コンテンツにスキップ
小児眼科・斜視

小児のアレルギー性結膜炎

1. 小児のアレルギー性結膜炎とは

Section titled “1. 小児のアレルギー性結膜炎とは”

アレルギー性結膜疾患(allergic conjunctival disease:ACD)は、「I型アレルギー反応を主体とした結膜の炎症性疾患であり、抗原により惹起される自覚症状・他覚所見を伴うもの」と定義される1)。原因抗原が結膜囊に入り涙液に溶出すると、結膜組織内に侵入してIgEと結合し、受容体を介して肥満細胞を刺激する。その結果、ヒスタミンをはじめとするケミカルメディエーターが遊離し、血管と知覚神経終末に作用して瘙痒感・結膜充血・浮腫を誘発する。単にアレルギー素因を有するだけではACDと診断せず、自覚症状と結膜の炎症性変化がそろって初めてACDと診断される1)

小児の有病率は約20%とされ、近年さらに増加および低年齢化の傾向がある。2017年の全国疫学調査(日本眼科アレルギー研究会)では、ACD全体の有病率は48.7%に達し、1993年調査の推定15〜20%から大幅に増加している1)。疾患分類別の有病率は、スギ・ヒノキによるSAC 37.4%、PAC 14.0%、その他のSAC 8.0%、AKC 5.3%、VKC 1.2%、GPC 0.6%と報告されている1)。ACD全体は40代にピークがあり、10代にも小さなピークがみられる。SACでは小児から年齢とともに有病率が上昇し、地域的にはスギ花粉飛散量と相関して首都圏・中部地方で高い傾向がある1)

ACDは4病型に分類される。増殖性変化の有無・アトピー性皮膚炎の合併・機械的刺激の有無が分類の軸となる。

病型増殖性変化アトピー性皮膚炎機械的刺激特徴
季節性アレルギー性結膜炎(SAC)なし不問なし花粉が主因。毎年同時期に発症
通年性アレルギー性結膜炎(PAC)なし不問なしハウスダスト・ダニが主因。通年性
アトピー性角結膜炎AKCなし〜ありありなし顔面AD合併。慢性で結膜線維化
春季カタルVKCあり合併あり多いなし学童男児に好発。巨大乳頭・角膜障害
巨大乳頭結膜炎GPCあり不問ありCL・義眼・縫合糸が原因

**季節性アレルギー性結膜炎(SAC)**は花粉症に代表される。スギ・ヒノキ等の花粉飛散時期に一致して発症し、鼻炎症状の合併が65〜70%と高率である1)。有病率はスギ・ヒノキによるSAC 37.4%、その他のSAC 8.0%である1)

**通年性アレルギー性結膜炎(PAC)**は、ハウスダスト・ダニを主要抗原として季節性なく症状が持続する。有病率は14.0%である1)

**春季カタルVKC)**は10歳前後の男児に好発する増殖性のACDで、アトピー性皮膚炎の合併例も多い。有病率は1.2%と低いが、シールド潰瘍など重篤な角膜合併症をきたしうる重症型である1)。眼瞼型(石垣状巨大乳頭増殖)・輪部型(堤防状隆起、トランタス斑)・混合型に細分される。

**アトピー性角結膜炎AKC)**は顔面にアトピー性皮膚炎を伴う慢性ACDで、有病率は5.3%である1)結膜線維化や角膜新生血管・混濁を伴いやすく、増悪期には巨大乳頭を伴うこともある1)

**巨大乳頭結膜炎GPC)**は、コンタクトレンズ・義眼・手術用縫合糸などの機械的刺激とアレルギー性炎症が複合して生じる。乳頭直径1mm以上に相当する最重症型とされ、有病率は0.6%である1)

Q 小児のアレルギー性結膜炎にはどんな病型がありますか?
A

アレルギー性結膜疾患は、ガイドラインで5つの病型に分類される。増殖性変化がなく季節性のものが季節性アレルギー性結膜炎(SAC)、通年性のものが通年性アレルギー性結膜炎(PAC)である。増殖性変化(巨大乳頭・輪部隆起など)を伴う重症型が春季カタルVKC)で学童男児に好発する。顔面アトピー性皮膚炎を合併するものがアトピー性角結膜炎AKC)、コンタクトレンズや義眼などの機械的刺激が原因のものが巨大乳頭結膜炎GPC)である1)

眼瘙痒感がACDの最も特徴的な症状である。ヒスタミンが知覚神経終末を刺激することで発生する。小児では「かゆい」と訴えず、「ごろごろする」「目がおかしい」など別の表現をすることがある1)

  • 眼脂: 少量で白色〜半透明の糸を引く粘稠性が特徴。好中球が少なく白色を保つ点で細菌性と異なる。
  • 異物感: 多数の結膜乳頭が瞬目時に角膜に接触して生じることが多い1)
  • 流涙: 反射性流涙。
  • 眼痛羞明視力低下: 角膜病変を伴う重症例でみられ、重症度と相関する1)

ガイドラインでは眼瞼結膜・眼球結膜輪部角膜の各部位について重症度評価基準を定めている。

所見軽度(+)中等度(++)高度(+++)
眼瞼結膜充血数本の血管拡張多数の血管拡張個々の血管識別不能
眼瞼結膜乳頭直径0.1〜0.2mm直径0.3〜0.5mm直径0.6mm以上
巨大乳頭(≥1mm)乳頭は平坦化上眼瞼結膜の1/2未満で隆起1/2以上で隆起
結膜濾胞1〜9個10〜19個20個以上
眼球結膜浮腫部分的びまん性薄い浮腫胞状浮腫
Trantas斑1〜4個5〜8個9個以上
角膜上皮障害点状表層角膜炎落屑様点状表層角膜炎シールド潰瘍/上皮びらん

春季カタルは増悪期に上眼瞼結膜へ石垣状の巨大乳頭増殖を認める。輪部型では角膜輪部に堤防状隆起とトランタス斑がみられる。角膜合併症は、結膜から遊離される好酸球由来の細胞障害性物質(MBP等)による上皮障害が主因である。点状表層角膜症角膜びらん→遷延性角膜上皮欠損→シールド潰瘍(楯型潰瘍)→角膜プラークへと進行しうる1)。シールド潰瘍は角膜プラークを伴うことが多く、難治で長期治療を要する。重症例では開瞼困難・視力低下をきたす。輪部型の強い炎症後には偽老人環(pseudogerontoxon)を残すことがある1)

アトピー性皮膚炎による眼瞼炎を合併し、Hertoghe徴候・Dennie-Morgan徴候がみられる。慢性例では結膜囊短縮や瞼球癒着が生じる1)。黄色粘性眼脂がみられることもある1)

病型主な原因抗原
SACスギ・ヒノキ(春)、カモガヤ等イネ科(初夏)、ブタクサ・ヨモギ(秋)
PACハウスダスト・ダニ・カビ・ペット上皮
VKCハウスダスト・ダニが多い。多種抗原に感作されていることが多い
AKC多種抗原に感作。アトピー素因が背景
GPCコンタクトレンズ素材・沈着物、義眼、露出縫合糸

涙液中ペリオスチン濃度の上昇がVKC/AKCの病態と関連することが報告されている1)

  • アトピー素因・家族歴: 気管支喘息・アレルギー性鼻炎・アトピー性皮膚炎の家族歴はリスクを高める。
  • 眼こすり習慣: 慢性的な眼こすりは円錐角膜のリスク因子となる。
  • 環境因子: 大気汚染・乾燥環境はACDの増悪因子となりうる。

診断は3段階で行う。

  • 臨床診断(Aのみ): ACDに特有な臨床症状がある。
  • 臨床的確定診断(A+B): 臨床症状+I型アレルギー素因(涙液中総IgE陽性、血清抗原特異的IgE陽性、または皮膚反応陽性)。
  • 確定診断(A+B+C または A+C): 上記に加え結膜擦過物中の好酸球が陽性。

臨床症状の特異性は以下のとおりである1)

特異性自覚症状他覚所見
眼瘙痒感(強度)巨大乳頭、輪部増殖、シールド潰瘍
眼瘙痒感(中等度)結膜浮腫、結膜濾胞、乳頭増殖、角膜びらん
眼脂、流涙、異物感結膜充血点状表層角膜炎
  • 結膜擦過物の好酸球検出: Hansel染色またはGiemsa染色を行い、1個でも陽性なら確定診断に使用できる。
  • 涙液中総IgE抗体測定(アレルウオッチ®): 免疫クロマトグラフィー法。感度73.6%、特異度100%と報告される1)
  • 血清抗原特異的IgE抗体測定: 原因抗原の同定に有用。PACセット(ダニ・ハウスダスト・スギ・ヒノキ・カモガヤ等)が保険適用で使用できる1)
  • 点眼誘発試験: 既知の抗原液を点眼し結膜炎発症を確認する方法。保険適用なし、標準液も市販されていない1)
疾患主な診断根拠
SAC季節性、眼瘙痒感、鼻炎症状、血清IgE、結膜濾胞
PAC通年性、眼瘙痒感、眼脂、結膜好酸球
AKCアトピー性皮膚炎、眼脂、角膜病変、涙液IgE、結膜囊短縮
VKC巨大乳頭、輪部増殖、シールド潰瘍、角膜プラーク
GPCCL・義眼装用、乳頭増殖、眼瘙痒感
  • ウイルス性結膜炎: 急性発症・片眼性が多い・耳前リンパ節腫脹。アデノウイルス迅速診断キットで鑑別する。
  • 細菌性結膜炎: 粘液膿性で黄色〜黄緑色の眼脂。結膜濾胞はみられない。
  • クラミジア結膜炎: 下眼瞼結膜の巨大濾胞が特徴。
  • 結膜濾胞症: 小児に多い。下眼瞼結膜の粟粒大透明濾胞、自覚症状なし。
  • ドライアイ: BUT短縮で診断。ACDとの合併も多い。
Q 小児のアレルギー性結膜炎と感染性結膜炎はどう見分けるか?
A

最も重要な鑑別点は眼瘙痒感の有無と眼脂の性状である。アレルギー性結膜炎では眼瘙痒感が特徴的で、眼脂は白色〜半透明の粘液性糸状である。細菌性結膜炎では粘液膿性で黄色〜黄緑色の眼脂がみられ、瘙痒感よりも異物感が主体となる。ウイルス性結膜炎は急性発症で片眼性が多く、耳前リンパ節腫脹を伴う。確定にはアデノウイルス迅速診断キットや結膜擦過物の好酸球検出が有用である1)

原因抗原の検索と抗原回避が最も重要である。薬物治療が中心で、第一選択は全病型で抗アレルギー点眼薬である1)。重症度に応じてステロイド点眼薬を併用し、難治重症例(VKCAKC)には免疫抑制点眼薬を使用する1)

メディエーター遊離抑制薬とH1受容体拮抗薬の2系統がある。

系統一般名製品名濃度
メディエーター遊離抑制薬ペミロラストカリウムアレギサール®点眼液0.1%
メディエーター遊離抑制薬トラニラストリザベン®点眼液0.5%
メディエーター遊離抑制薬イブジラストケタス®点眼液0.01%
メディエーター遊離抑制薬アシタザノラスト水和物ゼペリン®点眼液0.1%
H1受容体拮抗薬ケトチフェンフマル酸塩ザジテン®点眼液0.05%
H1受容体拮抗薬レボカバスチン塩酸塩リボスチン®点眼液0.025%
H1受容体拮抗薬オロパタジン塩酸塩パタノール®点眼液0.1%
H1受容体拮抗薬エピナスチン塩酸塩アレジオン®点眼液 / アレジオン®LX点眼液0.05% / 0.1%

花粉飛散予測日の約2週間前、または症状がわずかに出現した時点で抗アレルギー点眼薬の投与を開始すると、飛散ピーク時の症状が軽減される1)。鼻炎症状が強い場合は抗アレルギー内服薬を併用する(ただしACDのみでは内服に保険適用なし)1)

抗アレルギー点眼薬で効果不十分な場合に、重症度に応じた力価のステロイド点眼薬を併用する1)。SAC/PACに対してはステロイド点眼薬使用を「弱く推奨」(エビデンスB)、VKCに対しては「強く推奨」(エビデンスB)とされる1)

主なステロイド点眼薬1):

  • 高力価: ベタメタゾンリン酸エステルナトリウム0.1%、デキサメタゾン0.1%
  • 中〜低力価: フルオロメトロン0.02%・0.05%・0.1%、デキサメタゾンメタスルホ安息香酸エステルナトリウム0.05%・0.1%

小児でのステロイド点眼使用に関する注意

小児はステロイド点眼薬により眼圧が上昇しやすく、急な高眼圧をきたすことがある1)。定期的な眼圧測定(最低月1回)が必要である1)。高力価ステロイド(ベタメタゾン等)で症状が軽快すると自己中止→増悪の悪循環に陥りやすい。特に点眼が自己管理となる10歳以降が要注意である。ステロイド内服を用いる場合は1〜2週間を目途とし、内科・小児科と連携する1)。10歳未満の小児へのステロイド懸濁液瞼結膜下注射は避けることが望ましい1)

春季カタルに保険適用がある2剤を使用する。

タクロリムス点眼薬(タリムス®0.1%)

用法:1日2回点眼

適応VKCに保険適用。AKCは保険適用外だが有効性が報告されている1)

推奨:ガイドラインCQ7でVKC/AKC角膜上皮障害・巨大乳頭改善に「強く推奨」(エビデンスA)。ステロイド点眼薬より「弱く推奨」(エビデンスB)1)

特長ステロイド抵抗性の重症例でも単剤で効果あり。眼圧上昇はみられない1)

シクロスポリン点眼薬(パピロックミニ®0.1%)

用法:1日3回点眼

適応VKCに保険適用。AKCは保険適用外。

推奨:ガイドラインCQ4でVKCへの使用を「弱く推奨」。特に2%製剤では高力価ステロイドと同等の治療効果が報告されている1)

特長ステロイド点眼薬との併用でステロイド漸減が可能。免疫抑制による眼圧上昇はみられない1)

両剤とも点眼時の刺激感が主な副作用。ヘルペス性角膜炎やMRSA感染に注意が必要で、アトピー性皮膚炎合併例では特に留意する。

段階的アプローチで治療を強化・調整する。

  1. 軽症: 抗アレルギー点眼薬のみ。
  2. 中等症以上: 抗アレルギー点眼薬+免疫抑制点眼薬を追加。
  3. 重症(2剤で不十分): さらにステロイド点眼薬を追加。症状に応じてステロイド内服・瞼結膜下注射・外科的治療も検討。
  4. 改善後: ステロイド点眼薬を低力価に切替え→漸減→中止。抗アレルギー+免疫抑制の2剤でコントロール。
  5. 寛解期(プロアクティブ療法): 免疫抑制点眼薬を1日2回→1日1回→週2回と段階的に漸減し維持量を継続1)

結膜増殖性変化に対するシクロスポリンステロイドの併用はCQ6で「弱く推奨」(エビデンスC)。タクロリムス+ステロイドの併用はCQ9でも「弱く推奨」(エビデンスC)とされる1)

  • 結膜乳頭切除: 薬物治療に抵抗し角膜上皮障害が悪化する例に適応。免疫抑制点眼薬の普及により必要例は激減した。術後も免疫抑制点眼薬・抗アレルギー点眼薬を継続し、再増殖を防止する。
  • 角膜プラーク切除: 外科的搔爬を行う。病勢が沈静化してから実施が望ましい。シールド潰瘍に伴う角膜プラークは、除去後も免疫抑制治療を継続しないと再発しやすい。
  • シールド潰瘍への対処: シールド潰瘍そのものには、まず薬物療法(免疫抑制点眼薬の強化・ステロイド追加)を優先する。難治例では搔爬・治療用ソフトコンタクトレンズ装用・羊膜移植も選択肢となる1)

保冷剤による眼瞼皮膚のクーリング(冷湿布)は即効性はないが安全性が高く有用である。人工涙液点眼による抗原の希釈も推奨され、防腐剤不含製剤の使用が望ましい1)

長期管理の考え方春季カタルは学童期を通じて増悪寛解を繰り返す。症状の増減に合わせた点眼薬の増減調整が必要で、増悪前の積極的予防(プロアクティブ)が症状悪化を防ぐ。思春期以降に多くは自然軽快するが、アトピー性角結膜炎は成人でも持続しうる。アトピー性皮膚炎合併例では皮膚科と連携して顔面の保湿と皮膚炎コントロールを継続する。

コンプライアンスへの配慮:小児の点眼コンプライアンスは保護者のサポートが不可欠である。点眼時の刺激感(特に免疫抑制点眼薬)が自己中止につながるため、適切な説明と工夫が重要である。点眼薬の種類と回数を説明し、家庭での観察点(眼圧上昇の徴候として頭痛、虹輪視、霧視等)を保護者に指導する。

感染症への留意ステロイドや免疫抑制薬を併用する場合は、特にアトピー性皮膚炎患者の眼表面におけるMRSAの保菌・感染の合併、ヘルペスの誘発、カポジ水痘様発疹症に注意する。フォローアップの頻度はステロイドの力価と使用期間に応じて調整し、感染兆候がみられた場合には迅速に抗菌薬や抗ウイルス薬に切り替える。

Q 春季カタルの治療で最初に使う薬剤は何か?
A

すべてのアレルギー性結膜疾患において、抗アレルギー点眼薬(オロパタジン・エピナスチン等のH1受容体拮抗薬やペミロラスト等のメディエーター遊離抑制薬)が治療の基盤となる。春季カタルの中等症以上では免疫抑制点眼薬を追加し、特に小児の重症例ではタクロリムス0.1%点眼薬(タリムス®)を第一選択とすべきとされる1)ステロイド点眼薬は有効だが、小児では眼圧上昇リスクが高いため、免疫抑制点眼薬で制御できない場合に追加する方針が推奨されている。

Q 子どもがステロイド点眼薬を使用する際に注意すべきことは?
A

小児はステロイド点眼薬により眼圧が上昇しやすく、急な高眼圧をきたすことがある1)。最低でも月1回の眼圧測定が必要である。高力価ステロイドで症状が軽快すると自己中止してしまい、再増悪を繰り返す悪循環に陥りやすい。特に点眼が自己管理となる10歳以降はこのリスクが高まる。ステロイドの感染症誘発(MRSA・ヘルペス)にも注意し、必ず眼科医の管理下で使用する。

I型アレルギー反応のメカニズム

Section titled “I型アレルギー反応のメカニズム”

I型アレルギー反応(IgE介在性)が主体である。近年、アレルギー性炎症は自然免疫系と獲得免疫系を包括した「2型炎症」として捉えられている1)

以下のステップで炎症が進行する1):

  1. 上皮バリア障害: アレルゲンにより結膜上皮細胞が障害される。
  2. 2型炎症起始サイトカイン産生: 結膜上皮からIL-33、TSLPが産生される。
  3. 自然免疫の活性化: IL-33が直接ILC-2・肥満細胞・好塩基球を活性化し、抗原特異性のないアレルギー性炎症を誘導する。
  4. 獲得免疫の活性化: IL-33/TSLPが樹状細胞を活性化し、Th2細胞の分化を誘導する。
  5. IgE産生とエフェクター応答: Th2細胞がIL-4(B細胞のIgEクラススイッチ)・IL-5(好酸球活性化)・IL-13(上皮ムチン産生亢進)を産生する。
  6. 即時相反応: 再度のアレルゲン侵入→IgEクロスリンク→肥満細胞脱顆粒→ヒスタミン・ロイコトリエン・プロスタグランジン放出→充血・浮腫・痒みが生じる。
  7. 慢性炎症(VKC/AKC: リンパ球の慢性活性化→好酸球・マクロファージの浸潤→Th2サイトカイン・ケモカインの亢進→線維芽細胞の増殖性変化が持続する。

春季カタルの角膜障害メカニズム

Section titled “春季カタルの角膜障害メカニズム”

結膜から遊離される好酸球由来の細胞障害性物質(MBP:major basic proteinなど)が角膜上皮を障害する。点状表層角膜症角膜びらん→シールド潰瘍→角膜プラークへと進行しうる1)

  • SAC: スギ・ヒノキ・カモガヤ・ブタクサなどの花粉
  • PAC/VKC: ハウスダスト・ダニが多く、多種抗原に感作されていることが多い
  • 涙液中ペリオスチン濃度の上昇がVKC/AKCの病態と関連する

I型アレルギー反応に加え、T細胞・マクロファージ・樹状細胞の浸潤を特徴とするIV型(遅延型)過敏反応も関与する。慢性的な眼こすりによる機械的損傷と慢性炎症が複合して円錐角膜リスクを高める。AKCでは角膜知覚低下と結膜杯細胞密度の減少が報告されており、慢性進行性の経過をたどりやすい。免疫抑制点眼薬やステロイド使用中は、MRSA保菌・感染およびヘルペス誘発に特に留意する。

近年のACD有病率増加の要因として、大気汚染(PM2.5・黄砂等)によるスギ花粉抗原量の増加、環境変化による花粉飛散量の変動、都市化に伴うアレルギー素因の増加、感染症罹患機会の減少(衛生仮説)などが挙げられている1)

疾患分類別有病率(2017年調査)の年齢分布では以下の傾向がある1):

  • ACD全体:40代が最多、10代にも小ピーク
  • SAC:小児から年齢とともに有病率が上昇
  • VKC:20代に最多。学童期に発症し思春期以降に軽快するケースが多い
  • 地域性:首都圏・中部地方でSACの有病率が高い(スギ花粉飛散量と相関)1)

小児期からのアレルギー性疾患の発症・重症化予防には、早期からの適切な抗原回避と抗アレルギー薬による症状コントロールが重要である。

Q 花粉症の目の症状は事前に予防できるか?
A

季節性アレルギー性結膜炎では、花粉飛散予測日の約2週間前から抗アレルギー点眼薬を開始する「初期治療」が有効であり、飛散ピーク時の症状が軽減される1)。花粉防御用眼鏡の着用や、花粉飛散量の多い日の外出を控えるなどのセルフケアも重要である。帰宅後は洗顔を行い、洗眼には防腐剤を含まない人工涙液を使用する。水道水による頻回洗眼は角膜上皮を傷めるため避ける。

  1. 日本眼科アレルギー学会診療ガイドライン作成委員会. アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン(第3版). 日眼会誌. 2021;125:741-785.
  2. Wu K, Yang Y. A Bibliometric Study on Research Trends and Characteristics of Pediatric Allergic Conjunctivitis. J Asthma Allergy. 2025;18:1297-1309. PMID: 41000436.
  3. Mahoney MJ, Bekibele R, Notermann SL, Reuter TG, Borman-Shoap EC. Pediatric Conjunctivitis: A Review of Clinical Manifestations, Diagnosis, and Management. Children (Basel). 2023;10(5). PMID: 37238356.

記事の全文をコピーして、お好みのAIに貼り付けて質問できます