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網膜・硝子体

中心性漿液性脈絡網膜症

1分でわかる中心性漿液性脈絡網膜症

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どんな病気?

中心性漿液性脈絡網膜症は、目の奥にある黄斑部で、網膜が水で浮き上がる漿液性網膜剥離が生じる病気です。30〜40歳代の男性に多く、ステロイドが最大のリスク因子として知られています。

どんな症状が出ますか?
物がゆがんで見えたり、実際より小さく見えたり、視野の中心が暗く感じられたりします。視力の低下は比較的軽いことが多いとされています。
自然に治りますか?
典型例では3〜4か月以内に自然に治まることが多く、視力の予後も一般に良好です。ただし1年以内の再発率は最大50%と高く、網膜の下に液体がたまった状態が6か月以上続く場合は、慢性型として治療が必要になります。
ステロイドを使っていますが大丈夫ですか?
ステロイドは点眼・吸入・注射・内服のどの方法でも発症リスクを高めるため、使用中の方は自己判断で中止せず、担当医に相談してください。

本編

もっと詳しく知りたい方へ

ここからは、このテーマについて、さらに詳しく解説します。

1. 中心性漿液性脈絡網膜症とは

Section titled “1. 中心性漿液性脈絡網膜症とは”

中心性漿液性脈絡網膜症(Central Serous Chorioretinopathy; CSC)は、黄斑部に漿液性網膜剥離(SRF)が生じる疾患である。フルオレセイン蛍光眼底造影(FA)で網膜色素上皮(RPE)レベルの蛍光漏出が観察される。加齢黄斑変性・糖尿病網膜症・網膜静脈閉塞症に次ぎ、4番目に多い網膜疾患とされる。1866年にvon Graefeが「中心性再発性網膜炎」として記載し、1967年にGassらにより現在の病名が命名された。以前はわが国において黄斑部に限局した網膜剥離を生じる典型例(いわゆる中心性網膜炎)のみを指すことが多かったが、現在は3病型に分類される。多くの症例では自然経過で治癒するが、SRFが遷延した症例では視力予後が悪化することがある。

疫学的には男性10万人あたり9.9人、女性1.7人の発生率であり、男女比は約8:1である4)。250眼を対象とした研究では平均年齢46.6歳、男性88.4%であった3)。

本症には以下の3病型がある。

典型型

患者層:30〜40歳代男性が中心。通常片眼性。

病態:黄斑部に限局した漿液性網膜剥離。

経過:3〜4か月以内に多くが自然吸収。視力予後は一般に良好。

慢性型

患者層:高齢者に多い。両眼性のことも多い。最近増加傾向。

病態:広範なRPE障害。再発を繰り返すことが多い。

経過:SRFが6か月以上持続。積極的治療を要する5)。

胞状網膜剥離

患者層:ステロイド大量使用例に多い。わが国で多発性後極部網膜色素上皮症と呼ばれていたものに相当する。

病態:胞状の網膜剥離を伴う重症型。大型のRPE剥離(PED)・多発性の白色斑紋を伴う。

経過:SRFの範囲が眼底下方まで及ぶことが多く、視力予後が悪い場合がある。

再発率は1年以内に最大50%と高い。本症はpachychoroid疾患スペクトル(脈絡膜肥厚を特徴とする疾患群)の一部と位置づけられている3)9)。

Q 自然に治りますか?
A

典型例では3〜4か月以内に自然寛解することが多く、視力予後も一般に良好である。しかし再発率は1年以内で最大50%に達する。SRFが6か月以上持続する場合は慢性型とみなし、PDTなどの治療が必要となる。pachychoroid群では自然消退率が非pachychoroid群(48%)より低く(28.8%)、再発率も高いため(31.2% vs 10.4%)注意が必要である3)。

中心性漿液性脈絡網膜症のOCT。黄斑部に漿液性網膜剥離と軽度のPEDを認める。
Koizumi H, et al. Central serous chorioretinopathy and the sclera: what we have learned so far. Jpn J Ophthalmol. 2024. Figure 4. PMCID: PMC11420308. License: CC BY 4.0 (https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/).
黄斑部OCTで、中心窩下に網膜下液を伴う浅い漿液性網膜剥離が見える。RPEの小隆起と脈絡膜肥厚を示唆する所見もあり、中心性漿液性脈絡網膜症の臨床像が示されている。
  • 視力低下:比較的軽度のことが多い。軽い凸レンズで矯正可能な遠視化(hyperopic shift)が最も一般的な訴えである。
  • 変視症:物がゆがんで見える。中心暗点とともに患者にとって不快な症状であり、車の運転や就労に支障をきたすことがある。
  • 小視症:物が実際より小さく見える。
  • 中心暗点:視野の中心部が暗くなる。
  • コントラスト感度低下:色覚異常(後天性青黄色覚異常)を伴うこともある。

網膜下液が吸収されると中心暗点・変視症は比較的早期に改善する。一方、小視症やコントラスト感度の低下は残ることがある。慢性型では再発を繰り返し、視力不良例が多い。典型例では片眼性が多く、慢性型と胞状網膜剥離では両眼性が多い。

細隙灯顕微鏡および各種画像検査で以下の所見を認める。

  • 漿液性網膜剥離(SRF):黄斑部の出血を伴わない円形・楕円形の隆起。
  • 網膜色素上皮剥離(PED):OCTで最大63%に認められる。
  • プレシピテート:剥離網膜後面の白色点状沈着物。色素上皮剥離と漿液性網膜剥離が好発する部位に認める。
  • 網膜下フィブリン沈着(白色斑紋):蛍光漏出部に一致して認めることがある。
  • 脈絡膜肥厚:EDI-OCT(Enhanced Depth Imaging OCT)で評価する。正常250〜300μmに対し、本症では350〜450μm以上となる。pachychoroid群の中心窩下脈絡膜厚(SFCT)は406.6±80.8μmと報告されている3)。症例によっては500μmに達することもある。
  • Haller層の血管拡張・Sattler層の菲薄化:EDI-OCTで確認できる脈絡膜構造の特徴的変化である3)。

慢性型では色素上皮障害が広範で、色素上皮の萎縮索を伴い下方に伸びる網膜剥離がみられることもある。胞状網膜剥離では、網膜剥離が高度で眼底下方にまで及んでいることが多く、大型の色素上皮剥離・多発性の白色斑紋を伴う。

本症の根本的な原因は未解明であるが、脈絡膜血管の透過性亢進が本態とされる。ストレスとステロイドが本症の発症と増悪に関係することが知られている。以下のリスク因子が報告されている。

リスク因子関連の強さ特記事項
ステロイドOR 37.11)全投与経路
タイプA性格中程度ストレス関連
妊娠0.008%/年7)出産後自然寛解多い
OSA患者の61%9)交感神経亢進
PDE5阻害薬症例報告8)中止で消退
  • ステロイド:最大のリスク因子。全身・局所・吸入・硬膜外・点眼のいずれの投与経路でも発症リスクがある。全身性エリテマトーデス(SLE)患者へのステロイド投与後の発症例が報告されており、OR 37.1(95% CI 6.2–221.8)と極めて高い1)。ステロイドは本症の発症と増悪に関係するため、使用中の患者では中止・減量の検討が重要である。他科連携のうえ個々の症例に応じて対処する。
  • 精神科薬剤:クエチアピン(非定型抗精神病薬)服用後の発症例が報告されている。薬剤中止2週間で最高矯正視力改善、2か月で完全消退が得られた2)。
  • PDE5阻害薬:タダラフィル5mgの服用後に発症し、中止3か月後に消退した症例が報告されている8)。
  • 妊娠:妊娠中の発症率は0.008%/年と報告されている7)。
  • OSA(睡眠時無呼吸症候群):患者の61%にOSAを認めるとされる9)。
  • COVID-19ワクチン:接種後の再発例が報告されており、HPA軸の活性化が関与すると考えられている6)。
  • H. pylori感染:患者の53〜69%にピロリ菌感染が認められ、OR 4.6と報告されている。

発症はmulti-hit theory(多因子仮説)で説明される9)。①解剖学的素因(短眼軸長・強膜肥厚・渦静脈排出の非対称性など)、②誘発イベント(ステロイド・ストレス・OSA等)、③代償不全という3段階で発症するとされる。

Q ステロイドと中心性漿液性脈絡網膜症はどのような関係がありますか?
A

ステロイドは本症の最大のリスク因子であり、点眼・吸入・注射・内服を問わず全ての投与経路でリスクが高まる。オッズ比は37.1と極めて高く報告されている1)。本症と診断された場合、ステロイドを使用中であれば担当医と相談のうえ、可能な限り減量・中止を検討する。全身疾患のためにステロイドが投与されている場合は、個々の症例ごとに他科と連携して対処することが必要である。

本症の診断にはFAとOCTの組み合わせが基本となる。主な検査の特徴を以下に示す。

検査特徴的所見主な役割
FA点状蛍光漏出漏出点同定・治療計画
IA(ICG)脈絡膜過蛍光脈絡膜異常評価・鑑別
OCTSRF・色素上皮剥離描出経過観察・定量

各検査の詳細は以下の通りである。

  • フルオレセイン蛍光造影(FA):本症の診断と治療方針決定に必須の検査である。RPEの点状蛍光漏出が基本所見であり、造影初期に点状の過蛍光として現れ、時間とともに拡大して網膜下に貯留する。漏出の形態は噴出型と円形増大型の2つがある。漏出パターンはインクのしみ状(31%)と煙突状(12%)が代表的。漏出点は典型例で1個のことが多く、胞状網膜剥離では複数個みられることが多い。慢性型では顆粒状過蛍光と後期のびまん性弱蛍光漏出を認め、個々の漏出点を同定しにくいことが多い。
  • インドシアニングリーン蛍光造影(IA/ICG):造影中期に脈絡膜の過蛍光(異常脈絡膜組織染)を認める。この所見はどの病型でもみられるが、典型例と比較して慢性型や胞状網膜剥離では広範で程度も強く、両眼にみられる。pachychoroid変化の評価および鑑別診断(CNV・PCV)に有用である。
  • OCT:SRFと色素上皮剥離を非侵襲的に描出・定量できる。薄い網膜剥離の検出に特に威力を発揮する。視細胞外節の線状伸長(つらら状変化)も観察される。EDI-OCT(スペクトラルドメインOCTの脈絡膜観察モード)で脈絡膜厚を正確に評価できる。中心窩下脈絡膜厚は正常250〜300μmに対し、本症では350〜450μm(症例によっては500μm以上)となり、形態学的にも脈絡膜異常が証明される。
  • OCTA(OCT血管造影):脈絡膜毛細血管のフロー障害(shadow effect)を描出できる6)。
  • 眼底自発蛍光(FAF):急性期では過蛍光、慢性期では広範な低蛍光を示す。RPE障害の範囲評価に有用である。慢性CSCでは過蛍光に縁どられた帯状の低蛍光(atrophic tract)を認めることがあり、罹患期間の推測や下方への網膜下液移動の確認に役立つ。
中心性漿液性脈絡網膜症5例のOCT・蛍光眼底造影・インドシアニングリーン造影の対応像。OCTで色素上皮剥離や漿液性網膜剥離、FAで点状の蛍光漏出、ICGAで脈絡膜の斑状過蛍光がみられる。
Cho SC, Ryoo NK, Ahn J, Woo SJ, Park KH. Association of Irregular Pigment Epithelial Detachment in Central Serous Chorioretinopathy with Genetic Variants Implicated in Age-related Macular Degeneration. Sci Rep. 2020;10(1):1203. Figure 3. PMCID: PMC6985219. License: CC BY 4.0 (https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/).
本節の表にある3つの検査を、中心性漿液性脈絡網膜症の患者5人(行 A〜E)で並べたものである。左の列が OCT(網膜の断面を撮る検査)、中央が FA(フルオレセイン蛍光造影)、右が ICGA(インドシアニングリーン蛍光造影)で、各行の3枚は同じ眼の画像である。FA の列を見ると、どの症例でも黄斑の近くに白い点(点状の蛍光漏出)があり、これが本文の「RPE の点状蛍光漏出」で漏出点の同定に使う所見である。ICGA の列では中心付近に白くにじんだ斑があり、これが脈絡膜の過蛍光(異常脈絡膜組織染)にあたる。OCT の列では、網膜の一番外側にある色素上皮(RPE)の白い線がドーム状に持ち上がった色素上皮剥離(行 A)や、RPE のわずかな凹凸(行 B〜D)、網膜全体が持ち上がった漿液性網膜剥離とその底の小さな色素上皮剥離(行 E)が見える。OCT パネル左下の小さな L 字型の目盛りはスケールバーである。
  • 滲出型加齢黄斑変性(特にポリープ状脈絡膜血管症; PCV):ICG造影でポリープ状病変を確認する。50歳以上の症例では特に重要な鑑別疾患である。
  • 特発性脈絡膜新生血管:若年者に生じる場合は鑑別が必要。IAが鑑別に有用。
  • フォークト・小柳・原田病(VKH):両眼性・汎ぶどう膜炎症状、漿液性網膜剥離の多発。
  • ピット黄斑症候群:視神経乳頭のピットに伴うSRF。
  • ループス脈絡網膜症:女性・活動性SLE・両眼性のSRFは本症との鑑別を要する1)。
  • 網膜血管病:網膜静脈閉塞症や糖尿病黄斑症など、黄斑部に網膜剥離を生じる疾患との鑑別。
  • 脈絡膜腫瘍:SRFを伴う場合に鑑別を要する。
  • 高血圧・妊娠高血圧症候群:二次性に黄斑部SRFを生じることがある。
  • 裂孔原性網膜剥離:胞状網膜剥離例では特に鑑別が必要となる。

本症に対して確立された薬物治療はない。FAの蛍光漏出点に対するレーザー光凝固が現時点で唯一一般的に受け入れられた治療であり、治療方針は病型・病期・漏出点の位置によって決定する。

典型的な急性型では自然寛解傾向があり、初発例の急性期には4〜6か月間は網膜下液の自然吸収を待つ。典型例では3〜4か月で完全吸収されることが多く、視力予後も良好である。非pachychoroid群の自然消退率は48%であるのに対し、pachychoroid群では28.8%と低い3)。

自覚症状が強く患者が早期改善を希望する場合は、急性典型例でも光凝固の適応となる。ステロイドを使用中の場合は可能な限り減量・中止を行う。全身疾患のためにステロイドが投与されている場合は、個々の症例ごとに他科と連携して対処する。

発症から4〜6か月以上経過しても剥離が持続している例、再発例、重症例、他眼も本症のために視力障害が残っている例(慢性型・胞状網膜剥離が該当)では、治療により網膜下液の早期吸収を図る必要がある。黄斑障害により視力予後が不良となるためである。

漏出点が中心窩から500μm以上離れており、少なくとも中心窩無血管域の外に存在する場合に適応となる。FAで同定した漏出点を直接凝固する(200μm径、0.2秒、70〜120mW)。凝固程度は網膜深層に淡い灰白色の凝固斑が得られるような弱凝固とする。乳頭黄斑間の漏出でも弱凝固であれば問題はない。色素上皮剥離内に漏出がある場合は漏出点のみを凝固すればよい。

光凝固が奏効すると、網膜剥離は数週以内で消退する。ただし自覚症状の改善にはそれ以上時間がかかることが多い。合併症として、中心窩の誤照射、術後の脈絡膜新生血管(CNV)発生(長波長・短時間・小スポットの凝固で起こりやすい)などに注意する。

マイクロパルスレーザー治療(MPLT)

Section titled “マイクロパルスレーザー治療(MPLT)”

577nm黄色レーザーを用いる。240mW・200μmスポット径・200ms・5%デューティサイクルの設定で照射する4)。RPEのみに選択的にエネルギーを与えるため、瘢痕を形成しない。中心窩直下にも照射可能である。

Bodea Fら(2024)は、MPLTを施行した中心性漿液性脈絡網膜症患者において施術2週間でSRFの減少、6週間で消退が得られたことを報告した4)。

Ochinciucらは、妊娠16週と20週のCSC患者2例に閾値下マイクロパルスレーザーを施行し、解剖学的・機能的に良好な経過を報告した7)。これは2例の症例報告であり、妊娠中の治療の安全性を比較した研究ではない。

Sunnessらが報告した妊娠中CSCの4例では、全例で妊娠末期または分娩後数か月以内に漿液性剥離が消退した11)。

経過観察

適応:急性典型例の第一選択。

期間:4〜6か月。自然吸収を待つ。

注意:ステロイド使用中は他科と連携のうえ減量・中止を検討する。

PDT(光線力学的療法)

適応:慢性中心性漿液性脈絡網膜症の第一選択。

方法:half-dose(half-fluence)PDTが推奨される。

根拠:PLACE試験・SPECTRA試験(12週SRF消退率78% vs エプレレノン17%)で有効性が証明されている9)。

マイクロパルスレーザー

特徴:瘢痕なし、中心窩直下にも照射可能。

妊娠中の報告:妊娠16週・20週の2例で施行され、良好な解剖学的・機能的経過が報告された7)。

効果:2週間でSRF減少、6週間で消退4)。

漏出点が中心窩無血管域に存在する場合や慢性型など、レーザー光凝固ができない症例に用いる。ベルテポルフィン(visudyne)を用いたhalf-dose PDT(通常用量の半量)またはhalf-fluence PDT(半分のレーザー出力)が慢性中心性漿液性脈絡網膜症に対する第一選択として推奨されている9)。

主要臨床試験の成果は以下の通りである9)。

  • PLACE試験:half-dose PDTがマイクロパルスレーザー(HSML)に対してSRF消退率・BCVA改善・網膜感度・RPE剥離高さの全指標で有意に優越した。
  • SPECTRA試験:half-dose PDTがエプレレノンに対してSRF完全消退率が有意に高い(12週時点: 78% vs 17%)。12か月時点でも初期PDT群のBCVAがエプレレノン→delayed PDT群より良好。
  • REPLACE試験:HSML無効例のhalf-dose PDTクロスオーバーで改善。クロスオーバー1年後のSRF完全消退率はPDT群78%(32例中)、HSML群67%(10例中)。PDT群のみ網膜感度が改善した。
  • SPECS試験:エプレレノン無効例のhalf-dose PDTクロスオーバーで改善。クロスオーバー3か月後のSRF完全消退率はPDT群87.5%(37例中)、HSML群22.2%(9例中)。
  • PDT施行タイミングの重要性:症状持続期間が長いほど≥2段階の視力改善の可能性が低下する。1週延長ごとに4%低下するとされており、適切な時期での介入が重要である9)。half-dose PDT 57眼の解析では中心窩萎縮の発症例は認められなかった9)。

ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬。50mg/日で使用する。VICI試験(多施設ランダム化二重盲検プラセボ対照試験)において、12か月投与後にエプレレノンはプラセボに対してBCVA改善で有意差が認められなかった9)。PDTと比較すると効果が劣るとされ、10か月間投与後も無効であった症例報告がある5)。

フォトバイオモジュレーション(PBM)

Section titled “フォトバイオモジュレーション(PBM)”

590nm黄色LEDと625nm赤色LEDを各6分間照射する新しい治療法である5)。エプレレノンが無効の慢性中心性漿液性脈絡網膜症に伴う漿液性色素上皮剥離に対して、最高矯正視力が20/80から20/25へと改善し、中心網膜厚が752μmから296μmへと減少した症例が報告されている(1か月時点)5)。

Q 妊娠中に中心性漿液性脈絡網膜症を発症したらどうすればよいですか?
A

妊娠中の本症発症率は0.008%/年と報告されている7)。多くは出産後3か月以内に自然寛解する。Ochinciucらは妊娠16週・20週の2例にマイクロパルスレーザーを施行し、良好な経過を報告していますが、安全性を他の治療と比較した研究ではありません7)。Sunnessらの4例では、妊娠末期または分娩後数か月以内に自然消退しました11)。

Q どのような治療法が選ばれますか?
A

急性典型例では4〜6か月の経過観察が基本である。SRFが6か月以上持続する慢性型にはhalf-dose PDTが第一選択となる9)。SPECTRA試験では12週時点でのSRF完全消退率がPDT群78%・エプレレノン群17%と有意差が示された。漏出点が中心窩無血管域より外側にある場合はレーザー光凝固(弱凝固)、中心窩直下ではマイクロパルスレーザーが選択肢となる。妊娠中については、妊娠16週・20週の2例で同治療後の良好な経過が報告されている7)。エプレレノンはVICI試験でプラセボに対するBCVA改善で有意差が認められなかった9)。

6. 病態生理学・詳細な発症機序

Section titled “6. 病態生理学・詳細な発症機序”

本症の発症機序は「脈絡膜血管の透過性亢進」を中心とした複合的な機序により説明される。IA研究から、原発病巣は脈絡膜にあり、2次的にRPE障害が生じると考えられるようになった。なぜ脈絡膜に病変が起こるのかについては、いまだに不明な点が多い。ストレスとステロイドが本症の発症と増悪に関係することが知られている。

  1. 脈絡膜血管(主にHaller層の拡張血管)の透過性亢進
  2. 脈絡膜間質圧の上昇・脈絡膜肥厚
  3. RPE外側の血液網膜関門の破綻
  4. RPEのポンプ機能低下
  5. SRFの網膜下腔への貯留

FAでは色素上皮からの蛍光漏出と網膜下の色素貯留として示される。OCT研究では本症で正常眼と比較して脈絡膜が肥厚していることが示されており、形態学的にも脈絡膜異常が証明されている。

Cheung CMGら(2025)は、本症の発症をmulti-hit theoryで説明している9)。

  1. 解剖学的素因:短眼軸長・強膜の肥厚・渦静脈排出分布の非対称性など。本症は近視眼に稀であり、眼球形態が病態に関与する。
  2. 誘発イベント:ステロイド・ストレス・OSA・薬剤投与など。明確な誘因なしの症例も少なくない。
  3. 代償機構の活性化:Haller層の血管拡張・渦静脈吻合の形成(pachychoroid疾患スペクトルの約90%に認める10))。
  4. 代償不全:脈絡膜毛細血管の虚血→RPE損傷→外層網膜萎縮→悪循環9)。

CSC眼は正常眼と比較して前部・後部強膜が有意に厚い9)。渦静脈は強膜を斜めに貫通(強膜内走行約4mm)するため、強膜肥厚が静脈流出抵抗を増大させ脈絡膜うっ血を惹起する可能性がある9)。CSC眼の62%に脈絡膜上腔の液貯留(loculation of fluid)を認め、19%に毛様体脈絡膜滲出(ciliochoroidal effusion)を認める9)。ステロイド誘発CSCでは特発性CSCより強膜が薄く、強膜の病態における役割が異なる可能性がある9)。

  • PDE5阻害薬(タダラフィル等):cGMP・NOの増加を介して脈絡膜血管を拡張・肥厚させ、本症を誘発する8)。
  • クエチアピン:D1受容体を介した血管拡張機序が推定されている2)。

7. 最新の研究と今後の展望(研究段階の報告)

Section titled “7. 最新の研究と今後の展望(研究段階の報告)”

マルチモーダル画像に基づく新しい分類が提唱されている9)。

  • Simple:RPE異常の総面積≤2DA(disc areas)
  • Complex:RPE異常の総面積>2DAまたは多巣性
  • Atypical:胞状型、RPE裂孔、他の網膜疾患との合併

各カテゴリ内でprimary(初発)/ recurrent(再発)/ resolved(消退)のサブ分類がある。Complex CSCはSimple CSCと比較して脈絡膜新生血管(MNV)発症リスクが高い。10名の網膜専門家間の一致度はκ=0.57(中等度)であり、分類の改善が継続している9)。

CSC患者の40%以上にパキドルーゼンを認める9)。パキドルーゼンを伴うCSC眼はRPE異常がより広範であり、従来の軟性ドルーゼンとは形態・分布が異なる。Haller層肥厚と脈絡膜毛細血管菲薄化との関連が示されている9)。

フォトバイオモジュレーション(PBM)

Section titled “フォトバイオモジュレーション(PBM)”

PBMはベルテポルフィンを使用しない新しい治療法として注目されている。590nm黄色LEDと625nm赤色LEDを組み合わせて照射する5)。ベルテポルフィンの供給不足が懸念される状況での代替治療として期待されている。

pachychoroid所見の有無が本症の予後予測因子として重要性を増している。pachychoroid群では非pachychoroid群と比較して再発率が高く(31.2% vs 10.4%)、自然消退率が低い(28.8% vs 48%)とされる3)。pachychoroid所見の有無が治療方針の決定における重要な指標となる。

ワクチン関連中心性漿液性脈絡網膜症

Section titled “ワクチン関連中心性漿液性脈絡網膜症”

COVID-19ワクチン接種後の本症発症・再発症例の報告が蓄積されている6)。ワクチンによるHPA軸の活性化とステロイドホルモン様作用が関与する可能性が示唆されている。


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  4. Flaviu Bodea, Andrei-Flavius Radu, Ruxandra-Florina Bodog, Teodora Maria Bodog, Cristina Ariadna Nicula. Micropulse Laser Therapy in Central Serous Chorioretinopathy. Clinics and Practice. 2024;14(6):2484-2490. doi:10.3390/clinpract14060194.
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