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その他

視力検査(Visual Acuity Testing)

視力とは2点を識別する眼の能力をいい、通常、2点または2本の線が分離して見分けられる閾値(最小分離閾 minimum separable)で示される。視機能(光覚・色覚・形態覚・視野・立体覚)のうち形態覚に含まれ、視力検査は視機能検査のなかで最も重要な検査の1つである。

視力検査は眼科の「入り口」の検査として頻用される。正常な視力を得るためには、眼表面から後眼部・中心窩から視神経に至るまで大きな異常が存在しないことが必要条件だからである。視力は手術の資格取得や社会保障の際の判定基準にもなっており、社会的な意義も大きい。

視標の歴史として、1909年の国際眼科学会でLandolt環が国際標準視標として採択された1)。現在はJIS T 7309:2002(ISO 8596:2017を基礎とする)が視力検査装置の規格を規定している1)

眼鏡使用率は成人の74.2%に上り(常に使用・必要時使用・コンタクトレンズとの使い分けを含む)、屈折異常は疾患であり屈折矯正は医療行為として位置づけられる1)。加齢とともに視力は低下し、45歳頃から低下が始まり、80歳時点の視力は0.7〜0.8程度となる。

Q 視力1.0とは何を意味するか?
A

視力1.0は、5 m先に置かれたLandolt環(外形7.5 mm・切れ目幅1.5 mm)の切れ目の方向を識別できることを意味する。この距離では切れ目の視角がちょうど1分(1/60度)となる。小数視力は最小分離角(分単位)の逆数で定義されており、視力1.0は最小分離角1分に相当する。

裸眼視力矯正視力

屈折異常眼を眼鏡またはコンタクトレンズで完全矯正した最高視力矯正視力という。矯正しないものを裸眼視力という。眼科では「視力」といえば矯正視力を指す。裸眼視力矯正視力を併記する場合は、矯正視力を括弧でくくって表記する(例: 0.3(1.2))。眼内レンズ・コンタクトレンズ装用下の場合はこれを明記する。

遠見視力と近見視力

遠距離での視力を遠見視力、近距離での視力を近見視力という。遠見視力の検査距離は5 m(標準)、近見視力は30 cmで測定する。海外では遠見視力に6 mや20フィート、近見視力に40 cm・14インチが用いられ、分数視力(Snellen式)で示される。

字ひとつ視力と字づまり視力

視標を1つずつ提示して測定する視力を字ひとつ視力(single optotype visual acuity)、多数の視標が配列された通常の視力表で測る視力を字づまり視力(linear optotype visual acuity)という。小児では字づまり視力の方が字ひとつ視力より悪く、これを読み分け困難(crowding phenomenon)という。弱視でも字づまり視力の方が悪いことが多い。

片眼視力と両眼視力

片眼を遮閉して測定した視力を片眼視力、遮閉を行わずに両眼開放で測定した視力を両眼視力という。一般に両眼視力は片眼視力と比較して約10%良好である。潜伏眼振では片眼を遮閉すると眼振が起こるため、両眼視力の方が良好となる。

表記方式表示例主な使用場面
小数視力1.0, 0.7, 0.1日常診療(標準)
分数視力(Snellen式)20/20(米), 6/6(英)欧米・国際比較
logMAR視力0.00, 0.15, 1.00臨床研究・国際報告

小数視力と分数視力の関係: 20/20 = 6/6 = 小数視力1.0。logMAR視力はlog(最小分離角)であり、logMAR 0.00 = 小数視力1.0、logMAR 0.30 = 小数視力0.5、logMAR 1.00 = 小数視力0.1に相当する。

ETDRSチャートは1段につき0.1 logMARステップ、5文字/段、4 m検査距離で測定する国際標準チャートである。可読文字数から1文字あたり0.02のウエイトでlogMAR値を算出する。ロービジョン者では距離を3.2 m・2.5 m・2.0 m・1.0 mに縮め、それぞれlogMAR値に0.1・0.2・0.3・0.6を加えて補正する。

Q 小数視力とlogMARの違いは?
A

小数視力は日常診療で広く使われる表記法であり、最小分離角の逆数で定義される。logMAR視力は最小分離角の対数値であり、国際臨床研究・論文報告で標準的に使われる。logMAR 0.00 = 小数視力1.0、logMAR 0.30 ≒ 小数視力0.5、logMAR 1.00 = 小数視力0.1。logMAR視力は等間隔のスケールを持つため、統計処理に適している。

視力は複数の因子により変動する。

光学的因子

屈折異常(近視遠視乱視)、高次収差、回折、散乱が視力低下の主要原因となる。角膜水晶体の光学異常は屈折矯正で補正できるが、高次収差は通常の眼鏡では補正できない。

瞳孔

最適瞳孔径は約2.4 mmである。2〜3 mm以下では回折の影響が大きくなり視力が低下する。5 mm以上では収差が増大し視力が低下する。暗所での瞳孔散大は収差増大により夜間視力の低下をもたらす。

輝度

視力は輝度の対数値に対してS字状に増加する。5,000〜10,000 rlx超ではかえって低下する。視力検査においては、規定された輝度範囲(80〜320 cd/m²)での測定が精度に不可欠である。

加齢

45歳頃から視力は低下し始める。高次収差の増加と、網膜・大脳伝達系の機能低下が原因である。白内障加齢黄斑変性緑内障などの加齢性疾患も関与する。

視細胞の解剖学的限界

中心窩の錐体直径は1〜1.5 μmであり、視角0.21〜0.31分のものを識別できる。中心窩ではそれぞれの錐体が双極細胞→神経節細胞→脳細胞と1対1で連結しており(private pathway)、高い空間分解能を実現する。

小児向け最小分離可能チャートで使用されるオプトタイプ(視標図形)
小児向け最小分離可能チャートで使用されるオプトタイプ(視標図形)
Lund AM, et al. Comparing Landolt Ring with a Child-Friendly Minimum-Separable Chart for Assessing Visual Acuity in Toddlers. Vision (Basel). 2025;9(4):100. Figure 2. PMCID: PMC12737760. License: CC BY.
小児視力検査用に開発された最小分離可能チャートのオプトタイプ(視標図形)を示す。本文「4. 検査方法と手順」の項で扱う小児の視力検査に用いる視標の種類に対応する。

視力検査装置は3種類に分類される1)。標準視力検査装置は遠距離用で8方向Landolt環を使用し、JIS規格(JIS T 7309)に準拠した精度を有する。准標準視力検査装置はLandolt環と他視標を組み合わせ、実用性を重視する。特殊視力検査装置には近距離視力検査装置・字ひとつ視力検査装置などが含まれる。

視力測定の基準視標であるLandolt環の寸法は以下のとおり定められている。

項目基準値
外形7.5 mm
線幅1.5 mm
切れ目幅1.5 mm
5 mでの切れ目視角1分(= 小数視力1.0)
視力表輝度80〜320 cd/m²(推奨200 cd/m²)
コントラスト74%以上(Michelsonの式)
室内照度50 lx以上(視標輝度を上回らない)

スペース不足時は設置距離0.9 mで5 m相当の装置を使用できる。検査室内の直径10°視野内に眩しい光源を置かないことが望ましい1)

遠見視力検査の手順

ステップ1 準備:検査距離5 mを確保し、輝度・照度を規定値に設定する。

ステップ2 片眼遮閉:反対眼を遮閉板で正確に覆う。軽圧迫しないよう注意する。

ステップ3 視標提示:小さい視標(または大きい視標)から順に提示する。水平・垂直方向の切れ目が50%程度含まれる配列を使用する1)

ステップ4 判定:切れ目の方向を答えさせる(4方向または8方向)。判定基準は2個中2個・3個中2個・5個中3個の正答1)。読み誤りのない最小の視標を視力値とする。

ステップ5 矯正視力測定裸眼視力測定後、眼鏡またはコンタクトレンズ装用下で矯正視力を測定する。

小児・特殊な状況での視力検査

乳幼児(3カ月〜):固視・追視の観察(ベンライト・視標を用いる)。

幼児期:字ひとつLandolt環で手指で向きを示す方法、またはドットカード・縞視力検査を使用する。

小学校中学年まで:字ひとつ視力が基本。字づまりの読み分けが困難な場合は字ひとつ視力で代用する。

小学校高学年以上:通常の字づまり視力検査。

ロービジョン者:光覚弁(light perception)・手動弁(hand motion)・指数弁(counting fingers)の順で測定し、ETDRSチャートを距離調整して使用する。

Q 視力検査で矯正視力0.7以下のとき何が疑われるか?
A

矯正視力0.7未満は器質的疾患を示唆する。眼鏡やコンタクトレンズを装用しても0.7未満の場合は、白内障角膜混濁・黄斑疾患・視神経疾患・弱視などの器質的原因を精査する必要がある。一方、裸眼視力のみが低下し矯正視力が正常な場合は、屈折異常(近視遠視乱視)が原因であり、眼鏡・コンタクトレンズによる矯正が適応となる。

乳幼児視力検査用カードのクローズアップ:テラー視力カード、キーラー視力カード、リーパドル、カーディフ視力カード
乳幼児視力検査用カードのクローズアップ:テラー視力カード、キーラー視力カード、リーパドル、カーディフ視力カード
Murray I, et al. Assessing printed visual acuity tests: what are we measuring? Transl Vis Sci Technol. 2020;9(12):12. Figure 4. PMCID: PMC7671855. License: CC BY.
(A)テラー視力カード(TAC)、(B)乳児用キーラー視力カード(KACI)、(C)リーパドル(LP)、(D)カーディフ視力カード(CAC)の4種類の印刷式視力検査カードの背景パターンのクローズアップ。本文「4. 検査方法と手順」の項で扱う乳幼児の選好注視法による視力検査に対応する。
視力レベル臨床的意義対応
矯正視力1.0以上通常正常。中心窩最高視力は1.2経過観察
矯正視力0.7〜0.9軽度低下。屈折矯正不足または軽度疾患精密屈折・精査
矯正視力0.7未満器質的疾患の可能性精密検査必須
矯正視力0.1未満高度低下。ロービジョン領域疾患治療・ロービジョン支援
矯正視力0.01以下指数弁・手動弁・光覚弁で評価失明域の評価

乳頭付近の視力は中心視力の約1/10(0.1)、網膜周辺部では約1/40(0.025)程度となる。

  • 裸眼視力低下のみ: 屈折異常が主因。眼鏡・コンタクトレンズ・屈折矯正手術で対応する
  • 矯正視力低下: 器質的疾患の精査を要する。白内障角膜疾患・黄斑疾患・視神経疾患・緑内障などを鑑別する
  • 字ひとつ視力 > 字づまり視力: crowding現象を示唆し、弱視・小児発達異常の指標となる
  • 両眼視力 < 片眼視力: 斜位近視を示唆する
  • オートレフ値と自覚的屈折値の乖離: 調節けいれん・心因性視力障害を考慮する

運転免許第一種は両眼矯正視力0.7以上を要件とする。学校健診では矯正視力0.7未満で精密検査が推奨される。身体障害者手帳の等級は矯正視力による判定を行う(1級: 両眼0.01以下など)。

Q 大人になってから弱視は治せるか?
A

弱視の治療には視覚感受性期(生後3〜8歳)内での介入が必要であり、この時期を過ぎると治療効果は著しく限定的となる。成人弱視は原則として改善困難である。そのため、3歳児健診・学校健診で弱視を早期発見し、感受性期内に遮閉療法屈折矯正を開始することが重要である。

視角1分は網膜表面で4.85 μm²に相当する。中心窩の錐体直径は1〜1.5 μmであり、視角0.21〜0.31分のものを識別できる計算となる。中心窩ではそれぞれの錐体が双極細胞→神経節細胞→脳細胞と1対1で連結しており(line labeled private pathway)、解剖学的な最高分解能は理論上1.0を超える視力を可能にしている。

視力(VA)は分単位での最小分離角(minimum angle of resolution: MAR)の逆数で定義される(VA = 1/MAR)。最小分離角の対数をとったものをlogMARという。ISOでは1 log単位(小数視力0.1〜1.0の間)を10等分した等間隔配列(10の10乗根 = 1.259を1段階とする)が用いられている。

ETDRSチャートはこの原理を実装したもので、各段が0.1 logMARステップに対応し、5文字/段の配列で精密な視力評価を可能にする。

視力は眼球光学系→網膜視細胞)→視神経視交叉→視索→外側膝状体視放線→後頭葉第1次視覚野(V1)に至る視路の全体が正常であることで初めて得られる。視路のいずれかに障害があれば視力は低下する。

デジタルデバイスの普及に伴い、視覚的ストレスの増大と quality of vision の重要性が高まっている1)。単純な視力のみならず、コントラスト感度・グレア視力網膜像の質(quality of vision)を総合的に評価する視点が重要となっている。

電子的視力表(オートチャート・タブレット型検査装置)は、検査者依存のばらつきを低減し客観的な測定を可能にする。自動化により多数の被検者を効率的に検査できるメリットがある。

両眼開放下視力検査(偏光法)は、遮閉板を使用しない自然な両眼開放状態で各眼の視力を測定する手法であり、潜伏眼振の患者や遮閉を嫌がる小児に有用である。

コントラスト感度検査は、視力が正常でも患者が「見づらい」と訴える場合(白内障視神経疾患・屈折矯正後など)の評価に有用であり、通常の視力検査を補完する。

WHO視覚障害分類では、矯正視力0.3未満を中等度視覚障害、0.1未満を重度視覚障害、0.05未満を盲と定義しており、国際的な疾病負担の評価・比較に用いられる。

  1. 成人視力検査眼鏡処方手引き作成委員会. 成人の視力検査および眼鏡処方に関する手引き. 日眼会誌. 2025;129(2):150-304.
  2. Birch EE, Hudgins LA, Jost RM, Cheng-Patel CS, Morale SE, Kelly KR. Web-based visual acuity testing for children. J AAPOS. 2022;26(2):61.e1-61.e5. PMID: 34920136.
  3. Painter SL, Hamilton R, Livingstone IAT. Diagnostic Accuracy of Online Visual Acuity Testing of Paediatric Patients. Br Ir Orthopt J. 2023;19(1):35-43. PMID: 37124456.

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