新生血管型AMD
黄斑新生血管(MNV):脈絡膜または網膜血管由来の新生血管が黄斑に生じる。急激な視力低下の原因となる。
病型:1型MNV(RPE下)、2型MNV(RPE上)、3型MNV(網膜内血管由来、RAP)、PCV(1型MNV+ポリープ状病巣)に分類される1)。
日本の特徴:新生血管型AMDの約半数がパキコロイド新生血管症(PNV)であり、ドルーゼンがみられるのは約3割にとどまる1)。
加齢黄斑変性(age-related macular degeneration; AMD)は、黄斑部の加齢性変化によって萎縮性または滲出性変化をきたす疾患である。遺伝的素因に加え、加齢・喫煙・日光曝露・肥満・高脂肪食などの環境因子が関与する多因子疾患と考えられている。
50歳以上で中心窩を中心とする直径6,000μmの範囲に認める加齢に基づく黄斑異常と定義され、前駆病変・新生血管型・萎縮型に大別される。視覚障害の原因として第4位を占める。
久山町研究(2012年)による進行期AMDの有病率は1.6%(滲出型1.5%、萎縮型0.1%)であり、長浜スタディ(2008年〜)では前駆病変の有病率が22.8%(ドルーゼン39.4%)と報告されている。50歳以上の男女にみられ(男性:女性=3:1)、片眼または両眼(約40%)に発症する。前駆病変・進行期AMDともに増加傾向にある。Hisayama study(9年追跡)では、喫煙習慣により後期AMDの発症が4倍に増加したと報告された1)。
人種差があり、白人・アジア人での有病率が高く、ヒスパニック・アフリカ系では低い2)。萎縮型AMDの有病率は欧米の研究で0.66〜1.34%とされ、85歳以上では滲出型の4倍の頻度との報告もある。高齢化が進むわが国でも今後大きな問題となる可能性が高い。全世界ではAMD罹患者は約2億人にのぼり、2040年には約2億8,800万人に増加すると予測される2)。後期AMDの有病率は50〜59歳で0.1%、80歳以上で4.3%と年齢に伴い指数関数的に上昇する2)。
最新の日本の診療ガイドライン(2024年)では、Beckman分類を参考に以下の4病期に分類している1)。
| 病期 | 特徴 |
|---|---|
| 早期AMD | 中型軟性ドルーゼン(63〜125μm未満)1個以上 |
| 中期AMD | 大型ドルーゼン(125μm以上)・RPE異常・網膜下ドルーゼン様沈着物 |
| 後期AMD | 黄斑新生血管(MNV)を有するもの(PNV含む)、または地図状萎縮 |
| 末期AMD | 線維性瘢痕・囊胞様黄斑変性に伴う高度視力低下 |
小型(硬性)ドルーゼン(63μm未満)は生理的加齢変化とされ、早期AMDには含めない。ただし多数(20個以上)の硬性ドルーゼンが認められる場合は、AMDの発症リスクが高い1)。中期AMDの5年進行率は約18%であるが、reticular pseudodrusenが存在する場合はリスクが著しく上昇する(色素異常+大型ドルーゼン+reticular pseudodrusenで5年リスク72%)2)。
新生血管型AMD
黄斑新生血管(MNV):脈絡膜または網膜血管由来の新生血管が黄斑に生じる。急激な視力低下の原因となる。
病型:1型MNV(RPE下)、2型MNV(RPE上)、3型MNV(網膜内血管由来、RAP)、PCV(1型MNV+ポリープ状病巣)に分類される1)。
日本の特徴:新生血管型AMDの約半数がパキコロイド新生血管症(PNV)であり、ドルーゼンがみられるのは約3割にとどまる1)。
萎縮型AMD
約40%で両眼に発症する。片眼に後期AMDがある場合、僚眼にもMNVが高率に生じる。ARMS2遺伝子型が僚眼発症の予測因子として報告されている1)。定期的な眼科検診とAmslerグリッドによる自己チェックが推奨される。

初期は変視(歪んで見える)・中心暗点で始まる。進行すると0.1未満の視力低下に陥る。大量出血例では突然の高度視力低下をきたすことがある。
片眼発症の場合は日常生活で自覚しないことも多い。症状の程度はMNVの部位・大きさ、網膜下液・出血・線維性瘢痕の程度によりさまざまである。新生血管型では、法的失明に至るまでの期間が萎縮型より短い傾向があり、変視症の出現時には速やかな受診が推奨される。
黄斑部にみられる黄白色の小円形隆起病巣で、RPEの基底膜とBruch膜の内膠原層の間に蓄積した多形性物質(膜様残渣物、非エステル化コレステロール、補体など)である。AMDの病態の根幹である慢性炎症の起源と考えられている。
脈絡膜血管が透見できる境界鮮明なRPEの萎縮域である。病変は中心窩周囲(傍中心窩)から始まり馬蹄形→リング状と拡大し、中心窩へ進展する。中心窩進入までの中央値は2.5年とされる3)。成長速度は1.28〜2.6 mm²/年で、ランパリズマブ試験データでは2年間でGA面積が平均8.07→12.05 mm²に拡大した3)。多病巣性のGAは単一病巣より成長速度が速い3)。対側眼のGA転換率は12ヵ月で約30%に達し、CNV転換率も6.7%と報告されている。
大きなドルーゼン様PEDが退縮するときに急速に萎縮が進行することもある。眼底自発蛍光で萎縮域の境界部にみられる過自発蛍光パターンは、進行速度の予測に有用とされる。
Amslerグリッド(方眼紙状の自己チェックシート)で変視症や暗点を自己確認できる。ただし初期は無症状であることが多く、定期的な眼科受診が不可欠である。特に片眼発症の場合、日常生活で気づかないことも少なくない。
AMDは多因子疾患であり、遺伝的素因に環境・行動因子が加わって発症する。
AREDS2サプリメント(ルテイン・ゼアキサンチン・ビタミンC・E・亜鉛・銅)は、中期AMDが後期へ進行するリスクを約25%低減する2)。ただし早期AMDや一次予防目的での有効性は確立されていない。βカロチンは喫煙者の肺癌リスクを高めるため、喫煙者にはルテイン/ゼアキサンチン配合製品を選択する1)。
新生血管型AMDの診断基準は以下のとおりである1)。
萎縮型AMDの診断基準(地図状萎縮)は以下のすべてを満たすものとされる1)。
| 項目 | 基準 |
|---|---|
| 大きさ | 直径250μm以上 |
| 形態 | 円形、卵円形、房状または地図状 |
| 境界 | 鮮明 |
| RPE変化 | 低色素または脱色素変化 |
| 脈絡膜 | 中大血管が明瞭に透見可能 |
MNVからの滲出性変化(IRF・SRF・sub-RPE fluid・フィブリン・出血など)が認められるものを「活動性あり」と判断する1)。OCTで非侵襲的に評価することが主流となっている。MNVの疾患活動性が高い部位は必ずしも中心窩にあるとは限らないため、黄斑全体をスキャンして評価することが勧められる1)。
MNVを伴う黄斑異常では以下の疾患との鑑別を要する。
早期AMDに対するエビデンスに基づく治療法はない2)。中期AMD以上では禁煙指導・食生活改善に加え、AREDS2処方に基づくサプリメントの摂取が推奨される1)。
AREDS2で使用されたサプリメント処方1):
βカロテンは喫煙者の肺癌リスクを上昇させるため、ルテイン/ゼアキサンチンに置換された1)。AREDS2処方により、中期AMDから後期AMDへの進行リスクが約25%低減される。
新生血管型AMDの第一選択は抗VEGF薬硝子体内注射である1)。中心窩下MNVに対し、初回治療として抗VEGF薬単独療法が推奨される。
ラニビズマブ
用量:0.5mg硝子体内投与
導入期:1ヵ月間隔で3回
維持期:必要時投与(PRN)。MARINA studyではsham群14.9文字低下に対し6.6文字の視力改善1)。
バイオシミラー:ラニビズマブBSが使用可能。
アフリベルセプト
用量:2.0mg硝子体内投与
導入期:1ヵ月間隔で3回
維持期:2ヵ月ごと固定投与またはtreat-and-extend法。投与間隔は渗出再燃がなければ2週ずつ延長(最長3ヵ月)、再燃時は2週短縮1)。
PCV:ポリープ退縮率40〜50%でラニビズマブ(20〜30%)を上回る。
ブロルシズマブ / ファリシマブ
投与レジメンは以下の3方式がある1)。
2型MNVまたはPCVに対し、MNV全体にレーザー光凝固を行う方法がある。黄色以上の波長、スポットサイズ200〜300μm、出力150〜250mW、凝固時間0.2〜0.5秒で、MNV周囲に100μmのsafety marginを含めて中等度以上の光凝固を行う。ただしレーザー光凝固はRPEを不可逆的に障害するため、中心窩に近いMNVの治療には適さない1)。
PCVに対する治療選択肢は以下のとおりである1)。
PDT処方:ビスダイン6mg/m²を10分間で静脈内投与。投与開始から15分後にレーザー照射(689nm、600mW/cm²、83秒間)。照射サイズは病変最大径+1,000μm。治療後2日間は直射日光からの遮光を要する。
長期的にPDTは黄斑萎縮を増悪させる可能性があり、脈絡膜が薄い症例やすでに黄斑萎縮がある症例では避けることが望ましい。3型MNVに対するPDTは推奨されない1)。
抗VEGF薬治療中に効果が乏しい場合(治療抵抗例)や効果が減弱した場合(耐性獲得)は、他の薬剤への切り替えが有効なことがある1)。また治療負担(通院頻度・注射頻度)を考慮して薬剤を変更することもある。末期AMDで疾患活動性の乏しい線維性瘢痕や萎縮性変化がみられる場合は、積極的な治療適応とならず経過観察を考慮する1)。
視力良好眼では抗VEGF薬単独療法、治療回数の軽減が求められる場合はPDT-VEGF阻害薬併用療法が選択肢となる。実臨床では抗VEGF薬単独治療が主流である。
大量の黄斑下出血では急激な視力低下をきたす。発症早期であれば血腫移動術により視力改善が得られることがある。
現時点で中心窩を含む地図状萎縮が確立された症例に対する治療法はまだない。補体系が強く関与していると考えられ、補体経路を標的にした分子標的薬が複数開発・治験の段階にある。
中心窩外の地図状萎縮に対しては、AREDS2サプリメントの摂取と生活習慣の改善が勧められる。経過中にMNVを発症した場合(10〜15%)は、抗VEGF薬による治療が標準となる。
視力低下が進行した患者には、遮光眼鏡・拡大鏡などの視覚補助具の提案や日常生活支援などのロービジョンケアが重要である1)。
導入期は通常1ヵ月間隔で3回の注射を行う。その後の維持期はtreat-and-extend法(間隔を徐々に延長)が推奨される。ALTAIR study(日本人対象)では96週にわたる効果が確認されている1)。ファリシマブでは最大16週間隔の維持が可能な症例もある10)。
現時点で確立された治療法はない。米国では2023年に補体阻害薬2剤がFDA承認されたが9)、日本では未承認である。AREDS2サプリメントは後期AMDへの進行リスクを低減するが、地図状萎縮の進行そのものを抑制する効果は示されていない。視力低下が進行した場合はロービジョンケアが重要となる。
AMDの病態はRPE細胞の障害に始まる。RPEの基底膜とBruch膜の内膠原層の間にドルーゼンが蓄積する。ドルーゼンの構成成分には膜様残渣物・非エステル化コレステロール・補体などが含まれ、慢性炎症の起源となる。酸化ストレス・脂質代謝異常・自然免疫系の活性化が複合的に関与し、RPE-Bruch膜-脈絡膜毛細血管複合体の恒常性が破綻する。その後、経路は2つに分岐する。
老化したRPE細胞は細胞老化関連分泌表現型(SASP)を示し、SA-β-gal・p53・p21・p16の発現が増加する7)。この老化RPEの表現型は萎縮型AMDの患者の所見と一致し、セノリティクスによる選択的除去が治療標的として注目されている。
CFH、C3、ARMS2の遺伝子多型がAMD発症感受性に関与する2)。補体経路(古典的経路・副経路・レクチン経路)の調節異常が地図状萎縮の拡大を駆動する3)。補体C3を阻害することでC5以降の終末経路全体を抑制し、C5を阻害することで膜侵襲複合体(MAC)の形成を防ぐことが期待されている。
Anegondiら(2025)はランパリズマブ試験データの解析で、地図状萎縮の成長率が速いほどBCVA低下が速く、2年間で約75%が5文字以上、約50%が10文字以上、約25%が15文字以上の視力低下を来すことを示した3)。
パキコロイドは脈絡膜大血管の拡張(pachyvessel)や脈絡膜血管透過性亢進を特徴とする病態である1)。中心性漿液性脈絡網膜症(CSC)がパキコロイド疾患の代表であり、CSCやパキコロイド色素上皮症(PPE)を背景としてMNVを生じたものがパキコロイド新生血管症(PNV)と呼ばれる。CFH遺伝子はパキコロイドやCSCの発症にも関与することが報告されている1)。
Ribattiら(2024)は、脈絡膜肥満細胞が分泌するトリプターゼによるBruch膜の分解がRPEの死を誘発し、VEGF-A・FGF-2・IL-8・NGFの放出が血管新生を促進すると報告した5)。
非滲出型のMNVは無症状でも生物学的に活性で、面積増大が持続する4)。
Wangら(2023)は45眼のSS-OCTA研究で、成長型MNV(面積50%以上増大)は滲出転化までの期間が非成長型より有意に短く(13.60ヵ月 vs 31.11ヵ月、HR 12.51)、喫煙歴と高トリグリセリド血症が成長と有意に相関した(P=0.021)と報告した4)。
地図状萎縮は中心窩周囲から始まることが多く、中心窩は萎縮に対して相対的な耐性を示す3)。これが馬蹄形・リング状のGA形状を生む。中心窩進入までの中央値は2.5年であり、その間は高コントラスト視力が保たれるが、暗所感度・読書速度などの日常視機能は早期から障害される8)。
2023年に地図状萎縮に対し2剤の補体阻害薬が米国でFDA承認された。
ただし、両薬剤とも視力改善を事前設定評価項目とした試験では有意差が得られておらず、「構造-機能乖離」が課題として残る3)8)。欧州医薬品庁(EMA)は機能的ベネフィットの実証を要求し、ペグセタコプランの承認を認めなかった8)。
補体D因子阻害薬ランパリズマブの第III相CHROMA(906名)・SPECTRI(975名)試験はGA面積の抑制を示せず中止に至った。視覚サイクル阻害薬エミクススタトのSEATTLE試験(580名)も有効性を示せなかった。
Dinahら(2025)のレビューでは、BCVAは地図状萎縮の機能的影響を十分に捉えられず、マイクロペリメトリ・低輝度視力(LLVA)・読書速度が代替指標として推奨された8)。複合的・多モーダルな機能評価の確立が今後の臨床試験の鍵となる。
Jiら(2025)は、光生物調節治療(赤色〜近赤外光 650〜1,300nm)を受けたドライ型AMDの症例を報告した6)。8ヵ月間で右眼のドルーゼン面積は58%減少し、左眼では100%消失した。視力は両眼とも20/30から20/20に改善した。Lightsite III第3相試験でもドルーゼン体積減少・視力改善が確認されている。
Chung & Kim(2022)は、MDM2阻害薬Nutlin-3aが老化RPE細胞を選択的に除去する新規アプローチとして有望であると報告した7)。ミトコンドリア特異的セノリティクスの開発が今後の課題となる。
RPE細胞の移植を用いた幹細胞治療が研究段階にあり、複数の試験が進行中である。補体因子を標的とする遺伝子治療も検討されている。
萎縮型AMDは緩慢に進行するが、地図状萎縮が中心窩に達すると視力は0.1以下に低下する。法的失明(ETDRS 20文字未満)までの中央値は6.2年との報告がある3)。ランパリズマブ試験データの解析では、2年間で平均BCVA が66→57文字(約20/50→20/80相当)に低下した3)。
地図状萎縮の成長速度が速いほどBCVA低下も速く、特に中心窩下の単一病巣を持つ眼では最速成長群で2年間に約4行(17.75文字)の低下がみられる3)。一方、最遅成長群では2年間でわずか1.69文字の低下にとどまる。中心窩が保たれている間も暗所感度・コントラスト感度・読書速度は早期から障害されるため、視力値のみでは機能的影響を過小評価する8)。
また、一定の確率でMNVを生じて新生血管型AMDに移行し、より重篤な視力低下に陥ることがある。
抗VEGF薬によるMNVの制御によって視力予後は大幅に改善した。CATT study 5年追跡では50%の眼で視力20/40以上を達成している11)。しかし放置すると約9割が視力0.1以下に低下し、黄斑部に線維性または萎縮性瘢痕を残す。MNVから大量出血をきたした症例では、広範囲の視野欠損を伴い、完全失明を含むより重篤な視機能障害に至ることがある。
MNVの完治は不可能であり、適切な治療と長期管理を行わないと不可逆的な視力低下を容易に引き起こす1)。MNVの活動性が一時的に落ち着いても長期経過で再発し、滲出を繰り返すことで萎縮性変化や線維性瘢痕を合併する。僚眼にもMNVが高率に生じることを念頭に、治療継続と定期モニタリングが不可欠である1)。高度な視機能低下を来した患者には積極的なロービジョンケアが推奨される。
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