対に避け、正しいケアを徹底する。
近視進行抑制療法は進行の「抑制」であり、「治癒」ではない。定期的な経過観察が必要。
偽近視(調節けいれん)との鑑別のため、調節麻痺下検査を行ってから治療方針を決定する。
Q
低濃度アトロピン点眼の最適濃度はどれですか?
A
LAMP試験では0.05%が最も有効で最大67%の進行抑制効果が示された1) 。日本では0.025%のリジュセア®ミニ点眼液が2024年12月に承認された2) 。0.01%は効果が限定的な場合がある。最適濃度の選択は、効果と副作用(羞明 ・近見障害)のバランスを個別に判断する。
Q
オルソケラトロジーは子供に安全ですか?
A
日本の多施設研究(1,438名)でのMK発生率は5.4/10,000 patient-yearsであった1) 。適切なケアを遵守すれば比較的安全な治療法である。ただし、水道水によるレンズ洗浄はアカントアメーバ角膜炎 のリスクを高めるため厳禁である。
アフリベルセプト ・ラニビズマブ の硝子体内注射 が第一選択である。光線力学療法(PDT )やトリアムシノロン アセトニド(保険適用外)も有効だが抗VEGF抗体に劣る。
自然経過では5年以上経過するとほとんどの患者で矯正視力 0.1以下に至り、予後は不良である。CNV や近視性牽引黄斑症 のない、びまん性網膜 脈絡膜 萎縮のみの患者では視力 は比較的良好に保たれることが多い。
なお、病的近視 に伴う黄斑 新生血管 に対してアフリベルセプト 硝子体内注射 (IVA)を施行した後にMRSが進行した症例が報告されており4) 、抗VEGF注射後のMRS悪化に注意が必要である。
硝子体手術 (PPV + ILM 剥離)による牽引除去が標準治療である。
近視性網膜 中心窩 分離症は基本的に進行性の疾患であり、まれに自然軽快例も存在するが、急速に進行する症例もある。
硝子体手術 ・ガス注入が標準治療。難治例では黄斑 バックリング や強膜 短縮を行う。硝子体手術 ではほぼ全例で最終復位が得られるが、視力 予後は術前後の黄斑部 の状態による。
眼圧 降下(緑内障 性視神経症 の治療と同様)を行う。
強度近視 眼での白内障 手術では、IOL度数計算 の精度低下が問題となる。AI駆動の新世代計算式(Kane・Hill-RBF)は、SRK/T式と比較して眼軸長 30mm以上の症例でMAEが有意に低く(それぞれ0.51D、0.52D)、±1.0Dを超える屈折 誤差がSRK/Tの42.5%に対し7.5%にとどまることが報告されている。LASIK など屈折 矯正手術後の症例でも同様の問題が生じるため、日本眼科学会屈折 矯正委員会のガイドライン(第8版)が定める適応基準・術前評価・術後管理の手順を遵守することが重要である7) 。
高度近視の主病態は眼軸 の延長である。眼軸長 1mmの延長はおよそ3Dの近視化に相当する。眼軸 が延長する詳細な機序は完全には解明されていないが、実験近視モデルを用いた研究では、強膜 における成長因子の発現変化が眼軸 延長に関与することが示されている。
眼軸 延長は網膜 から送られる光学的シグナルにより制御されると考えられている。
周辺遠視 性デフォーカス :網膜 周辺部に遠視 性のぼやけが生じると、眼球はそれを補正しようとして眼軸 を延長させる。
ドーパミン仮説 :網膜 のドーパミン放出が眼軸 延長を抑制する。屋外の高輝度光がドーパミン分泌を促進するため、屋外活動が近視予防に有効と考えられる。1)
低濃度アトロピンの機序 :ムスカリン受容体(M1/M4受容体が主候補)を介して眼軸 延長を抑制するとされるが、詳細な機序は研究中。1)
RLRL 療法の機序 :650nmの赤色光照射が脈絡膜 厚を増加させ、眼軸 延長を抑制するとされる。1)
眼軸 延長が高度に進行すると、脈絡膜 ・網膜 ・強膜 に機械的伸展が加わる。
後部ぶどう腫 形成 :強膜 の局所的な外方膨出。硝子体 牽引を介して黄斑 分離症(MRS)を引き起こす。MRSは後部ぶどう腫 を有する病的近視 眼の9〜34%に認められる。4)
脈絡膜 萎縮・CNV 形成 :脈絡膜 の菲薄化が進み、Bruch膜亀裂から脈絡膜新生血管 が侵入する。Fuchs斑はCNV の瘢痕化した状態である。
強膜 リモデリング :眼軸 延長の最終的な基盤となる構造変化。コラーゲン線維の再配向・プロテオグリカン組成変化が生じる。低濃度アトロピンはムスカリン受容体を介してこの強膜 リモデリングを抑制すると考えられている1) 。
緑内障 リスク :1D増加ごとに開放隅角緑内障 リスクが20%上昇する5) 。視神経乳頭 の傾斜・変形が視野障害と独立した関連を示す。強度近視 眼では眼圧 が正常でも緑内障 様視野変化が生じる場合があり、定期的な視野検査 が推奨される。
650nmの赤色光を用いたRLRL 療法は、脈絡膜 厚の増加を介して眼軸 延長を抑制する新規介入法である1) 。Jiang et al.(2022)の多施設RCTでは、RLRL 群の眼軸 延長が0.10 mm/年(対照群0.38 mm/年)と有意な抑制を示した11) 。Zeng et al.(2023)の多施設RCTでは等価球面進行を約72%抑制した。ただし主要研究は東アジアに偏っており、長期安全性データはまだ限られている。2026年4月時点で日本では薬事未承認・保険未収載の自費診療である。
PLARI・NLARI・CAREなど、新しい光学設計の眼鏡レンズが開発・検討されている1) 。
強度近視 の白内障 手術において、AI技術を活用したIOL 計算式のさらなる精度向上が期待されている。眼軸長 30mm以上の極度軸性近視でも安定した屈折 転帰を得られる可能性がある。
COVID-19の影響 :パンデミックによる近業増加・屋外活動減少が小児近視 の進行加速と関連することが報告された。1)
環境要因研究 :都市計画・学校照明環境・緑地へのアクセスが近視有病率に与える影響が研究されている。1)
グローバル研究の必要性 :現行データの多くは東アジアに偏っており、他地域でのデータ蓄積が求められる。1)
飽和脂肪・コレステロール摂取と眼軸長 の相関が報告されており、栄養介入による近視抑制の可能性が検討されている。1)
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