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緑内障

緑内障ドレナージデバイス(チューブシャント手術)

1. 緑内障ドレナージデバイスとは

Section titled “1. 緑内障ドレナージデバイスとは”

緑内障ドレナージデバイス(GDD:glaucoma drainage device)は、房水シャント(aqueous shunt)またはチューブシャントとも呼ばれるインプラントである。シリコン製のチューブとプレートで構成され、チューブを眼内に挿入し、プレートを眼球赤道部付近の強膜上に固定する。房水はチューブを介して眼外のプレートへ導かれ、術後4〜6週間でプレート周囲に形成される線維性被膜(fibrous capsule)を通じて周囲組織に吸収される1)

従来の濾過手術線維柱帯切除術)で眼圧のコントロールが難しい緑内障症例に対する治療選択肢として位置づけられる。チューブは前房内挿入と硝子体腔内挿入に分けられ、硝子体の有無や目標眼圧によって選択する。

国内ではバルベルト®緑内障インプラントとアーメド®緑内障バルブの2種類が保険診療で使用可能である(2012年保険収載)。プレートのないエクスプレス®緑内障フィルトレーションデバイスも承認されている12)

GDDの適応は以下の通りである12)

原発開放隅角緑内障POAG)に対しては、初回手術からの適応は推奨されていない。再手術の症例で適応を検討する。また、正常眼圧緑内障NTG)に関するエビデンスは不十分であり、今後の検討が必要とされている12)

Q チューブシャント手術はどのような患者に適応となりますか?
A

代謝拮抗薬を併用した線維柱帯切除術が不成功に終わった症例や、手術既往により結膜の瘢痕化が高度な症例が主な適応となる12)新生血管緑内障ぶどう膜炎続発緑内障ICE症候群など線維柱帯切除術の成功が見込めない病型でも適応となる。原発開放隅角緑内障では初回手術としては推奨されておらず、再手術例で検討する。

チューブシャント手術が検討される病態

Section titled “チューブシャント手術が検討される病態”

GDDは緑内障そのものの治療法であるため、適応判断に関わる臨床像の理解が重要である。以下の病型・背景因子をもつ症例では、線維柱帯切除術の成功率が低下するためGDDが検討される。

線維柱帯切除術が効きにくい病型:

  • ぶどう膜炎続発緑内障:炎症による結膜瘢痕化が濾過胞の維持を困難にする
  • 血管新生緑内障虹彩隅角新生血管による濾過胞閉鎖リスクが高い
  • ICE症候群角膜内皮細胞の増殖により濾過胞が被覆される

内眼手術既往のある症例:

患者背景因子:

  • 若年者(創傷治癒反応が強い)
  • 複数回の手術既往がある症例

GDD術後に以下の所見が出現した場合は、合併症として対処が必要となる。

  • 術後高眼圧(バルベルト®特有):術後約1か月間、20 mmHg前後の高眼圧で推移する
  • チューブ露出:パッチグラフト下からチューブが結膜外に露出した状態
  • 低眼圧:特にノンバルブ型で術後早期に生じうる
  • 複視:プレートの位置による外眼筋の機械的制限

GDD手術を要する難治性緑内障の背景因子として、以下が挙げられる。

  • 複数回の内眼手術歴結膜瘢痕化が進行し、濾過胞の形成・維持が困難となる
  • 若年:線維芽細胞の活動が盛んで創傷治癒反応が強く、濾過手術の失敗率が高い
  • ぶどう膜炎・血管新生緑内障などの続発緑内障:炎症や新生血管が濾過胞を破壊する
  • 結膜瘢痕化:化学外傷、Stevens-Johnson症候群、複数回の結膜手術などによる

PTVT Study(初回手術眼での比較)においてチューブ群の失敗率が再手術眼を対象としたTVT Studyより高値を示した点については、対象群の年齢が若く黒人の割合が高いことが影響していると考察されている12)

GDDは眼圧調節バルブ(弁)の有無により2つに分類される。

バルブ型(Valved)

代表:アーメド®緑内障バルブ(AGV)

機構:プレート内に調圧弁を内蔵。眼圧8 mmHg以下で弁が閉鎖し、術直後の過剰濾過を防止

利点:術後即時に眼圧下降が得られる。チューブ結紮やSherwood slit作成が不要。低眼圧リスクが低い

欠点:長期的な眼圧下降はノンバルブ型にやや劣る(5年で眼圧18 mmHg未満維持:約50%)15)

プライミング:術前にチューブ先端から灌流液を注入し、弁の動作を確認する必要がある

ノンバルブ型(Nonvalved)

代表:バルベルト®緑内障インプラント

機構:弁機構なし。術中にチューブを吸収糸(バイクリル®)で完全結紮し、Sherwood slit(一時的漏出孔)を数箇所作成して早期の部分的流出を確保

利点:長期的な眼圧下降に優れる(5年で眼圧18 mmHg未満維持:約70%)。到達可能な眼圧がより低い15)

欠点:術後約1か月の高眼圧期がある。低眼圧リスクがバルブ型より高い(4.5% vs 0.4%)12)

術後管理:吸収糸が溶けるまでの約1か月は緑内障点眼薬を併用して眼圧管理を行う

国内で承認されているプレート付きGDDの一覧を示す12)

デバイスモデルプレート面積挿入部位特記
バルベルト®BG101-350350 mm²前房標準サイズ
バルベルト®BG103-250250 mm²前房小児・短眼軸長
バルベルト®BG102-350350 mm²毛様体扁平部硝子体手術既往眼
アーメド®FP7184 mm²前房調圧弁内蔵・最汎用
アーメド®FP896 mm²前房小児・短眼軸長

プレートのないGDDとして、エクスプレス®緑内障フィルトレーションデバイス(全長2.6 mm、内腔50 μm、ステンレス製)がある。強膜弁下から前房内へ挿入する。閉塞隅角緑内障ぶどう膜炎、金属アレルギーは禁忌である。3テスラまでのMRI検査は安全とされている12)

バルベルト®とアーメド®の選択は以下の基準で判断する。

  • より低い眼圧を目指す症例:バルベルト®が適応。術後合併症のリスクを加味しても、長期的な眼圧コントロールに優れる
  • 術直後から眼圧を下げたい症例・低眼圧が危険な症例:アーメド®が適応。無水晶体眼、IOL縫着眼、駆逐性出血既往眼、ぶどう膜炎続発緑内障などが該当する

長期的な眼圧コントロールはプレート表面積に依存する。プレート面積が大きいほど周囲の線維性被膜も大きく形成され、より多くの房水を吸収可能となる。ダブルプレートのMoltenoはシングルプレートより眼圧コントロールが良好であった一方、350 mm²と500 mm²のBaerveldtの比較では350 mm²モデルが優れていた1)

Q バルブ型とノンバルブ型のどちらを選択すべきですか?
A

術後合併症のリスクを加味しても、より低い眼圧を目指したい症例ではバルベルト®(ノンバルブ型)を選択する。術直後から眼圧を下げたい症例や、低眼圧が危険な症例(無水晶体眼、ぶどう膜炎続発緑内障など)ではアーメド®(バルブ型)を選択する。メタ解析ではバルベルト®の術後平均眼圧(13.2 mmHg)がアーメド®(15.8 mmHg)より有意に低い15)が、低眼圧発生率はバルベルト®が高い(4.5% vs 0.4%)12)

Ahmed緑内障バルブ留置の術中手順(A〜I):強膜トンネル作成からチューブ挿入・縫合・結膜閉鎖まで

Long scleral tunnel technique for prevention of drainage tube-related complications during Ahmed glaucoma valve implantation. Medicine (Baltimore). 2023;102(42):e35449. Figure 2. PMCID: PMC10589554. License: CC BY 4.0.
アーメド緑内障バルブ留置術の主要ステップをA〜Iの9コマで示した術中写真。本文「5. 手術手技と合併症管理」の項で扱うチューブ挿入・プレート固定・パッチ被覆といった個別ステップに対応する。

バルベルト®緑内障インプラント(前房内チューブ挿入法)

Section titled “バルベルト®緑内障インプラント(前房内チューブ挿入法)”
  1. 設置部位の選択:上耳側を第一選択とする。既存の手術創により設置不可能な場合は鼻側や下方を検討するが、下方は感染リスクが高く、鼻側は眼球運動障害が生じやすいため、できる限り避ける
  2. 結膜切開:円蓋部基底で切開し、隣り合う2直筋が露出できる範囲で行う。結膜結膜下組織をできるだけ後方まで剥離する
  3. プレート固定:プレート両端を隣り合う2直筋下に挿入し、輪部から8〜10 mmの位置にナイロン糸で強膜上に縫着する
  4. チューブ結紮低眼圧予防):プレートの2〜4 mm前で吸収糸(バイクリル®)によりチューブを完全結紮する
  5. Sherwood slit作成(高眼圧予防):針やメスでチューブに一時的な漏出孔を数箇所開け、術直後の高眼圧を軽減する
  6. チューブトリミング前房内に2〜3 mm挿入できる長さにベベルアップでトリミングする
  7. チューブ挿入:強角膜輪部に23ゲージ針で虹彩面に平行に穿刺孔を作成し、チューブを前房内に挿入する
  8. チューブ固定・被覆:ナイロン糸で強膜上に固定し、保存強膜や保存角膜などのパッチ材料でチューブを覆う12)
  9. 結膜縫合:吸収糸で結膜を縫合被覆して終了する

アーメド®緑内障バルブの追加要点

Section titled “アーメド®緑内障バルブの追加要点”

基本手技はバルベルト®と同様であるが、以下の点が異なる。

  • プライミング:チューブ先端から灌流液を注入し、調圧弁が開くことを確認する
  • 結膜切開範囲:プレートサイズが小さいため、バルベルト®より狭い切開で施行可能
  • 結紮・漏出孔不要:調圧弁により術直後の低眼圧が防止されるため、チューブ結紮やSherwood slit作成は必要ない

硝子体腔内チューブ挿入法(扁平部チューブ)

Section titled “硝子体腔内チューブ挿入法(扁平部チューブ)”

硝子体手術既往眼では、前房ではなく毛様体扁平部からチューブを挿入する方法がある。

  • 角膜輪部より3.5 mmの毛様体扁平部の位置に20ゲージ針または20G Vランスで硝子体腔内へ穿刺する
  • Hoffmann® elbowを挿入し、ナイロン糸で強膜上に固定する
  • パッチ材料で被覆し、結膜を縫合する

バルベルト® BG102-350がこの挿入法に対応する。アーメド®には毛様体扁平部から挿入するモデルは国内で販売されていない。

  • 抗菌薬点眼:1日3回、2週間
  • ステロイド点眼:漸減しつつ約6か月間継続
  • バルベルト® 術後高眼圧:チューブ結紮した吸収糸が溶けるまでの約1か月間は20 mmHg前後の高眼圧で推移する。緑内障点眼薬または内服を使用して眼圧管理を行い、1〜2か月後に眼圧が下降してくることが多い。ナイロン糸をチューブに通しておき、早期高眼圧時にナイロン糸を抜去して眼圧調整する方法もある

ノンバルブ型デバイスでは術後早期の低眼圧を防ぐため、以下の工夫が行われる。

  • チューブ内ステント:4-0または5-0縫合糸をチューブ内腔に挿入し、被膜形成後にスリットランプ下で除去する
  • 外側結紮:吸収性縫合糸(7-0または8-0バイクリル®)でチューブを結紮する。ベンティングスリットを併用して早期の部分的流出を確保する場合もある
  • 二段階手術:第一段階でプレートのみ固定し、4〜6週間後に被膜形成を待ってチューブを前房に挿入する

チューブ露出:GDD特有の合併症であり、4.3〜14.3%の頻度で発生する7)結膜びらんを経てチューブが露出し、眼内炎のリスクがあるため早期の修復が必要である8)。パッチグラフト追加や強膜トンネルでの被覆が行われる。チューブ露出防止のため、保存強膜や保存角膜などのパッチ材料を用いるか、自己強膜半層弁でチューブを覆う必要がある12)

低眼圧:特にノンバルブ型で多い1)。バルベルト®の低眼圧発生率は4.5%、アーメド®は0.4%である12)前房の深さが維持されていれば保存的に管理可能であるが、水晶体角膜接触がある場合は粘弾性物質注入による前房再形成が必要となる。

チューブ閉塞:フィブリン・虹彩・出血・硝子体による閉塞が生じうる。前房内チューブではNd:YAGレーザー、硝子体腔内チューブでは硝子体手術で対処する6)角膜混濁例では眼内内視鏡が原因の同定と治療に有用である6)

複視眼球運動障害:術後約5%に発生する。プレートの上鼻側への挿入は回避が望ましい。6か月経過観察後にプリズム眼鏡または手術で対応する。

角膜内皮障害:チューブ先端が角膜内皮に近接する場合、長期的な角膜内皮細胞減少と水疱性角膜症をきたしうる1)。高齢者では白内障同時手術を推奨する場合がある。

テノン嚢胞(被膜化):プレート周囲の線維性被膜が肥厚し眼圧が上昇する。AGVでの頻度は40〜80%、ノンバルブ型では20〜30%とされる10)。術後3週〜3か月の「高眼圧期(hypertensive phase)」として出現することが多い。

巨大濾過胞:まれにプレート周囲に巨大な濾過胞が形成される5)。前方拡大型(異物感・美容的問題)と後方拡大型(眼球偏位・複視、T2強調MRIでの評価が有用)に分類される5)。GDD摘出後にぶどう腫を生じた報告もある11)

Q 緑内障ドレナージデバイスの合併症はどのくらいの頻度で生じますか?
A

TVT Studyの5年データでは、重篤な合併症の発生率はチューブ群で34%、線維柱帯切除術群で36%であった13)。主な合併症はチューブ露出(4.3〜14.3%)7)低眼圧(バルベルト® 4.5%、アーメド® 0.4%)12)複視(約5%)である。合併症の内容は両術式で異なり、チューブシャント側では角膜内皮障害・チューブ露出が、線維柱帯切除術側では濾過胞漏出低眼圧黄斑症・濾過胞感染が多い13)

チューブシャント手術と線維柱帯切除術の選択では、治療眼・患者背景、術者の術式に対する習熟度などを総合して判断する12)

  • 初回手術の原発開放隅角緑内障では、線維柱帯切除術の方が低い眼圧を達成しやすいとする報告がある。
  • 以前の手術歴がある眼や続発緑内障では、チューブシャント手術が有利となる場合がある。
  • 目標眼圧結膜瘢痕、角膜内皮硝子体手術歴、術後管理のしやすさを含めて個別に判断する。

眼圧コントロール成績では両術式に有意差がなく、視機能を障害する重篤な合併症の発症頻度にも有意差はなかった。ただし低眼圧に伴う合併症と術後感染は線維柱帯切除術に多く、インプラント露出と角膜内皮障害はチューブシャント手術に多い12)

線維柱帯切除術が有利な点

インプラント不要:異物がなく、チューブ露出のリスクがない1)

角膜内皮:長期的な角膜内皮障害のリスクが低い

コスト:保存的治療と比較したQALYあたりのコストは線維柱帯切除術$8,289、バルベルト®$13,896であり、線維柱帯切除術が低コストである12)

GDDが有利な点

濾過手術高リスク例結膜瘢痕・続発緑内障に適する1)

術後管理:術後ケアの負担が比較的少ない

再手術:TVT Study 5年では追加緑内障手術が線維柱帯切除術群で有意に多い(p=0.025)13)

研究比較主要結果
TVT Study(5年)Baerveldt 350 vs TLE+MMC(既手術眼)累積失敗率: チューブ29.8% vs TLE 46.9%(p=0.02)13)
PTVT Study(3年)Baerveldt 350 vs TLE+MMC(初回手術眼)累積失敗率: チューブ33% vs TLE 28%(有意差なし)14)
ABC/AVB pooled(5年)Ahmed vs BaerveldtBaerveldt 13.2 mmHg vs Ahmed 15.8 mmHg(p<0.001)15)

TVT Study(Tube Versus Trabeculectomy Study)は、白内障手術または線維柱帯切除術の既往がある眼を対象とした多施設RCTである13)。5年の追跡でチューブ群の成功率が線維柱帯切除術群を上回った。眼圧低下・薬剤使用・重篤合併症・視力喪失は同等であったが、追加緑内障手術の施行数は線維柱帯切除術群で有意に多かった(p=0.025)13)。NEI VFQ-25を用いた術後QOL評価では両群間に有意差はなかった12)

PTVT Study(Primary TVT Study)は初回手術眼を対象としたRCTである14)。3年時点で成功率は両群で同等であったが、線維柱帯切除術群でより低い眼圧がより少ない薬剤数で達成された14)

ABC/AVB StudyはAhmedとBaerveldtを比較した多施設RCTである15)。5年間の追跡でBaerveldt群はAhmed群と比較して眼圧下降・薬剤減少に優れていたが、重篤な合併症はAhmed群で少なかった15)。Baerveldt術後の低眼圧発生率(4.5%)はAhmed(0.4%)と比較して有意に高率であった(p=0.002)12)

Ahmed vs 線維柱帯切除術の比較研究では、累積成功率(41〜52か月後)はAhmed群69.8%、線維柱帯切除術群68.1%であり有意差はなかった。チューブ露出はAhmed群に多く、濾過胞漏出と濾過胞感染は線維柱帯切除術群に多い傾向がみられた16)

GDDにおけるマイトマイシンC(MMC)の術中使用は複数のRCTで検討されたが、成功率の向上は示されなかった1)低眼圧期の延長と合併症増加が報告されており、GDDにおいて抗線維化薬は一般的に使用されていない。

小児緑内障では隅角手術(隅角切開術・線維柱帯切開術)が第一選択であるが、続発緑内障では効果が限定的であり、GDDが一次治療として使用されることがある3)

Stallworthらは32研究(1,221眼、885人の小児)を対象としたシステマティックレビュー・メタアナリシスを行った3)。術前平均眼圧は31.8±3.4 mmHgであった。術後12か月のプール平均眼圧は16.5 mmHg(95%CI: 15.5–17.6)、成功率は0.87(95%CI: 0.83–0.91)であった。24か月では平均眼圧17.6 mmHg、成功率は0.77(95%CI: 0.71–0.83)であった。48か月での成功率は0.54、60か月で0.60、120か月で0.37まで低下した。Ahmed とBaerveldtの間に12・24か月での成功率の有意差はなかった。最多の合併症は前房浅化(13.6%)、低眼圧(11.7%)、脈絡膜剥離(8.3%)であった。研究の90%がAhmedを使用しており、小児におけるBaerveldtのデータは限られている。

小児ではチューブ・プレートの露出リスクが高い。眼をこする行為が多いことと免疫反応が強いことが原因として挙げられる。小児の続発緑内障では、特に白内障術後緑内障で手術成績が不良であり、最終的にGDDが必要になることがある12)

Q 緑内障ドレナージデバイスと線維柱帯切除術のどちらが良いですか?
A

どちらが最適かは患者の状態によって異なる。初回手術の原発開放隅角緑内障ではPTVT Studyで線維柱帯切除術がより低い眼圧を達成した14)。一方、以前の手術歴がある眼や続発緑内障ではTVT Studyでチューブシャント手術が有利であった13)。実臨床では、治療眼・患者背景・術者の習熟度を勘案して術式を選択する12)

パッチグラフトを不要とする自家強膜トンネルを用いたチューブ被覆法が開発されている。

Tanitoらは1 mm幅のクレセントナイフを用いてマイクロインシジョン強膜トンネル(MIST)を作成し、前房毛様体溝・硝子体腔の3部位へのチューブ挿入に応用した4)。縫合不要で手術時間の短縮が可能であり、術後のチューブ露出も認めなかった。

Miuraらは22ゲージ針を用いた強膜トンネル作成法を報告し、最長21か月の経過観察でチューブ露出を認めなかった7)

これらの手法はパッチグラフト材料の入手困難さやウイルス感染リスクを回避する利点がある。

Kawashimaらは角膜混濁でスリットランプ観察が困難なAGV不全例において、眼内内視鏡によりチューブ先端の線維組織による閉塞を同定し、組織除去により眼圧下降を得た6)角膜混濁を伴う症例でのGDD不全の診断に内視鏡が有用であることが示された。

Katsevらは流出路障害と房水産生低下を合併し、点眼薬の治療域が極めて狭い症例にAGVを挿入し、コンプライアントな流出路の創出により不安定な眼圧を安定化させた9)。15か月間にわたり無投薬で眼圧8〜10 mmHgを維持した。


8. 病態生理学・詳細な発症機序

Section titled “8. 病態生理学・詳細な発症機序”

GDDによる眼圧下降は以下の経路で実現する。

  • チューブ:眼内の房水をプレートへ誘導するシリコン管
  • プレート:眼球赤道部付近に固定。チューブを通じて導かれた房水を貯留する空間を提供する
  • 線維性被膜:術後4〜6週間でプレート周囲に形成される結合組織。被膜の外面から周囲組織(テノン嚢結膜下組織)へ房水が吸収される
  • プレート面積の影響:面積が大きいほど周囲に形成される被膜も大きくなり、より多くの房水を吸収可能となる
  1. 術直後:チューブが吸収糸で結紮されているため、プレートへの房水流出はない。Sherwood slitからの微量な漏出のみ
  2. 術後約1か月:吸収糸が溶解し、プレートへの房水流出が開始。この時期から眼圧が下降に転じる
  3. 術後2〜3か月:プレート周囲の線維性被膜が成熟し、房水の流出抵抗が安定する
  4. 長期:被膜の線維化が進行すると流出抵抗が増加し、眼圧が上昇する場合がある(テノン嚢胞)

アーメド®の調圧弁はベンチュリ効果を利用した一方向弁であり、理論上は眼圧8 mmHg以下で弁が閉鎖する。これにより術直後の過剰濾過を防止し、低眼圧関連合併症(脈絡膜剥離、低眼圧黄斑症等)のリスクを軽減する。ただし、長期的にはプレート面積がバルベルト®より小さいため、到達可能な最終眼圧はバルベルト®にやや劣る。


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