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網膜・硝子体

病的近視に伴う網膜症(近視性変性)

病的近視(pathologic myopia; PM)は、屈折度が-6.0D以上または眼軸長26.5mm以上の強度近視に、眼底変性病変を伴う状態と定義される。META-PM(Meta-Analysis for Pathologic Myopia)分類では、びまん性萎縮以上の萎縮性変化を眼底に有するか、後部ぶどう腫を有する眼を病的近視と診断する。

病的近視は矯正視力0.1以下の視覚障害の13%を占め、緑内障に次ぐ第2位の失明原因である。世界有病率は0.2〜3.8%と報告されており、特に東アジアでの有病率が高い。

近視黄斑症は、近視性網脈絡膜萎縮病変と3つの独立病変(plus lesion)を含む後極部眼底病変の総称である。Plus lesionはlacquer cracks・近視性MNV(myopic neovascularization; 旧称: 脈絡膜新生血管/CNV)・Fuchs斑からなる。MNV用語は国際的にCNVから移行が進んでいる。1)

眼底病変の記述にはATN分類も用いられる。AはAtrophy(萎縮性変化)、TはTractional(牽引性変化)、NはNeovascular(近視性MNV)を指す。META-PM分類とATN分類を組み合わせることで、病変の種類・重症度・活動性を包括的に評価できる。5)

ぶどう腫(staphyloma)は眼軸延長に伴う強膜の局所的膨隆であり、病的近視を特徴づける重要所見である。年齢、眼軸長、後極部形態は病的近視の発症・進行評価で重視される7)

近視性MNVは強度近視眼の5〜11%に生じ、50歳以下のCNVの最大の原因疾患である。8年の経過観察で、MNV既往のない病的近視患者の約6%が発症し、片眼既往がある場合は約35%が僚眼に発症する。

近視性牽引黄斑症(MTM; myopic traction maculopathy)は後部強膜ぶどう腫を伴う強度近視眼の9〜34%に認められる。1958年にPhillipsが「強度近視に伴う黄斑円孔のない後極部網膜剥離」として初めて記述し、1999年に高野・岸らがOCTで検出を報告、Panozzoが「MTM」呼称を提唱した。

以下の近視1D増加あたりの合併症リスク増加は、進行抑制の重要性を示す。8)

合併症1D増加あたりのリスク増加
黄斑変性58%増
開放隅角緑内障20%増
白内障21%増
網膜剥離30%増
Q 病的近視と強度近視の違いは何か?
A

強度近視屈折度が-6D以上または眼軸が26.5mm以上の状態を指す。病的近視はそれに加えて眼底変性病変(萎縮・ぶどう腫・lacquer cracksなど)を伴うもので、META-PM分類では「びまん性萎縮以上の萎縮性変化または後部ぶどう腫を有する眼」と定義される。病的近視では視力予後が悪く、MNVやMTMなどの重大な合併症を生じる。

  • 視力低下近視性MNVや黄斑萎縮が主な原因。MTMでも網膜分離・中心窩剥離に伴い進行性に低下する。
  • 変視症(歪視):物が歪んで見える症状。MNVやMTMで出現する。MNVではtype 2 CNVRPE上)の性質上、自覚症状が早めに出現し急速に進行する。
  • 中心暗点:限局性萎縮・黄斑部萎縮・MNV・MTMで認める。
  • 霧視飛蚊症硝子体液化・後部硝子体剥離に伴い増加する。
  • 無症状のこともある:MTM(網膜内層の分離がMüller細胞の伸展で維持)や初期萎縮では長期間無症状のまま経過することがある。強度近視による既存視力不良で自覚困難な場合もある。

META-PM分類に基づく主な眼底所見を以下に示す。

初期〜中期

豹紋状眼底脈絡膜血管が透見される典型的所見。Category 1〜2相当。

乳頭周囲萎縮(PPA)視神経乳頭周囲の脈絡膜RPEの菲薄化。早期から認める。

lacquer cracks:Bruch膜の線状亀裂。CNV発症リスクOR 2.56。6)

進行期

びまん性萎縮RPEおよび脈絡膜の広範な菲薄化・萎縮。長期では57%が進行する。6)

限局性萎縮・黄斑部萎縮:境界明瞭な黄色斑状萎縮巣。Bruch膜が面状に消失し脈絡膜毛細血管は完全閉塞。限局性萎縮の81%が進行し中心窩に及ぶと高度視力障害をきたす。6)

ぶどう腫:後極部の強膜膨隆。眼底写真とOCTで形態を確認する。

近視性MNV(Plus lesion)の病期別所見

  • 活動期:灰白色の網膜下病変。OCTでは境界不明瞭なRPE上の高反射塊として検出される。FAではclassic CNV(早期から明瞭な過蛍光・後期蛍光漏出)。漿液性網膜剥離網膜浮腫はごくわずか。1)
  • 瘢痕期RPEで囲い込まれた高輝度ライン(OCT)。Fuchs斑(色素沈着瘢痕)が眼底に出現。囲い込みの不明瞭化は再燃を示唆。1)
  • 萎縮期:MNV関連黄斑部萎縮の拡大。中心視力が著しく低下する。1)

近視性牽引黄斑症(MTM)のOCT所見と病期分類

OCT網膜内層分離・網膜間隙に架橋構造を認める。進行度はS0〜S4で評価する。20)

ステージ分離の範囲特徴
S0なし分離なし
S1中心窩外のみ中心窩の分離
S2中心窩を含む中心窩の分離を認める
S3中心窩含むが黄斑全体ではない部分的黄斑分離
S4黄斑全体進行しやすく最も注意が必要

多発性中心窩周囲網膜剥離を伴う例もあり、浅い中心窩剥離・分層/全層黄斑円孔網膜前膜の合併に留意する。18)

Q 近視性MNVは何歳ごろから発症するか?
A

加齢黄斑変性と異なり、近視性MNVは10歳代から発症しうる。50歳以下のCNVの最大の原因疾患であり、若年発症が特徴的である。片眼発症後は僚眼にも約35%が発症するため、定期的な両眼検査が重要である。

眼軸延長が病的近視の根本的な原因である。眼軸が伸展するにつれて網膜脈絡膜強膜が引き伸ばされ、菲薄化・萎縮・亀裂が生じる。成人でも眼軸延長は継続し、18〜25歳で年間0.1mm程度、25歳以上では年間0.05mm程度の速度で進行する。15)

  • 遺伝的素因近視の発症・進行に遺伝が大きく関与する。東アジア人での高有病率もこれを示唆する。
  • 環境因子:近業作業・屋外活動の減少が近視進行を促進する。
  • 年齢と眼軸によるリスク上昇:年齢上昇と眼軸延長は、病的近視発症・進行と関連する主要因である7)

久山スタディ(2012年報告、40歳以上住民対象)では、びまん性萎縮の有病率1.7%、限局性萎縮と黄斑部萎縮が各0.4%であった。女性はOR 3.29倍、年齢1歳でOR 1.12倍、眼軸長1mm伸展でOR 4.20倍、有病率が増加した。

MNVリスク因子

  • lacquer cracks:MNV発症OR 2.566)
  • ドーム状黄斑(dome-shaped macula; DSM):MNV発症OR 4.95(DSMありの37% vs なし11%が発症)6)
  • 局所的な脈絡網膜萎縮、長い眼軸長、女性

MTMリスク因子

  • 後部ぶどう腫の存在(type I: OR 2.28、type II: OR 2.81)6)
  • 黄斑全体に及ぶ分離(S4)、黄斑前組織の存在20)
  • 自然消退は約3.9%のみ19)

近視黄斑症の進行リスク因子:乳頭周囲びまん性萎縮、女性、速い眼軸長伸展、長い眼軸長、高齢の順にオッズ比が高い。進行率は47.0/1,000眼年(10年以上追跡)。type IX(septal)ぶどう腫では進行率86%(OR 29.3)。6)

Q 近視の進行を止めることで失明リスクは下がるか?
A

近視1D増加により黄斑変性・緑内障白内障網膜剥離のリスクが各々有意に増大する。8) 近視進行抑制のNNTは4.1〜6.8と試算されており、進行抑制が将来の合併症予防に直結する。8)

  • 屈折検査・眼軸測定屈折度と眼軸長を計測して定義を確認する。
  • 細隙灯顕微鏡・眼底検査:豹紋状眼底・PPA・ぶどう腫・lacquer cracksを評価する。
  • 視力検査:最高矯正視力(BCVA)は、病変の進行度と機能障害を評価する基本指標である。
  • OCT黄斑分離症・MNV・網膜下液の検出に不可欠。MTMではぶどう腫内壁に沿った層間分離・架橋構造を認める。近視性MNV活動期はRPE上の境界不明瞭な高反射塊として検出される。漿液性網膜剥離網膜浮腫はごくわずか。OCTのみで単純型黄斑部出血との鑑別は困難なことがある。1)
  • FA蛍光眼底造影:活動性MNVの同定に最も有用。MNVはclassic CNV(蛍光漏出あり)として観察される。1) 単純型黄斑部出血(蛍光漏出なし)との鑑別には必須の検査である。
  • OCTA(光干渉断層血管造影):非侵襲的にMNV血管構造を描出。MNV検出感度90.48%、特異度93.75%。11) 活動期では「レース状ネットワーク・広い吻合・病変周囲の低輝度ハロー」、静止期では「長い線状の成熟血管・稀な吻合(枯れ木様外観)」を呈する。瘢痕期でも血流シグナルを示すため活動性評価単独には向かない。1) 単純型黄斑部出血との鑑別にも有用。Angio-Bモードでは構造OCTで検出困難な早期MNVの描出が可能。11)
  • IA(インドシアニングリーン蛍光眼底造影:MNV検出感度は低いが、lacquer cracksの検出性能が高い(後期像で線状低蛍光)。1)
  • FAF眼底自発蛍光黄斑部萎縮を低蛍光として明瞭に描出。萎縮の拡大評価に有用。MNV安定後の経過観察に推奨。1)
  • Wide-field OCTAぶどう腫の全体評価に応用。14)

META-PM分類とATN分類を組み合わせて病変の種類・重症度・活動性を体系的に評価する。1, 5) ぶどう腫の存在は病的近視の陽性予測値89.8%を示す重要な診断指標である。7)

鑑別疾患鑑別のポイント
単純型黄斑部出血FAで蛍光漏出なし。2〜3か月で自然吸収。OCTではHenle線維層に沿った高反射
加齢黄斑変性ドルーゼンRPE剥離を伴う。滲出性変化が強い
点状脈絡膜内層症(PIC中等度近視の若年女性。後極に限定された小型黄白色病変(500μm以下)。炎症に伴う脈絡膜肥厚
多巣性脈絡膜炎(MFC)PICの類縁疾患。脈絡膜炎症が関与
Dome-shaped maculaOCTで特徴的な内方凸状突出。MNV合併あり
傾斜乳頭症候群下方ぶどう腫エッジにMNVが発生しうる
Q 単純型黄斑部出血と近視性MNVの違いは何か?
A

単純型黄斑部出血はlacquer cracks形成時の脈絡膜毛細血管障害による出血で、2〜3か月で自然吸収し治療不要のことが多い。近視性MNVはMNV(新生血管)に伴う出血でFAで蛍光漏出を示す。OCTのみでの鑑別が困難な場合はFA検査が必須となる。1)

近視性網脈絡膜萎縮病変に対して

Section titled “近視性網脈絡膜萎縮病変に対して”

現状では近視性網脈絡膜萎縮病変(びまん性萎縮・限局性萎縮・黄斑部萎縮)に対する有効治療法はない。定期的なOCT眼底検査FAFによる経過観察が基本となる。

抗VEGF薬硝子体内注射が唯一、多施設前向きRCTで有効性が証明された第一選択治療である。1)

保険適用薬剤(日本)

  • ラニビズマブ(ルセンティス®):2013年保険適用
  • アフリベルセプト(アイリーア®):2014年保険適用
  • ベバシズマブ(アバスチン®):保険適用外使用

投与レジメン:1回投与+必要時追加(1+PRN)が標準レジメンである。1, 2, 5)

  • 3+PRNとの比較で視力改善に有意差はなく、1+PRN群は注射回数が少ない(12か月で1.8回 vs 3.2回)。9)
  • Glachsネットワークメタ解析(34研究、2,098眼):抗VEGF薬は6か月以内に無治療群比+14.1文字(95% CI 10.8〜17.4)、PDT群比+12.1文字(95% CI 8.3〜15.8)の視力改善を示した。9)
  • ベバシズマブラニビズマブアフリベルセプトの間で視力改善に有意差は認められていない。9)

主要RCT

  • MYRROR試験:アフリベルセプトの有効性を証明した国際多施設RCT。3)
  • RADIANCE試験:ラニビズマブの有効性を証明した国際多施設RCT。4)

経過観察:活動性MNVでは月1回フォローアップ。MNV安定後は最大3か月まで投与間隔延長可。5) 早期発見・早期治療がMNV拡大・瘢痕形成前の介入のために重要。1)

その他の治療法

  • PDT(光線力学療法)抗VEGF薬に比べて視力改善効果は劣り9)、長期的には黄斑萎縮増悪の可能性がある。日本では保険適用なし。
  • トリアムシノロンアセトニド硝子体内注射:抗VEGFに劣り、眼圧上昇・白内障進行リスクがある。9)
  • レーザー光凝固:「ランオフ現象」によりMNV再発を誘発する可能性があり、現在では推奨されない。

硝子体手術が基本である。

硝子体手術

硝子体茎切除術(PPV)+内境界膜剥離:前方牽引を解除し細胞増殖の足場を除去する。

内境界膜フラップ法(inverted ILM flap)ILM剥離単独に比べ、網膜復位率(97.8% vs 82%)および黄斑円孔閉鎖率(93.5% vs 38.5%)が高い。17)

中心窩温存内境界膜剥離:医原性黄斑円孔リスクを低減する術式。20)

黄斑バックル

黄斑バックル手術強膜バックル素材を後極部に留置し外側からぶどう腫を押し上げる術式。ぶどう腫という構造的原因に直接対処する。

利点白内障の発生回避、医原性黄斑円孔の回避が可能。硝子体手術単独より高い解剖学的成功率と良好な機能的転帰が報告されている。17)

注意点:渦静脈圧迫・外傷性視神経障害・遠視化シフトに注意が必要。

手術適応視力障害を伴う場合、黄斑円孔牽引性網膜剥離への進展が危惧される場合、中心窩剥離の進行を認める場合。20)

手術予後

  • 術前に黄斑部剥離を伴うものが最も視力予後良好
  • 術前に黄斑円孔を伴うものや術後黄斑円孔を生じたものでは視力予後不良
  • 網膜復位までは数か月以上要することがある。硝子体手術ではほぼ全例で最終復位が得られる
Q 近視性MNVの治療は何回の注射が必要か?
A

近視性MNVに対する抗VEGF薬は1回投与+必要時再投与(1+PRN)が標準レジメンである。1) 12か月で平均1.8回と、加齢黄斑変性に比べて注射回数が少ない傾向にある。9) ただし再発・萎縮の拡大に対する長期経過観察は不可欠であり、早期の再治療が推奨される。

6. 病態生理学・詳細な発症機序

Section titled “6. 病態生理学・詳細な発症機序”

眼軸延長と脈絡膜菲薄化の連鎖

Section titled “眼軸延長と脈絡膜菲薄化の連鎖”

眼軸延長が進むと後極部の強膜が菲薄化・伸展され、局所的な膨出(ぶどう腫)が形成される。ぶどう腫の形成により網膜脈絡膜RPEへの物理的張力が増大する。

  • 脈絡膜菲薄化:加齢・近視化・眼軸伸展に伴い脈絡膜は著明に菲薄化する。病的近視眼では脈絡毛細血管板や血管層はほぼ消失し、脈絡膜大血管のみが残存する場合も多い。
  • 脈絡膜毛細血管の閉塞:血流低下によりRPEと光受容体が栄養障害に陥る。

眼軸延長→脈絡膜萎縮→Bruch膜の弾性線維の減少→Bruch膜の機械的断裂(lacquer cracks)という連鎖が生じる。lacquer cracks形成時に脈絡膜毛細血管も同時に障害され、単純型黄斑部出血を伴うことが多い。

lacquer cracksによる裂隙は、将来MNVを伴う結合組織が色素上皮下あるいは網膜下へ増殖する足場となる。MNV発生には機械的断裂を足場とする創傷治癒反応のほか、脈絡毛細血管板や脈絡膜血管の脱落による循環障害がVEGF産生を促し、異常な血管網の形成につながる機序も関与すると考えられている。

近視性MNVの由来血管として、短後毛様動脈が近視性MNV近傍で強膜を貫通し近接する所見が75.0%で確認されており、活動期100%・瘢痕期87.9%・萎縮期73.8%で還流がみられる。

欧州1228眼を対象とした長期追跡研究(平均11.5年)では、びまん性萎縮の57%・限局性萎縮の81%が追跡期間中に進行した。6) 近視性MNVの無治療自然経過では5年で89%・10年で96%が小数視力0.1以下となる。

MTMの発症機序(3つの牽引機序)

Section titled “MTMの発症機序(3つの牽引機序)”

MTMの発症機序は多因子性であり、主に3つの牽引機序が関与する。

  • 前方牽引(硝子体による):不完全な後部硝子体剥離に伴い残存硝子体皮質が黄斑を牽引する。硝子体黄斑牽引・残存皮質硝子体網膜前膜網膜血管牽引がこれに含まれる。
  • 接線方向牽引(ILMによる)内境界膜の固有の剛性がぶどう腫の形状変化に適合できず、内層と外層の間に分離が生じる。
  • 後方牽引(ぶどう腫による):後部強膜ぶどう腫の伸展が外層網膜RPE側に保持したまま内層網膜を引き離す力を生じる。

Müller細胞機能障害(細胞内液・代謝水の調節異常)による液体の流入増加が分離腔形成に寄与する。19) また、脈絡膜灌流障害によりRPEとの網膜接着力が低下し、わずかな牽引でも剥離が生じやすい。18)

MTMとMNVの合併は稀だが重要な臨床的意義を持つ。MNVの網膜下液が向心性・遠心性の牽引バランスを破壊しMTMの進行を促進する可能性がある。10) MNVの滲出による機械的挙上が脆弱化した中心窩のMüller細胞に応力を加え、全層黄斑円孔の原因となった症例も報告されている。12)

病的近視は脈絡膜の高度菲薄化を伴うため、眼手術・外傷を契機に稀に交感性眼炎を発症する。脈絡膜が完全消失した重症例も報告されており、13) 病的近視眼への眼内手術には特段の注意が必要である。

7. 最新の研究と今後の展望(研究段階の報告)

Section titled “7. 最新の研究と今後の展望(研究段階の報告)”

近視性黄斑症の長期自然史(MEMO study)

Section titled “近視性黄斑症の長期自然史(MEMO study)”

Carlàら(2025)は欧州1228眼・平均11.5年追跡のコホートで近視黄斑症の自然史を解析した。6) 57%が追跡中に近視黄斑症の病変が進行した。限局性萎縮の81%が進行し、そのうち47%が黄斑部萎縮に達した(OR 4.21)。活動性MNVは15%の眼に平均4.5年で発症し、MNV発生は視力低下(p=0.001)および黄斑部萎縮への進展(OR 5.81)と有意相関した。type IX(septal)ぶどう腫では進行率が86%に達した。

短期的には良好な視力改善が得られるが、5年以上の長期成績は短期に劣る。MNV退縮後も黄斑部萎縮が年々拡大し、萎縮進展抑制が今後の課題となっている。

近視進行抑制療法の長期的インパクト

Section titled “近視進行抑制療法の長期的インパクト”

Bullimoreら(2021)は、近視進行を1D抑制することで黄斑変性・緑内障白内障網膜剥離リスクが有意に低下することを試算した。8)

NNTは近視関連視覚障害に対して4.1〜6.8と算出された。2050年には世界人口の50%が近視を呈すると予測されており、進行抑制の公衆衛生的意義は大きい。8)

低濃度アトロピン点眼オルソケラトロジー・多焦点ソフトコンタクトレンズ・赤色光照射が近視進行抑制の主要手段として研究されているが、いずれも長期的な眼底病変予防効果の検証は継続中である。

OCT-A Angio-Bモードは、構造OCTや蛍光造影では検出困難な早期のMNVを検出できる可能性がある。11) Wide-field OCTAによるぶどう腫の高精度評価も進んでいる。14)

  • 黄斑スリング技法:汎用の強膜バックル素材を用いてカスタマイズ可能な後極部バックルを作成する技法。16)
  • 黄斑バックル+BSS網膜下注入:難治性黄斑円孔に対し黄斑バックル留置後にBSSを網膜下注入して制御された黄斑部剥離を誘導する手技。2例で黄斑円孔閉鎖と視力改善が得られた。17)
  • 前嚢・内境界膜二層移植水晶体前嚢を二等分して円孔内に挿入し内境界膜を横断配置する新手技。術後1年で視力20/600→20/80改善が報告されている。21)
  • 点眼治療による網膜分離の消退:1%プレドニゾロン点眼(1日4回)と0.07%ブロムフェナク点眼(1日1回)のみでMTMに合併した黄斑円孔が閉鎖し分離症も改善、視力20/50→20/20回復。MTM自然消退率約3.9%に対する局所治療による消退の初報告とされる。19)

強膜架橋(スクレラルクロスリンキング)

Section titled “強膜架橋(スクレラルクロスリンキング)”

眼軸延長を抑制する目的で、強膜へのコラーゲン架橋を行う研究が進んでいる。リボフラビン・UVA照射や化学的架橋剤を用いた手法が検討されているが、安全性・有効性の確立には至っていない。

Q 近視の子どもを持つ親が今できる最善策は何か?
A

小児期の近視進行抑制が将来の合併症リスクを下げる。近視1D増加ごとに黄斑変性・緑内障白内障網膜剥離の各リスクが増大することが示されている。8) 眼科での定期受診・屋外活動の確保・必要に応じた低濃度アトロピン点眼オルソケラトロジーなどの進行抑制療法を検討するとよい。

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