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角膜・外眼部疾患

巨大乳頭結膜炎

巨大乳頭結膜炎(giant papillary conjunctivitis: GPC)は、コンタクトレンズ(CL)、義眼、露出した手術用縫合糸などが上眼瞼結膜と持続的に接触・摩擦することで、上眼瞼結膜に直径1mm以上の巨大乳頭を生じる慢性結膜炎である。特にCL装用に起因するものを contact lens-associated giant papillary conjunctivitis(CL-GPC)と呼ぶ。

GPCは視力予後そのものは良好で失明に至る疾患ではないが、CL装用が続けられなくなる、粘性眼脂により生活の質が低下する、再発を繰り返すといった面で患者のQOLに大きな影響を与える。さらに近年は近視矯正目的のソフトCL装用者が増加していることに加え、美容目的のカラーCL装用者や近視進行抑制のオルソケラトロジーレンズ装用者が増えており、GPCの臨床的重要性は維持されている。

GPCという疾患概念は、1977年にAllansmithらがソフトCL装用者の上眼瞼結膜に形成される巨大乳頭を「giant papillary conjunctivitis」として報告したことに始まる2)。その後、CL装用を主因とする軽症型を contact lens related papillary conjunctivitis(CLPC)として区別する用語も使われている1)7)

日本の『アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン(第3版)』(2021年、日眼会誌125巻8号)では、略語一覧にGPC(giant papillary conjunctivitis、巨大乳頭結膜炎)とCLPC(contact lens related papillary conjunctivitis)の双方が明記されており、アレルギー性結膜疾患(ACD)の5病型(SAC・PAC・AKCVKC・GPC)の一型として独立した位置づけが与えられている1)

GPCはCL装用者に最も多く発症し、ソフトCL装用者で特に頻度が高い。過去の報告では、1年以上のソフトCL装用者の約1〜5%、ハードCL装用者の約1%に発症するとされ、CL装用期間の長期化とともに発症率が増加する4)5)。近年はシリコーンハイドロゲルCLの普及に伴い、新しい素材特有の乳頭形成パターンも報告されている8)11)

日本では、庄司らの涙液総IgE検査の検討においてGPC患者の涙液IgE陽性率は75.0%(6/8)と報告されている3)。同研究ではアレルギー性結膜疾患全体の涙液IgE陽性率は72.2%(161/223)であった3)。2017年度の日本眼科アレルギー学会アレルギー性結膜疾患実態調査においても、CL装用者の結膜アレルギー疾患としてGPCが一定の頻度で占める病型として集計されている9)

CL装用の低年齢化に伴い、近年は小児のCL-GPCも報告されるようになっている。小児の場合はCLケア方法や装用時間の管理が不十分になりがちで、ケア指導が重要である。アレルギー素因がなくてもCL装用により上眼瞼に巨大乳頭増殖が認められることがあり、CL装用の低年齢化とともに小児例にも留意が必要である。

また義眼装用者におけるGPCはかつて多くみられたが、義眼素材と表面処理技術の進歩によりその頻度は減少傾向にある。一方、角膜移植術後の露出縫合糸に起因する縫合糸性GPCは現在も比較的まれに経験され、10-0ナイロン糸の抜去により速やかに寛解することが多い。

Q GPCとCLPCはどう違うのか?
A

両者は重なりあう概念で、明確な境界はない。GPC(giant papillary conjunctivitis)は直径1mm以上の巨大乳頭を伴う古典的な病型で、原因はCLのみならず義眼や縫合糸を含む。一方、CLPC(contact lens related papillary conjunctivitis)はCL装用に起因する乳頭結膜炎全般を指し、乳頭サイズが1mm未満の軽症例も含む。日本のアレルギー性結膜疾患診療ガイドラインではいずれもGPC(CLが原因の場合はCL-GPC)として包括的に扱われる1)

GPCの自覚症状はCL装用者で徐々に増悪する経過をたどる。初期には軽度の異物感やかすかな瘙痒感のみだが、数週間から数か月のうちに粘性眼脂・充血霧視が加わり、最終的にはCLの装用時間短縮を余儀なくされる。

初期症状

軽度の異物感:CL装用時に初めて出現する最も早期の症状。

軽度の瘙痒感:上眼瞼をこすりたくなる感覚。

軽度の充血白目全体にうっすらと広がる。

進行期症状

粘性(粘稠性)眼脂:朝起床時に増加し、CL表面にも付着して曇りの原因となる。

CLフィッティング不良:CLがずれやすい、ずり落ちる、瞬目時に動きが大きい。

霧視:CL装用時に視界がかすむ。

装用時間の短縮:徐々に装用に耐えられる時間が短くなる。

GPC診断の鍵は 上眼瞼結膜の翻転による巨大乳頭の直接確認 である。乳頭は上眼瞼結膜に好発し、下眼瞼結膜ではまれである。乳頭の特徴は以下のとおりである。

  • サイズ:直径1mm以上の乳頭を巨大乳頭と定義する1)
  • 形態:円形、境界鮮明、表面平滑、隣接する乳頭とは融合せず、隆起丈が比較的低い。
  • 中心血管:各乳頭の中心に血管を伴う。
  • 分布:上眼瞼結膜全体に散在する。
  • 角膜合併症:通常は認められない。シールド潰瘍や角膜プラークは生じない。

結膜所見としては結膜充血結膜浮腫が高度の症例でみられる。CL除去後のフルオレセイン染色では、乳頭頂部の点状染色、軽度の上眼瞼結膜上皮障害がしばしば認められる。

重症度評価(アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン第3版)

Section titled “重症度評価(アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン第3版)”

アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン第3版では、巨大乳頭の重症度を上眼瞼結膜における隆起範囲で3段階に分類している1)

重症度所見
軽度(+)乳頭は平坦化している
中等度(++)上眼瞼結膜の2分の1未満の範囲で乳頭が隆起
高度(+++)上眼瞼結膜の2分の1以上の範囲で乳頭が隆起

また直径1mm未満の通常乳頭についても、0.1〜0.2mm(軽度)、0.3〜0.5mm(中等度)、0.6mm以上(高度)の3段階評価が用いられる1)

GPCはしばしば春季カタルVKC)との鑑別が問題となる。いずれも巨大乳頭を呈するが、形態学的には大きく異なる。

項目GPCVKC春季カタル
乳頭の形態円形・境界鮮明・表面平滑多角形・不整形・境界不明瞭
乳頭の融合融合しない石垣状に融合
隆起丈比較的低い高く隆起
角膜合併症ほとんどなしシールド潰瘍・角膜プラークあり
血清抗原特異的IgE陽性率低い高率に陽性
好酸球(結膜擦過)陽性率低い高率に陽性
好発年齢CL装用者・全年齢10歳前後の男児
原因機械的刺激(CL・義眼・縫合糸)I型アレルギー+IV型過敏反応

GPCは角膜上皮障害がまれである点、血清・局所の好酸球・IgE陽性率が低い点がVKCAKCとの決定的な相違である。また発症機序においても、VKC/AKCが内因性のアレルギー性素因を基盤とするのに対し、GPCは外因性の機械的刺激(CL・義眼・縫合糸)が必須条件となる点で病態が異なる。このため、GPCでは原因デバイスを除去するだけで症状の大半が軽快することが多いが、VKC/AKCでは長期的な免疫抑制療法が必要となる。

軽度GPCでは自覚症状が軽微で、装用時の異物感や軽度の瘙痒感のみにとどまり、上眼瞼結膜の乳頭も平坦〜軽度の隆起である。中等度に進行すると粘性眼脂やCLフィッティング不良が顕在化し、上眼瞼結膜の2分の1未満の範囲で巨大乳頭が隆起する。高度GPCでは上眼瞼結膜の2分の1以上にわたる巨大乳頭が隆起し、CL装用がほぼ不可能となる1)

Q 巨大乳頭はどうやって確認するのか?
A

上眼瞼を翻転させて観察する。綿棒やまつ毛の生え際付近を指で軽く圧迫しつつ上眼瞼を反転し、細隙灯顕微鏡でびまん光・スリット光により上眼瞼結膜全体を観察する。直径1mm以上の円形隆起が多数散在する所見が巨大乳頭であり、フルオレセイン染色で乳頭頂部が点状に染色されることもある。CLを装用している場合はまずCLを除去してから観察する。

GPCは上眼瞼結膜に対する 持続的な機械的刺激 が必須の発症条件である。代表的な原因デバイスは以下の4つである1)4)5)

  • コンタクトレンズ:最多の原因。ソフトCL > ハードCL > ガス透過性CLの順に発症頻度が高い。特にシリコーンハイドロゲルCLでも発症が報告されている8)11)12)
  • 義眼義眼装用者では義眼表面の沈着物やポリッシュ不良が誘因となる。
  • 手術用縫合糸角膜移植後・強膜バックル術後の露出した10-0ナイロン糸やシルク糸が上眼瞼結膜を刺激する。
  • その他の異物:露出した強膜バックル、眼内レンズの露出ハプティック、眼球突出のある患者の眼表面異物なども原因となる。

CL装用者のGPC発症リスクは以下の因子と関連する4)5)6)

  • 装用期間:長期装用ほどリスクが高い。1年以上の装用者で発症率が上昇する。
  • 装用時間:連続装用(extended wear)はdaily wearよりもハイリスクである6)14)
  • CL素材:シリコーンハイドロゲルCLは低含水率の従来CLと比べても発症しうる8)11)12)
  • CL表面沈着物:CL表面の沈着物はGPC発症と関連する10)
  • レンズケア不良:擦り洗いを行わない、消毒液の交換頻度が低い等の衛生管理不良。
  • レンズのエッジデザイン:エッジ形状が急峻な場合に結膜への機械的刺激が強い。
  • 瞬目回数の低下:VDT作業などで瞬目が減るとレンズ表面の沈着物が増える。
  • アトピー素因:アトピー性皮膚炎や他のアレルギー性結膜疾患を合併する患者では発症しやすい。
  • 義眼性GPC義眼の装用年数が長いほどリスクが高い。義眼表面の微細な傷やたんぱく沈着が抗原となる。
  • 縫合糸性GPC角膜移植術後の露出縫合糸は、術後数か月〜数年で問題となる。10-0ナイロン糸の頭部が結膜側に露出した場合に典型的である。
Q どんなコンタクトレンズ装用者でGPCが起きやすいか?
A

長期間(特に1年以上)ソフトコンタクトレンズを装用している人、連続装用(夜間装用)をしている人、ケア不良で蛋白沈着の多いレンズを使用している人、アトピー性皮膚炎・アレルギー性鼻炎などのアレルギー素因を持つ人、シリコーンハイドロゲル素材でもエッジデザインが硬い製品を使用している人などがリスクになる。1日使い捨てソフトコンタクトレンズへの変更は最も効果的な予防策である。

GPCの診断は問診と上眼瞼翻転による臨床所見の観察で行うことが大原則である。日本の『アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン(第3版)』の臨床診断フローチャートでは、瘙痒・充血などの自覚症状と結膜増殖所見が認められる症例のうち、コンタクトレンズ装用の有無でGPCを鑑別する 形で位置づけられている1)

診断手順は以下のとおりである。

  1. 問診:CL装用歴・装用期間・ケア状況・装用時間・装用中止後の症状の変化、義眼・眼科手術歴の確認。
  2. CLの除去:CL装用中の場合はいったん外す。
  3. 上眼瞼の翻転:細隙灯顕微鏡下で上眼瞼を翻転し、上眼瞼結膜全体を観察する。
  4. 乳頭の評価:直径1mm以上の巨大乳頭の有無、分布、重症度(軽度〜高度)を評価する。
  5. フルオレセイン染色角膜上皮障害、球結膜上皮障害、乳頭頂部染色の有無を評価する。
  6. 重症度分類:ガイドラインの重症度評価基準で軽度・中等度・高度を記載する1)

重要なポイントとして、臨床所見の変動を把握するため、初診時・治療開始後2週間・4週間・寛解後1か月など節目のタイミングで上眼瞼翻転による経時的観察を行うことが推奨される。治療反応性の評価は自覚症状の改善とともに巨大乳頭の重症度変化を記録することで客観化される。

GPCは臨床診断のみで十分な場合が多いが、他のアレルギー性結膜疾患との鑑別や全身アレルギー素因の評価のために以下の検査を追加することがある。

検査方法GPCでの陽性率・意義
涙液総IgE検査(アレルウォッチ®)下眼瞼結膜囊にテストストリップを挿入し涙液IgEを検出GPCで75.0%(6/8)3)。眼局所のアレルギー素因の有無を評価
血清抗原特異的IgE抗体採血によりダニ・ハウスダスト等に対する特異的IgEを測定GPCでは陽性率低い1)。全身のアレルギー素因の評価
結膜擦過物好酸球検査上眼瞼結膜を擦過しハンセル染色GPCでは陽性率低い。I型アレルギー反応の確定診断
皮膚テストプリック・スクラッチテスト抗原同定の補助
CL装用状況・ケア評価問診・CLケースの観察原因除去の計画立案に不可欠

涙液総IgE検査はアレルギー性結膜疾患診療ガイドライン第3版で推奨される臨床的確定診断の検査である1)。ただしGPCに関しては結膜局所の好酸球・特異的IgE陽性率が低く、「確定診断」よりも「臨床的確定診断」にとどまるケースが多い点に留意する。

鑑別疾患鑑別のポイント
春季カタルVKC10歳前後の男児、石垣状巨大乳頭、角膜合併症、血清IgE高値
アトピー性角結膜炎AKCアトピー性皮膚炎の合併、下眼瞼主体、慢性経過、角膜合併症
季節性アレルギー性結膜炎(SAC)増殖性変化なし、季節性、花粉等のアレルゲン明確
通年性アレルギー性結膜炎(PAC)通年性、軽度の乳頭増殖、ダニ・ハウスダストが原因
上輪部角結膜炎(SLK)上方球結膜輪部充血と増殖、CL装用でも生じうる
感染性結膜炎急性発症、濾胞主体(ウイルス)または膿性眼脂(細菌)
結膜濾胞症下眼瞼結膜円蓋部に粟粒大濾胞、無症状
Q GPCの確定診断は必要か?
A

GPCは臨床診断で十分であることがほとんどである。コンタクトレンズ装用歴と上眼瞼結膜の巨大乳頭の所見があれば臨床診断が可能で、CLを外すことで症状が軽快することが診断の確認になる。涙液IgE検査・好酸球検査・血清特異的IgE検査は、春季カタルアトピー性角結膜炎などのより重症のアレルギー性結膜疾患との鑑別や、全身のアレルギー素因の評価のために追加する。

GPCの治療は、原因となる機械的刺激の除去抗アレルギー点眼薬 の2本柱で行う。日本の『アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン(第3版)』のGPC治療推奨では、「コンタクトレンズが原因の場合は、原則として機械的刺激と抗原の回避を目的としてコンタクトレンズ装用を中止する。第一選択は抗アレルギー点眼薬で、重症例にはステロイド点眼薬を追加する」と明記されている1)

第1段階:原因除去

コンタクトレンズ装用中止:可能であればまず装用を中止する。

1日使い捨てSCLへの変更:中止が困難な症例では1日使い捨てタイプのソフトコンタクトレンズに切り替える。

CL材質・形状の変更:低含水・剛性の高い素材、エッジデザインの異なる製品に変更する。

義眼の再製作・研磨義眼性GPCでは義眼の新調や表面研磨を行う。

縫合糸の除去:縫合糸性GPCでは露出した縫合糸を抜去する。

第2段階:薬物療法

抗アレルギー点眼薬:メディエーター遊離抑制薬またはH1受容体拮抗薬を1日4回点眼する。

ステロイド点眼薬:重症例で短期併用。眼圧管理必須。

CL装用休止中の補助療法:人工涙液・涙点プラグにより眼表面環境を整える。

GPCの最重要治療は原因機械的刺激の除去である。CL装用者では原則としてまずCL装用を中止し、症状の軽快を確認する。中止が職業上・生活上困難な場合は、以下の順に段階的に対応する1)

  • 1日使い捨てソフトコンタクトレンズへの変更:最も効果的な代替策。蛋白沈着がリセットされるため、再発予防効果が高い。
  • CL材質の変更:シリコーンハイドロゲル素材から従来ハイドロゲル素材への変更、あるいはその逆を試みる。エッジデザインの異なる製品も検討する。
  • 装用時間の短縮:1日の装用時間を短縮し、装用しない日(CL休日)を設ける。
  • ケア方法の改善:毎日の擦り洗い、消毒液の完全交換、CLケースの交換、手洗いの徹底を指導する1)

義眼性GPCでは義眼の表面研磨、場合によっては義眼の新調を検討する1)。縫合糸性GPCでは原因となる縫合糸(多くは10-0ナイロン糸の露出糸)を抜去する。強膜バックル関連GPCではバックル自体の抜去を要する場合もある。

第2段階:抗アレルギー点眼薬(第一選択)

Section titled “第2段階:抗アレルギー点眼薬(第一選択)”

抗アレルギー点眼薬はGPC治療の基盤薬剤である。アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン第3版では、メディエーター遊離抑制薬とヒスタミンH1受容体拮抗薬が抗アレルギー点眼薬の2大カテゴリーとして列挙されている1)

分類一般名製品名濃度用法
メディエーター遊離抑制薬ペミロラストカリウムアレギサール®0.1%1日2回
メディエーター遊離抑制薬トラニラストリザベン®0.5%1日4回
メディエーター遊離抑制薬アシタザノラストゼペリン®0.1%1日4回
H1受容体拮抗薬ケトチフェンフマル酸塩ザジテン®0.05%1日4回
H1受容体拮抗薬レボカバスチン塩酸塩リボスチン®0.025%1日4回
H1受容体拮抗薬オロパタジン塩酸塩パタノール®0.1%1日4回
H1受容体拮抗薬エピナスチン塩酸塩アレジオン®0.05% / 0.1%(LX)1日4回(LXは1日2回)

処方例1(軽症〜中等症):アレジオン®点眼液(0.05%)1日4回点眼1)処方例2(軽症〜中等症):パタノール®点眼液(0.1%)1日4回点眼。

抗アレルギー点眼薬は瘙痒感・結膜充血・眼脂などの即時相症状を軽減するとともに、遅発相の炎症細胞浸潤も抑制する。多くの症例ではCL装用中止または装用変更と抗アレルギー点眼薬のみで症状が寛解する。

第3段階:ステロイド点眼薬(重症例)

Section titled “第3段階:ステロイド点眼薬(重症例)”

抗アレルギー点眼薬のみで症状のコントロールが困難な重症例では、短期間のステロイド点眼薬を併用する。眼局所の副作用として眼圧上昇・感染症誘発・白内障があるため、定期的な眼圧測定が必須とされる1)

処方例3(重症例):コンタクトレンズ装用中止+フルメトロン®点眼液(0.1%)1日4回点眼。眼圧測定を行う。

フルオロメトロンは低吸収性ステロイド眼圧上昇のリスクが相対的に低く、GPCの短期治療に適している。症状が改善したらステロイドを漸減し、中止後は抗アレルギー点眼薬単剤で維持する。

ごく一部の難治例では以下の治療も検討される。ただしGPCへの保険適用はないため、VKCAKCに対する推奨を準用する形になる点に注意する。

  • タクロリムス点眼薬(0.1%):アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン第3版 CQ7では、春季カタル・アトピー角結膜炎に対してタクロリムス点眼薬が角膜上皮障害・巨大乳頭を改善させることが示され、強く推奨(エビデンス A)されている1)13)。GPCへの保険適用はないが、VKC類似の重症難治例で経験的に使用される場合がある。
  • シクロスポリン点眼薬(0.1%、パピロックミニ®):免疫抑制点眼薬の代替。やはりVKCのみが適応。
  • ステロイド結膜下注射トリアムシノロンアセトニドあるいはベタメタゾンリン酸エステルナトリウム懸濁液を上眼瞼の瞼結膜下に注射。眼圧上昇に注意し、小児への使用は避けるのが望ましい1)
  • 結膜乳頭切除術:薬物治療で乳頭増殖が進行し角膜上皮障害を併発する極めて稀な症例で検討される。現在は免疫抑制点眼薬の普及により必要な症例は激減した1)
  • 涙点プラグ:涙液貯留により薬物濃度を維持する補助的治療。

症状が寛解した後のCL再装用は、以下の条件を満たした場合に可能である。

  1. 上眼瞼結膜の巨大乳頭が平坦化(重症度 軽度または陰性)に達している。
  2. 自覚症状が消失している。
  3. 1日使い捨てSCLを使用する(蛋白沈着リスクが最も低い)。
  4. 装用時間を段階的に延ばす(最初は1日4時間程度から)。
  5. 抗アレルギー点眼薬を装用前後で併用する。
  6. 再発の徴候(異物感・粘性眼脂)があれば直ちに中止する。

再発例では1日使い捨てSCL以外への変更を行わず、場合によっては眼鏡への完全な切り替えを考慮する。職業上や競技スポーツ上、CL装用の継続がどうしても必要な場合には、装用時間の厳格な制限(1日8時間以内など)と併せて抗アレルギー点眼薬の予防的使用を行う。涙点プラグによる涙液貯留も、点眼薬の効果を持続させる補助的手段として検討される。

涙点プラグはGPCの直接治療ではないが、併存するドライアイや抗アレルギー点眼薬の効果持続を目的として選択的に使用される。涙液排出を抑制することで点眼薬の眼表面滞留時間を延長し、アレルギー反応の軽減に寄与する。コラーゲン製の吸収性プラグを診断的に挿入し、症状改善が認められればシリコーン製の長期型プラグに切り替える方法が一般的である。ただしCL装用中の涙点プラグ使用は涙液貯留量の変化によりCLフィッティングに影響することがあり、慎重な経過観察が必要である。

CL装用時の点眼はレンズへの薬物浸透・防腐剤蓄積の問題がある。抗アレルギー点眼薬の中にはCL装用時の点眼を想定した製品(アレジオン®LX 点眼液0.1%、1日2回)もあり、装用者のアドヒアランス向上に貢献している。ただしメーカーの添付文書に従い、装用可能か装用前後での点眼が必要かを確認することが重要である。ステロイド点眼薬(フルメトロン® 0.1%など)についてはCL装用中の点眼は避け、原則としてCLを外した上で点眼する。

GPCは再発性の強い疾患であり、患者教育が治療成功の鍵となる。具体的には、(1)CLケア用品の定期交換と擦り洗いの重要性、(2)装用時間の厳守と連続装用の回避、(3)症状出現時の早期受診、(4)定期眼科検査の継続、(5)CLの保存液・消毒液の選択(マルチパーパスソリューションの使い分け)などを指導する。また、オンラインショッピングで海外通販を利用した安価なCL購入による管理不備はGPCのリスクを高めるため、眼科処方によるCL購入を強く勧める。

Q 治療中にコンタクトレンズを再開できるか?
A

症状が寛解し上眼瞼結膜の巨大乳頭が平坦化すれば、1日使い捨てソフトコンタクトレンズを用いて段階的に再開することが可能である。ただし装用時間は短めに、装用前後に抗アレルギー点眼薬を併用し、定期的に眼科受診することが条件となる。再発時はすぐに中止する。CL以外の原因(義眼・縫合糸)では、原因デバイスの改善が必須である。

6. 病態生理学・詳細な発症機序

Section titled “6. 病態生理学・詳細な発症機序”

GPCの病態は、機械的刺激説とアレルギー反応説の複合的な機序 と考えられている。CL-GPCの病因については、摩擦などの機械的刺激が原因とする機械説と、CLなどに付着した蛋白質に対する過敏反応が原因とするアレルギー説とがあるが、現在は両者の複合的な反応であると考えられている。

CL・義眼・露出した縫合糸は、瞬目のたびに上眼瞼結膜を繰り返し摩擦する。このマイクロトラウマにより結膜上皮が障害され、上皮のバリア機能が低下する。障害された上皮からは炎症性サイトカイン(IL-6、IL-8、TNF-α など)が放出され、結膜下組織への炎症細胞浸潤が誘導される。さらに慢性の機械的刺激は結膜上皮の過形成・陥入を引き起こし、血管新生と線維性組織の増殖を伴って乳頭状の隆起を形成する4)5)

CL表面沈着物はGPCの病態に関与する10)。沈着物と機械的刺激が重なり、結膜局所の炎症反応を誘導すると考えられる。

組織学的には、結膜上皮の陥入に加え、結膜下組織に好酸球、マスト細胞、好塩基球の浸潤が認められる。ただし血清抗原特異的IgE陽性率・結膜好酸球陽性率は春季カタルアトピー性角結膜炎と比較して低く、典型的Ⅰ型アレルギーのみでは説明できない 点がGPCの特徴である1)

現在は、持続的機械刺激により障害された結膜上皮で自然免疫系(マスト細胞・好酸球・好塩基球)が活性化し、CL表面付着物を抗原として局所の免疫反応(一部はIV型過敏反応や非IgE介在性のマスト細胞活性化)が加わる複合病態と理解されている。アトピー素因を持つ患者ではIgE介在性の反応が相対的に強く、非アトピー患者では機械的刺激・自然免疫系の寄与が強いと推定される5)15)

サイトカインと細胞レベルの変化

Section titled “サイトカインと細胞レベルの変化”

VKCAKCで解明されているTh2型炎症(IL-4、IL-5、IL-13 の優位)はGPCでも部分的に関与する可能性があるが、GPCではこれらサイトカインの上昇の程度がVKCと比べ軽度であることが示されている15)結膜上皮由来の IL-33、TSLP などの上皮性サイトカインはマスト細胞・2型自然リンパ球(ILC2)を活性化し、機械的刺激と免疫反応をつなぐ分子機構として注目されている。これらの上皮性サイトカインは、機械的刺激による上皮障害によって放出され、下流でマスト細胞の活性化・好酸球動員を促進する可能性があり、GPCの「機械刺激→自然免疫活性化」というカスケードを説明する有力な機構として想定されている。

GPCにおける乳頭形成は、結膜上皮の反応性過形成と結膜下間質の線維性組織増殖の複合である。形成初期には結膜上皮下にリンパ球・形質細胞の浸潤を認め、次第に結膜下組織の線維芽細胞が増殖して小隆起を形成する。隆起の中央には栄養血管が走行し、その周囲を炎症細胞が取り囲む構造を示す。CL装用を中止すると炎症細胞浸潤は比較的速やかに減少し、間質の浮腫も改善するが、線維性組織が既に形成された乳頭は完全には平坦化せず、薄く痕跡として残ることがある。

GPCでは結膜杯細胞から分泌される粘液の質的・量的変化も観察される。CL表面に付着した沈着物が涙液層を不安定化し、結果として涙液層破壊時間BUT)の短縮やCL装用時のドライアイ症状を併発しやすい。このためGPC患者の一部では、ドライアイを併存疾患として治療する必要があり、人工涙液・ヒアルロン酸点眼・涙点プラグなどの補助療法が併用される。

1日使い捨てCLの普及によるGPC減少

Section titled “1日使い捨てCLの普及によるGPC減少”

Santodomingo-Rubidoらは、シリコーンハイドロゲルCL装用の18か月観察でCLPCを含む有害事象を記録し、daily wearではcontinuous wearより有害事象が少ないと報告した8)

シリコーンハイドロゲル素材CLの高酸素透過性は角膜の低酸素症予防に貢献したが、GPCに対しては必ずしも予防的ではないことが示されている。Sorbaraらはシリコーンハイドロゲルレンズでの乳頭結膜炎発症を報告しており、レンズの硬さ・エッジデザイン・表面電荷などが発症に関与すると示唆している12)。Santodomingo-Rubidoらの18か月にわたる観察研究では、シリコーンハイドロゲル装用者の一定割合でCLPC様の乳頭形成が認められた8)

再発予防のための管理プロトコル

Section titled “再発予防のための管理プロトコル”

再発予防のために、日本の臨床現場ではCL装用者全般に対して定期検査(3〜6か月ごと)の励行、上眼瞼翻転による乳頭所見の経時的観察、装用時間と装用日数の詳細な記録管理が推奨されている。また、シーズン性の環境要因(花粉・黄砂)が重なる時期には抗アレルギー点眼薬の予防的開始も検討される。再発時は早期にCLを休止し、抗アレルギー点眼薬を4週間程度継続してから装用再開を検討することで、長期的な再発率を低減できる。

持続型抗アレルギー点眼薬(アレジオン®LX 0.1% 1日2回製剤など)の登場により、点眼回数の減少によるアドヒアランス向上が期待されている。新規H1受容体拮抗薬の開発も進んでおり、GPCを含むアレルギー性結膜疾患の治療選択肢が広がりつつある。

これらの新規製剤の登場は患者のアドヒアランス向上と装用者のQOL改善に寄与している。

小児眼科領域では、近視進行抑制目的のオルソケラトロジーレンズや1日使い捨てSCLの使用が増加している。これに伴い小児のCL-GPC発症が報告されており、小児特有のケア指導と装用管理の重要性が強調されている。近視進行抑制治療における長期レンズ装用とGPCリスクのバランスは、今後の重要な臨床課題である。

レンズ表面のプラズマ処理、親水性ポリマーコーティング、低摩擦係数素材の開発など、結膜との機械的刺激を減らすためのレンズ改良研究が進められている。またエッジデザインの最適化や低モジュラス(柔らかい)素材の採用はGPCリスクの低減に寄与すると考えられている。一方で、酸素透過性を確保しつつ機械的刺激を減らすという両立は技術的課題であり、個々の患者に最適なレンズ選択は眼科医の臨床判断に委ねられる。

重症のアレルギー性結膜疾患全般に対して、抗IL-4受容体α抗体(デュピルマブ)や抗IgEモノクローナル抗体(オマリズマブ)の使用報告がある。しかしデュピルマブは逆に結膜炎併発のリスクが知られており(メタアナリシスでリスク比2.64)、GPCを含むアレルギー性結膜疾患との関係は慎重な評価が必要である1)

  1. 日本眼科アレルギー学会診療ガイドライン作成委員会. アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン(第3版). 日眼会誌. 2021;125(8):741-785.
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