緑内障側の評価
眼圧と目標眼圧:現在の点眼で十分か、術後にどこまで下げる必要があるかを確認する。
視野・視神経:中心視野に迫る進行例では、一過性の眼圧変動も問題になりやすい。
隅角所見:開放隅角か閉塞隅角か、周辺虹彩前癒着の範囲、MIGSが可能な隅角かを確認する。
結膜の状態:濾過手術やチューブシャントを将来行う可能性があれば、結膜温存を重視する。
白内障と緑内障はどちらも高齢者で頻度が高く、同じ眼に併存することが多い。白内障手術は視力回復を目的とする一方、緑内障手術は眼圧を下げて視野障害の進行を抑えることを目的とする。併用手術は、この2つを1回の手術で同時に扱う方法である。
白内障手術単独でも平均2mmHg未満の軽い眼圧下降が得られることがある。特に術前眼圧が高い例や閉塞隅角要素がある例では効果が大きくなる場合があるが、開放隅角緑内障では白内障手術だけを眼圧下降治療として過信しない。1, 3)
併用手術の本質は、「視力を上げる手術」と「眼圧を下げる手術」を同じタイミングで行うかどうかの判断である。2回の手術を避けられる一方、術後炎症や眼圧変動、濾過胞への影響などを同時に管理する必要がある。
白内障と緑内障を同時にみるときは、術式名から入るよりも、必要な眼圧下降の強さで分けると理解しやすい。
| 方針 | 向いている状況 | 主な利点 | 主な注意点 |
|---|---|---|---|
| 白内障手術単独 | 軽症で眼圧コントロール良好 | 侵襲が少ない、視力回復を優先できる | 術後眼圧スパイクに注意 |
| 白内障手術+MIGS | 軽症〜中等症、点眼負担を減らしたい | 結膜を温存し、回復が早い | 眼圧下降は中等度 |
| 白内障手術+線維柱帯切除術 | 進行例、低い目標眼圧が必要 | 大きな眼圧下降が期待できる | 濾過胞管理と合併症対策が重要 |
| 白内障手術+ドレナージデバイス | 難治例、濾過手術既往、結膜瘢痕が強い | 難治性緑内障で選択肢になる | 手技・術後管理が複雑 |
併用手術の適応は「白内障があるか」だけでは決まらない。眼圧をどこまで下げる必要があるか、視野がどの程度残っているか、将来の緑内障手術を温存する必要があるかを確認する。
緑内障側の評価
眼圧と目標眼圧:現在の点眼で十分か、術後にどこまで下げる必要があるかを確認する。
視野・視神経:中心視野に迫る進行例では、一過性の眼圧変動も問題になりやすい。
隅角所見:開放隅角か閉塞隅角か、周辺虹彩前癒着の範囲、MIGSが可能な隅角かを確認する。
結膜の状態:濾過手術やチューブシャントを将来行う可能性があれば、結膜温存を重視する。
白内障側の評価
MIGS(低侵襲緑内障手術)は、従来の濾過手術よりも侵襲と合併症リスクを抑えながら、房水流出を改善する手術群である。白内障手術と同じタイミングで行いやすいため、軽症〜中等症の開放隅角緑内障では特に検討される。
線維柱帯切開術は、房水の出口である線維柱帯・Schlemm管周辺の抵抗を下げる流出路再建術である。近年は眼内側から行う低侵襲な方法が増え、MIGSの主要な考え方の一つになっている。
このページでは、MIGSと線維柱帯切開術は白内障併用手術を考えるうえでの概念に絞って扱う。術式分類、デバイス、適応基準、合併症、治療成績の詳細は下の記事を参照。
白内障超音波乳化吸引術と線維柱帯切除術を同時に行う方法は、ファコトラベキュレクトミーと呼ばれる。視力回復と眼圧下降を1回の手術で狙えるが、濾過手術単独より濾過胞の長期成績が劣る可能性があるため、適応は慎重に決める。4, 5)
| 方法 | 概要 | 利点 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 同一創口法 | 白内障手術と線維柱帯切除術を同じ結膜・強膜側から行う | 手術時間を短縮しやすい | 結膜操作と炎症が濾過胞に影響しうる |
| 別個創口法 | 耳側角膜切開で白内障手術を行い、上方で線維柱帯切除術を行う | 上方結膜を比較的温存しやすい | 術者位置変更や操作時間が増える |
どちらも眼圧下降に有効であり、長期成績の優劣は症例背景や術者の手技に左右される。上方結膜をどの程度温存したいか、白内障手術の術野が確保しやすいか、濾過胞をどこに作るかが実際の判断材料になる。
線維柱帯切除術では結膜下瘢痕化を抑えるためにマイトマイシンC(MMC)などを用いることがある。MMCは眼圧下降を助ける一方、低眼圧、濾過胞漏出、濾過胞感染、眼内炎などのリスクを高めうるため、濾過胞管理を含めた術後フォローが重要である。5)
緑内障ドレナージデバイスは、線維柱帯切除術が成功しにくい難治性緑内障で検討する。濾過手術既往眼、結膜瘢痕が強い眼、ぶどう膜炎性緑内障、新生血管緑内障などでは、白内障手術と同時にデバイスを留置する選択肢がある。
白内障手術と同時に行う場合は、角膜内皮、前房深度、チューブ位置、炎症管理を総合的に考える。一般的な白内障・緑内障併用手術というより、難治例に対する個別設計の手術と理解する。
術後は、視力回復だけでなく眼圧の安定、炎症、濾過胞、前房深度を同時に見る必要がある。
不要になるとは限らない。MIGSは軽症〜中等症で点眼負担を減らす、または中等度の眼圧下降を狙う選択肢であり、進行緑内障で低い目標眼圧が必要な場合には不十分なことがある。ただし結膜を温存できるため、将来の線維柱帯切除術やドレナージデバイス手術の余地を残しやすい。
白内障手術と緑内障手術の併用では、従来の「白内障手術+線維柱帯切除術」だけでなく、白内障手術+MIGSという選択肢が今後さらに存在感を増すと考えられる。理由は、白内障手術と同じ小切開から行いやすく、術後回復が早く、結膜を温存しながら眼圧と点眼数の両方に介入できるためである。
一方で、MIGSは濾過手術を完全に置き換えるものではない。併用手術の実際のゴールは「視力回復」「眼圧下降」「点眼負担軽減」「将来の手術選択肢の温存」のどれを優先するかを、患者ごとに明確にすることである。
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