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網膜・硝子体

網膜血管腫状増殖(RAP)

1. 網膜血管腫状増殖(RAP)とは

Section titled “1. 網膜血管腫状増殖(RAP)とは”

網膜血管腫状増殖(retinal angiomatous proliferation; RAP)は、加齢黄斑変性AMD)の特殊な亜型である。脈絡膜血管由来の新生血管を有する他のAMDとは異なり、網膜内の深層毛細血管叢(deep retinal capillary plexus)から新生血管が発生し、進行すると脈絡膜新生血管と吻合する。

2001年にYannuzziらが独立した疾患概念として提唱し、当初はStage 1〜3の3段階に分類した3)。その後2010年にYannuzzi自身がStage 4を追加して4段階の病期分類を報告している。一方、Freundらは「Type 3 neovascularization」という統一命名を提案し、病期分類は不要であるとの立場をとっている4)

日本の新生血管AMD診療ガイドライン(2024年)では、黄斑部新生血管を「黄斑新生血管(macular neovascularization; MNV)」と総称し、RAPを「3型MNV」として正式に分類している1)。従来の「脈絡膜新生血管CNV)」という用語は網膜血管由来の新生血管を含まないため、現在ではMNVへの移行が進んでいる。

従来、黄斑部新生血管は「脈絡膜新生血管(choroidal neovascularization; CNV)」と呼ばれてきたが、網膜血管由来の新生血管も含まれることから、2020年以降は国際的に「黄斑新生血管(macular neovascularization; MNV)」という用語が使用されている1)。RAPに対応する3型MNVは網膜血管から生じた新生血管であり、脈絡膜由来の1型MNV・2型MNVとは発生起源が明確に異なる。

欧米の新生血管AMD患者においてRAPは15〜20%を占める。日本ではアジア人での頻度が低く約5%と報告されている。高齢女性に好発する点が特徴的であり、発症年齢は70歳以上が多い。

両眼発症率がきわめて高く、片眼発症時から対側眼への発症リスクが顕著に上昇する。このため僚眼の経過観察が臨床上きわめて重要である。他のAMD亜型と比べ進行が速く、治療に反応しても再発率が高い。長期経過では萎縮病巣が生じやすく、AMDの中でも視力予後不良の病型として認識されている。

Q RAPは加齢黄斑変性と同じ病気か?
A

RAPは加齢黄斑変性AMD)の特殊な亜型に分類される。一般的な新生血管AMDとは新生血管の発生起源が異なり、脈絡膜ではなく網膜内深層毛細血管叢から発生する点が本質的な違いである。現在の国際分類では「3型MNV」と呼ばれる1)。治療法は共通するが、治療抵抗性や両眼発症率が高い点で予後が異なる。

網膜血管腫状増殖のマルチモーダル画像
Fayed AE, et al. Projection resolved optical coherence tomography angiography to distinguish flow signal in retinal angiomatous proliferation from flow artifact. PLoS One. 2019. Figure 1. PMCID: PMC6519823. License: CC BY.
Aは蛍光眼底造影での過蛍光、BはOCTでの網膜内高反射病変、C・DはOCTAでの深層毛細血管網の異常血管構造と血流信号を示している。本文「2. 主な症状と臨床所見」の項で扱う網膜内血管腫状病変に対応する。

初期から中期にかけて以下の自覚症状が出現する。

  • 変視症(ものがゆがんで見える)黄斑部網膜浮腫や滲出に伴い生じる。初期の主訴として多い。
  • 中心暗点:病変が黄斑中心部に及ぶと中央視野の欠損を自覚する。
  • 視力低下嚢胞様黄斑浮腫新生血管の活動性が高い時期に急速に進行する。

症状の進行は比較的速く、他のAMD亜型と比べ早期から高度の視力低下をきたしやすい。嚢胞様黄斑浮腫が顕著な場合には急激な視力低下を呈することもあり、早期の受診と診断が視機能保持において重要である。

臨床所見(医師が診察で確認する所見)

Section titled “臨床所見(医師が診察で確認する所見)”

後極部に多発する軟性ドルーゼンの集簇と網状偽ドルーゼン(reticular pseudodrusen; RPD)が基盤所見として特徴的である。RPDは網膜色素上皮RPE)上に位置する網状〜点状の沈着物で、RAPの前駆病変として重要視されている1)

活動期には以下の所見が認められる。

  • 網膜表層出血・網膜内出血:後極部に少量〜中等量の出血を伴う。特にStage 1では結節状の赤点として観察される新生血管の周囲に少量の表層出血がみられる。
  • 嚢胞様黄斑浮腫:RAPに特徴的な所見であり、他のAMD亜型に比べて高度かつ早期に出現する傾向がある。
  • 網膜下滲出液・漿液性網膜剝離:Stage 2以降で出現する。
  • 色素上皮剥離(PED:進行例(Stage 3以降)で合併する。線維血管性PEDドルーゼンPEDの形態をとる。

RAPの病期分類(Yannuzzi 4病期分類)に基づく臨床所見を以下に示す3)

Stage 1

網膜新生血管:深層毛細血管叢内に結節状の赤点として出現する。

網膜表層出血:病巣周囲に少量の表層出血を伴う。

囊胞様浮腫:病巣周囲に嚢胞様浮腫がみられる。

FA所見:小さな結節状過蛍光(ホットスポット)を示す。

IA所見:hot spotを認め、網膜-網膜血管吻合(RRA)が約30%にみられる。

OCT所見:drusenoid PED(軟性ドルーゼンに一致するPED)と網膜内浮腫を認める。

Stage 2

網膜新生血管網膜新生血管網膜下腔へ進展した段階。

漿液性網膜剝離黄斑部に漿液性網膜剝離が出現する。

出血網膜内・表層出血に加え、網膜下出血がみられることもある。

嚢胞様黄斑浮腫:顕在化し、視力低下が進行する。

Stage 3

色素上皮剥離(PED)合併:Stage 2の所見にPEDが加わった段階。

FA所見PED中央部に過蛍光を示し、OCTでのRAP病巣と一致する。

bump signPED部位でRPEの断裂様塊状反射(bump sign)がみられる。

Stage 4

網膜-脈絡膜血管吻合(RCA)網膜新生血管脈絡膜新生血管が吻合する最終段階。

IA所見:RCA・RRAの検出にIAが有用で、過蛍光はhot spotとして描出される。

瘢痕化:円板状瘢痕形成に至ると、中心視力の不可逆的低下をきたす。

3型MNVは検眼鏡や眼底写真での観察が困難であり、画像検査による確認が不可欠である1)。主な検査法と所見を以下にまとめる。

検査特徴的所見
FAホットスポット(結節状過蛍光)、後期に旺盛な蛍光漏出
IA(ICGAhot spot、RRA・RCAの描出
OCTbump sign、IRF、SRF、PED嚢胞様黄斑浮腫
OCTA網膜内・網膜新生血管の無侵襲描出

OCTはRAPの病期評価と治療効果判定の主軸である。bump signはRPE直上の小隆起性病変で、3型MNVに比較的特異的な所見とされる。OCTでは発症早期から嚢胞様黄斑浮腫がみられ、病期の進行とともにPEDを併発する1)

OCTAのBスキャン像では、網膜表層の血管と吻合した網膜新生血管網膜下もしくはRPEを貫通してRPE下へ伸展する像を捉えることができる1)。RAPは網膜内に新生血管が生じるため、AMDの中でも特にOCTAで異常血管が描出されやすい。高齢者で繰り返しの造影検査が困難な場合には、OCTAによる非侵襲的な病巣評価が有用である10)

疾患活動性の判断指標としてIRF(網膜内液)とSRF(網膜下液)を用いる。3型MNVの病巣は必ずしも中心窩に生じるわけではないため、黄斑全体もしくは病変全体をスキャンしてfluidを正確に評価することが推奨される1)

Q OCTで何が見えるか?
A

OCTでは「bump sign」と呼ばれるRPE直上の塊状反射が特徴的な所見である。また嚢胞様黄斑浮腫網膜内液(IRF)・網膜下液(SRF)・色素上皮剥離(PED)が観察される。OCTAのBスキャン像では網膜表層血管からbump signへの連続する血流シグナルが描出される1)。活動性の評価にはIRFとSRFの有無が指標として用いられる。

RAPの主なリスク要因を以下に示す。

  • 加齢:最大のリスク因子である。高齢であるほど発症リスクが高い。
  • 性別:女性に好発する。
  • 後極部の軟性ドルーゼン黄斑部に大型の軟性ドルーゼン(長径125μm以上)が多発する眼はAMD進行の重要な前駆所見である1)
  • 網状偽ドルーゼンRPD):RAPの発症と最も密接に関連する前駆病変として認識されている。RPDは通常のドルーゼンRPE下に存在)とは異なり、RPE上に位置する網状〜点状の沈着物で、3型MNVと萎縮型AMDへの進行リスク因子として広く知られている1)
  • 遺伝的素因:ARMS2遺伝子多型およびCFH(補体H因子)遺伝子多型がAMD全体の感受性に関与する11)。大規模ゲノムワイド関連解析では、これらの遺伝子座がAMD発症リスクの主要な決定因子であることが確認されている。
  • 喫煙AMD全体のリスク因子であり、修正可能な危険因子として最も重要である。日本人を対象としたFunagata研究、Hisayama研究、Nagahama研究のいずれにおいても喫煙とAMDの関連が報告されており、Hisayama研究では喫煙習慣により後期AMDの発症が4倍に増加するとされている12)

両眼発症率が高いことも重要な特徴であり、片眼の発症を認めた場合は僚眼の定期的な経過観察が必須である。僚眼にも軟性ドルーゼンRPDがみられる場合には、発症リスクがさらに高まるため、短い間隔での精密検査が求められる。

男女比については新生血管AMD全体では男性が多い(男性:女性=3:1)のに対し、RAPは女性に多く発症する特徴がある。発症年齢はAMD全体と同等かやや高齢であり、70歳以上が大半を占める。

Q 片眼だけに発症した場合、もう片方の眼も発症するか?
A

RAPは両眼発症率がきわめて高い疾患である。片眼のみの発症でも、対側眼が同様に発症するリスクが他のAMD亜型と比べて高い。片眼発症時から僚眼の定期的な精密検査が必須である。

3型MNVは検眼鏡や眼底写真での観察が困難であるため、確定診断には複数の画像検査を組み合わせた系統的な評価が不可欠である1)

診断の手順は以下の通りである。

  1. 臨床的疑い:両眼に軟性ドルーゼンが多発している高齢患者で、後極部に網膜内出血がみられた場合に3型MNVを疑う
  2. OCT検査:発症早期から嚢胞様黄斑浮腫が出現し、bump sign(RPEの断裂様塊状反射)がみられれば強く示唆される。PEDの合併は進行を示す
  3. OCTA検査:Bスキャン像で網膜表層の血管からbump signへ向かう連続した血流シグナルを確認する。非侵襲的であり造影検査が困難な高齢者に特に有用である
  4. FA/ICGA検査FAでは結節状の過蛍光(ホットスポット)と後期の旺盛な蛍光漏出を認める。ICGAではhot spotとしてRRA/RCAが描出され、病期の確定に寄与する

活動性の評価にはOCTが主軸となり、IRF・SRF・sub-RPE fluidの有無を非侵襲的に判定する1)。漿液性PEDと出血性PEDの鑑別はOCTの内容物輝度で行い、中輝度であればドルーゼン、低輝度であれば漿液性と判断する。

黄斑部毛細血管拡張症2型(MacTel type 2)との鑑別

Section titled “黄斑部毛細血管拡張症2型(MacTel type 2)との鑑別”

MacTel 2型はRAPと同様に黄斑部に病変を生じ、網膜新生血管を合併しうるため鑑別が重要である5)

鑑別点RAP(3型MNV)MacTel type 2
発症年齢高齢(70歳以上多い)中高年(50〜60歳代)
背景所見軟性ドルーゼンRPD多発中心窩耳側の網膜透明性低下
OCTbump sign、PED、嚢胞様浮腫ellipsoid zone欠損、retinal cavity(肥厚なし)
進行速度速い(滲出・出血主体)緩徐(網膜萎縮主体)

MacTel 2型ではright-angled venule(網膜深層方向に直角に曲がって引き込まれる小静脈)やクリスタリン様沈着物が特徴的所見である。Red free画像(特にconfocal blue light reflectance)では黄斑部にリング状もしくは横楕円形の高反射像を示し、病初期から認められるため診断に有用である5)。またOCTでは網膜の肥厚を伴わない網膜内空洞所見(retinal cavity)が特徴的で、進行すると外層分層円孔や黄斑円孔を形成することがある5)

一方、RAPではIA上のhot spotや軟性ドルーゼンの集簇を伴い、OCTではbump signと嚢胞様黄斑浮腫が主体である点でMacTelとは明確に区別できる。MacTel網膜萎縮が主体で緩徐に進行するのに対し、RAPは滲出・出血が前面に出て急速に進行する傾向がある。

ポリープ状脈絡膜血管症(PCV)との鑑別

Section titled “ポリープ状脈絡膜血管症(PCV)との鑑別”

PCVはIAでポリープ状病巣(結節状の過蛍光)と異常血管網(branching vascular network)を示し、OCTでは内部に低反射腔を伴う急峻なRPE隆起が特徴的である1)。眼底写真では橙赤色の隆起病巣が観察される。RAPではIA上のhot spotが主体で、嚢胞様黄斑浮腫が前面に出る点で鑑別される。PCVでは脈絡膜の肥厚(パキコロイド所見)を伴うことが多いのに対し、RAPでは軟性ドルーゼンRPDの集簇が背景所見となる。

典型AMDでは脈絡膜由来の新生血管が主体である。1型MNVはRPE下に存在しOCTでdouble layer signを示す。2型MNVはRPE上(網膜下腔)に存在し、OCTでは網膜下の中輝度反射塊として検出される1)。RAPでは網膜血管由来の新生血管網膜内に存在するため、嚢胞様黄斑浮腫が早期から出現しbump signを伴う点で区別できる。また、RAPでは両眼発症が多く、軟性ドルーゼンの多発を伴う傾向が強い。

抗VEGF薬硝子体内注射(第一選択)

Section titled “抗VEGF薬硝子体内注射(第一選択)”

新生血管AMDに対する治療の第一選択は抗VEGF薬硝子体内注射である1)。3型MNVに対しても同様にすべての抗VEGF薬視力改善効果が示されている。

現在、新生血管AMDに使用可能な抗VEGF薬は以下の通りである1)

  • ラニビズマブ(ルセンティス/ラニビズマブBS):MARINA試験では24か月でsham群が14.9文字の視力低下であったのに対し、ラニビズマブ毎月投与群では6.6文字の視力改善が得られた14)。ANCHOR試験でもPDT群に対する優越性が示されている15)
  • アフリベルセプト2mg(アイリーア):VIEW 1/2試験で導入期3回投与後の8週ごと投与がラニビズマブ毎月投与と比較して視力維持の割合で非劣性を示した6)
  • ブロルシズマブ6mg(ベオビュ):HAWK/HARRIER試験で導入期3回投与後の8〜12週間隔投与がアフリベルセプトと比較して視力改善量で非劣性を示し、中心網膜厚の減少効果では優越性が認められた7)
  • ファリシマブ(バビースモ):VEGFとangiopoietin-2に対する二重特異性抗体。TENAYA/LUCERNE試験で導入期4回投与後の8〜16週間隔投与がアフリベルセプトと非劣性を示した8)

導入期は1か月ごとに1回、通常連続3回(ファリシマブは4回)の投与を行い、視力の改善を図る1)

維持期の投与方法には以下の選択肢がある。

  • 固定投与法:臨床試験で用いられてきた方法。一定間隔(8週ごと等)で投与する。
  • 必要時投与法(PRN):毎月経過観察し、疾患活動性がみられた場合のみ投与する。ただし長期的にはPRN法では視力が悪化する報告がある1, 13)
  • treat-and-extend(T&E)投与法:疾患活動性に応じて投与間隔を段階的に延長する方式で、現在最も推奨される維持療法である。毎月投与と同程度の視力改善を維持しつつ、PRN法より良好な視力成績が得られることがメタ解析で示されている1)

日本人を対象としたALTAIR試験では、アフリベルセプトのT&E法(2週間隔または4週間隔で投与間隔を調整)により、96週にわたり視力網膜厚の改善が維持されたことが報告されている9)。T&E法をいつまで継続するかについては一定の見解がなく、患者の病状や社会的状況を考慮して判断する1)

治療効果の判定にはOCTが主軸となる。MNV周囲のfluid(IRF・SRF・sub-RPE fluid)の残存や再出現をもって活動性ありと判断する1)。3型MNVの網膜新生血管は必ずしも中心窩に限局しないため、黄斑全体もしくは病変全体をスキャンして評価することが推奨される。

治療中に効果が乏しい場合(治療抵抗例)や効果が減弱した場合(耐性の獲得)は、他の抗VEGF薬への切り替えが有効なことがある1)。RAPは治療抵抗性を示しやすい病型であるため、反応不良時の早期切り替えが重要である。治療負担を考慮して薬剤の切り替えを検討する場合もある。

3型MNVに対するPDT単独は現在推奨されない1)抗VEGF薬に抵抗する症例ではPDT併用を考慮してもよいが、長期的にPDT黄斑萎縮を増悪させる可能性がある。脈絡膜が薄い症例やすでに黄斑萎縮がある症例では避けることが望ましい1)

PDTを併用する場合の処方は以下の通りである。

  • ベルテポルフィン(ビズダイン):6mg/体表面積(m²)を10分間で静脈内投与
  • レーザー照射:注射開始から15分後に照射(689nm、600mW/cm²、83秒間)
  • 照射範囲:造影所見に基づく病変最大径+1,000μmのスポットサイズ
  • 抗VEGF薬併用タイミングPDT前1週間以内またはPDT同日(遮光下)に投与
  • 術後管理:治療後2日間は直射日光からの遮光を要する

新生血管AMDの完治は現時点で不可能であり、適切な治療と長期管理を行わないと不可逆的な視力低下をきたす1)。RAPは特に以下の点で長期的な注意が必要である。

  • MNVの活動性が落ち着いていても長期経過で再発しうる
  • 滲出を繰り返すと萎縮性変化や線維性瘢痕を合併する。長期経過では網膜萎縮(地図状萎縮)を生じやすく、これが不可逆的な視力低下の主因となる
  • 僚眼にも高率にMNVが生じる

高度な視機能低下を来した場合には、拡大鏡・拡大読書器などによるロービジョンケアの導入も積極的に検討する。新生血管AMDの完治は不可能であるため、患者の社会的状況や僚眼の状態も考慮しながら、持続可能な管理計画を患者と共有することが望ましい1)

Q 何回注射が必要か?
A

個人差が大きいが、導入期に3回(ファリシマブは4回)の連続投与を行った後、treat-and-extend法で投与間隔を調整する1)。RAPは他のAMD亜型より治療抵抗性を示しやすく、多数回の注射を要することがある。日本人を対象としたALTAIR試験では96週の長期にわたり治療効果の維持が確認されている9)ファリシマブ等の新規薬剤では最長16週間隔での維持投与が可能で、治療負担の軽減が期待される8)

6. 病態生理学・詳細な発症機序

Section titled “6. 病態生理学・詳細な発症機序”

RAPの本質は、網膜深層毛細血管叢を起源とする網膜新生血管である。これが「3型MNV」と命名された根拠であり、脈絡膜を起源とする1型・2型MNVとは発生機序が根本的に異なる1)

MNVの分類における3型MNVの位置づけは以下の通りである。

  • 1型MNVRPE下に存在する脈絡膜由来の新生血管(occult CNVに対応)
  • 2型MNVRPE上(網膜下腔)に存在する脈絡膜由来の新生血管(classic CNVに対応)
  • 3型MNV網膜血管から生じた新生血管(RAP)1)

軟性ドルーゼンの集簇とRPDが前駆病変として重要である。RPDは通常のドルーゼンRPE下に存在する沈着物)とは異なり、RPE上方に位置する三角錐状の沈着物である。OCTではRPE面から網膜内に向かって突出する形状として描出され、ellipsoid zoneを越えて外境界膜まで達するものもある。RPDは萎縮型AMDおよび3型MNV(RAP)と密接に関連しており、RAPの発症予測因子として臨床的に重要視されている1)

RPDおよび軟性ドルーゼンの蓄積を背景に、RPE視細胞の機能障害が進行する。慢性的な低酸素環境のもと、VEGFをはじめとする血管新生促進因子が産生・蓄積され、深層毛細血管叢からの新生血管の芽出が誘導される。新生血管は以下の経過で段階的に進展する。

  1. Stage 1:深層毛細血管叢内での新生血管形成(網膜新生血管
  2. Stage 2網膜下腔への進展
  3. Stage 3:色素上皮剥離を合併
  4. Stage 4脈絡膜新生血管との吻合形成(網膜-脈絡膜血管吻合)

2001年のYannuzziらの原報では網膜側から脈絡膜方向へ進展するモデルが提唱された3)。しかし近年、OCTの進歩に伴い、脈絡膜側から新生血管が発症して網膜血管と吻合する形式も報告されている。Freundらは網膜-脈絡膜血管吻合を生じる新生血管を「Type 3 neovascularization」と呼び、病期分類は不要であるとの立場をとっている4)

現在では、以下の3経路が想定されている。

  • 網膜血管→網膜外層→RPE脈絡膜(古典的経路)
  • 脈絡膜新生血管RPE網膜(逆行性経路)
  • 両方向からの双方向性進展

いずれの経路においても、RPE視細胞の障害がVEGF産生亢進の起点となる。網膜-脈絡膜吻合が完成すると治療抵抗性がさらに増し、線維性瘢痕への進展が加速するため、可能な限り早期の段階で新生血管活動性を抑制することが重要である。


7. 最新の研究と今後の展望(研究段階の報告)

Section titled “7. 最新の研究と今後の展望(研究段階の報告)”

TENAYA・LUCERNE試験の2年成績(Khananiら 2024年報告)では、ファリシマブ(抗VEGF/抗Ang-2二重特異性抗体)がアフリベルセプト2mgと比較して視力および解剖学的転帰で非劣性を維持し、患者の約半数が最長16週間隔での維持投与を達成した8)。Ang-2の阻害による血管安定化と滲出抑制の相乗効果が期待されている。

アフリベルセプト8mg高用量製剤

Section titled “アフリベルセプト8mg高用量製剤”

アフリベルセプト8mg(高用量製剤)は既存の2mg製剤より高濃度で、PULSAR試験において最長16〜20週間隔での維持投与が検討されている2)。RAPのような多数回の注射を要する病型では、投与間隔の延長による治療負担軽減への期待が大きい。

OCTAによるフォローアップの進歩

Section titled “OCTAによるフォローアップの進歩”

OCTAは非侵襲的に網膜新生血管の活動性を評価できるモダリティとして急速に臨床導入が進んでいる10)。RAPは網膜内に新生血管が存在するためOCTAでの描出に適しており、高齢者で繰り返しの造影検査が困難な場合の代替手段として期待される。今後、OCTAの定量的解析による治療判断アルゴリズムの開発が課題である。

ARMS2・CFH遺伝子多型に基づく発症リスクの層別化と個別化治療戦略の研究が進んでいる11)。遺伝子プロファイルに応じた治療選択や予防介入の実現が今後の課題とされている。中期AMDの段階で遺伝子リスクの高い患者を同定し、早期に治療介入することで視力予後を改善できる可能性が模索されている。

RAPを含む新生血管AMDでは、大量の黄斑下出血により急激な視力低下をきたすことがある。発症早期であれば硝子体内気体注入術(SF6またはC3F8 0.3〜0.5mL注入+腹臥位保持)や硝子体切除術による血腫移動術視力改善に有効な場合がある。組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)の併用も試みられているが、適応についてはさらなる検討が必要である1)


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