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角膜・外眼部疾患

上強膜炎(Episcleritis)

上強膜炎(episcleritis)は、上強膜組織に生じる良性・自己限定的な充血性疾患である。Tenon囊血管叢など浅在性血管叢の炎症であり、より深部の血管を侵す強膜炎に比して痛みが軽微で視力への影響は少ない。多くは特発性かつ再発性であり、両眼に発症する傾向をもつ。発症率は年間10万人あたり41.0人、有病率は52.6人と報告されている。

充血の原因疾患としては比較的頻度の高い部類に入る一方で、結膜炎強膜炎と紛らわしく、初診時に誤診されることも少なくない。本疾患では強膜実質そのものが侵されず、眼球穿孔など重篤な構造的合併症への進展はほぼみられない。ただし再発性の経過をたどる症例や、関節リウマチ・多発血管炎性肉芽腫症などの全身性自己免疫疾患を背景にもつ症例では、背景疾患の治療と長期経過観察が必要になる。単独の眼疾患としてではなく、全身疾患の「眼への表現型」として理解する視点が再発管理と予後改善に直結する。

強膜・上強膜の炎症性疾患の臨床分類にはWatson分類が広く用いられる。部位別に上強膜炎・前部強膜炎・後部強膜炎の3群に大別され、前部強膜炎はさらに形状によりびまん性・結節性・壊死性(炎症性/非炎症性)に細分される。上強膜炎には壊死性タイプが存在せず、形態上は単純性(びまん性型)と結節性の2型に分類される点が前部強膜炎との重要な相違である。この分類は炎症の深さ(浅層か深層か)と進行・予後の重症度を反映するため、診断時の病型判定が治療方針と予後説明の基盤となる。上強膜炎は本分類のなかで最も軽症かつ予後良好な群に位置づけられる。

単純性上強膜炎

頻度:より一般的

発症:急激

経過:約12時間でピークに達し、2〜3日で消退

所見:扇状(約67%)またはびまん性(約33%)の充血

結節性上強膜炎

頻度:やや少ない

発症:緩徐

経過:単純性より症状が長引く傾向

所見角膜輪部付近の限局性上強膜結節(可動性あり)

強膜は、上強膜(episclera)、強膜実質(scleral stroma)、強膜褐色板(lamina fusca)の3層から構成される。上強膜強膜実質上の血管を含む結合組織であり、強膜実質とTenon囊の間に位置する線維弾性構造として理解される。外側の壁側層(浅層上強膜毛細血管網)と深部の臓側層(高度に吻合した血管網)の2層からなり、両血管網とも前毛様動脈に由来する。神経線維の多くは三叉神経からの分枝である。上強膜は直筋付着部と輪部の間で上強膜血管叢を形成し、通常は結膜に隠れて目立たないが、炎症が生じると拡張して鮮やかな充血をもたらす。上強膜は眼球後方に向かうにつれて徐々に薄くなり、眼球後方ではTenon囊が主体となる。

上強膜炎でみられる限局性充血の前眼部写真
Promelle V, Goeb V, Gueudry J. Rheumatoid Arthritis Associated Episcleritis and Scleritis: An Update on Treatment Perspectives. Journal of Clinical Medicine. 2021;10(10):2118. Figure 2. doi:10.3390/jcm10102118. PMID:34068884; PMCID:PMC8156434. License: CC BY 4.0. Converted to WebP.
前眼部写真で一部のセクターに限局したサーモンピンク〜赤色の充血がみられる。原典Figure 2では、強膜腫脹はなく、浮腫と浸潤は上強膜に限局すると説明されている。
  • 刺激感・熱感:一過性かつ軽度で、強膜炎のような激しい疼痛や放散痛を欠く
  • 異物感:特に結節性で自覚しやすい
  • 羞明:少数例でみられる
  • 流涙充血に随伴することがある

圧痛はなく、眼脂を伴わない。激しい疼痛や明らかな眼脂がある場合は強膜炎・感染性結膜炎・前部ぶどう膜炎などを再検討する。症状は多くの場合、数日以内に軽快または完全に消退し、視機能への影響を残さない。再発時には前回と同じ部位または対側眼に生じることが多く、患者はしばしば「いつもの赤目」として気付く。強膜炎のような夜間睡眠を妨げるほどの激しい疼痛や、上眼瞼を触れたときの強い圧痛は上強膜炎では通常認めない。

臨床所見(医師が診察で確認する所見)

Section titled “臨床所見(医師が診察で確認する所見)”

充血の部位と色調の観察が鑑別の中核となる。上強膜炎の充血は鮮赤色〜ピンク色を呈し、強膜炎でみられる暗赤色(紫紅色調)の深層充血とは対照的である。

所見上強膜炎強膜炎
充血の色調鮮赤色〜ピンク暗赤色(紫紅色)
疼痛軽微〜なし強く放散性
結節の可動性ありなし
  • 単純性(びまん性型)角膜輪部付近にびまん性または扇状の軽度充血を呈する。発症は急激で、発症後約12時間で充血がピークに達し、2〜3日で軽減する経過をたどる。眼瞼浮腫や結膜浮腫を伴うことがある
  • 結節性:単一性の小隆起を角膜輪部付近(瞼裂部に多い)に形成し、朝起床時に気づかれることが多い。結節は可動性がある点が結節性強膜炎との重要な鑑別点である。病巣は比較的限局し、周囲の上強膜は比較的正常に保たれる

視力はおおむね正常である。結膜浮腫・高眼圧・前部ぶどう膜炎角膜炎の合併はまれであり、これらを伴う場合は強膜炎や他疾患を考慮する。眼瞼結膜に炎症所見を欠く点は結膜炎との鑑別に有用である。強膜炎では周辺組織への炎症波及により角膜周辺部浸潤や潰瘍、前部ぶどう膜炎を生じうるのに対し、上強膜炎は自己限定的で隣接組織を巻き込むことはほぼない。細隙灯では強膜血管叢のレベルを識別し、赤い隆起病変を認めても強膜血管が透見できない場合は腫瘍性病変の可能性も念頭に置く。

Q 上強膜炎と結膜炎はどう見分けますか?
A

上強膜炎は眼脂を伴わず、充血部位が角膜輪部付近に限局することが特徴です。結膜炎は通常痛みがなく眼脂を伴い、充血は円蓋部で最も顕著で輪部に近づくほど減衰します。細隙灯で上強膜血管には可動性がなく、結膜血管には可動性があることも鑑別点です。詳細は「診断と検査方法」の項を参照。

大半は特発性(原因不明)であり、全症例の約26〜36%に全身疾患が合併すると報告されている。特発性であっても免疫学的機序の関与が示唆されており、浅層上強膜血管叢におけるリンパ球中心の非特異的炎症反応を基盤とする。再発性の経過や両眼性の発症傾向は、全身性の免疫調節異常が下敷きとなっていることを示唆する所見である。

膠原病・自己免疫疾患(最多は関節リウマチ)1)

  • 関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、強皮症
  • クローン病、潰瘍性大腸炎(炎症性腸疾患)
  • 乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、反応性関節炎

血管炎

感染症:細菌、マイコバクテリア、梅毒、ライム病、ヘルペスウイルス、帯状疱疹などが原因となることがある。眼部帯状疱疹に伴う上強膜炎は感染そのものではなく病原体に対する免疫応答と考えられている。Dirofilaria repensによる結膜下寄生虫症が上強膜炎と誤診された例も報告されている7)

その他:痛風、アトピー、異物、化学外傷、薬剤(トピラマート、パミドロン酸)、COVID-19の初期症状としての報告もある。

  • 性別:成人では女性に多い。特にびまん性型(単純性)は40歳代前後の女性に好発する傾向がある
  • 年齢:20〜50歳に好発する。小児例は比較的まれであるが、ベーチェット病など全身性炎症疾患が基礎にある場合には報告がある
  • 眼疾患の併存:患者の約51%に何らかの眼疾患が併発するとされ、ドライアイ眼瞼炎などの眼表面疾患との関連が指摘される
  • 眼部帯状疱疹の既往:帯状疱疹後の免疫応答として上強膜炎を生じることがあり、感染そのものではなく免疫学的機序を介した炎症と理解される
  • 膠原病・血管炎の既往:関節リウマチや血管炎の既往がある患者では、全身疾患の活動性評価が再発管理に直結する
Q 上強膜炎は全身疾患のサインになりますか?
A

はい、約3割の患者さんで全身疾患が合併しています。最多は関節リウマチですが、多発血管炎性肉芽腫症GPA)やベーチェット病など、早期の診断・治療が予後を左右する疾患の初発症状となることもあります。再発を繰り返す場合や全身症状を伴う場合は、リウマチ因子・抗核抗体・ANCA・尿検査などの全身検索が推奨されます。

上強膜炎は主に病歴聴取と細隙灯顕微鏡検査に基づく臨床診断である。強膜血管のレベル(浅層か深層か)、充血の色調、結節の有無、菲薄化・壊死の有無を細隙灯で丁寧に観察することが基本となる。

フェニレフリン点眼による鑑別

Section titled “フェニレフリン点眼による鑑別”

2.5%フェニレフリン点眼は結膜血管を収縮させ、結膜炎と上強膜炎の鑑別に有用である。10%フェニレフリン点眼は浅層上強膜血管網を収縮させるが深層血管網は収縮しないため、上強膜炎と強膜炎の鑑別が可能となる。

1,000倍希釈エピネフリン点眼による反応試験は、深層血管の関与を判断する簡便な方法である。点眼により充血が消退すれば上強膜炎、消退しなければ強膜炎を示唆する。結節の数・可動性、疼痛・圧痛の有無、エピネフリン反応の3点を組み合わせて総合的に評価する。

エピネフリンおよびフェニレフリンによる反応試験は、細隙灯顕微鏡で充血の層構造を直接確認できない場合や結節が小さい症例での補助診断として特に有用である。点眼後10〜15分の観察で浅層血管の収縮の有無を判断し、深層血管の充血が残存する場合は強膜炎への対応を優先する。

  • 結膜炎:眼脂を伴い、充血は円蓋部中心で痛みはほとんどない。結膜血管には可動性がある
  • 結膜フリクテン:急性期の結膜びらんがフルオレセインで染色される(結節性上強膜炎は染色されない)
  • 強膜炎:暗赤色の深在性充血、強い疼痛・圧痛、睡眠を妨げる放散痛、結節の可動性なし
  • 瞼裂斑:瞼裂部の黄白色隆起に伴う限局性充血
  • MALTリンパ腫・腫瘍性病変強膜血管を透見できない赤色隆起病変では念頭に置く
  • 悪性腫瘍の眼転移:上強膜炎と診断された患者が、実際には神経内分泌腫瘍の眼転移であった症例が報告されている6)。難治性・再発性の場合は腫瘍性疾患の除外も考慮する

Tenon囊炎も一種の上強膜炎と考えられ、両者の臨床的な鑑別は困難である。結節の可動性、疼痛・圧痛の有無、エピネフリン点眼反応、フルオレセイン染色所見を組み合わせて判定する。

単発・軽症の上強膜炎では広範な全身検索は不要である。再発を繰り返す場合や全身症状を伴う場合、以下の検査を考慮する。

  • リウマチ因子(RF)、抗核抗体(ANA)
  • c-ANCA、p-ANCA
  • 赤血球沈降速度(ESR)、CRP
  • 血清尿酸値、全血算(CBC)
  • 梅毒検査、ツベルクリン反応、胸部X線
  • HLA-B27、尿検査

多発血管炎性肉芽腫症の初発として上強膜炎が出現した症例では、腎機能障害が併存することがある3)。眼炎症と腎機能異常の両方が認められた場合は、速やかに多発血管炎性肉芽腫症を含む全身性血管炎の検索を行う。難治性・再発性の上強膜炎では、リウマチ科・内科との連携のもとで疾患活動性の評価と基礎疾患治療への導入を進めることが望ましい。

細隙灯顕微鏡による評価に加え、前眼部光干渉断層計AS-OCT)による上強膜層の厚みや血管走行の評価、超音波検査(Bモード)による強膜厚の評価が補助診断として活用されることがある。壊死性強膜炎の除外や後部強膜炎の有無を評価する目的では、超音波検査でT-sign(視神経鞘周囲液貯留)の有無を確認する。通常の上強膜炎ではこれらの画像検査で特異的所見を欠くことが多く、診断は細隙灯による直達検査と問診・全身検索の組み合わせで行う。

上強膜炎は多くが無治療で数日〜数週間で自然治癒する。患者への疾患の良性性・自然経過と全身疾患検索の必要性に関する説明、および安心感の付与が管理の第一歩である。冷罨法や冷却した人工涙液は、刺激感や熱感といった自覚症状の軽減に有効である。軽症例では積極的な薬物介入を行わず、数日単位の短期フォローで自然軽快を確認することで治療介入に伴うリバウンドや副作用を回避できる。

低濃度ステロイド点眼が第一選択となる。強膜炎との鑑別を兼ねて抗菌薬点眼を併用することも多い。

  • 0.1%フルオロメトロン点眼:1日4回、1〜2週間の投与で多くが改善する
  • 0.3%ガチフロキサシン点眼:1日4回、ステロイドと併用(強膜炎との鑑別・二次感染予防の目的)
  • 0.1%ベタメタゾン点眼:より強い炎症に使用される

点眼治療で反応が乏しければ、強膜炎の検査と治療への切り替えを検討する。ステロイド点眼は速やかに症状を抑える一方、長期・反復使用により再発リスクが高まり「リバウンド」充血を誘発する可能性が指摘されている。

NSAID(非ステロイド性抗炎症薬)

Section titled “NSAID(非ステロイド性抗炎症薬)”
  • NSAID点眼ステロイドの代替として用いられるが、効果が不十分のこともある
  • セレコキシブ100mg 1日2回内服:COX2選択的阻害薬で、再発例や点眼反応が乏しい場合に用いられる
  • イブプロフェン800mg 1日3回内服:海外で用いられる処方である
  • フルルビプロフェンナプロキセンなどの非選択的NSAID内服も選択肢となり、治療抵抗例ではCOX2選択薬との使い分けを検討する

治療は症状消退後に漸減・中止を基本とし、漫然とした継続投与は避ける。点眼ステロイドの長期使用によりステロイド反応性の眼圧上昇や後嚢下白内障が生じるリスクがあるため、1〜2週を目安に改善を確認したうえで漸減する。再発例では各再発エピソードでの疾患活動性を個別に評価し、基礎にある全身疾患の治療最適化を優先する。

関節リウマチなどの膠原病に合併する上強膜炎では、基礎疾患の治療が予後に直結する1)。局所治療に抵抗する場合はプレドニゾロン内服(20〜30mg/日からの漸減療法)を併用する。全身性炎症疾患の随伴が明らかな場合を除き、ステロイド全身投薬を要する例は非常にまれである。

多発血管炎性肉芽腫症に伴う上強膜炎では、シクロホスファミドまたはリツキシマブによる寛解導入療法が有効である3)4)リツキシマブはシクロホスファミドと比較して6か月時の寛解率が高い(64% 対 53%)とする報告がある3)

Q 上強膜炎にステロイド点眼を使うとリバウンドしますか?
A

ステロイド点眼は上強膜炎の症状を速やかに抑えますが、中止後に「リバウンド」による充血を引き起こし、さらに強い再燃を招く可能性が指摘されています。そのため、ステロイドの使用には議論があり、軽症例では無治療経過観察やNSAIDを優先する意見もあります。再発を繰り返す場合はCOX2阻害薬内服や全身疾患の精査が推奨されます。

6. 病態生理学・詳細な発症機序

Section titled “6. 病態生理学・詳細な発症機序”

上強膜炎の発症メカニズムは依然として完全には解明されていない。病変部では浅層上強膜血管網に血管拡張と充血が生じ、上強膜およびTenon囊にリンパ球を中心とする炎症細胞の浸潤がみられる。強膜実質そのものは侵されない点が強膜炎との本質的な相違である。炎症細胞浸潤は主にT細胞と少数の形質細胞からなり、好中球優位の化膿性炎症像や肉芽腫形成は通常みられない。

病理組織学的には非肉芽腫性炎症であり、血管拡張とリンパ球浸潤が主体となる。結節性上強膜炎では、病巣中央にフィブリノイド壊死と、その周囲を取り囲む類上皮細胞の配列が認められる。これらの所見は強膜炎にみられる肉芽腫性炎症の像と類似しており、上強膜炎と強膜炎は炎症の深さの違いによるスペクトラムとして捉える見解もある。上強膜炎で観察される小規模のフィブリノイド壊死は、強膜炎におけるより広範な壊死性変化の軽症端と理解することができる。

炎症の進行は活性酸素種(ROS)の産生を増加させ、酸化ストレスを亢進させる2)。ヒト網膜のビタミンC総量は血漿中の約20倍と高濃度であり、眼組織は抗酸化システムに強く依存している。自己免疫性上強膜炎では、この抗酸化システムの機能低下が上強膜の慢性炎症と組織障害を引き起こす可能性が示唆されている2)。ROSは血管内皮を障害し、炎症性サイトカインの放出を誘発することで、持続的な血管拡張・透過性亢進を引き起こす。眼表面と上強膜の慢性的な酸化ストレス暴露は、再発性上強膜炎の一因として注目されており、抗酸化介入の治療的意義が検討されている。

臨床的には上強膜炎が強膜炎に直接移行することはほとんどない。一方で強膜炎の大多数では上強膜にも炎症(上強膜炎的変化)がみられることから、両者は完全に独立した疾患というよりも、炎症が及ぶ血管層の深さによる連続体として理解される。上強膜炎は浅層上強膜血管網(壁側層)を主に侵し、強膜炎は深層血管網から強膜実質までを侵す。

解剖学的背景が鑑別に果たす役割

Section titled “解剖学的背景が鑑別に果たす役割”

直筋付着部では強膜の厚さが約0.3mmと最も薄く、炎症・外傷に対する脆弱性が高いことが知られる。上強膜血管叢は前毛様動脈を介して豊富な血液供給を受けるため、炎症時には充血が急速に顕在化しやすい。一方、強膜自体は血管に乏しい組織であり、強膜炎のような深在性炎症はまれである。上強膜炎で前毛様動脈由来の血管が可逆的に充血するという解剖学的特徴は、エピネフリン点眼試験で充血が速やかに消退することの機序的基盤であり、深在性の強膜血管炎ではこの反応がみられない点が病態生理学的な鑑別根拠となる。


特発性再発性上強膜炎の60歳男性に対し、ビタミンC 500mg/日の内服を開始したところ、7か月間再発がみられなかったとする症例報告がある2)。ビタミンCは強力な抗酸化物質であり、酸化ストレスの軽減を介して眼組織の炎症を抑制する可能性が指摘されている。眼組織では網膜ビタミンC濃度が血漿中の約20倍に達するなど、抗酸化システムへの依存度が高いことが知られており、ビタミンCやその他の抗酸化栄養素の補充は再発抑制戦略の候補となりうる2)。ただし、有効性を確立するには対照を置いたケースコントロール研究や臨床試験による検証が今後必要である2)。現段階では、症状の強い再発例や背景にドライアイや慢性的な眼表面炎症を伴う症例で、補助的に考慮される段階にとどまる。

全身性血管炎の早期診断における眼所見の重要性

Section titled “全身性血管炎の早期診断における眼所見の重要性”

多発血管炎性肉芽腫症は未治療の場合、1年死亡率が80%に達する致死的疾患であるが、免疫抑制療法の導入により死亡率を10%まで低減できるとされる3)。上強膜炎がGPAの初発症状となりうるため、眼科医はこの関連性を認識し、再発性の上強膜炎では全身検査を積極的に行う必要がある3)4)。特に眼炎症と腎機能障害の併存は多発血管炎性肉芽腫症を強く示唆する所見である3)

関節リウマチに伴う上強膜炎・強膜炎に対し、TNFα阻害薬やリツキシマブなどの生物学的製剤の有効性が報告されている1)インフリキシマブアダリムマブは関節リウマチ・ぶどう膜炎領域で実績があり、難治性の強膜炎・上強膜炎にも応用が検討される。一方でエタネルセプトは眼炎症を誘発・増悪させる逆説的反応が知られており、薬剤選択には慎重さが求められる1)リツキシマブはB細胞を標的とするモノクローナル抗体であり、血管炎関連の眼炎症に対する有効性が示唆されている。これらの生物学的製剤の使用はリウマチ科・膠原病内科との緊密な連携のもとで判断される。

上強膜炎と診断された患者が実際には眼内転移性腫瘍であった症例6)や、結膜下寄生虫症であった症例7)が報告されており、難治性・再発性の上強膜炎では悪性疾患や感染症の除外が重要である。画像検査や血管を含む腫瘤の細隙灯所見の詳細評価が診断の手がかりとなる。腫瘤の可動性、強膜血管の透見性、周囲組織との癒着の有無、および治療反応性を総合して判断することが求められ、通常のステロイド点眼に反応しない持続的な隆起病変は積極的に生検や画像精査を検討する根拠となる。

上強膜炎の自然経過や全身疾患の顕在化までの期間については長期観察研究が限られており、特に日本人集団における発症率や合併疾患プロファイルのデータは十分とはいえない。既報の欧米からの集計では年間約40〜60例/10万人の発症率が示されているが、民族・生活環境・ぶどう膜炎レジストリの運用差により数値には幅がある。今後の臨床レジストリ構築と多施設共同研究により、再発リスク因子や全身疾患顕在化までのタイムラインの同定が期待される。

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