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眼外傷

穿通性眼外傷

穿通性眼外傷(penetrating eye injury)は、鋭的物体による刺入創のみが存在し、刺出創を伴わない眼球開放性外傷である。バーミンガム眼外傷用語規定では「刺入創だけで刺出創がないならば穿通(penetrating)とする」と定義されており、裂傷が多数であっても多発性の刺入機転で生じているならば穿通に分類される。

眼内異物IOFB: intraocular foreign body)を伴う場合は別の分類となる。また刺入+刺出創を持つものは穿孔性眼外傷として区別する。

穿通性眼外傷

定義:刺入創のみ(刺出創なし)

刺入部のみに眼球内容の前方脱出が生じる。穿孔性より相対的に軽症。

穿孔性眼外傷

定義:刺入創+刺出創

眼球を完全に貫通するため前後から眼球内容が脱出し、より重篤となる。

眼内異物(IOFB)

定義:眼球内に異物が残留

穿通外傷の最大40%に合併する。CT検査による検索が必須である。

損傷部位は予後に影響し、以下の3ゾーンに分類される1)

ゾーン範囲特徴
Zone I角膜角膜輪部前眼部に限局。予後比較的良好
Zone II輪部後方5mmまで鋸状縁より前方。水晶体虹彩の損傷が多い
Zone III輪部後方5mm以上網膜を含む後眼部。予後不良のことが多い
項目穿通性(penetrating)穿孔性(perforating)
刺入創ありあり
刺出創なしあり
眼球内容脱出刺入部のみ(前方)前後両方
重症度相対的に軽症相対的に重篤
IOFB合併最大40%少ない(貫通後に落下)

眼球開放性外傷の発生率は10万人あたり約3.5〜4.5と推定される1)。患者の大多数は男性であり、女性に比べ相対リスクは約5.5倍である。受傷時の平均年齢は約30歳である。開放性眼外傷8497眼を対象とした系統的レビューでは、最多の損傷タイプは穿通性+IOFB合併であった1)。小児では年間10万人あたり11.8人と報告されており、受傷例の35%以上が小児である。

Q 穿通性と穿孔性の違いは何か?
A

穿通性(penetrating)は刺入創のみで刺出創がない状態を指す。穿孔性(perforating)は刺入創と刺出創の両方を持ち、眼球を完全に貫通する。穿通性は相対的に軽症だが、眼内異物IOFB)の合併率が最大40%と高く注意が必要である。

穿通性眼外傷による星状角膜裂傷の細隙灯所見
穿通性眼外傷による星状角膜裂傷の細隙灯所見
Couperus K, Zabel A, Oguntoye MO. Open Globe: Corneal Laceration Injury with Negative Seidel Sign. Clin Pract Cases Emerg Med. 2018;2(3):266-267. Figure 1. PMCID: PMC6075488. License: CC BY 4.0.
中央角膜に星状の全層裂傷が生じており、鋭的物体による穿通性眼外傷の角膜裂傷を示す。本文「主な症状と臨床所見」の項で扱う穿孔創(角膜全層裂傷)に対応する。
  • 眼痛:受傷直後から生じる。穿孔創の大きさや部位により程度が異なる。
  • 視力低下角膜損傷、前房出血水晶体損傷、硝子体出血などにより生じる。
  • 異物感・霧視:軽微な損傷では主訴がこれらにとどまることもある。
  • 充血羞明・流涙:眼球開放性外傷に伴う一般的な症状である。

穿通性眼外傷では刺入創のみであるため、後眼部への眼内容脱出はなく、前眼部所見が中心となる。

  • 穿孔創角膜または強膜の全層損傷を確認する。
  • 浅前房低眼圧房水漏出を示唆する重要な所見である。
  • 前房出血隅角離断や毛様体解離を伴うことがある。
  • 梨状瞳孔虹彩が創部に嵌頓した場合に生じる。虹彩嵌頓(虹彩が裂創部に挟み込まれた状態)を示唆する。
  • 虹彩・ぶどう膜脱出:裂創が前方にある場合、創よりぶどう膜が脱出・嵌頓する。
  • 外傷性白内障:前囊下皮質混濁やVossius輪(水晶体前面に色素沈着が輪状に残る所見)を認める。水晶体損傷時に生じる。
  • 硝子体出血:後眼部への損傷波及を示す。損傷がZone IIIに及ぶ場合に多い。

フルオレセイン蛍光染色によるSeidel試験は全層創の評価に有用である。コバルトブルー光下で房水漏出により染料が洗い流される(Seidel陽性)ことで全層創を確認できる。

家庭や職場が最も頻度の高い受傷場所である。主な原因を以下に列挙する。

  • 鋭利な物体:ナイフ、ハサミ、ドライバー、釘、棒など。小児では鉛筆やペンなどの筆記用具が重要な原因である。
  • 高速飛来物:金属片(サンダー・溶接時の破片)、ハンマー打撃時の破砕片、コンクリート片、ガラス片など。
  • 爆発外傷:ベイルート港爆発(2020年8月)の眼外傷研究では39患者48眼が対象となり、開放性外傷が20.8%、前房出血が18.8%に認められた2)。爆発物による破片が高速で眼球に刺入する機序による穿通性外傷が多い。
  • スポーツ関連:野球・ソフトボール、シャトルコック、BB弾など。

眼内異物IOFB)は穿通外傷の最大40%に合併する。金属片が最も多く、木片やガラス片も原因となる。

  • 男性:眼外傷の相対リスクは女性の約5.5倍である。
  • 保護具の不使用:リスクの高い作業やスポーツでの眼保護具の不着用。
  • 薬物・アルコール使用:外傷リスクを増大させる。
  • 小児の筆記用具:鉛筆やペンは無害と認識されがちだが、深刻な眼外傷を引き起こしうる。

開放性眼球外傷における眼内炎の頻度は2〜7%である。特に植物や土壌からの感染は高率に失明に至る。白内障術後眼内炎と異なり、Bacillus属菌などの強毒菌による眼内炎がある。眼窩内異物では嫌気性菌(破傷風菌)の感染も念頭に置く。

眼球開放性外傷の診断は、詳細な問診と慎重な診察、画像検査の組み合わせにより行う。穿通性眼外傷では刺入創を認めたすべての症例に対して異物残留を疑い、CT検査を積極的に施行することが重要である。

受傷時刻・機序・原因物体を詳細に聴取する。保護メガネや処方メガネの着用の有無、破傷風の免疫状態、最終食事時間(全身麻酔の可能性のため)も確認する。意識レベル低下のある患者では家族・関係者からの情報収集が重要である。全身麻酔下での緊急手術が想定される場合は、末梢血管を確保し絶飲食を指示する。

検査法主な適応注意点
眼窩CTIOFB検出・眼球変形・眼窩骨折1mm薄切スライス推奨。全例適応
超音波Bモード透見不良時の後眼部評価眼球開放が疑われる際は圧迫に注意
X線金属異物の簡易検出長さ2mm・厚さ0.4mm以上で確認可能
MRI非金属異物(木片等)金属磁性体が疑われる場合は禁忌

刺入創があるすべての穿通性眼外傷は、異物の存在を疑ったほうがよい。CTによる眼内異物IOFB)の検出率は最大95%と報告されており、眼内・眼窩骨折・頭蓋内病変を同時に評価できる。

Q 穿通性眼外傷では必ずCTが必要か?
A

刺入創があれば異物残留を常に疑うべきである。前眼部所見が正常に見えても眼内異物が存在する場合がある。CTによる異物の有無・位置、眼球変形、眼窩骨折の評価は不可欠であり、見逃しは手術時期の逸失や失明につながりうる。

穿通性眼外傷の治療は、感染と眼球内容脱出を防止するための**創閉鎖(一次修復)**が最優先である。

  • 眼球内容物が脱出している場合はすべて眼球内に完納する。
  • ベッドサイドでの異物除去は行わない。硬性アイシールドを装着し、手術室での制御下の除去を計画する。
  • 眼瞼創部や結膜囊内が汚染されている場合は生理食塩水で十分に洗浄する。

受傷後24時間以内の一次修復が推奨される。系統的レビュー(8497眼、15研究)では、24時間以内の修復は遅延修復と比較して眼内炎リスクを有意に低減させた(OR 0.39、95%CI 0.19-0.79、P=0.01)1)。一方、最終視力については修復のタイミングによる有意差は認められなかった(OR 0.89、95%CI 0.61-1.29、P=0.52)1)。麻酔は基本的に全身麻酔を選択する。

10-0ナイロンを用いる。水密縫合を目標とするが、糸を締めすぎると角膜乱視や不正乱視を生じるため、バイトを長めにとる。すべての糸の締め付けを同程度にし、房水漏出を防ぐ。

7-0ナイロンを使用する(6-0〜8-0ナイロンも選択可)。まず4直筋を確保して創を探す。創が深く直筋が邪魔な場合は一時的に切腱する。破裂創の一部を見つけたら、縫いやすいところから順に縫合し、閉鎖性を確保する。角膜輪部の創は9-0ナイロンで先に縫合し、その後角膜創を10-0ナイロン、強膜創を9-0ナイロンで端々縫合する。

虹彩嵌頓が認められた場合の対応は損傷の程度と汚染の有無による。

  • 整復を試みる条件:脱出後6〜8時間以内かつ高度汚染がない場合。虹彩組織が壊死していなければ整復を優先する。
  • 切除を選択する条件:組織の壊死・高度汚染・整復困難な場合。

グラム陽性菌・グラム陰性菌をカバーする広域抗菌薬の全身投与を術前から開始する。バンコマイシンと第3世代セファロスポリン(セフタジジムなど)の併用が眼内炎発症率の低下と関連している。眼内炎が疑われた場合は早期の観血的治療が推奨される。前房および硝子体内にバンコマイシン1mg/0.1mLとセフタジジム2.25mg/0.1mLの注入を行う。硝子体内に混濁が広がっている場合は緊急で硝子体切除術を施行する。

眼内異物の存在を確認したら可及的速やかに摘出する。主に経毛様体扁平部硝子体切除術により、マイクロ鉗子やダイヤモンド鉗子を用いて摘出する。眼内異物の詳細な治療方針は眼内異物IOFB)の項を参照されたい。

眼内組織の損傷程度により、水晶体切除・硝子体切除を二次手術として行う。穿通性で前眼部損傷に限局する場合は不要なことも多い。ただし以下の場合は一次修復に連続して一期的に施行することも考慮する。

  • 水晶体の膨化がすでに進行している場合
  • 硝子体出血が高度で眼底透見不能の場合
  • 眼内異物が残留している場合
Q 受傷から手術までの許容時間は?
A

受傷後24時間以内の一次修復が強く推奨される。系統的レビューでは24時間以内の修復が眼内炎リスクを有意に低下させることが示されている(OR 0.39、95%CI 0.19-0.79)1)。ただし24時間以内であれば修復のタイミングと最終視力との間に有意差は認められていない。

Q 虹彩が脱出している場合どうするか?
A

脱出後6〜8時間以内で高度な汚染がなければ虹彩整復を試みる。組織が壊死している場合や高度汚染がある場合は虹彩切除を選択する。いずれも手術室での処置が必須であり、ベッドサイドでの操作は禁忌である。

6. 病態生理学・詳細な発症機序

Section titled “6. 病態生理学・詳細な発症機序”

穿通性眼外傷は鋭的物体が速い速度で眼球壁を貫く場合に生じる。角膜輪部や直筋付着部後方など、強膜が最も薄い部位で発生しやすい。穿孔性と異なり刺出創がないため、眼球内容が後方へ脱出することなく眼球の形態はある程度保たれる。前方脱出(虹彩嵌頓)が主体となる。

裂傷部に虹彩が嵌頓することで梨状瞳孔が生じる。嵌頓した虹彩前房を前眼部に閉鎖するが、長時間放置すると虹彩組織の壊死や感染リスクが高まる。

穿通性眼外傷における網膜剥離には2つの機序がある。

  • 直接的裂孔形成:外力により直接網膜に裂隙を生じ、同部から網膜剥離が進展する。
  • 二次的牽引:強角膜裂傷部に嵌頓した硝子体ゲルが対側網膜を牽引し、網膜裂孔および網膜剥離を惹起する。

外傷の初期治療後に以下の二次的変化が生じうる。

  • 増殖性硝子体網膜症PVR:外傷後の機能的・解剖的不良転帰の主要原因の一つである。
  • 外傷性白内障水晶体の穿孔損傷や鈍的衝撃により生じる。
  • 続発緑内障前房出血隅角離断、虹彩前癒着などに起因する。
  • 眼内炎:開放性外傷の2〜7%に発生する。発症時期は受傷後数日以内が多い。
  • 交感性眼炎:受傷眼への手術や刺激を契機に僚眼にもぶどう膜炎が生じる希少合併症。受傷から数週間〜数年後に出現することがある。

一次修復タイミングに関する系統的レビュー

Section titled “一次修復タイミングに関する系統的レビュー”

McMasterら(2025)は眼球開放性外傷後の一次修復タイミングと視覚転帰・眼内炎発症率に関する系統的レビュー・メタアナリシスを実施した1)。対象は8497眼(15研究)であり、最多の損傷タイプは穿通性+IOFB合併であった。24時間以内の修復は遅延修復と比較して眼内炎リスクをOR 0.39(95%CI 0.19-0.79、P=0.01)に低減させた。一方、最終視力については修復時期による有意差は認められなかった(OR 0.89、95%CI 0.61-1.29、P=0.52)。著者らは24時間以内の修復を強く推奨しているが、すべての対象研究が後方視的・非ランダム化試験であり、エビデンスの確実性はGRADE評価で低〜非常に低と評価されている。

眼外傷スコア(OTS)による予後予測

Section titled “眼外傷スコア(OTS)による予後予測”

眼外傷スコア(Ocular Trauma Score: OTS)は、受傷直後の視力眼球破裂の有無、眼内炎、穿通外傷、網膜剥離RAPDの有無に基づいて視力転帰の確率を推定する予後予測ツールである。穿通性眼外傷では視力RAPD・損傷ゾーンの組み合わせによって予後確率を層別化できる。

Kheirら(2021)はベイルート港爆発後の眼外傷39患者48眼を報告した2)。開放性外傷が20.8%、前房出血が18.8%、表面損傷(結膜裂傷角膜裂傷)が54.2%に認められた。爆発物による複数の微小破片が同時に刺入する特性から、穿通性外傷が多く、かつIOFBの多発合併が問題となる。民間・軍事爆発事故における眼科対応として、CTによる全例IOFB検索の重要性が強調されている。

  1. McMaster D, et al. Early versus Delayed Timing of Primary Repair after Open-Globe Injury: A Systematic Review and Meta-Analysis. Ophthalmology. 2025;132:431-441.

  2. Kheir WJ, et al. Ophthalmic Injuries After the Port of Beirut Blast. JAMA Ophthalmol. 2021.

  3. Germerott T, Mann N, Axmann S. Penetrating eye injury by dart. Int J Legal Med. 2021;135(2):573-576. PMID: 33336294.

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