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網膜・硝子体

蛍光眼底造影(FA)

蛍光眼底造影(fluorescein angiography; FA)は、蛍光色素であるフルオレセインナトリウムを静脈内に投与し、専用フィルター付き眼底カメラで眼底を撮影することで、網膜および脈絡膜の血液循環を動態的に画像化する検査法である。網膜循環動態の評価と血液網膜関門の状態把握に優れ、眼底疾患の診断・治療方針決定に広く用いられる。網膜血管病変だけでなく、ぶどう膜炎・脈絡膜腫瘍・視神経乳頭疾患の鑑別にも有用である。

1961年、Harold R. NovotnyとDavid L. AlvisによりFAの原法が初めて報告された。その後、1967年からJohn Donald McIntyre Gassが各種眼底疾患における体系的なFA所見を発表し、臨床応用が急速に広まった。

フルオレセインナトリウムは青色励起光(波長465〜490 nm)を照射すると黄緑色の蛍光(520〜530 nm)を発する。走査型レーザー検眼鏡(SLO)では488 nmの青色レーザーが使用される。フルオレセインナトリウムは分子量376 Daの水溶性色素であり、静脈投与後の蛋白結合率は約70〜80%である。残りの約20〜30%が遊離型(フリー体)として蛍光を発する。正常な血液網膜関門が保たれた状態では、フリー体であっても血管外への漏出は生じない。関門が破綻すると色素が血管外に漏出し、特徴的な過蛍光所見として観察される。

血液網膜関門(BRB)は2層から構成される。内側関門は網膜血管内皮細胞の密着結合(tight junction)であり、外側関門は網膜色素上皮(RPE)細胞の密着結合である。BRBが破綻すると蛍光漏出が生じ、各種網膜疾患の診断指標となる。

励起光

波長465〜490 nmの青色光を照射する。

SLOでは488 nmのレーザーを使用する。

励起フィルターが不要な波長をカットする。

蛍光放出

発光波長520〜530 nmの黄緑色蛍光を発する。

**遊離型(約20〜30%)**が蛍光の主体である。

**蛋白結合型(約70〜80%)**は蛍光を発しにくい。

バリアフィルター

520 nm以上の蛍光のみを透過させる。

励起光を遮断し、蛍光像を鮮明にする。

血管外漏出が関門破綻の証拠となる。

Q 蛍光眼底造影はいつ頃から行われているのですか?
A

1961年にNovotnyとAlvisが最初に報告した。1967年以降にGassが各種眼底疾患への応用を体系化し、眼底診断の標準的検査法として世界中に普及した。

フルオレセイン蛍光眼底造影で見られる網膜無血管野と蛍光漏出
Sun L, et al. ROP-like retinopathy in full/near-term newborns: A etiology, risk factors, clinical and genetic characteristics, prognosis and management. Front Med (Lausanne). 2022. Figure 3. PMCID: PMC9399493. License: CC BY 4.0 (https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/).
FZD4変異を有する症例の、耳側無血管野、刷子状の周辺部網膜血管、網膜周辺部の無血管領域、および赤矢印で示される蛍光漏出を示す両眼(A,B)の蛍光眼底造影(FFA)所見である。本文「2. 適応疾患」の項で扱う蛍光漏出に対応する。

FAは眼底血管系の可視化に広く応用される。以下に主な適応疾患を示す。

  • 糖尿病網膜症:黄斑浮腫(CSME)の治療ガイドおよびレーザー照射部位の決定、原因不明の視力低下評価、新生血管の同定3)
  • 網膜静脈閉塞症:閉塞部位の確認、毛細血管非灌流域の範囲評価、黄斑浮腫の性状確認
  • 網膜動脈閉塞症:閉塞血管と虚血範囲の特定
  • 網膜細動脈瘤:動脈瘤の確認と漏出評価
  • 傍中心窩網膜毛細血管拡張症(MacTel):毛細血管拡張の範囲と漏出パターン
  • Coats病、FEVR、未熟児網膜症(ROP):周辺部血管異常・新生血管の評価
  • 網膜血管炎・網膜血管腫:血管壁の漏出と炎症性変化
  • 視神経乳頭血管炎:乳頭血管からの漏出確認
  • 前部虚血性視神経症:乳頭血流障害の評価

急性網膜壊死(ARN)後に生じる黄斑浮腫では、FAが花弁状(petaloid)の漏出パターンを示し、嚢胞様黄斑浮腫(CME)の鑑別と治療効果の判定に寄与することが報告されている1)。

妊娠中は網膜血管閉塞が生じることがあるが、FAの胎盤通過性の観点からOCTAが代替検査として推奨される2)。

検査前に以下の内容を説明し、書面による同意を取得する4)。

  • 点滴を取り、静脈内に造影剤を投与すること
  • 投与直後は重要な撮影ポイントであり連続撮影を行うこと
  • 検査後〜翌日にかけて黄染された尿が出ること
  • 皮膚の黄染が2〜3時間続くこと
  • 透析患者の場合は投与量を半減し、検査後に透析が必要なこと
  • 造影剤に対し約10%の確率で悪心・嘔吐・掻痒感・蕁麻疹などの症状が現れること
  • 重篤な場合にはアナフィラキシーショックが起こる可能性があること

日本眼科学会の眼底血管造影実施基準(改訂版)に従い、以下を実施する4)。

  • インフォームドコンセント:造影剤の静脈内投与・副作用リスク・検査後の変化を文書で説明し書面同意を取得する
  • 病歴問診:アレルギー歴、喘息・アトピーの有無を確認する。糖尿病・高血圧・心疾患・肝腎障害・脳血管異常も把握する。高齢者・小児・妊婦は特に注意を要する
  • 血圧測定:検査前および検査後に血圧を測定する
  • 静脈路確保:留置針(肘前静脈)または翼状針(手背静脈)で静脈路を確保する
  • 散瞳:散瞳点眼薬で十分に散瞳させる
  • 救急体制の整備:以下の器材・薬剤を常備し、実施者が対応手順を把握しておく4)
    • 酸素、アンビューバッグ(気道確保器材)
    • アドレナリン(エピネフリン)0.3 mg筋注製剤
    • エフェドリン、ドパミン
    • アトロピン硫酸塩
    • β2作動薬(気管支拡張薬)、アミノフィリン250 mg
    • ステロイド薬(ヒドロコルチゾン等)
    • 抗ヒスタミン薬
    • 乳酸リンゲル液(補液)

β遮断薬やα遮断薬を服用中の患者は副作用リスクが増大するため、事前に把握する4)。皮膚反応テストは有用性が限定的であり、陰性であっても重篤な副作用を完全には否定できない4)。

  1. 三方活栓で側管を連結し、10%フルオレセイン5 mLを注射筒に接続する
  2. カラー眼底写真と同様にピントを合わせる
  3. タイマー開始と同時にフルオレセインを急速静注する
  4. フィルターを挿入し、観察光を最大にする
  5. 蛍光出現の少し前から1秒1枚のペースで連続撮影する(肘静脈では注入後6〜8秒、手背静脈では10〜12秒で網膜に到達)
  6. 動脈期から動静脈期にかけて高頻度で撮影する
  7. 注入後50〜60秒で対側眼の動静脈相を撮影する
  8. 後極部から周辺部へ順次撮影する
  9. 注入後5分および10分に後期像を撮影する

10%フルオレセイン溶液3〜5 mLを急速静注する4)。小児では0.1 mg/kgを目安とし、腎機能障害患者は通常量の半量以下とする4)。

Q 蛍光眼底造影の検査時間はどのくらいですか?
A

注入直後から約1分間は連続撮影を行い、その後5分・10分後に後期像を撮影する。散瞳の時間を含めると、全体で15〜20分程度を要する。

Fluorescein Angiography image
Ioannis Papasavvas; William R Tucker; Alessandro Mantovani; Lorenzo Fabozzi; Carl P Herbort, Jr. Choroidal vasculitis as a biomarker of inflammation of the choroid. Indocyanine Green Angiography (ICGA) spearheading for diagnosis and follow-up, an imaging tutorial. J Ophthalmic Inflamm Infect. 2024 Dec 4; 14:63. Figure 5. PMCID: PMC11618284. License: CC BY 4.0 (https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/).
多発消失性白点症候群(MEWDS)では、脈絡毛細血管板の低蛍光は、主に互いに融合しない孤立した点状所見に限られる。左上のカラー眼底写真では、ごく淡い色調変化を認める。上中央の初期フルオレセイン蛍光眼底造影(FA)では脈絡毛細血管板の無灌流または灌流遅延を認め(黄矢印)、右上の初期インドシアニングリーン蛍光眼底造影(ICGA)にも同所見がみられる。左下の後期ICGAでは低蛍光点が残存し、後期造影相まで残ることから脈絡毛細血管板の無灌流に対応する。右下には、網膜色素上皮(RPE)機能障害に伴う視物質の二次的消失および/またはリポフスチン蓄積による、MEWDSに典型的な眼底過自発蛍光を認める。

FAは時系列で複数の相として観察される。

  • 脈絡膜相(初期脈絡膜蛍光 choroidal flush):短後毛様動脈から充盈が始まり、網膜循環より1〜2秒早く現れる
  • 網膜動脈相:脈絡膜充盈の1〜3秒後(注入後11〜18秒)に出現。腕網膜循環時間の正常範囲は10〜15秒であり、延長は眼動脈狭窄(眼虚血症候群)や高安動脈炎などを示唆する
  • 毛細血管相:毛細血管網が充盈し、中心窩無血管帯(FAZ)の直径は約500 μmとなる。FAZを囲む毛細血管網が可視化される
  • 網膜静脈相:早期は静脈壁沿いの層流として観察され、後期には均一な蛍光となる。静脈充盈が完了する
  • ピーク期:注入後約30秒で蛍光強度が最大となる
  • 後期相:造影開始後10分程度で撮影し、3〜5分で再循環期となり約10分後には蛍光が消退する
  • 正常黄斑:キサントフィル色素とRPEの色素上皮細胞によって背景蛍光が遮蔽され、FAZは暗く見える

FA所見は低蛍光・過蛍光・血管形態異常の3カテゴリに大別される。

蛍光遮断(低蛍光)

定義:出血・色素沈着・滲出物などが背景蛍光を遮る。

特徴:境界が明瞭で、経時的に形状変化しない。

代表疾患:網膜下出血、硬性白斑、脈絡膜母斑。

充盈欠損(低蛍光)

定義:血管閉塞により蛍光色素の流入がない、または遅延する。

特徴:毛細血管非灌流域は全経過を通じて暗い。

代表疾患:網膜動脈閉塞症、糖尿病網膜症の無血管野。

蛍光漏出(過蛍光)

定義:血液網膜関門の破綻で色素が血管外へ滲出する。

特徴:経時的に拡大し、境界が不鮮明となる。花弁状(petaloid)パターンは嚢胞様黄斑浮腫に特徴的1)。

代表疾患:黄斑浮腫、CNV、網膜血管炎。

透過蛍光(過蛍光)

定義:RPE欠損部を通じて脈絡膜蛍光が透けて見える(window defect)。

特徴:経時的に形状変化しないが、後期に淡く染着することがある。

代表疾患:地図状萎縮、ドルーゼン融合、黄斑円孔、色素線条症。

低蛍光は原因により以下に細分される。

低蛍光の種類原因・機序代表疾患
蛍光遮断出血・白斑・母斑が背景蛍光を遮蔽網膜下出血、硬性白斑、脈絡膜母斑
充盈欠損:網脈絡膜血管狭窄大血管の閉塞・狭窄内頚動脈閉塞、高安動脈炎
充盈欠損:網膜血管閉塞動脈・静脈閉塞網膜動脈閉塞症(CRAO/BRAO)、網膜静脈閉塞症
充盈欠損:毛細血管閉塞末梢循環障害糖尿病網膜症(NPA)、Eales病
充盈欠損:脈絡膜循環障害脈絡膜血流不全原田病、APMPPE、高血圧性脈絡膜症
網脈絡膜萎縮組織萎縮による蛍光消失黄斑ジストロフィ、網膜色素変性、萎縮型AMD、病的近視
乳頭の低蛍光視神経組織の虚血・浸潤虚血性視神経症、メラノサイトーマ

過蛍光は原因により以下に細分される。

病的近視に伴う古典型脈絡膜新生血管のカラー眼底写真とフルオレセイン蛍光眼底造影の早期相・後期相。左眼中心窩に早期相で境界明瞭な円形の過蛍光と周囲の低蛍光ハローがあり、後期相で辺縁がにじんで軽度に拡大している。
Tomi A, Ştefan I. Angiofluorographic Characteristics of Choroidal Neovascularization associated with Pathologic Myopia. Rom J Ophthalmol. 2020;64(4):356-363. Figure 1. PMCID: PMC7739027. License: CC BY 2.0 (https://creativecommons.org/licenses/by/2.0/).
蛍光漏出(leakage)の実例である。62歳男性の左眼で、左はカラー眼底写真、中はフルオレセイン蛍光眼底造影(FA)の早期相、右は同じ検査の後期相。左では視神経乳頭が斜めに写り、その周囲が白く薄くなった近視眼特有の眼底に、中心窩(画面中央)の小さな暗い病巣が見える。中では同じ場所が輪郭のはっきりした白い点(過蛍光)として写り、その周りを暗い輪(色素や出血が蛍光を遮る低蛍光ハロー)が囲んでいる。右では背景の蛍光が薄れた後もこの点が残り、縁がぼやけてわずかに広がっている。この「早期は境界明瞭、後期に境界がにじんで拡大する」変化が蛍光漏出で、網膜色素上皮より内側に伸びた古典型(type 2)脈絡膜新生血管の典型的な見え方である。各視野右上の小さな切り欠きはカメラのマスクによるもので所見ではない。
網膜色素上皮の萎縮部に一致した透見過蛍光(window defect)を示すカラー眼底写真・フルオレセイン蛍光眼底造影・インドシアニングリーン蛍光眼底造影の対応像
Tan CS, Ngo WK, Lim LW, Tan NW, Lim TH, EVEREST Study Group. EVEREST study report 3: diagnostic challenges of polypoidal choroidal vasculopathy. Lessons learnt from screening failures in the EVEREST study. Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol. 2016;254(10):1923-1930. Fig. 3. PMCID: PMC5045476. License: CC BY 4.0 (https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/).
透過蛍光(window defect)の実例である。同じ右眼の黄斑部を4つの方法で写しており、A はカラー眼底写真で、黄斑中心からその下方にかけて網膜と脈絡膜が薄くなった萎縮部がある。B はフルオレセイン蛍光眼底造影(FA)で、黄斑中心の境界のはっきりした明るい斑と、その下方の顆粒状に明るい部分が、網膜色素上皮(RPE)の萎縮した部分に一致する透見過蛍光である。RPE が欠けているため、その奥にある脈絡膜の蛍光が窓から透けるように見えており、血管から蛍光がにじみ出る「漏出」とは異なり、境界が明瞭で血管の外へ広がらない。C と D はより深い脈絡膜の血管を写すインドシアニングリーン蛍光眼底造影(ICGA)の早期と後期で、C の緑矢印が示す萎縮部の明るい部分は下を走る脈絡膜血管とつながって見え、D の後期でも広がらずに同じ場所に残っている(漏出ではなく、萎縮部で脈絡膜血管が透けて見えているだけである)。左下の「200 µm」はスケールバーである。

血管の形態学的異常として以下が観察される。

脈絡膜血管はRPEに遮蔽されるため評価が困難である。蛍光漏出のある1型MNV(脈絡膜新生血管)の評価にはICGアンギオグラフィー(ICGA)が補完的に用いられる。

毛細血管瘤・無血管野(NPA)・新生血管が主要所見である。FAは黄斑浮腫の漏出パターン(局所性/びまん性/嚢胞様)を判別し、レーザー照射部位を決定する根拠となる3)。後期相では新生血管からの著明な漏出が観察される。超広角FAでは周辺部NPAの評価精度が高まる。

CNVの活動性評価に不可欠である。古典型CNV(type 2)は早期から境界明瞭な過蛍光を示し、後期に漏出する。occult型CNV(type 1)はRPE下に位置し、後期にstippled hyperfluorescenceまたはfibrovascular PEDとして描出される。地図状萎縮はwindow defectとして経過する。

充盈遅延・静脈拡張蛇行・毛細血管非灌流域・側副血行路の評価に用いる。10 disc area以上のNPAは虚血型と判断され、新生血管緑内障リスクの指標となる。黄斑浮腫の漏出パターン把握にも重要である。

中心性漿液性脈絡網膜症(CSC)

Section titled “中心性漿液性脈絡網膜症(CSC)”

特徴的なinkblot(墨流し型)またはsmokestack(噴火型)の漏出点をRPEレベルに認める。多発漏出点は慢性CSCを示唆する。光線力学療法(PDT)の照射範囲決定にFAとICGAを併用する。

原田病では多発脈絡膜漏出による点状過蛍光と漿液性網膜剥離部位の色素貯留を呈する。Behçet病では網膜血管炎の血管壁染色とNPAを認める。Eales病では周辺部NPAと新生血管が特徴である。

日本眼科学会の眼底血管造影実施基準(改訂版)のデータを示す4)。

副作用は重症度に応じて以下の頻度で発現する。

重症度発現率
全副作用1.1〜11.2%
軽症1.4〜8.1%
中等症0.2〜1.5%
重症0.005〜0.48%
死亡0.0005〜0.002%

軽度(自然軽快することが多い)

  • 悪心:最も頻度が高く、3〜15%に生じる3)。急速静注により誘発されやすい
  • 嘔吐:約7%
  • 皮膚黄染・掻痒感:皮膚の黄染は2〜3時間、尿の黄色化は1〜2日間持続する
  • 局所疼痛・熱感:注射部位の一過性症状

中等度

  • 蕁麻疹:約0.5%3)
  • 血栓性静脈炎:血管外漏出に伴う局所壊死の可能性がある
  • 発熱・失神:稀に生じる

重篤(極めて稀)

  • アナフィラキシー:IgE介在型または免疫複合体型の機序による4)
  • 気管支痙攣・心停止:極めて稀
  • 死亡:1:200,000〜1:221,7813)

アナフィラキシーの診断基準と対応

Section titled “アナフィラキシーの診断基準と対応”

アナフィラキシーの診断は以下の3基準のいずれかに該当する場合とする4)。

  1. 皮膚・粘膜症状(蕁麻疹・潮紅・浮腫)を伴い、呼吸器症状または循環器症状が急速に発症した場合
  2. アレルゲン曝露後に急速に発症した循環器症状(低血圧・意識障害)を示す場合
  3. 既知のアレルゲン曝露後に、皮膚・粘膜症状+呼吸器・消化器・循環器症状の2つ以上が急速に発症した場合

アナフィラキシー対応フローチャート:

  1. 造影剤投与を直ちに中断し、患者を仰臥位にする
  2. アドレナリン(エピネフリン)0.01 mg/kg(成人0.3〜0.5 mg)を大腿外側筋肉内注射する
  3. 静脈路を確保し、乳酸リンゲル液などで輸液を開始する
  4. H1遮断薬(抗ヒスタミン薬)とH2遮断薬を投与する
  5. ステロイド薬(ヒドロコルチゾン100〜500 mg静注など)を投与する
  6. 難治例にはグルカゴン(β遮断薬服用者)を使用する
  7. 救急搬送の準備を行う

治療成功後も二相性アナフィラキシー(症状消失後6〜8時間以内に再燃)の可能性があるため、少なくとも8時間以上の経過観察が必要であり、入院観察(24時間)を推奨する4)。

迷走神経反射との鑑別:迷走神経反射は徐脈・低血圧・蒼白・冷汗を呈するが、皮膚所見(蕁麻疹・紅潮)を伴わない点でアナフィラキシーと鑑別できる。迷走神経反射には臥位保持・下肢挙上・輸液が有効である4)。

  • 妊婦:フルオレセインは胎盤を通過するため原則禁忌。代替としてOCTAを検討する2)
  • 授乳婦:母乳中に72時間検出されるため施行を避ける3)
  • 重篤な腎機能障害:腎排泄のため投与量を減量する(通常量の半量以下)4)
Q 蛍光眼底造影後に尿が黄色くなりますが大丈夫ですか?
A

フルオレセインが腎臓から排泄されるための正常な反応であり、心配は不要である。皮膚の黄染は2〜3時間、尿の黄色化は翌日までに自然に消失する。

Q 妊娠中や授乳中でもこの検査を受けられますか?
A

フルオレセインは胎盤を通過し、母乳中にも72時間検出されるため、妊婦・授乳婦への施行は原則として避ける2)3)。眼底の血管情報が必要な場合は非侵襲的なOCTアンギオグラフィー(OCTA)が代替として推奨される2)。

フルオレセインナトリウムの薬理特性

Section titled “フルオレセインナトリウムの薬理特性”

フルオレセインナトリウムは分子量376 Daの黄赤色水溶性色素である。励起波長465〜490 nm(SLOでは488 nm)で照射すると、520〜530 nmの黄緑色蛍光を発する。静脈内投与後、約70〜80%が血漿蛋白(主にアルブミン)と結合し、約20〜30%が遊離型として蛍光を発する。腎臓から排泄され(1〜2日で消失)、肝臓での代謝は少ない。

FAとICGアンギオグラフィー(ICGA)の比較

Section titled “FAとICGアンギオグラフィー(ICGA)の比較”

インドシアニングリーン(ICG)アンギオグラフィーはFAと相補的に用いられる。両者の特性を以下に示す。

項目FAICGアンギオグラフィー
分子量376 Da775 Da
蛋白結合率約70〜80%約98%
主な観察対象網膜血管脈絡膜血管
励起波長465〜490 nm約805 nm
蛍光波長520〜530 nm約835 nm(近赤外)
排泄経路腎臓肝臓

ICGは蛋白結合率が98%と高いため脈絡膜血管外へほとんど漏出せず、脈絡膜血流の評価に適する。ポリープ状脈絡膜血管症(PCV)・脈絡膜血管腫・1型MNVの評価ではICGAがFAを補完する。

FAとOCTアンギオグラフィー(OCTA)の比較

Section titled “FAとOCTアンギオグラフィー(OCTA)の比較”

OCTAはOCTの位相情報を解析し赤血球の動きを可視化する非侵襲的検査である。造影剤を使用せず、毛細血管レベルで網膜血管叢を3層に分離して描出できる3)。妊娠中の網膜血管評価においてFAの代替として有用性が示されている2)。

項目FAOCTA
造影剤必要不要
侵襲性静脈穿刺・副作用あり非侵襲
動態情報漏出・充盈遅延を評価可能評価不可(構造のみ)
深度分解能二次元像のみ層別解析が可能
撮影範囲広角(〜200°)限定的(3〜12 mm)
周辺部評価容易困難

OCTAは血管外への蛍光漏出を検出できないため、黄斑浮腫の活動性評価、CNVの活動性判定(漏出の有無)、網膜血管炎における血管壁炎症の評価などにはFAが依然として不可欠である。両者は相補的に用いることで、より精緻な眼底評価が可能となる。

使用する撮影装置によって観察可能な画角と特性が異なる。

装置画角主な特徴
眼底カメラ55°標準的・広く普及
SLO/HRA30〜102°高コントラスト・共焦点
Optos200°超広角・周辺部一括撮影

超広角撮影装置(Optos)は一度の撮影で周辺部まで捉えられ、糖尿病網膜症・網膜変性疾患の周辺病変評価に有用である。


蛍光漏出パターンの治療予測への応用

Section titled “蛍光漏出パターンの治療予測への応用”

急性網膜壊死後嚢胞様黄斑浮腫においてFAの花弁状漏出パターンが治療反応の予測バイオマーカーとなりうることが示唆されている1)。今後、FAの動態情報を定量化し、抗VEGF治療や光線力学療法の効果予測に活用する研究が進んでいる。

RetCam3の導入により小児に対するFA施行が可能となっている。未熟児網膜症や小児網膜疾患の血管評価に応用が期待される。

Optosを用いた200°超広角FAにより、周辺部病変の撮影時間が大幅に短縮された。糖尿病網膜症の周辺部毛細血管非灌流域の評価や、先天性網膜血管疾患(FEVR等)の広範な評価に有用性が示されている。

Q OCTアンギオグラフィーがあれば蛍光眼底造影は不要ですか?
A

OCTAは非侵襲的で毛細血管の構造を精細に描出できるが、血管外への蛍光漏出は検出できない。黄斑浮腫の活動性評価やCNVの漏出確認にはFAが必要であり、両者は情報を補完し合う関係にある3)。


  1. Rana V, Markan A, Arora A, Tripathi M, Mahendradas P, Sharma V, et al. Cystoid Macular Edema Secondary to Acute Retinal Necrosis: The Role of Fundus Fluorescein Angiography in Guiding Treatment. Cureus. 2025;17(11):e96108. doi:10.7759/cureus.96108. PMID:41221412; PMCID:PMC12598370.
  2. Jürgens L, Yaici R, Schnitzler CM, Fleitmann AK, Roth M, Schröder K, Guthoff R. Retinal vascular occlusion in pregnancy: three case reports and a review of the literature. Journal of medical case reports. 2022;16(1):167. doi:10.1186/s13256-022-03369-9. PMID:35449024; PMCID:PMC9022314.
  3. Flaxel CJ, Adelman RA, Bailey ST, Fawzi A, Lim JI, Vemulakonda GA, Ying GS. Diabetic Retinopathy Preferred Practice Pattern®. Ophthalmology. 2020;127(1):P66-P145. doi:10.1016/j.ophtha.2019.09.025. PMID:31757498.
  4. 日本眼科学会. 眼底血管造影実施基準(改訂版). 日眼会誌. 2011;115(12):1101-1108.

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