この検査の要点
蛍光眼底造影 (FA)はフルオレセイン ナトリウムを静脈内投与し、網膜 ・脈絡膜 循環を動態的に画像化する検査法である。
糖尿病網膜症 、網膜静脈閉塞症 、加齢黄斑変性 など広範な眼底疾患の診断・治療判断に不可欠である。
血液網膜関門 の破綻による蛍光漏出、血管閉塞による充盈欠損など、OCTアンギオグラフィー (OCTA )では検出できない動態情報を提供する。
副作用発現率は全体の1.1〜11.2%であり、多くは悪心・皮膚黄染などの軽症で自然軽快する4) 。
重篤なアナフィラキシーや死亡は極めて稀(死亡:約1:200,000)だが、検査前に救急対応体制を整える必要がある3) 。
妊婦・授乳婦への施行は原則禁忌であり、代替としてOCTA が推奨される2) 。
OCTA は非侵襲的に毛細血管レベルの血管構造を可視化できるが、FAの漏出検出能は代替困難であり、両者は相補的に用いる。
蛍光眼底造影 (fluorescein angiography; FA)は、蛍光色素であるフルオレセイン ナトリウムを静脈内に投与し、専用フィルター付き眼底カメラ で眼底を撮影することで、網膜 および脈絡膜 の血液循環を動態的に画像化する検査法である。網膜 循環動態の評価と血液網膜関門 の状態把握に優れ、眼底疾患の診断・治療方針決定に広く用いられる。網膜 血管病変だけでなく、ぶどう膜炎 ・脈絡膜 腫瘍・視神経乳頭 疾患の鑑別にも有用である。
1961年、Harold R. NovotnyとDavid L. AlvisによりFAの原法が初めて報告された。その後、1967年からJohn Donald McIntyre Gassが各種眼底疾患における体系的なFA所見を発表し、臨床応用が急速に広まった。
フルオレセイン ナトリウムは青色励起光(波長465〜490 nm)を照射すると黄緑色の蛍光(520〜530 nm)を発する。走査型レーザー検眼鏡(SLO)では488 nmの青色レーザーが使用される。フルオレセイン ナトリウムは分子量376 Daの水溶性色素であり、静脈投与後の蛋白結合率は約70〜80%である。残りの約20〜30%が遊離型(フリー体)として蛍光を発する。正常な血液網膜関門 が保たれた状態では、フリー体であっても血管外への漏出は生じない。関門が破綻すると色素が血管外に漏出し、特徴的な過蛍光所見として観察される。
血液網膜関門 (BRB)は2層から構成される。内側関門は網膜 血管内皮細胞の密着結合(tight junction)であり、外側関門は網膜色素上皮 (RPE )細胞の密着結合である。BRBが破綻すると蛍光漏出が生じ、各種網膜 疾患の診断指標となる。
励起光
波長465〜490 nm の青色光を照射する。
SLOでは488 nm のレーザーを使用する。
励起フィルター が不要な波長をカットする。
蛍光放出
発光波長520〜530 nm の黄緑色蛍光を発する。
**遊離型(約20〜30%)**が蛍光の主体である。
**蛋白結合型(約70〜80%)**は蛍光を発しにくい。
バリアフィルター
520 nm以上 の蛍光のみを透過させる。
励起光を遮断 し、蛍光像を鮮明にする。
血管外漏出 が関門破綻の証拠となる。
Q
蛍光眼底造影はいつ頃から行われているのですか?
A
1961年にNovotnyとAlvisが最初に報告した。1967年以降にGassが各種眼底疾患への応用を体系化し、眼底診断の標準的検査法として世界中に普及した。
Sun L, et al.
ROP -like retinopathy in full/near-term newborns: A etiology, risk factors, clinical and genetic characteristics, prognosis and management. Front Med (Lausanne). 2022. Figure 3. PM
CI D: PMC9399493. License: CC BY.
FZD4変異を有する症例の、耳側無血管野、刷子状の周辺部網膜 血管、網膜 周辺部の無血管領域、および赤矢印で示される蛍光漏出を示す両眼(A,B)の蛍光眼底造影 (FFA)所見である。本文「2. 適応疾患」の項で扱う蛍光漏出に対応する。
FAは眼底血管系の可視化に広く応用される。以下に主な適応疾患を示す。
糖尿病網膜症 :黄斑浮腫 (CSME)の治療ガイドおよびレーザー照射部位の決定、原因不明の視力 低下評価、新生血管 の同定3)
網膜静脈閉塞症 :閉塞部位の確認、毛細血管非灌流域の範囲評価、黄斑浮腫 の性状確認
網膜動脈閉塞症 :閉塞血管と虚血範囲の特定
網膜細動脈瘤 :動脈瘤の確認と漏出評価
傍中心窩 網膜 毛細血管拡張症(MacTel ) :毛細血管拡張の範囲と漏出パターン
Coats病、FEVR 、未熟児網膜症 (ROP ) :周辺部血管異常・新生血管 の評価
網膜血管炎 ・網膜 血管腫 :血管壁の漏出と炎症性変化
視神経乳頭 血管炎 :乳頭血管からの漏出確認
前部虚血性視神経症 :乳頭血流障害の評価
急性網膜壊死 (ARN )後に生じる黄斑浮腫 では、FAが花弁状(petaloid)の漏出パターンを示し、嚢胞様黄斑浮腫 (CME )の鑑別と治療効果の判定に寄与することが報告されている1) 。
妊娠中は網膜 血管閉塞が生じることがあるが、FAの胎盤通過性の観点からOCTA が代替検査として推奨される2) 。
検査前に以下の内容を説明し、書面による同意を取得する4) 。
点滴を取り、静脈内に造影剤を投与すること
投与直後は重要な撮影ポイントであり連続撮影を行うこと
検査後〜翌日にかけて黄染された尿が出ること
皮膚の黄染が2〜3時間続くこと
透析患者の場合は投与量を半減し、検査後に透析が必要なこと
造影剤に対し約10%の確率で悪心・嘔吐・掻痒感・蕁麻疹などの症状が現れること
重篤な場合にはアナフィラキシーショックが起こる可能性があること
日本眼科学会の眼底血管造影実施基準(改訂版)に従い、以下を実施する4) 。
インフォームドコンセント :造影剤の静脈内投与・副作用リスク・検査後の変化を文書で説明し書面同意を取得する
病歴問診 :アレルギー歴、喘息・アトピーの有無を確認する。糖尿病・高血圧・心疾患・肝腎障害・脳血管異常も把握する。高齢者・小児・妊婦は特に注意を要する
血圧測定 :検査前および検査後に血圧を測定する
静脈路確保 :留置針(肘前静脈)または翼状針(手背静脈)で静脈路を確保する
散瞳 :散瞳 点眼薬で十分に散瞳 させる
救急体制の整備 :以下の器材・薬剤を常備し、実施者が対応手順を把握しておく4)
酸素、アンビューバッグ(気道確保器材)
アドレナリン(エピネフリン)0.3 mg筋注製剤
エフェドリン、ドパミン
アトロピン硫酸塩
β2作動薬(気管支拡張薬)、アミノフィリン250 mg
ステロイド 薬(ヒドロコルチゾン等)
抗ヒスタミン薬
乳酸リンゲル液(補液)
β遮断薬 やα遮断薬を服用中の患者は副作用リスクが増大するため、事前に把握する4) 。皮膚反応テストは有用性が限定的であり、陰性であっても重篤な副作用を完全には否定できない4) 。
三方活栓で側管を連結し、10%フルオレセイン 5 mLを注射筒に接続する
カラー眼底写真 と同様にピントを合わせる
タイマー開始と同時にフルオレセイン を急速静注する
フィルターを挿入し、観察光を最大にする
蛍光出現の少し前から1秒1枚のペースで連続撮影する(肘静脈では注入後6〜8秒、手背静脈では10〜12秒で網膜 に到達)
動脈期から動静脈期にかけて高頻度で撮影する
注入後50〜60秒で対側眼の動静脈相を撮影する
後極部から周辺部へ順次撮影する
注入後5分および10分に後期像を撮影する
10%フルオレセイン 溶液3〜5 mLを急速静注する4) 。小児では0.1 mg/kgを目安とし、腎機能障害患者は通常量の半量以下とする4) 。
Q
蛍光眼底造影の検査時間はどのくらいですか?
A
注入直後から約1分間は連続撮影を行い、その後5分・10分後に後期像を撮影する。散瞳 の時間を含めると、全体で15〜20分程度を要する。
Ioannis Papasavvas; William R Tucker; Alessandro Mantovani; Lorenzo Fabozzi; Carl P Herbort, Jr. Choroidal vasculitis as a biomarker of inflammation of the choroid. Indocyanine Green Angiography (
ICGA ) spearheading for diagnosis and follow-up, an imaging tutorial. J Ophthalmic Inflamm Infect. 2024 Dec 4; 14:63. Figure 5. PM
CI D: PMC11618284. License: CC BY.
In
MEWDS choriocapillary hypofluorescence is limited to dots isolated mostly non-confluent. The fundus color picture (top left) shows very faint discolorations. The early FA frame (top middle) shows choriocapillaris non-perfusion or perfusion delay (yellow arrows) which is also shown on the early
ICGA frame (top right). On the late
ICGA frame (bottom left) there are persistent hypofluorescent dots that correspond with certainty to choriocapillaris non-perfusion as they remain until the late angiographic phase. Bottom right, fundus hyper-autofluorescence typical of
MEWDS , due to secondary loss of photopigment and/or accumulation of lipofuscin due to
RPE dysfunction
FAは時系列で複数の相として観察される。
脈絡膜 相(初期脈絡膜 蛍光 choroidal flush) :短後毛様動脈から充盈が始まり、網膜 循環より1〜2秒早く現れる
網膜 動脈相 :脈絡膜 充盈の1〜3秒後(注入後11〜18秒)に出現。腕網膜 循環時間の正常範囲は10〜15秒であり、延長は眼動脈狭窄(眼虚血症候群 )や高安動脈炎などを示唆する
毛細血管相 :毛細血管網が充盈し、中心窩 無血管帯(FAZ)の直径は約500 μmとなる。FAZを囲む毛細血管網が可視化される
網膜 静脈相 :早期は静脈壁沿いの層流として観察され、後期には均一な蛍光となる。静脈充盈が完了する
ピーク期 :注入後約30秒で蛍光強度が最大となる
後期相 :造影開始後10分程度で撮影し、3〜5分で再循環期となり約10分後には蛍光が消退する
正常黄斑 :キサントフィル色素とRPE の色素上皮細胞によって背景蛍光が遮蔽され、FAZは暗く見える
FA所見は低蛍光・過蛍光・血管形態異常の3カテゴリに大別される。
蛍光遮断(低蛍光)
定義 :出血・色素沈着・滲出物などが背景蛍光を遮る。
特徴 :境界が明瞭で、経時的に形状変化しない。
代表疾患 :網膜 下出血、硬性白斑、脈絡膜母斑 。
充盈欠損(低蛍光)
定義 :血管閉塞により蛍光色素の流入がない、または遅延する。
特徴 :毛細血管非灌流域は全経過を通じて暗い。
代表疾患 :網膜動脈閉塞症 、糖尿病網膜症 の無血管野。
蛍光漏出(過蛍光)
定義 :血液網膜関門 の破綻で色素が血管外へ滲出する。
特徴 :経時的に拡大し、境界が不鮮明となる。花弁状(petaloid)パターンは嚢胞様黄斑浮腫 に特徴的1) 。
代表疾患 :黄斑浮腫 、CNV 、網膜血管炎 。
透過蛍光(過蛍光)
定義 :RPE 欠損部を通じて脈絡膜 蛍光が透けて見える(window defect)。
特徴 :経時的に形状変化しないが、後期に淡く染着することがある。
代表疾患 :地図状萎縮 、ドルーゼン 融合、黄斑円孔 、色素線条症。
低蛍光は原因により以下に細分される。
低蛍光の種類 原因・機序 代表疾患 蛍光遮断 出血・白斑・母斑が背景蛍光を遮蔽 網膜 下出血、硬性白斑、脈絡膜母斑 充盈欠損:網脈絡膜 血管狭窄 大血管の閉塞・狭窄 内頚動脈閉塞、高安動脈炎 充盈欠損:網膜 血管閉塞 動脈・静脈閉塞 網膜動脈閉塞症 (CRAO /BRAO )、網膜静脈閉塞症 充盈欠損:毛細血管閉塞 末梢循環障害 糖尿病網膜症 (NPA)、Eales病充盈欠損:脈絡膜 循環障害 脈絡膜 血流不全原田病 、APMPPE 、高血圧性脈絡膜 症網脈絡膜 萎縮 組織萎縮による蛍光消失 黄斑 ジストロフィ、網膜色素変性 、萎縮型AMD 、病的近視 乳頭の低蛍光 視神経 組織の虚血・浸潤虚血性視神経症 、メラノサイトーマ
過蛍光は原因により以下に細分される。
自発蛍光(autofluorescence) :FA投与前から蛍光を発する所見。卵黄様病変・器質化した出血・ドルーゼン ・乳頭ドルーゼン ・星状細胞過誤腫で認められる
透過蛍光(window defect) :RPE 欠損部から脈絡膜 蛍光が透過する。AMD ・病的近視 ・黄斑円孔 ・色素線条症が代表疾患
色素貯留(pooling) :組織間隙に蛍光色素が貯留し、経時的に増強する
染着(staining) :蛍光が増大しつつ境界は明瞭に保たれる。AMD ・網膜細動脈瘤 ・ドルーゼン ・円板状瘢痕・ぶどう膜炎 で観察される
蛍光漏出(leakage) :境界が不鮮明に経時的に拡大する
血管の形態学的異常として以下が観察される。
脈絡膜 血管はRPE に遮蔽されるため評価が困難である。蛍光漏出のある1型MNV(脈絡膜新生血管 )の評価にはICGアンギオグラフィー(ICGA )が補完的に用いられる。
毛細血管瘤 ・無血管野(NPA)・新生血管 が主要所見である。FAは黄斑浮腫 の漏出パターン(局所性/びまん性/嚢胞様)を判別し、レーザー照射部位を決定する根拠となる3) 。後期相では新生血管 からの著明な漏出が観察される。超広角FAでは周辺部NPAの評価精度が高まる。
CNV の活動性評価に不可欠である。古典型CNV (type 2)は早期から境界明瞭な過蛍光を示し、後期に漏出する。occult型CNV (type 1)はRPE 下に位置し、後期にstippled hyperfluorescenceまたはfibrovascular PED として描出される。地図状萎縮 はwindow defectとして経過する。
充盈遅延・静脈拡張蛇行・毛細血管非灌流域・側副血行路の評価に用いる。10 disc area以上のNPAは虚血型と判断され、新生血管緑内障 リスクの指標となる。黄斑浮腫 の漏出パターン把握にも重要である。
特徴的なinkblot(墨流し型)またはsmokestack(噴火型)の漏出点をRPE レベルに認める。多発漏出点は慢性CSC を示唆する。光線力学療法(PDT )の照射範囲決定にFAとICGA を併用する。
原田病 では多発脈絡膜 漏出による点状過蛍光と漿液性網膜剥離 部位の色素貯留を呈する。Behçet病では網膜血管炎 の血管壁染色とNPAを認める。Eales病では周辺部NPAと新生血管 が特徴である。
日本眼科学会の眼底血管造影実施基準(改訂版)のデータを示す4) 。
副作用は重症度に応じて以下の頻度で発現する。
重症度 発現率 全副作用 1.1〜11.2% 軽症 1.4〜8.1% 中等症 0.2〜1.5% 重症 0.005〜0.48% 死亡 0.0005〜0.002%
軽度(自然軽快することが多い)
悪心 :最も頻度が高く、3〜15%に生じる3) 。急速静注により誘発されやすい
嘔吐 :約7%
皮膚黄染・掻痒感 :皮膚の黄染は2〜3時間、尿の黄色化は1〜2日間持続する
局所疼痛・熱感 :注射部位の一過性症状
中等度
蕁麻疹 :約0.5%3)
血栓性静脈炎 :血管外漏出に伴う局所壊死の可能性がある
発熱・失神 :稀に生じる
重篤(極めて稀)
アナフィラキシー :IgE介在型または免疫複合体型の機序による4)
気管支痙攣・心停止 :極めて稀
死亡 :1:200,000〜1:221,7813)
アナフィラキシーの診断は以下の3基準のいずれかに該当する場合とする4) 。
皮膚・粘膜症状(蕁麻疹・潮紅・浮腫)を伴い、呼吸器症状または循環器症状が急速に発症した場合
アレルゲン曝露後に急速に発症した循環器症状(低血圧・意識障害)を示す場合
既知のアレルゲン曝露後に、皮膚・粘膜症状+呼吸器・消化器・循環器症状の2つ以上が急速に発症した場合
アナフィラキシー対応フローチャート :
造影剤投与を直ちに中断し、患者を仰臥位にする
アドレナリン(エピネフリン)0.01 mg/kg(成人0.3〜0.5 mg)を大腿外側筋肉内注射する
静脈路を確保し、乳酸リンゲル液などで輸液を開始する
H1遮断薬(抗ヒスタミン薬)とH2遮断薬を投与する
ステロイド 薬(ヒドロコルチゾン100〜500 mg静注など)を投与する
難治例にはグルカゴン(β遮断薬 服用者)を使用する
救急搬送の準備を行う
治療成功後も二相性アナフィラキシー(症状消失後6〜8時間以内に再燃)の可能性があるため、少なくとも8時間以上の経過観察が必要であり、入院観察(24時間)を推奨する4) 。
迷走神経反射との鑑別 :迷走神経反射は徐脈・低血圧・蒼白・冷汗を呈するが、皮膚所見(蕁麻疹・紅潮)を伴わない点でアナフィラキシーと鑑別できる。迷走神経反射には臥位保持・下肢挙上・輸液が有効である4) 。
妊婦 :フルオレセイン は胎盤を通過するため原則禁忌。代替としてOCTA を検討する2)
授乳婦 :母乳中に72時間検出されるため施行を避ける3)
重篤な腎機能障害 :腎排泄のため投与量を減量する(通常量の半量以下)4)
検査における重要な注意点
β遮断薬 ・α遮断薬服用者は副作用リスクが増大する。検査前に必ず確認すること4) 。
血管外への薬液漏出が生じた場合、局所組織壊死に至る可能性がある。留置針の固定と注入時の確認が重要である。
皮膚反応テストは有用性が限定的であり、陰性でも重篤な副作用を完全には否定できない4) 。
救急対応薬品(アドレナリン筋注製剤・ステロイド ・抗ヒスタミン薬)と器材を常備し、実施者が対応手順を把握していること。
検査後にも血圧測定を行い、副作用の遷延に注意する4) 。
Q
蛍光眼底造影後に尿が黄色くなりますが大丈夫ですか?
A
フルオレセイン が腎臓から排泄されるための正常な反応であり、心配は不要である。皮膚の黄染は2〜3時間、尿の黄色化は翌日までに自然に消失する。
Q
妊娠中や授乳中でもこの検査を受けられますか?
A
フルオレセイン は胎盤を通過し、母乳中にも72時間検出されるため、妊婦・授乳婦への施行は原則として避ける2) 3) 。眼底の血管情報が必要な場合は非侵襲的なOCTアンギオグラフィー (OCTA )が代替として推奨される2) 。
フルオレセイン ナトリウムは分子量376 Daの黄赤色水溶性色素である。励起波長465〜490 nm(SLOでは488 nm)で照射すると、520〜530 nmの黄緑色蛍光を発する。静脈内投与後、約70〜80%が血漿蛋白(主にアルブミン)と結合し、約20〜30%が遊離型として蛍光を発する。腎臓から排泄され(1〜2日で消失)、肝臓での代謝は少ない。
インドシアニングリーン(ICG)アンギオグラフィーはFAと相補的に用いられる。両者の特性を以下に示す。
項目 FA ICGアンギオグラフィー 分子量 376 Da 775 Da 蛋白結合率 約70〜80% 約98% 主な観察対象 網膜 血管脈絡膜 血管励起波長 465〜490 nm 約805 nm 蛍光波長 520〜530 nm 約835 nm(近赤外) 排泄経路 腎臓 肝臓
ICGは蛋白結合率が98%と高いため脈絡膜 血管外へほとんど漏出せず、脈絡膜 血流の評価に適する。ポリープ状脈絡膜血管症 (PCV )・脈絡膜 血管腫・1型MNVの評価ではICGA がFAを補完する。
OCTA はOCT の位相情報を解析し赤血球の動きを可視化する非侵襲的検査である。造影剤を使用せず、毛細血管レベルで網膜 血管叢を3層に分離して描出できる3) 。妊娠中の網膜 血管評価においてFAの代替として有用性が示されている2) 。
項目 FA OCTA 造影剤 必要 不要 侵襲性 静脈穿刺・副作用あり 非侵襲 動態情報 漏出・充盈遅延を評価可能 評価不可(構造のみ) 深度分解能 二次元像のみ 層別解析が可能 撮影範囲 広角(〜200°) 限定的(3〜12 mm) 周辺部評価 容易 困難
OCTA は血管外への蛍光漏出を検出できないため、黄斑浮腫 の活動性評価、CNV の活動性判定(漏出の有無)、網膜血管炎 における血管壁炎症の評価などにはFAが依然として不可欠である。両者は相補的に用いることで、より精緻な眼底評価が可能となる。
使用する撮影装置によって観察可能な画角と特性が異なる。
装置 画角 主な特徴 眼底カメラ 55° 標準的・広く普及 SLO/HRA 30〜102° 高コントラスト・共焦点 Optos 200° 超広角・周辺部一括撮影
超広角撮影装置(Optos)は一度の撮影で周辺部まで捉えられ、糖尿病網膜症 ・網膜 変性疾患の周辺病変評価に有用である。
急性網膜壊死 後嚢胞様黄斑浮腫 においてFAの花弁状漏出パターンが治療反応の予測バイオマーカー となりうることが示唆されている1) 。今後、FAの動態情報を定量化し、抗VEGF治療や光線力学療法の効果予測に活用する研究が進んでいる。
RetCam3の導入により小児に対するFA施行が可能となっている。未熟児網膜症 や小児網膜 疾患の血管評価に応用が期待される。
Optosを用いた200°超広角FAにより、周辺部病変の撮影時間が大幅に短縮された。糖尿病網膜症 の周辺部毛細血管非灌流域の評価や、先天性網膜 血管疾患(FEVR 等)の広範な評価に有用性が示されている。
Q
OCTアンギオグラフィーがあれば蛍光眼底造影は不要ですか?
A
OCTA は非侵襲的で毛細血管の構造を精細に描出できるが、血管外への蛍光漏出は検出できない。黄斑浮腫 の活動性評価やCNV の漏出確認にはFAが必要であり、両者は情報を補完し合う関係にある3) 。
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