コンテンツにスキップ
その他

目が痛い・ゴロゴロするときの考えられる原因まとめ

1. 目が痛い・ゴロゴロするとは

Section titled “1. 目が痛い・ゴロゴロするとは”

目の痛み(眼痛)と異物感(ゴロゴロ感)は、眼科外来における最も頻度の高い主訴のひとつである。その原因は、ドライアイ角膜上皮の微細な傷など日常的な軽症疾患から、急性閉塞隅角緑内障発作・眼内炎・後部強膜炎といった視力を脅かす眼科緊急疾患まで極めて幅広い。

眼は角膜強膜・ぶどう膜・視神経など感度の異なる組織で構成されており、痛みの性状は障害部位を鋭く反映する。眼表面(角膜結膜)の障害では「砂が入ったようなゴロゴロ感・異物感」が生じ、強膜虹彩の炎症では「鈍痛・圧痛」が、眼圧の急激な上昇では「拍動性の激痛と頭痛・嘔気」が特徴的である。この痛みの性状と随伴症状を組み合わせることで、緊急度の高い疾患を見逃さずに鑑別することができる。

眼痛は眼科救急の上位主訴であり、視力低下を伴う眼痛は特に緊急性が高い1)ドライアイの有病率は25〜30%と高く、最も多い眼痛・異物感の原因のひとつである。一方、急性閉塞隅角緑内障は東アジア人女性に多い緊急疾患であり、治療の遅れが不可逆的な視神経障害につながる。壊死性強膜炎では失明率が約40%に達するとされ、強膜炎全体の中でも最重症のカテゴリに位置する。

痛みの性状・部位・発症様式・随伴症状・コンタクトレンズ(CL)使用歴・全身疾患背景を総合的に評価することが、適切な受診行動と治療選択のための第一歩である。

2. 眼痛・異物感の解剖学的分類

Section titled “2. 眼痛・異物感の解剖学的分類”

眼痛・異物感を「どの組織に由来するか」という解剖学的観点から分類すると、受診の緊急度と鑑別疾患の絞り込みが容易になる。

表在性(眼表面・結膜・角膜)

主な症状:ゴロゴロ感・異物感・砂が入った感覚

角膜結膜・眼表面上皮に由来する痛みは「異物感・ゴロゴロ感」として自覚されることが多い。角膜上皮三叉神経末梢が密に分布するため、軽微な傷害でも強い不快感を生じる6)。瞬目(まばたき)で一時的に改善する場合はドライアイを、常時持続する場合は異物や上皮障害を疑う。

代表疾患ドライアイ角膜異物(金属片・砂粒)、角膜上皮欠損・びらん(CL障害・再発性上皮びらん)、感染性角膜炎(細菌・ウイルス・アカントアメーバ・真菌)、点状表層角膜症SPK)、アレルギー性結膜炎(掻痒感が強い)

中等深度(上強膜・強膜・虹彩)

主な症状:深い鈍痛・圧痛・刺激感・熱感

強膜・上強膜・前部ぶどう膜の炎症では、眼球全体に感じる鈍痛や圧迫感が特徴的である。上強膜炎は「症状は一過性の刺激感や熱感、異物感程度で、疼痛はなく圧痛もない」のに対し、強膜炎では「充血と眼痛が最も多く、圧痛や拍動性の激痛を訴えることが少なくない」点が鑑別の要点である。虹彩毛様体炎(前部ぶどう膜炎)では毛様充血羞明(光を嫌がる症状)を伴う。

代表疾患上強膜炎(刺激感・熱感、無痛性が多い)、前部強膜炎(びまん性・結節性:拍動性疼痛)、虹彩毛様体

深部(眼圧上昇・後部・眼窩)

主な症状:激しい眼痛・頭痛・嘔気・眼球運動時痛

眼圧の急激な上昇や眼球後部・眼窩の炎症では、眼周囲全体に及ぶ激痛・頭痛・嘔気が生じる。急性閉塞隅角緑内障発作では眼圧が40〜80 mmHgに達し、頭痛や嘔吐から消化器疾患・脳血管疾患と誤診されることがある。眼球運動時の痛みは後部強膜炎視神経炎眼窩蜂窩織炎の重要なサインである。

代表疾患:急性閉塞隅角緑内障発作(緊急)、眼内炎(術後・外傷後:激痛+視力低下)、後部強膜炎(眼球運動時痛)、視神経炎眼窩蜂窩織炎3)

3. 眼痛の主な原因(鑑別疾患テーブル)

Section titled “3. 眼痛の主な原因(鑑別疾患テーブル)”
角膜に刺入した金属性異物と錆環(ラストリング)
角膜に刺入した金属性異物と錆環(ラストリング)
Zakaria J, Peña J. Corneal Rust Ring. JETem. 2018;3(4). DOI: 10.21980/J8X067. Figure 1. Source ID: JETem2018-corneal-rust-ring. License: CC BY 4.0.
左眼角膜の3時方向に刺入した金属性異物と、その周囲に形成された錆環(矢印)を細隙灯顕微鏡で観察した写真。本文「3. 眼痛の主な原因(鑑別疾患テーブル)」の項で扱う角膜異物に対応する。

痛みの性状・随伴症状・緊急度の組み合わせで主な鑑別疾患を整理する。

痛みの性状代表的な原因疾患主な随伴症状緊急度
異物感・ゴロゴロ(軽度)ドライアイ角膜上皮障害、角膜異物、CL障害充血視力変動低〜中
刺激感・熱感(中等度)上強膜炎アレルギー性結膜炎充血・掻痒感低〜中
鈍痛・圧痛(中等度)前部強膜炎虹彩毛様体毛様充血羞明中〜高
眼球運動時の痛み後部強膜炎視神経炎眼窩蜂窩織炎視力低下・発熱・眼球突出
拍動性激痛+頭痛・嘔気急性閉塞隅角緑内障発作霧視充血角膜浮腫最緊急
突然の激痛+視力低下眼内炎角膜穿孔充血前房混濁最緊急

ドライアイ 涙液の量的・質的不安定により眼表面上皮が傷害を受ける。ムチン層・水層・脂質層のいずれかの障害が異物感・乾燥感・眼疲労の原因となる。瞬目後に一時的に異物感が軽減するのが特徴で、長時間のVDT(パソコン・スマートフォン)使用、エアコンの乾燥環境で悪化する。有病率は25〜30%とされ、最も頻度の高い眼痛原因のひとつである。

角膜異物 金属加工・木工作業・強風時の外出などで角膜に金属片・砂粒などが刺入する。細隙灯顕微鏡(スリットランプ)で異物を確認する。鉄片が刺入した場合は酸化鉄(錆)による錆環(rust ring)を形成し、除去が不完全だと治癒が遷延する。角膜異物の自己除去は角膜穿孔のリスクがあるため、必ず眼科での除去が必要である5)

コンタクトレンズ(CL)関連角膜 CL装用者の眼痛・異物感は感染性角膜炎の可能性があり、軽視できない。特にアカントアメーバ角膜炎は水道水やプールでのCL装用によって発症し、重症化すると角膜移植が必要になることがある2)。CL装用中の眼痛は外して様子を見るだけでなく、翌日以内の眼科受診が望ましい。

上強膜炎 上強膜組織(角膜輪部から3mm以内の強膜表面)の炎症。単純型(diffuse)と結節型(nodular)がある。結膜炎との鑑別が問題となることがあり、結節の数・可動性・疼痛・圧痛の有無・エピネフリン点眼反応で判定する。ほとんどは無治療でも数日から数週間で自然治癒する良性疾患である。

強膜炎 強膜全層の炎症であり、自己免疫機序が主体。関節リウマチ・SLE・HLA-B27関連疾患などの全身自己免疫疾患に合併することが多い。充血は暗赤色を呈し、自然光下での観察が重要。エピネフリン点眼でも充血が消退しない点が上強膜炎との鑑別に有用である。壊死性強膜炎は失明率が約40%と重篤であり、全身精査と積極的な治療が不可欠である8)

急性閉塞隅角緑内障発作 隅角虹彩角膜の境界)が急速に閉塞し、房水の流出が障害されて眼圧が急上昇する眼科緊急疾患。眼圧は40mmHg以上(重症では60〜80 mmHg)に達し、激しい眼痛・充血角膜浮腫による霧視・頭痛・嘔気・嘔吐を来す。頭痛・嘔吐が前景に出るため消化器疾患や脳血管疾患と誤診されることがあり、注意が必要である。東アジア人女性に多い。

Q ドライアイの異物感と角膜異物の異物感はどう見分けるか?
A

ドライアイによる異物感は、瞬目(まばたき)で一時的に改善し、朝方は比較的軽く、長時間の読書やパソコン使用後に悪化する傾向がある。両眼に生じることが多く、乾燥した環境や長時間のVDT使用と関連する。

一方、角膜異物による異物感は常に持続し、まばたきで改善しない。充血・流涙・羞明(光をまぶしく感じる症状)を伴い、異物が入ったタイミング(砂・金属片・木片の接触など)が特定できることが多い。

どちらか迷う場合や症状が翌日も続く場合は、眼科受診を強くお勧めする。角膜異物を放置すると感染・瘢痕形成の原因となる。

4. 問診のポイント(セルフチェック)

Section titled “4. 問診のポイント(セルフチェック)”

眼痛・異物感の原因を絞り込むうえで、以下の問診項目が重要である。自分自身や家族の症状を整理する際にも参考にしてほしい。

  • 発症様式:突然(急性)か徐々に(慢性)か。急性発症の眼痛は緊急疾患の可能性が高い
  • 両眼か片眼か:両眼のゴロゴロ・乾燥感はドライアイや点眼薬障害を示唆。片眼の激痛は緑内障発作・強膜炎眼内炎を示唆
  • コンタクトレンズ(CL)使用の有無:CLの種類・1日の装用時間・ケア方法・水道水への曝露歴
  • 職業・外傷歴:金属加工・木材加工・溶接・スポーツ等。異物が入った可能性の評価に必須
  • 全身疾患の有無:関節リウマチ・SLE・HLA-B27関連(強直性脊椎炎・ベーチェット病等)・甲状腺疾患・結核など。強膜炎ぶどう膜炎との関連が深い
  • 手術歴・外傷歴白内障手術・硝子体手術などの眼内手術後の眼痛増悪は眼内炎を示唆
  • 市販点眼薬・処方点眼薬の使用歴:市販点眼薬に含まれる防腐剤(塩化ベンザルコニウム等)による角膜上皮障害が異物感・眼痛の原因となりうる4)
  • 羞明(光をまぶしく感じる)の有無虹彩毛様体炎・角膜炎・緑内障発作の重要なサイン
  • 視力の変化視力低下を伴う眼痛は緊急度が格段に高まる1)

5. 受診のタイミングと緊急度の目安

Section titled “5. 受診のタイミングと緊急度の目安”
緊急度主な症状推奨される行動
最緊急(すぐ受診)激しい眼痛+頭痛・嘔気・霧視眼科救急を直ちに受診(夜間・休日も)
最緊急(すぐ受診)視力低下+眼痛の同時出現眼科救急を直ちに受診
最緊急(すぐ受診)術後・外傷後の眼痛増悪+視力低下眼内炎を念頭に直ちに受診
高(当日受診)眼球運動時の痛み+視力低下当日中に眼科受診
高(当日受診)CL装用中の眼痛・充血角膜浸潤CL外して当日受診
中(翌日以内)持続する鈍痛・圧痛・羞明翌日以内に眼科受診
低(経過観察可)軽度のゴロゴロ感(瞬目で改善)数日改善しなければ眼科受診
Q 目にゴミが入った感じがするが見当たらない。受診すべきか?
A

異物感があっても目視で異物が確認できないケースはよくある。角膜上皮のわずかな傷(点状上皮びらんなど)は、肉眼では見えなくても細隙灯顕微鏡(スリットランプ)とフルオレセイン染色で確認できる。

CL装用者の場合は直ちにCLを外すこと。その後も翌日まで改善しなければ眼科受診を推奨する。充血羞明視力低下を伴う場合はその日のうちに受診してほしい。異物感が1週間以上続くドライアイが原因の場合もあり、人工涙液の使用と生活習慣の見直しが有効なことがある。

ドライアイでみられるパッチ状角膜フルオレセイン染色(下方優位)
ドライアイでみられるパッチ状角膜フルオレセイン染色(下方優位)
Komai S, Yokoi N, Kato H, et al. Clinical Implication of Patchy Pattern Corneal Staining in Dry Eye Disease. Diagnostics (Basel). 2021;11(2):232. Figure 1. PMCID: PMC7913618. License: CC BY.
ドライアイ患者の下方角膜に点状・斑状のフルオレセイン染色(白矢印)がみられる細隙灯顕微鏡写真で、通常の点状表層角膜症とは異なるパッチ状染色パターンを示す。本文「6. 眼痛の病態生理」の項で扱うドライアイに対応する。

眼痛・異物感が生じる機序は疾患によって異なる。代表的な病態を以下に整理する。

角膜の神経支配と疼痛感受性 角膜は体表の中で最も神経密度が高い組織のひとつであり、三叉神経(眼神経分枝)の密な支配を受ける。この高い神経密度のために、軽微な上皮傷害・乾燥・異物でも強い異物感・疼痛が生じる6)。TFOS DEWS IIの疼痛・感覚レポートは、ドライアイにおける神経因性疼痛(neuropathic ocular pain)の概念を整理し、神経の過敏化が慢性化した異物感・眼痛に関与することを示している6)

ドライアイ 涙液の量的・質的不安定により眼表面上皮が傷害を受ける。涙液は脂質層・水層・ムチン層の3層構造であり、いずれの異常も涙液破壊時間(BUT)の短縮と眼表面の乾燥を引き起こす。上皮傷害が進むと点状表層角膜症SPK)が生じ、角膜知覚の閾値が低下して異物感・眼痛が増強するという悪循環が形成される。

上強膜炎 病理組織学的には非肉芽腫性であり、血管拡張とリンパ球浸潤が主体。炎症が上強膜組織に限局するため、深在性強膜炎より症状が軽度で自然治癒傾向がある。

強膜炎 自己免疫機序が主体の強膜全層の炎症。強膜は無血管の緻密結合組織であり、一旦炎症が生じると壊死・穿孔に至ることがある。関節リウマチ・SLE・HLA-B27関連疾患・肉芽腫性多発血管炎(GPA)などの全身自己免疫疾患を約50%に合併する。壊死性強膜炎強膜が薄くなり青黒く透見されるようになり、視力予後が特に不良である8)

急性閉塞隅角緑内障発作 瞳孔ブロック虹彩後面と水晶体前面の癒着)によって後房圧が上昇し、虹彩が前方に膨隆(虹彩膨隆)して周辺隅角が急速閉塞する。房水流出不能により眼圧が急激に上昇(40mmHg以上)し、視神経乳頭の血流が障害される。高眼圧による視神経虚血が持続すると不可逆的な視神経障害・視野欠損をきたす。東アジア女性に多く、遠視眼・浅前房・小角膜が解剖学的リスク因子である。

市販点眼薬の防腐剤による眼表面障害 市販点眼薬に含まれる塩化ベンザルコニウム(BAC)などの防腐剤は、頻回使用により角膜上皮のムチン発現を低下させ、上皮バリア機能を損傷する。長期多剤使用による薬剤性角膜症(toxic keratopathy)が慢性的な異物感・眼痛の原因となることがある4)

ドライアイの新規治療 ジクアホソルナトリウム(3%、1日6回)およびレバミピド(2%、1日4回)は、従来の人工涙液・ヒアルロン酸点眼に加えた新しい作用機序のドライアイ治療薬として普及が進んでいる。ジクアホソルはP2Y2受容体を介して涙液分泌と杯細胞からのムチン分泌を促進し、蛍光染色パターンによる新しいドライアイ分類との対応が検討されている7)

コンタクトレンズ関連感染症の疫学変化 CL使用人口の増加・長時間装用の一般化に伴い、アカントアメーバ角膜炎の発症頻度が増加傾向にある。特に水道水を用いたCLケア(保存・洗浄)がリスクを大幅に高めることが明らかにされており2)、適切なCLケア指導と定期検査の重要性が再認識されている。

強膜炎に対する生物学的製剤 関節リウマチや血管炎などの自己免疫疾患を背景に持つ難治性強膜炎に対して、TNF-α阻害薬(インフリキシマブアダリムマブ)・IL-6受容体拮抗薬(トシリズマブ)など生物学的製剤の有効性が報告されている8)ステロイド全身投与でコントロール困難な症例での選択肢として位置づけられるようになってきた。

眼痛評価スケールの標準化 慢性的な眼表面痛・異物感を客観的に定量化するため、Ocular Pain Assessment Survey(OPAS)などの患者報告アウトカム(PRO)尺度の信頼性・妥当性検証が進んでいる9)。眼痛の神経因性メカニズムの解明と治療標的の同定が、難治性ドライアイ関連疼痛の治療改善につながることが期待されている。

  1. Galor A, Levitt RC, Felix ER, et al. Neuropathic ocular pain: an important yet underevaluated feature of dry eye. Eye (Lond). 2015;29(3):301-312.

  2. Carnt N, Stapleton F. Strategies for the prevention of contact lens-related Acanthamoeba keratitis: a review. Ophthalmic Physiol Opt. 2016;36(2):109-124.

  3. Tsirouki T, Dastiridou AI, Ibánez Flores N, et al. Orbital cellulitis. Surv Ophthalmol. 2018;63(4):534-553.

  4. Baudouin C, Labbé A, Liang H, et al. Preservatives in eyedrops: the good, the bad and the ugly. Prog Retin Eye Res. 2010;29(4):312-334.

  5. Ahmed F, House RJ, Feldman BH. Corneal abrasions and corneal foreign bodies. Prim Care. 2015;42(3):363-375.

  6. Belmonte C, Nichols JJ, Cox SM, et al. TFOS DEWS II pain and sensation report. Ocul Surf. 2017;15(3):404-437.

  7. Yokoi N, Georgiev GA, Kato H, et al. Classification of fluorescein breakup patterns: a novel method of differential diagnosis for dry eye. Am J Ophthalmol. 2017;180:72-85.

  8. Sims J. Scleritis: presentations, disease associations and management. Postgrad Med J. 2012;88(1046):713-718.

  9. Qazi Y, Hurwitz S, Khan S, et al. Validity and reliability of a novel Ocular Pain Assessment Survey (OPAS) in quantifying and monitoring corneal and ocular surface pain. Ophthalmology. 2016;123(7):1458-1468.

記事の全文をコピーして、お好みのAIに貼り付けて質問できます