VMT所見
中心窩陥凹の消失・変形:正常な中心窩の凹形状が平坦化・歪みを示す。
偽嚢胞・嚢胞様変化:ミューラー細胞を代表する組織柱を伴う黄斑内の液体貯留。VMT眼の81%に認められる。嚢胞様変化は黄斑全域に及ぶことがあり、ERM の接線方向の牽引とは異なり、VMT特有の前後方向の牽引に起因する8)。
RPEからの中心窩の挙上:後部硝子体皮質による前方牽引の直接的証拠。
後部硝子体皮質の肥厚・高輝度:網膜前方に位置する高反射なバンドとして描出される。
硝子体黄斑牽引症候群(Vitreomacular Traction Syndrome; VMT)は、不完全な後部硝子体剥離(PVD)を基盤として発症する硝子体網膜界面疾患である。加齢に伴い黄斑前の硝子体が液化し硝子体ポケットを形成するが、黄斑前に存在する硝子体皮質が後部硝子体剥離の進行により前後方向の牽引として作用するようになる。後部硝子体皮質が黄斑部に異常に強く付着したまま残存し、液化した硝子体が黄斑付着部を前後方向に牽引することで形態学的・機能的変化をきたす。後部硝子体剥離の進行が黄斑近くで停止すると、後部硝子体皮質前ポケットの後壁が黄斑部を前後方向に牽引して発症する。
牽引により網膜に形態変化が起こっているものをいい、網膜に全く変化がないもの、硝子体が黄斑に接着しているだけのものは硝子体黄斑接着(VMA)とし、VMTの範疇に入れない。
VMTには硝子体の加齢変化で起こる**狭義(特発性)のものと、ぶどう膜炎・増殖糖尿病網膜症・網膜静脈分枝閉塞などの網膜血管病変に続発して生じる広義(続発性)**のものがある。
1953年にIrvineが「硝子体タッグ症候群」として初めて関連病態を報告し、1967年にJaffeが独立疾患として「硝子体網膜牽引症候群」を提唱した。その後Reeseらの組織病理学的研究により疾患概念が確立された。
単独VMTの有病率は人口10万人あたり22.5人と報告されている1)。糖尿病網膜症・糖尿病黄斑浮腫・加齢黄斑変性などに合併するVMTの有病率はこれよりはるかに高い。VMTは全年齢・全人種で発症しうるが、加齢が最大のリスク要因であり、63歳以上の米国成人において0.4〜2.0%の有病率と推定される2)。女性でやや発症頻度が高い傾向がある。
約80%の症例で嚢胞様黄斑浮腫を伴い、ほとんどの症例で黄斑上膜を伴う。黄斑上膜の合併により硝子体と黄斑の癒着がさらに強まり、長期間にわたる牽引が持続する。
OCTの普及により、国際硝子体黄斑牽引研究グループ(International Vitreomacular Traction Study Group; IVTS)がOCTに基づく定義と分類を提案している。
**硝子体黄斑癒着(VMA)**は、中心窩付近での部分的な硝子体付着が存在するが、網膜形態に変化を生じていない状態である。無症状であることが多く、VMAのみでは治療対象とならない。
**硝子体黄斑牽引(VMT)**は、VMAに加えて中心窩形態の変化(中心窩表面の歪み・偽嚢胞形成・RPEからの中心窩の挙上など)を認める状態である。全層断裂がないことがVMTの必要条件である。
IVTS分類では、付着部直径が1500 µm以下のものをfocal(局所型)、1500 µmを超えるものをbroad(広範型)に分類する。付着幅には連続性があり、ごく小さなpinpoint付着から1500 µmを超える広範な付着まで多様である8)。
付着幅による分類:
| 分類 | 付着幅 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 局所型(Focal) | ≤ 1500 µm | 嚢胞様変化を伴いやすい。自然消退しやすい |
| 広範型(Broad) | > 1500 µm | 黄斑隆起・牽引性網膜剥離を起こしやすい |
VMAは硝子体が黄斑に付着しているが網膜形態は正常な状態であり、無症状で治療不要なことが多い。VMTはVMAに加えて網膜の形態変化(歪み・偽嚢胞・隆起)が生じた状態であり、視機能障害をきたしうる。両者はOCT検査で区別する。牽引により網膜に形態変化が起こっているもののみをVMTと診断し、硝子体が黄斑に接着しているだけのものはVMAとして区別する。

VMTの自覚症状は緩徐に発現・進行し、短期間では視力の劇的な変化を認めないことが多い8)。
重篤な牽引による中心窩剥離が生じた場合、急激な視力低下や暗点が生じることがある。VMAのみの段階では無症状である。
スリットランプ生体顕微鏡検査では、黄斑部に癒着した硝子体とその周囲の後部硝子体剥離が認められる。中心窩に付着したぴんと張った半透明の膜が確認されることがある。眼底所見では黄斑上膜が認められる場合や中心性網脈絡膜症様黄斑離または浮腫、黄斑円孔様所見を呈することがある。また、検眼鏡的に黄斑部網膜上に透明な膜組織を認め、網膜血管は牽引により蛇行していることがある。
OCTで確認される主な所見を以下に示す。
VMT所見
中心窩陥凹の消失・変形:正常な中心窩の凹形状が平坦化・歪みを示す。
偽嚢胞・嚢胞様変化:ミューラー細胞を代表する組織柱を伴う黄斑内の液体貯留。VMT眼の81%に認められる。嚢胞様変化は黄斑全域に及ぶことがあり、ERM の接線方向の牽引とは異なり、VMT特有の前後方向の牽引に起因する8)。
RPEからの中心窩の挙上:後部硝子体皮質による前方牽引の直接的証拠。
後部硝子体皮質の肥厚・高輝度:網膜前方に位置する高反射なバンドとして描出される。
合併所見
蛍光眼底造影では、黄斑部の過蛍光、嚢胞様黄斑浮腫と視神経乳頭部の蛍光漏出を認めることがある。乳頭部に後部硝子体剥離がある場合には、乳頭の蛍光漏出は起こらない。FA では毛細血管からの色素漏出が後期相で見られることがあり、嚢胞腔への色素貯留を認める8)。
YamadaとKishiは、VMTにおける2種類の硝子体牽引プロファイルを報告している。V型(中心窩の耳側・鼻側両方で剥離し中心窩のみに付着)は術後成績が良好で、J型または弓状(中心窩の鼻側にも付着が残存)は術後に黄斑円孔進行や萎縮を来しやすく成績が不良な傾向がある。
VMT・ERM眼では、視神経乳頭周囲の硝子体が付着したまま残存するvitreopapillary traction(VPT、硝子体視神経乳頭牽引)を伴うことがある。VPTはOCTスキャンで診断され、乳頭浮腫や、両眼性の場合は乳頭うっ血(papilledema)と混同される可能性がある。VPTが視力低下や虚血性視神経症と関連する可能性も示唆されている8)。
加齢に伴い硝子体ゲルは液状化(synchysis)・凝縮(syneresis)を起こし、後部硝子体剥離(PVD)が進行する。通常のPVDでは硝子体が網膜から均一に剥離するが、異常PVD(anomalous PVD)では剥離と癒着の解除が非同期に進行し、VMTが生じる。
硝子体は内境界膜(ILM)が最も薄い部位で網膜に最も強固に付着している。後方では視神経乳頭周囲・黄斑部(中心窩および中心窩周囲直径1500 µmの領域)・主要網膜血管に沿って付着が強い。これがVMTにおいて中心窩の付着が持続する解剖学的基盤となっている。
VMTの診断・評価において中心的な役割を担う検査である。OCTはERM・VMTの診断・病型分類・経過観察においてde facto standardとされる8)。硝子体黄斑界面を非侵襲的に可視化し、牽引の幅と網膜の変化を詳細に観察できる。OCTによるVMT診断には以下の所見を認める必要がある。
上記のOCT所見に加え、以下の情報を評価する。
付着幅が1500 µm以下(局所型)か1500 µmを超える(広範型)かの評価が治療方針決定に重要である。SD-OCTは網膜外層(外境界膜・光受容体ellipsoid zone)の状態も評価でき、予後予測に役立つ。
「コットンボールサイン」(中心窩中心の内節外節接合部と光受容体終末部の間に認められる円形・びまん性の高反射領域)は中心窩への前方牽引の指標となる可能性がある。
眼底コンタクトレンズや高倍率間接検眼鏡を用いて、黄斑部のパッカリング・浮腫・牽引性変化を評価する。細隙灯顕微鏡による眼底検査では、黄斑部に癒着した硝子体とその周囲の後部硝子体剥離を確認する。
VMTは以下の疾患と類似した症状・所見を呈することがある。
臨床診断は細隙灯顕微鏡による眼底検査や蛍光眼底造影でも可能だが、VMTの確定診断はOCTによって行うのが標準である。OCTにより牽引の幅・網膜形態の変化・合併所見を詳細に評価でき、治療方針の決定に不可欠である。特に付着幅(局所型・広範型)の正確な評価はOCTでのみ可能である。
症状が軽微でVMT解除のリスクよりも利益が小さいと判断される症例では、経過観察が第一選択となる。自然消退はメタ解析では11〜40%の症例で報告されている3)。局所型VMT(≤1500 µm)では1〜2年の経過で23〜47%に自然消退が報告されている8)。局所型で網膜前膜を合併しない場合、自然消退しやすい3)。
網膜に変化の少ないものでは経過観察で何年も変化しないものや、接着点の小さいものでは自然剝離するものがあるため、どのようなタイプのものか、経過をこまめに観察する必要がある。黄斑上膜を伴わない症例では、自然に後部硝子体剝離が生じ、牽引が解除されることがある。自覚症状が強くない症例ではしばらく経過観察してもよい。経過中の黄斑円孔への進行に注意して、定期的なOCTフォローアップが必要である。
一方、ベースラインで嚢胞様変化を認める眼では予後に注意が必要である。53眼の研究では、嚢胞様変化を有する眼の81%が60ヶ月で2行以上の視力低下を示した8)。
VMT治療において最も確実な方法である。単純硝子体切除と黄斑部の膜剝離を行う。黄斑部での癒着は強いため、網膜との接着を見ながらゆっくり外す。ほとんどの症例で硝子体による黄斑部の牽引を解除する目的で、硝子体切除術の適応がある。
診断が明らかになったら、黄斑円孔の発生や不可逆性の変化が生じる前に早めに手術に踏み切ることが推奨される。特に網膜と硝子体の接着面積が広いものでは、網膜硝子体癒着が強いため注意が必要である。経過観察中に黄斑円孔が生じたり、手術が遅れた場合に術後嚢胞様黄斑浮腫が黄斑円孔となることがある。
手術適応の判断基準:
VMT解除率100%、黄斑円孔閉鎖率95%という最高の治療成績が報告されている2)。系統的レビューとメタ解析において、硝子体手術はオクリプラスミン(enzymatic vitreolysis)と比較して、VMT解除率(RR=0.48, 95% CI 0.38–0.62)および黄斑円孔閉鎖率(RR=0.49, 95% CI 0.30–0.81)において有意に優れていた2)。術後視力改善もオクリプラスミンより大きかった(SMD=0.38, 95% CI 0.03–0.73)2)。
PPVによる術後視力は、メタ解析(259眼)で術前logMAR 0.67から術後0.42へ改善し、33%が2行以上改善した一方、21%は不変または悪化した8)。平均して約80%の患者が2行以上の視力改善を得る8)。
網膜前膜を合併する場合や黄斑円孔が発生した場合は、内境界膜(ILM)剥離を追加することが標準的である。ブリリアントブルー色素やその他の補助色素でILMを染色して剥離する。黄斑円孔合併例でのILM剥離後のC3F8ガスタンポナーデによる黄斑円孔閉鎖率は95%以上とされる4)。系統的レビュー(13研究)では ILM剥離の有無で視力転帰に有意差はなかったが、ILM剥離により ERM再発率が低下した8)。近年のRCT(213眼)でも、能動的ILM剥離群の再発率は0%であったのに対し非剥離群は19.6%であった8)。
VMTに黄斑円孔(grade 1b)を合併した83歳男性の報告では、硝子体手術による後部硝子体皮質剥離後に全層黄斑円孔(422 µm)が発生したが、2回目の硝子体手術+ILM剥離(ブリリアントブルー色素使用)+14% C3F8ガスタンポナーデにより6週後に視力20/120へ改善・中心窩形態が回復した4)。
術前解剖学的形態が手術成績に影響する。局所型VMT(V型牽引プロファイル)の方が広範型や弓状(J型)より術後視力改善が大きい傾向がある4)。
C3F8(パーフルオロプロパン)やSF6(六フッ化硫黄)などの膨張性ガスを硝子体内に注射し、ガスの浮力と機械的力によってVMTを解除する低侵襲治療である。C3F8は0.3 mLを使用する。
「ドリンキングバード法(drinking bird maneuver)」:術後に頭を前後に繰り返し傾ける手技で、ガス気泡と硝子体液の混合を促しVMT解除率を向上させる。
メタ解析では、PVはオクリプラスミンと比較してVMT解除率が有意に高く(RR=0.49, 95% CI 0.35–0.70)、PPVとの視力改善については有意差を認めなかった2)。VMT解除率は46%(オクリプラスミン)、68%(PV)、100%(硝子体手術)と報告されている2)。
DRCRネットワークのRCTでは、C3F8気体注射群の78%で黄斑部VMTが解除されたのに対し、sham群では9%であった。ただし気体注射群で網膜剥離・裂孔の発生率が予想以上に高く、安全性の懸念から早期中止となった8)。本治療の安全性にはなお注意が必要である。
オクリプラスミン(ocriplasmin)は硝子体網膜界面の構成成分であるフィブロネクチンとラミニンに対して活性を持つ遺伝子組換えプロテアーゼである。125 µgを硝子体内に単回注射することでVMA解除を促進する。使用成績はあまり良くなく、約20%に有効とされる。
MIVI-TRUSTおよびOASIS臨床試験での評価において、プラセボ比でVMA解除率(RR=3.61, 95% CI 1.99–6.53)が有意に優れていたが3)、硝子体手術と比較したVMT解除率は劣る。Phase III(MIVI-TRUST)では ocriplasmin 群27% vs placebo群10%でVMA解除が達成された(P<0.001)7)。オクリプラスミンの使用は議論が分かれており、臨床への広範な普及には至らなかった7)。2020年に市場から撤退した経緯があり5)、地域・施設によって入手可能性が異なる。
加齢に伴う硝子体の変化は以下の順序で進行する。
PVDが正常に進行する場合は硝子体と網膜の分離が均等に起こる。しかし牽引力と付着解除が非同期に進行する「異常PVD」では、中心窩での付着が最後まで残存し、VMTが生じる。
付着直径が小さいほど単位面積あたりの牽引ストレスが高くなり、中心窩の変形が大きい5)。
PVDが未完成の場合、残存した後部硝子体の弾性特性が静的な前方牽引を中心窩に加える。さらに眼球運動による動的牽引も加わり、VMTにおける動的牽引の方が静的牽引より重要とされる。重症例では網膜分離症や網膜剥離を伴うことがある。
網膜前膜はVMT眼の40〜65%に合併し、2つの機序でVMTを増悪させる5)。
組織病理学的には、ERM に硝子体コラーゲンが含まれており、ERMがILMに強固に付着することで残存硝子体付着を黄斑に固定する役割を果たす8)。
ERMの形成機序については、ILMの微小断裂を介してRPE細胞やグリア細胞が網膜表面に遊走するという従来説に加え、ILM断裂を必要とせず後部硝子体皮質の残遺細胞が筋線維芽細胞に活性化されて膜形成・収縮をきたすという新仮説が提唱されている8)。
組織学的には、検眼鏡的に黄斑上膜を認めない症例でも内境界膜の硝子体側に筋線維芽細胞を中心とした細胞が付着している。膜様組織が存在する症例では特発性黄斑上膜と同様に組織内に筋線維芽細胞や線維性星状膠細胞が含まれていると報告されている。
VMT検体の組織病理では、線維性アストロサイト・筋線維芽細胞・線維細胞・RPE細胞からなる線維細胞増殖が認められ、後部硝子体界面と網膜界面を橋渡しする「二重膜」を形成する。透過型電子顕微鏡では2つの網膜前膜タイプが識別される。硝子体分離(vitreoschisis)の有無がこの2タイプを規定すると考えられている。
オクリプラスミン(Jetrea; 125 µg 硝子体内単回注射)は人工プラスミンの触媒ドメインからなる組み換え型プロテアーゼであり、硝子体および硝子体網膜界面のタンパク質成分を溶解することでVMA解除を促進する。
Chenらのメタ解析(55研究・4,159例)では、オクリプラスミン治療はプラセボと比較して、28日後のVMA解除率(RR=3.61, 95% CI 1.99–6.53)、黄斑円孔閉鎖率(RR=3.84, 95% CI 1.62–9.08)、6ヶ月後の3ライン以上BCVA改善(RR=1.97, 95% CI 1.08–3.57)において有意に優れていた3)。コホート研究のプール解析では、VMA解除率は50%(95% CI 47–53%)、黄斑円孔閉鎖率は36%(95% CI 32–39%)であった3)。
治療効果の予測因子(オクリプラスミン):
Cochrane レビューでは、治療群の最大20%が6ヶ月以内に追加PPVを必要とした7)。オクリプラスミンの使用は議論が分かれており、臨床への広範な普及には至らなかった7)。2020年の市場撤退以降、入手可能性に制限がある5)。
QuirozReyesらの系統的レビューとメタ解析(2023年)では、PPVと気体注射(PV)を比較したランダム化試験においてVMT解除率および黄斑円孔閉鎖率でPPVが優れていたが、術後BCVA改善に有意差はなかった(SMD=-0.15, 95% CI -0.47〜0.16)2)。C3F8によるPVのRCTが安全性懸念(網膜剥離・網膜裂孔)で早期中止となった事例もあり2, 8)、本治療法の安全性には継続的な検討が必要である。
PPVと白内障手術の同時施行(phacovitrectomy)と段階的施行を比較したメタ解析では、合併症・視力・屈折転帰に有意差を認めなかった8)。有水晶体眼のPPV後は核白内障が高頻度に進行するため、同時施行の適応について術前から患者と相談することが推奨される。
Ashbyらは66歳女性がフライトシミュレーター体験後にVMTが解除されたケースを報告した(2025年)5)。シミュレーターの3次元加速による多方向の力がVMA界面の分離に寄与したと仮説される。長期フォローアップで視力は20/60から20/25へ改善した。ただし、VMT解除後に切迫黄斑円孔所見が一時的に認められ、全層黄斑円孔形成が潜在的リスクとして存在することが指摘された5)。一過性のVMT自然消退との時期的関連性を否定できず、確立した治療法ではない。
Rios Gonzalezらは1%ピロカルピン点眼(緑内障治療)開始6週後に両眼性VMTを発症し、中止後8週でVMA持続のままVMTが解除された69歳男性の症例を報告した(2023年)1)。老視治療向けの新規ピロカルピン製剤(1.25%等)の普及に伴い、VMT誘発・増悪のリスクが懸念されており、PVD未完成例では開始前の後眼部検査とOCTの実施が提案されている1)。
VMID(硝子体黄斑界面疾患)における患者報告アウトカム(PROMs)の系統的レビューでは、86研究から17種類のVMID特異的PROMs が同定されたが、現状のPROMsには以下の課題がある6)。
PROMs と定性研究で同定されたQOL issuesとの重複はわずか9項目(読書・運転・夜間運転・手術への恐怖・歪み視・複視・医療者からのコミュニケーションへの懸念・体位保持の不便さ・体位保持による睡眠障害)にとどまった6)。患者が報告するVMIDのQOL問題には、変視症・中心視障害・読書困難といった視覚的問題に加え、情動的wellbeing(楽観・フラストレーション・不安・ストレス・希望)、社会的wellbeing(社会的支援の獲得・友人家族との交流維持)、コーピング戦略(無視・気晴らし・医師への信頼・祈り瞑想・受容・実用的ツール・社会的支援・症状モニタリング)が含まれ、現行のPROMsはこれらを十分にカバーしていない6)。今後、患者参加型の内容開発とRasch分析等による厳密な心理測定学的検証を経たVMID特異的PROMs の開発が必要とされている。
Rios Gonzalez R, Villegas VM, Blasini M. Bilateral vitreomacular traction syndrome associated with topical pilocarpine 1% ophthalmic solution. American journal of ophthalmology case reports. 2023;30:101834. doi:10.1016/j.ajoc.2023.101834. PMID:37181418; PMCID:PMC10172709.
Quiroz-Reyes MA, Quiroz-Gonzalez EA, Quiroz-Gonzalez MA, Lima-Gomez V.. Pneumatic vitreolysis versus vitrectomy for the treatment of vitreomacular traction syndrome and macular holes: complication analysis and systematic review with meta-analysis of functional outcomes. Int J Retina Vitreous. 2023;9(1):33. doi:10.1186/s40942-023-00472-x. PMID:37316932; PMCID:PMC10268451.
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