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角膜・外眼部疾患

アレルギー性結膜炎(花粉症含む)

アレルギー性結膜疾患(allergic conjunctival disease:ACD)は、「Ⅰ型アレルギー反応を主体とした結膜の炎症性疾患であり、抗原により惹起される自覚症状・他覚所見を伴うもの」と定義される1)。単にアレルギー素因を有するだけでは診断されず、搔痒感・異物感・眼脂・流涙などの自覚症状と結膜の炎症性変化がそろって初めて ACD と診断される。

日本眼科アレルギー学会「アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン第3版」は、結膜の増殖性変化(眼瞼結膜の乳頭増殖・巨大乳頭・輪部結膜の腫脹や堤防状隆起)の有無、アトピー性皮膚炎の合併、異物による機械的刺激の有無に基づいて病型を分類している1)

  • アレルギー性結膜炎(AC)結膜に増殖性変化を伴わない病型。症状発現が季節性のものを季節性アレルギー性結膜炎(SAC)、通年性のものを通年性アレルギー性結膜炎(PAC)と呼ぶ。SACのなかでも花粉によるものは「花粉性結膜炎」とも呼ばれ、スギ花粉をはじめ地域の主要花粉が代表的抗原となる1)
  • アトピー性角結膜炎AKC:顔面のアトピー性皮膚炎に合併する慢性 ACD。結膜の線維化や角膜新生血管・混濁を伴うことが多い1)。Hogan らが1952年に両眼性角結膜炎を伴うアトピー性湿疹の5症例を報告したのが初報とされる2)
  • 春季カタルVKC結膜に増殖性変化を認める重症型。角膜上皮障害・遷延性角膜上皮欠損・シールド潰瘍(楯型潰瘍)・角膜プラークなど多彩な角膜病変を伴いうる1)
  • 巨大乳頭結膜炎GPC:コンタクトレンズ・義眼・手術用縫合糸などの機械的刺激に起因し、上眼瞼結膜に増殖性変化を認める病型。コンタクトレンズ関連乳頭結膜炎のうち、乳頭直径が1mm 以上の最重症型に相当する1)

眼科主導で行われた全国調査として、1993〜1995年の日本眼科医会アレルギー眼疾患調査、1993年の厚生省フィールド調査、2017年の日本眼科アレルギー研究会有病率調査がある1, 4)。2017年の有病率調査では、有病率・病型別分布・年齢分布が次のように報告されている。

指標調査結果
ACD全体の有病率48.7%(1993年の15〜20%から顕著に増加)
スギ・ヒノキによる SAC37.4%
通年性アレルギー性結膜炎(PAC)14.0%
スギ・ヒノキ以外の SAC8.0%
アトピー性角結膜炎AKC5.3%
春季カタルVKC1.2%
巨大乳頭結膜炎GPC0.6%
ACD全体の年齢分布40代にピーク、10代に小ピーク
SAC地域偏在首都圏および中部地方で高値

出典:日本眼科アレルギー学会診療ガイドライン作成委員会「アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン第3版」1)および岡本ら「2017年度日本眼科アレルギー学会アレルギー性結膜疾患実態調査」4)

PAC は10代と40代に2峰性のピークを持ち、SAC は小児から年齢とともに有病率が上昇する。SAC ではアレルギー性鼻炎の合併が65〜70%と高率である1)AKC はアトピー性皮膚炎患者の25〜40%に併発すると推定される5)

Q アレルギー性結膜疾患の4つの病型はどのように違いますか?
A

日本眼科アレルギー学会の診療ガイドライン第3版では、結膜の増殖性変化の有無、アトピー性皮膚炎の合併、機械的刺激の有無により4つの病型に分類される。増殖性変化がないものがアレルギー性結膜炎(季節性SACと通年性PACに細分)、顔面のアトピー性皮膚炎を伴うものがアトピー性角結膜炎AKC)、増殖性変化と重症角膜病変を伴うものが春季カタルVKC)、コンタクトレンズや義眼などの機械的刺激によるものが巨大乳頭結膜炎GPC)である。

アレルギー性結膜炎の結膜充血、結膜浮腫、眼瞼浮腫を示す臨床写真
Dupuis P, et al. A contemporary look at allergic conjunctivitis. Allergy Asthma Clin Immunol. 2020. Figure 3. PMCID: PMC6975089. License: CC BY.
結膜充血結膜浮腫、眼瞼浮腫を示すアレルギー性結膜炎の臨床写真である。眼表面と眼瞼の炎症所見が直接観察でき、主な症状と臨床所見の説明に対応する。

ACD で代表的な自覚症状は搔痒感・異物感・眼脂であり、なかでも眼搔痒感は最も特異度が高い症状である1)

  • 眼搔痒感:ACD の最も特徴的な症状。マスト細胞から遊離されたヒスタミンが知覚神経終末を刺激して発生する。小児や高齢者では搔痒感として訴えず、異物感や違和感と表現することもある1)
  • 異物感:「ごろごろする」という訴え。多数の結膜乳頭が瞬目時に角膜と接触することで生じる場合が多い1)
  • 眼脂:漿液性・粘液性が中心で、白色または半透明の糸を引くような粘稠性眼脂が特徴である。好中球主体の細菌性眼脂とは性状が異なる1)VKC では黄色の粘性眼脂がみられることがある。
  • 流涙・充血:頻度は高いが特異性は低い。
  • 眼痛羞明視力低下角膜病変を伴う場合にみられ、重症度と相関する1)
  • GPC 特有の訴え:コンタクトレンズ使用時の軽度の異物感から始まり、レンズのずれやすさ・汚れやすさ、眼脂増加、かすみを順に自覚することが多い。

重症度評価では、眼瞼結膜・眼球結膜輪部角膜の各部位を分けて観察する1)。代表的な項目を以下に示す。

部位項目重症度の目安
眼瞼結膜充血軽度:数本、中等度:多数、高度:血管の識別不能
眼瞼結膜乳頭軽度0.1〜0.2mm、中等度0.3〜0.5mm、高度0.6mm 以上
眼瞼結膜巨大乳頭直径1mm 以上。上眼瞼結膜の1/2未満で中等度、1/2以上で高度
眼球結膜浮腫部分的=軽度、びまん性=中等度、胞状=高度
輪部Trantas 斑1〜4個=軽度、5〜8個=中等度、9個以上=高度
角膜上皮障害点状表層角膜炎→落屑様点状表層角膜炎→シールド潰瘍

出典:日本眼科アレルギー学会「アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン第3版」の重症度評価をもとに作成1)

季節性・通年性AC

結膜充血・浮腫:両眼性の軽度充血結膜腫脹。

増殖性変化なし:巨大乳頭や輪部増殖は認めない。

角膜合併症なし:基本的に角膜病変は伴わない。

春季カタル 眼瞼型

石垣状巨大乳頭:上眼瞼結膜に硬い石垣状の乳頭が並ぶ1)

粘液性眼脂:糸状・粘液性の眼脂を多量に伴う。

角膜合併症点状表層角膜炎、落屑様点状表層角膜炎、シールド潰瘍(楯型潰瘍)、角膜プラークを生じる1, 14)

春季カタル 輪部型

堤防状隆起角膜輪部にゼラチン様の隆起を形成する。

Trantas斑:変性した結膜上皮と好酸球の集合による白色小隆起1)

老人環輪部型の強い炎症後に残る老人環様混濁1)

アトピー性角結膜炎

湿疹性眼瞼炎:顔面のアトピー性皮膚炎と連続する。眼瞼肥厚や睫毛乱生・脱毛を伴う。

結膜色素沈着・瞼球癒着:長期経過で結膜嚢短縮や瞼球癒着をきたす1, 12)

角膜合併症点状表層角膜炎から遷延性上皮欠損・角膜潰瘍へ進行しうる。

巨大乳頭結膜炎

特徴的な乳頭:円形・境界鮮明・表面平滑で融合せず、隆起丈が低い。春季カタルの巨大乳頭とは形態が異なる1)

角膜合併症は稀:機械的刺激が主因で、炎症は軽度にとどまることが多い。

IgE陽性率は低い:Ⅰ型アレルギーの関与が必ずしも明らかでない1)

病型ごとに原因抗原の分布は大きく異なる。血清抗原特異的IgE抗体測定では、ダニ・ハウスダスト・ハンノキ・スギ・ヒノキ・ハルガヤ・カモガヤ・ヨモギ・ブタクサ・カンジダ・アルテルナリア・ネコ上皮・イヌ上皮などを含む「PACセット」が保険適用項目として用いられる1)

病型主な原因抗原季節性
季節性アレルギー性結膜炎(SAC)スギ・ヒノキ(春)、カモガヤ・オオアワガエリ等イネ科(初夏)、ブタクサ・ヨモギ等キク科(秋)あり
通年性アレルギー性結膜炎(PAC)ダニ・ハウスダスト、カビ、ペット上皮なし
アトピー性角結膜炎AKC多感作(ダニ・ハウスダスト・花粉・食物等)、アトピー素因慢性
春季カタルVKCハウスダスト・ダニが多いが、花粉・動物のフケなど多抗原にも反応増悪あり
巨大乳頭結膜炎GPCコンタクトレンズ素材・レンズ沈着物、義眼、露出縫合糸なし
  • アトピー素因・家族歴:気管支喘息・アレルギー性鼻炎・アトピー性皮膚炎の家族歴はリスクを高める。AKC ではフィラグリン遺伝子異常をはじめとする皮膚バリア機能障害が関連する5)
  • 都市生活・環境因子:大気汚染・喫煙・乾燥環境はACDの増悪因子となりうる6)
  • デュピルマブ:重症アトピー性皮膚炎治療に用いられるIL-4受容体α鎖抗体デュピルマブでは、結膜炎の併発リスク比が2.64と報告されており、AKCの治療経過中にも注意が必要である1)
  • 眼こすり習慣:痒みによる慢性的な眼こすりは、円錐角膜やアトピー白内障のリスク因子となる5, 12)。特に AKC では慢性的な機械的刺激が角膜構造の脆弱化を促進し、若年発症の円錐角膜との関連が指摘されている5)
Q 花粉症シーズンに自宅でできる対策は何ですか?
A

花粉対策では、ゴーグル型または通常の眼鏡着用、可能であればコンタクトレンズを中止して眼鏡に切り替えること、防腐剤無添加の人工涙液による洗眼(水道水は角膜を傷めるため不可)、外出時に滑りのよい生地の上着を着用し玄関で脱ぐこと、帰宅後の洗顔・うがいが有用である。さらに花粉飛散予測日の約2週間前から抗アレルギー点眼薬を開始する「初期療法」が有効である。

診断は、臨床症状・Ⅰ型アレルギー素因・眼局所でのⅠ型アレルギー反応の3要素に基づいて3段階で行う1)

  • 臨床診断(Aのみ):ACDに特有な臨床症状がある。
  • 臨床的確定診断(A+B):臨床症状に加え、涙液中総IgE抗体陽性、血清抗原特異的IgE抗体陽性、または推定抗原と一致する皮膚反応が陽性。
  • 確定診断(A+B+C、またはA+C):上記に加え、結膜擦過物中の好酸球が陽性。

A:臨床症状あり/B:Ⅰ型アレルギー素因あり/C:結膜でのⅠ型アレルギー反応あり。

自覚症状と他覚所見のなかでは、強度の眼搔痒感、巨大乳頭、輪部増殖、シールド潰瘍が特に特異度の高い所見とされる1)

  • 結膜擦過物中好酸球検査:点眼麻酔後に上眼瞼を翻転し、硝子棒で瞼結膜を軽くマッサージしてから、スパーテルで粘液を採取してプレパラートに塗抹する。Hansel染色またはGiemsa染色を行い、光学顕微鏡下で好酸球を1つでも確認できれば陽性と判定する1, 3)
  • 涙液中総IgE抗体検査(アレルウォッチ®):わかもと製薬/ミナリスメディカルの迅速診断キットで、免疫クロマトグラフィー法により涙液を検体として検査する。ACDに対する感度73.6%、特異度100%と報告される1)。病型別の陽性率はSAC 61.9%、PAC 65.4%、AKC 80.5%、VKC 94.7%、GPC 75.0%であり、全体では72.2%と報告されている3)
  • 点眼誘発試験:既知の抗原液を点眼して結膜炎症状の誘発を確認する方法だが、本邦では保険適用がなく標準化されていない1)
  • 血清抗原特異的IgE抗体検査:ダニ、ハウスダスト、スギ、ヒノキ、カモガヤ、ブタクサ、ヨモギ、イヌ・ネコ上皮など、PACセットの項目を中心に選択する。保険適用は13項目までである1, 3)。スクリーニング用として、多項目同時測定が可能な View アレルギー39(Thermo Fisher Diagnostics)やマストイムノシステムズⅤ(ミナリスメディカル)も保険適用で使用できる3)
  • 皮膚反応(プリックテスト・スクラッチテスト):膨疹径3mm以上、あるいは陽性コントロール膨疹の半分以上で陽性と判定する。陽性コントロール(偽陰性確認)と陰性コントロール(機械性蕁麻疹確認)を併用する。ヒスタミンH₁受容体拮抗薬や三環系抗うつ薬は偽陰性をきたすため、検査前の休薬期間に注意が必要である3)。重度の気管支喘息・アナフィラキシー既往・重大な心血管疾患がある症例では慎重に検討する。

臨床診断では、眼搔痒や充血を主訴とする症例をまず結膜増殖性変化の有無で振り分ける。増殖性変化がなければ季節性の有無により SAC/PAC を判断し、増殖性変化があればコンタクトレンズ装用の有無、さらにアトピー性皮膚炎の有無から GPCAKCVKC を鑑別する1)

鑑別診断では、以下の疾患を特に確認する1)

  • ウイルス性結膜炎:アデノウイルス(流行性角結膜炎咽頭結膜熱)、単純ヘルペスウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、エンテロウイルス、SARS-CoV-2など。急性発症・片眼性・耳前リンパ節腫脹が参考になり、アデノウイルスは迅速診断キットで抗原を証明する。
  • 細菌性結膜炎:黄色ブドウ球菌・肺炎球菌・インフルエンザ菌などが起炎菌。粘液膿性の黄〜黄緑色眼脂と結膜擦過物中の多核白血球で鑑別する。
  • クラミジア結膜炎:成人では片眼性の急性濾胞性結膜炎として発症し、下眼瞼結膜円蓋部の巨大濾胞が特徴的である。
  • 結膜濾胞症:小児の下眼瞼結膜円蓋部にみられる粟粒大濾胞で、自覚症状がなく病的意義に乏しい。
  • ドライアイBUT短縮を伴い、ACDとしばしば合併する1)
Q ウイルス性結膜炎とアレルギー性結膜炎はどう見分けますか?
A

眼搔痒感が強く、両眼性で漿液性・粘液性の白色眼脂が主体で、アレルギー素因(アレルギー性鼻炎や皮膚炎の合併、家族歴)がある場合はアレルギー性結膜炎を疑う。一方、急性発症で片眼から始まり、粘液膿性あるいは黄色眼脂、耳前リンパ節腫脹、発熱や咽頭痛を伴う場合は感染性結膜炎を考え、アデノウイルス迅速診断や結膜擦過物検査を行う。両者の診断基準は日本眼科アレルギー学会のガイドライン第3版に詳述されている。

治療の第一選択は全病型で抗アレルギー点眼薬であり、重症度に応じてステロイド点眼薬・免疫抑制点眼薬を追加する1)。難治性重症例には、ステロイド内服薬・ステロイド結膜下注射・結膜乳頭切除術などの外科的治療も選択肢となる。

抗アレルギー点眼薬は、作用機序により2系統に大別される1, 13)

  • メディエーター遊離抑制薬:肥満細胞の脱顆粒を阻害し、ヒスタミン・ロイコトリエン・トロンボキサンA₂などの遊離を抑制してⅠ型アレルギー即時相反応を軽減する。炎症細胞の結膜局所浸潤を抑えることで遅発相にも作用する。
  • ヒスタミンH₁受容体拮抗薬:肥満細胞から放出されたヒスタミンのH₁受容体結合を競合阻害し、充血や眼搔痒感を抑制する。搔痒感に対する即効性はメディエーター遊離抑制薬より優れると報告される。

代表的な薬剤を下表にまとめる。

分類一般名代表的商品名濃度・用法
メディエーター遊離抑制薬ペミロラストカリウムアレギサール点眼液0.1% 1日2回
メディエーター遊離抑制薬トラニラストリザベン点眼液0.5% 1日4回
メディエーター遊離抑制薬イブジラストケタス点眼液0.01% 1日4回
メディエーター遊離抑制薬アシタザノラスト水和物ゼペリン点眼液0.1% 1日4回
H₁受容体拮抗薬ケトチフェンフマル酸塩ザジテン点眼液0.05% 1日4回
H₁受容体拮抗薬レボカバスチン塩酸塩リボスチン点眼液0.025% 1日4回
H₁受容体拮抗薬オロパタジン塩酸塩パタノール点眼液0.1% 1日4回
H₁受容体拮抗薬エピナスチン塩酸塩アレジオン点眼液/アレジオンLX点眼液0.05% 1日4回/0.1% 1日2回

出典:日本眼科アレルギー学会「アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン第3版」の抗アレルギー点眼薬一覧をもとに作成1)

ケトチフェン・オロパタジン・エピナスチンはヒスタミンH₁受容体拮抗作用に加え、in vitro でメディエーター遊離抑制作用も確認されている。アレジオンLX は防腐剤を含まないためコンタクトレンズ装用者への処方が行いやすい。

初期療法(季節性アレルギー性結膜炎)

Section titled “初期療法(季節性アレルギー性結膜炎)”

季節性アレルギー性結膜炎では、花粉飛散予測日の約2週間前、あるいは症状が少しでも現れた時点で抗アレルギー点眼薬を開始する初期療法が推奨される1)。花粉飛散ピーク時の症状を軽減し、一部の報告では約30%の患者で花粉症症状の発現そのものを抑制したとされている。通年性アレルギー性結膜炎でも、マスト細胞膜安定化を通年で維持するためにメディエーター遊離抑制薬が有効である。

1) 季節性・通年性アレルギー性結膜炎(SAC / PAC)

Section titled “1) 季節性・通年性アレルギー性結膜炎(SAC / PAC)”
  • 第一選択:抗アレルギー点眼薬(メディエーター遊離抑制薬またはH₁拮抗薬)1)
  • 症状が強い時期や鼻炎症状を伴う場合:抗アレルギー薬の内服、必要に応じてNSAID点眼薬を併用1)
  • 抗アレルギー点眼薬でコントロールできない場合:ステロイド点眼薬を短期併用する。SAC/PACへのステロイド点眼薬使用は条件付きで推奨されており1)、第一選択にはせず、眼圧測定を定期的に行ったうえで短期間使用するのが原則である。
  • コンタクトレンズ装用者やドライアイ合併例では、防腐剤無添加製剤を選択する。
  • 第一選択は抗アレルギー点眼薬。効果不十分な症例では、ステロイド点眼薬あるいは免疫抑制点眼薬を併用する1)
  • AKC では炎症を抑える目的でステロイド点眼薬を用いる1)
  • タクロリムス点眼薬も有用な選択肢だが、本邦での保険適用は春季カタルのみである1, 8)シクロスポリン点眼薬も AKC に対して治療選択肢となる1)
  • アトピー眼瞼炎の治療を並行して行う必要があり、皮膚科・アレルギー科との連携が必須である5)
  • ステロイド内服薬を処方する場合は、内科・皮膚科の専門医と連携する1)
  • デュピルマブを含む生物学的製剤や経口シクロスポリンによる全身治療が行われる症例では、デュピルマブ関連結膜炎の併発リスク比2.64に留意する1)

春季カタルでは、重症度に応じて段階的に治療を強化する1, 7)

  1. まず抗アレルギー点眼薬を基盤として処方する。
  2. 中等症以上では免疫抑制点眼薬を追加する。タクロリムス点眼薬は効果の根拠が比較的強く、シクロスポリン点眼薬も条件付きで推奨される1, 8, 9)
  3. 2剤で改善が得られない重症例では、さらにステロイド点眼薬を追加する1)
  4. 増殖性変化に対するシクロスポリンステロイド併用、重症例に対するタクロリムス+ステロイド併用はいずれも条件付きで検討される1)
  5. 点眼でコントロールできない最重症例には、ステロイド内服薬・ステロイド結膜下注射・結膜乳頭切除術・角膜プラーク掻爬術を検討する1)。瞼結膜下注射にはトリアムシノロンアセトニドまたはベタメタゾンリン酸エステルナトリウム懸濁液を用いるが、眼圧上昇に注意し、繰り返しの使用や10歳未満への使用は避ける1)
  6. 症状改善後は、ステロイド点眼薬を低力価へ切り替えたうえで漸減・中止し、抗アレルギー点眼薬と免疫抑制点眼薬の2剤でコントロールする。

プロアクティブ療法:寛解期間が長くなれば、免疫抑制点眼薬を1日2回→1日1回→週2回というように段階的に減量し、最終的に少量の維持量を継続する。再燃防止のために症状をみながら投与量を調整する1)

  • 原因除去が最重要である。コンタクトレンズが原因の場合は原則として装用を中止する。再装用する際は、1日使い捨てソフトコンタクトレンズへの変更やレンズ素材・形状の変更、擦り洗い指導・ケア用品の変更を行う1)
  • 第一選択は抗アレルギー点眼薬(主にメディエーター遊離抑制薬)で、重症例では短期間のステロイド点眼薬(例:0.1%フルオロメトロン 1日4回)を併用する。点眼中は眼圧測定を行う。
  • 義眼が原因の場合は、義眼の新調や種類の変更を検討する1)

免疫抑制点眼薬(VKC に保険適用)

Section titled “免疫抑制点眼薬(VKC に保険適用)”

シクロスポリン点眼薬

商品名:パピロックミニ点眼液0.1%1)

用法:1日3回点眼

特性:T細胞のカルシニューリン経路を阻害する免疫抑制薬。抗アレルギー点眼薬・ステロイド点眼薬との併用でステロイド漸減が可能となる1, 9)輪部VKCに効果的。効果発現にやや時間を要する。

診療上の位置づけVKCへの使用が条件付きで推奨され、結膜増殖性変化に対してはステロイド点眼薬との併用も検討される1)

タクロリムス点眼薬

商品名:タリムス点眼液0.1%1)

用法:1日2回点眼

特性シクロスポリンより強い免疫抑制効果を持ち、ステロイド抵抗性の重症例にも単剤で効果がみられる1, 8)。アトピー性皮膚炎合併例に対しても有用。

診療上の位置づけVKCAKC で重要な治療選択肢となるが、AKCは保険適用外である。重症結膜増殖性変化ではステロイド点眼薬との併用も検討される1)

両剤とも点眼時の刺激感・熱感を伴うことがあり、使用中はヘルペス性角膜炎をはじめとする感染症の併発に注意する。小児・成人ともに VKC に適応がある1)

AKCの経過で生じる合併症には、それぞれ外科的治療が必要となることがある5)

  • 羊膜移植:遷延性角膜上皮欠損に対して施行される。
  • 角膜移植角膜混濁・重度の潰瘍・菲薄化に対して行われるが、AKC 患者では拒絶反応率が高く、術後も厳密な炎症管理が必要である。
  • 白内障手術:前嚢下・後嚢下混濁を呈するアトピー白内障に対して施行される。
  • 眼瞼手術睫毛乱生眼瞼外反・内反の矯正。
Q 春季カタルやアトピー性角結膜炎にはなぜ免疫抑制点眼薬が必要ですか?
A

春季カタルアトピー性角結膜炎では、Ⅰ型アレルギー反応に加えてTh2細胞(2型ヘルパーT細胞)が病態形成に深く関与する。T細胞を制御できない通常の抗アレルギー点眼薬だけではコントロールが難しい症例があり、シクロスポリンやタクロリムスといった免疫抑制点眼薬がT細胞活性化を抑え、好酸球浸潤・増殖性変化・角膜上皮障害を改善する。特にタクロリムス点眼薬は、重症例で重要な治療選択肢となる。

Q ステロイド点眼薬は長期に使っても大丈夫ですか?
A

ステロイド点眼薬は、抗アレルギー点眼薬でコントロールできない症例に短期併用することが基本であり、第一選択とはしない。眼圧上昇・白内障形成・感染症誘発のリスクがあり、特に小児では眼圧上昇の頻度が高いため、使用中は定期的に眼圧を測定する必要がある。春季カタルでは免疫抑制点眼薬との併用でステロイドを漸減できるため、ステロイド単剤の長期連用は避けるのが原則である。

6. 病態生理学・詳細な発症機序

Section titled “6. 病態生理学・詳細な発症機序”

Ⅰ型アレルギー即時相と遅発相

Section titled “Ⅰ型アレルギー即時相と遅発相”

アレルギー性結膜炎の基本的な発症機序はⅠ型(即時型)アレルギー反応である。

即時相(抗原曝露後約15分以内):結膜に到達したアレルゲンが、感作された結膜マスト細胞表面のIgE抗体と架橋すると、マスト細胞が脱顆粒を起こし、ヒスタミン・トリプターゼ・ロイコトリエン・プロスタグランジンなどの化学伝達物質が一斉に放出される10, 11)。放出されたヒスタミンはH₁受容体を介して毛細血管拡張・血管透過性亢進・知覚神経刺激・粘液分泌亢進を引き起こし、眼搔痒感・結膜充血結膜浮腫・流涙として顕在化する。

遅発相(数時間後):サイトカイン(IL-4、IL-5、IL-13など)および接着分子(ICAM-1、VCAM-1など)の発現により、好酸球・好中球・リンパ球・好塩基球が結膜局所へ浸潤する10, 11)。好酸球から放出される主要塩基性蛋白(MBP)・好酸球カチオン性蛋白(ECP)などの組織傷害性蛋白が角結膜上皮を障害し、点状表層角膜炎・遷延性角膜上皮欠損・シールド潰瘍などの角膜病変を引き起こす14)

Th2細胞と春季カタル・AKC の特殊病態

Section titled “Th2細胞と春季カタル・AKC の特殊病態”

軽症のSAC/PACがⅠ型即時相を中心とするのに対し、春季カタルおよびアトピー性角結膜炎ではTh2細胞(2型ヘルパーT細胞)が病態形成の中心的役割を担う1, 13)。動物モデルでは、Ⅰ型アレルギー反応単独では強い結膜好酸球浸潤は誘導されず、Th2細胞を関与させると初めて高度な好酸球浸潤が誘導される。春季カタルの巨大乳頭の病理組織像では、好酸球浸潤・線維芽細胞増生・細胞外マトリックス沈着に加え、多数のT細胞浸潤がみられる。涙液中好酸球数は角膜障害の重症化指標と相関することが報告されている13)

AKC結膜組織では、Ⅰ型過敏反応に加え、T細胞・マクロファージ・樹状細胞の浸潤を特徴とするⅣ型(遅延型)過敏反応も関与する。杯細胞の増殖、上皮への好酸球・マスト細胞浸潤、固有層の単核球浸潤が組織学的特徴であり、角膜知覚低下と結膜杯細胞密度の減少も報告されている5, 14)

スギ花粉は粒子径が大きく結膜上皮を直接通過できない。しかし涙液の水分を吸収した花粉が破裂(ハッチアウト)すると、抗原タンパク質(Cry j 1、Cry j 2など)が溶出して結膜上皮を通過し、深部のマスト細胞に到達してアレルギー反応を開始する。人工涙液による涙液の希釈・花粉洗い流しが予防に有効なのはこの機序のためである。

GPC はⅠ型アレルギーの関与が必ずしも明らかではなく、コンタクトレンズやその沈着物、露出縫合糸などによる反復的な機械的刺激と、レンズ素材・沈着タンパクへの免疫反応が主因と考えられている1)結膜組織には好酸球・マスト細胞・好塩基球の浸潤がみられるが、血清抗原特異的IgE抗体陽性率や好酸球陽性率は他の病型より低い1)

AKC に特徴的な眼合併症の発症機序は以下のように整理される5, 12)

  • 円錐角膜:慢性的な眼こすりによる角膜への反復的機械的損傷と、慢性炎症による角膜構造の脆弱化が関与する。
  • アトピー白内障:前嚢下・後嚢下混濁を特徴とし、ステロイド使用と独立した水晶体混濁として発症する。
  • 単純ヘルペス角膜炎AKC患者では両眼性のヘルペス性角膜炎のリスクが高く、免疫抑制治療中は特に注意が必要である。
  • 網膜剝離:アトピー性皮膚炎患者で頻度が高いとされ、眼掻破行動との関連が示唆されている。

オマリズマブ(抗IgEモノクローナル抗体)は気管支喘息や慢性蕁麻疹に使用される生物学的製剤だが、海外の症例報告・小規模観察研究では、難治性春季カタルや重症アトピー性角結膜炎に対する効果が報告されている。本邦での眼疾患への保険適用はなく、現時点では研究段階の選択肢と位置づけられる11)

JAK阻害薬(ウパダシチニブなど):JAK-STAT経路の選択的阻害によりIL-4/IL-13シグナルを抑え、デュピルマブに伴う結膜炎を回避しつつ皮膚・眼症状の両方を改善する可能性が検討されている。

補体C5とロイコトリエンB4を同時に阻害する点眼薬(rVA576)の第I相臨床試験など、複数の標的を同時に抑える新規分子が開発段階にある。

プロバイオティクス:出生前および出生後のプロバイオティクス摂取がアトピー性疾患の発症率を最大30%低下させる可能性が報告されているが、結論的なエビデンスは確立されていない。抗菌薬の使用が腸内細菌叢の変化を介してアトピー性疾患リスクを高める可能性も提唱されている。

母乳育児:特に生後3か月以前の母乳育児がアトピー性疾患の防御因子である可能性が示唆されている。ビタミンやミネラルのサプリメントについては有益性のエビデンスは得られていない。

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