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眼外傷

眼球破裂

眼球破裂(ruptured globe)は、鈍的外圧による眼球内圧の急激な亢進によって眼球壁が断裂し、眼球内容が脱出・嵌頓する開放性眼外傷である。拳やボールなどによる鈍的外傷が典型的な受傷機転であり、視機能を著しく損なう眼科救急疾患の一つである。

損傷の部位や程度は症例ごとに大きく異なり、検査・手術・感染予防の細部には施設間の違いもある。本記事では、眼球の保護と早期の創閉鎖という基本方針に沿って、主な診療上の考え方と選択肢を紹介する。個々の処置をすべての症例に同じ手順で適用するものではない4, 5)。

開放性眼外傷は、眼球壁が直接損傷する裂傷(laceration)と、鈍的外力による眼球破裂(rupture)に大別される。裂傷には、入口創のみを伴う穿孔性外傷(penetrating injury)や、入口創と出口創を伴う貫通性外傷(perforating injury)があり、眼内異物を残す場合もある4)。受傷機転と創形成の機序に加え、損傷部位・異物の有無などが治療方針に関係する。

BETT分類(バーミンガム眼外傷用語規定)

Section titled “BETT分類(バーミンガム眼外傷用語規定)”

眼球破裂の分類にはBETT(Birmingham Eye Trauma Terminology)が広く用いられる。

分類受傷機転開放創の形成
裂傷(Laceration)鋭利な物体などによる直接損傷物体が眼球壁を外側から直接損傷して開放創を形成
眼球破裂(Ruptured globe)鈍的外圧(拳・ボール等)眼球内圧上昇により眼球壁の最薄部で間接的に断裂

眼球破裂では、眼球内圧上昇と衝撃波によって角膜輪部に平行した形で強膜開放創が形成される。角膜・結膜などの表面に創を伴わず、見逃されることもある点が特徴である。

ゾーン分類(国際眼外傷分類)

Section titled “ゾーン分類(国際眼外傷分類)”

開放性眼外傷は損傷部位によって以下のゾーンに分類され、予後予測に活用される。

ゾーン範囲
Zone I角膜・輪部(角膜強膜移行部)
Zone II輪部から5mm以内の強膜
Zone III輪部から5mmを超えて後方に及ぶ強膜

Zone III の損傷は視機能予後が不良であることが多い4, 5)。

開放性眼外傷の推定発症率は人口10万人あたり3.5〜4.5人とされる5)。小児の重篤な眼外傷は年間・人口10万人あたり11.8人であり、重篤な眼外傷の35%以上を小児(多くは12歳未満)が占める。受傷の原因としては、スポーツ・玩具・転落・暴力行為などが多い。

Q 眼球破裂と穿孔性外傷はどう違いますか?
A

眼球破裂は拳やボールなどの鈍的外傷による眼圧上昇で間接的に眼球壁が断裂する。穿孔性外傷は刃物や釘などの鋭利な物体が直接眼球壁を貫通する。前者は開放創が結膜下に隠れて見逃されやすく、診断が困難な場合がある。

眼球破裂における角膜裂傷とぶどう膜脱出
Guilherme S, et al. Globe Rupture – A Case Report and Review of Emergency Department Diagnosis and Management. Cureus. 2022. Figure 1. PMCID: PMC9637430. License: CC BY 3.0 (https://creativecommons.org/licenses/by/3.0/).
高齢者の右眼において、角膜輪部から突出する暗赤色のぶどう膜組織の脱出と眼周囲の大量出血がみられる。本文「2. 主な症状と臨床所見」の項で扱う眼球内容脱出・ぶどう膜脱出に対応する。

眼球破裂の臨床所見は多岐にわたる。外傷後の急激な視力低下と眼痛が主訴となることが多いが、損傷の程度や部位によって所見は大きく異なる。

眼球破裂の典型的所見

高度の結膜出血・浮腫:眼球破裂を疑う最も重要な所見の一つ。

前房出血:虹彩・毛様体損傷を反映する。浅前房・虹彩脱出を伴うこともある。

著明な低眼圧:眼球壁の断裂による房水の漏出や眼内容脱出を疑う重要な手がかり。外表から創が見えにくい症例でも診断上の意義が大きい。測定を行うかどうかは、以下の「低眼圧の意義と眼圧測定」に示すように、追加損傷のリスクを踏まえて判断する。

眼球虚脱・眼球内容脱出:ぶどう膜・硝子体・水晶体が脱出する重症例。

硝子体出血:赤道部後方の破裂では高度の硝子体出血を認め、外方からの確認が困難となる。

見逃しやすい潜在性眼球破裂

結膜下の隠れた開放創:開放創が結膜下にあると創の位置や大きさも不明となる。

360度の結膜下出血:全周性の結膜下出血は潜在性眼球破裂を疑う重要な所見である。

外見上軽微:表面の創の状態だけでは損傷の程度を把握できない。

前房出血のみの所見:外傷性前房出血として見落とされる場合がある。

自覚症状としては、外傷直後からの急激な視力低下と強い眼痛が典型的である。眼球内容が脱出した重症例では視力が光覚以下となることも多い。

臨床所見の特徴として、外来診察のみで損傷の全容を把握することはむしろ少ない。特に鈍的外傷では、一見外的な創傷を認めない場合でも、極端な低眼圧・高度の結膜出血・浮腫・前房出血・硝子体出血があれば、開放性眼外傷を強く疑う必要がある。

眼球破裂の特異的所見として、瞳孔偏位・変形(D型瞳孔:虹彩脱出による)も重要な所見である。

Q 眼球破裂は見逃されることがありますか?
A

ある。鈍的外傷による眼球破裂は開放創が結膜下に隠れており、表面から創の位置・大きさが不明なことがある。高度の結膜出血・浮腫で覆われ、前房出血・低眼圧のみの所見として見落とされる場合がある。外傷後の著明な低眼圧は開放性眼外傷を疑う重要な手がかりとなり、他の診察所見や必要に応じた画像検査と合わせて評価する。

眼球破裂は鈍的外傷によって生じる。受傷機転とリスク因子を把握することは、予防策の立案においても重要である。

鈍的外傷の原因:

  • スポーツ関連: ボクシング(拳)、野球・ソフトボール(ボール)、テニス・スカッシュ(ボール・ラケット)、格闘技
  • 交通事故: エアバッグ展開による顔面への衝撃、ダッシュボード・ハンドルへの衝突
  • 転落・転倒: 特に高齢者での転倒
  • 爆発性外傷: ベイルート港爆発(2020年)では39患者48眼が解析され、10眼(20.8%)が開放性眼損傷と診断された。53.8%に手術介入が必要であった2)
  • 小児: 玩具(特に尖端のある玩具)、遊具による事故、同世代との衝突

リスク因子:

強膜の菲薄化・脆弱化を来す状態では比較的軽微な外力でも眼球破裂が生じやすい。

  • 強度近視: 眼軸長延長に伴う強膜菲薄化
  • 加齢: 強膜の脆弱化
  • 眼手術歴: 白内障手術創部・角膜移植創部・緑内障手術創部は比較的脆弱であり、軽微な鈍的外傷でも破裂しうる
  • 結合組織疾患: Marfan症候群・Ehlers-Danlos症候群など

爆発性外傷は一次障害(爆風による圧力波)、二次障害(破片・爆発物の飛散)、三次障害(爆風による身体の吹き飛ばし)が複合し、開放性眼損傷のほか視神経損傷・眼窩骨折などを伴うことが多い2)。

眼球破裂のCT所見(横断像・矢状断像)
Guilherme S, et al. Globe Rupture – A Case Report and Review of Emergency Department Diagnosis and Management. Cureus. 2022. Figure 2. PMCID: PMC9637430. License: CC BY 3.0 (https://creativecommons.org/licenses/by/3.0/).
横断像(左)と矢状断像(右)で、右眼球前方に突出するぶどう膜組織が示されている。本文「4. 診断と検査方法」の項で扱う眼球破裂のCT評価に対応する。

眼球破裂は、受傷機転・視力・前眼部所見などを総合して診断する。外来診察で損傷の全容を把握しにくい場合には、画像検査が補助となる。明らかな開放創や眼内容脱出を認める場合は、追加検査のために修復の準備を遅らせない4)。

  • 視力測定: 可能な範囲で手動での確認(光覚・手動弁・指数弁)
  • 対光反射: RAPD(相対的瞳孔求心路障害)の有無は予後予測に重要
  • 眼圧の評価: 低眼圧は重要な診断所見である。測定の必要性と追加損傷のリスクを評価し、開放創が明らかな眼では眼圧値を得るための追加操作を避ける
  • 開瞼時の配慮: 眼球を押す操作や無理な開瞼を避け、圧迫を加えずに観察できる範囲で評価する
  • 細隙灯顕微鏡検査: 可能であれば実施する。前房出血・虹彩脱出・水晶体脱臼の有無を確認する

低眼圧という所見の診断的価値は高く、眼球破裂を疑う手がかりとして重視する。 とくに、結膜下に創が隠れている場合には、外表所見だけでなく低眼圧を含む所見の組合せが判断に役立つ。

一方、未閉鎖の開放創では、測定時の圧迫や創の変形によって眼内容の脱出を助長するおそれがある。このため、開放性眼外傷を疑う段階では眼圧測定を原則として避ける、というのが総説で示されている初療上の考え方である4)。用指法も圧迫を伴うため、安全な代替法として一律に勧めることはできない。

検査主な目的注意点
CT(画像検査の第一選択)金属異物の確認、眼球壁の連続性評価、眼窩骨折の合併評価陰性でも眼球破裂を除外できない
MRI非金属異物の精密判定に有用金属性異物が疑われる場合は絶対禁忌
X線Comberg法による異物位置測定単純異物の概略把握
超音波硝子体混濁・網膜剥離の評価未閉鎖の開放創では通常避ける。眼球への圧迫による追加損傷に注意する

CTは金属異物の確認と眼球形態の把握に優れており、画像検査が必要な場合の第一選択となる。ただし感度には限界があり、CTで明らかな異常がなくても眼球破裂を除外できない。MRIは非金属異物が問題となる症例で検討されることがあるが、金属性異物が疑われる場合は行わない4)。

OTS(Ocular Trauma Score)による予後予測

Section titled “OTS(Ocular Trauma Score)による予後予測”

OTSは開放性眼球外傷の初診時予後予測に用いられる。初診時視力に、眼球破裂・眼内炎・貫通性外傷(入口創と出口創を伴う外傷)・網膜剥離・RAPDの有無を加味して算出する。ゾーン分類は予後に関係するが、OTSの計算項目には含まれない4)。スコアは集団としての視力予後を説明する参考になり、個々の眼の回復可能性や治療方針を単独で決めるものではない。

鑑別疾患鑑別ポイント
穿孔性外傷(penetrating)鋭的外傷歴、刺入創あり、異物残留の可能性
眼球打撲(contusion)閉鎖性、眼球壁の連続性は保たれている
結膜裂傷のみ眼圧正常、前房正常、Seidel試験陰性
外傷性前房出血前房出血のみ、眼球壁連続性は保たれている
Q 眼球破裂の診断に最も重要な検査は何ですか?
A

受傷機転と、視力低下・低眼圧・前房出血・結膜下出血・眼内容脱出などの診察所見を総合することが重要である。画像検査ではCTが第一選択となるが、陰性でも破裂は否定できない。検査は眼球への負担と診断上の必要性を考慮して選び、金属性異物が疑われる場合はMRIを行わない4)。

治療では、全身状態を評価しながら眼球を保護し、可能な限り早期に創を閉鎖することを基本とする。その後の視機能回復は受傷時の損傷にも大きく左右される。抗菌薬の投与方法、麻酔、硝子体手術の時期などには複数の選択肢があり、すべての症例に共通する詳細なプロトコルが確立しているわけではない4, 5)。

手術までの管理では、以下を患者の状態に応じて組み合わせる。

  • 硬質保護シールド装着: 眼球に触れずに保護し、追加損傷を防ぐ。圧迫する眼帯は避ける
  • 鎮痛薬投与: 静注または内服(アセトアミノフェン等)。疼痛による眼圧上昇を軽減する
  • 制吐薬投与: 嘔吐による眼圧上昇を抑えるため、悪心・嘔吐の有無や全身状態に応じて使用する
  • 感染予防: 全身抗菌薬が広く用いられるが、薬剤・投与経路・期間は施設や症例により異なる。点眼薬の併用にも施設差がある5)
  • 破傷風予防: 創の汚染状況と接種歴を確認し、必要な予防措置を選ぶ
  • 絶飲食: 全身麻酔の準備として速やかに開始する
主な選択肢使用方法の例目的・選択時の考慮点
全身抗菌薬静注または内服眼内炎予防。汚染状況・アレルギー・全身状態などを考慮
制吐薬静注など悪心・嘔吐への対応
鎮痛薬静注または内服疼痛管理。麻酔予定や全身状態も考慮
ガス・シリコーンオイル硝子体手術での眼内充填網膜の状態などに応じたタンポナーデ

第一次手術では、感染や眼内容のさらなる脱出を防ぐため、創を閉鎖し眼球形態を保つことを目指す。以下は主な考え方であり、創の形状や組織の状態に応じて手技を調整する4)。

第一次手術(創閉鎖)

麻酔選択:全身麻酔が一般的に選ばれるが、前眼部に限局した小さな創など、選択された症例では局所・区域麻酔が検討されることもある。眼球への圧迫リスクや全身状態を踏まえ、麻酔科と相談して判断する4)。

縫合材料:角膜創の10-0ナイロン、強膜創の8-0や7-0ナイロンなどは選択例である。糸の種類・太さを一律に固定せず、創の部位や組織の厚さ・脆弱性、施設で使用する材料に応じて選ぶ。目的は、組織への負担を抑えて創を閉鎖することである4)。

脱出組織の処置:生存性のある虹彩・ぶどう膜組織は可能な範囲で温存・整復する。脱出・嵌頓した硝子体は、牽引を避けながら硝子体カッターで処理するなど、組織の種類と状態に応じて対応する4)。

創部探索:創が不明な場合は結膜を切開し、強膜最薄部である外眼筋付着部付近を系統的に探索する。

合併白内障・水晶体損傷:水晶体嚢の破損や水晶体物質の流出などに応じて摘出を検討する。創閉鎖と同時に行うか、追加手術とするかは損傷や術野の状態による4)。

第二次手術(硝子体手術)

適応・時期:網膜剥離・眼内異物・硝子体出血などに応じて検討する。創閉鎖と同時に行う方法と、後日に分けて行う方法があり、眼内の観察条件、感染リスク、術者・設備の体制などを考慮する4, 5)。

術式:3-port vitrectomyによる混濁硝子体ゲルの切除・嵌頓硝子体ゲルの切除。

タンポナーデ:網膜の状態などに応じて、ガスやシリコーンオイルによる眼内充填を選択する。

水晶体切除:合併する白内障・水晶体亜脱臼に応じて水晶体切除を追加する。

15研究・8,497眼を含む系統的レビューでは、主に穿孔性外傷と眼内異物例が対象となっていた。眼内炎を解析した6,469眼では、24時間以内の修復群で眼内炎が少なかった(11% vs 28%、オッズ比[OR]0.39、95%信頼区間[CI]0.19-0.79、P=0.01)1)。この割合は組み入れ研究の集計値であり、個々の眼球破裂症例の感染率としてそのまま用いることはできない。

一方、視力予後については両群間に有意差が認められなかった(OR 0.89、95%CI 0.61-1.29、P=0.52)。全研究が後方視的・非無作為化研究で、研究間の違いも大きく、エビデンスの確実性は低いと評価されている。眼球破裂と裂傷を分けた解析もできておらず、早期修復による視力改善の程度までは断定できない1)。

臨床的には可能な限り早期、一般に24時間以内を目安に創閉鎖を目指す。ただし24時間は効果が急に切り替わる境界ではなく、全身状態、搬送、術者・設備の確保を踏まえて時期を判断する1, 5)。

全身抗菌薬が広く用いられ、一次修復時などに眼内抗菌薬投与を追加する方法もある。薬剤・投与経路・期間には統一された方法がなく、汚染状況、眼内異物、感染の有無、薬剤の毒性や耐性菌リスクを考慮する。全身投与と眼内投与では根拠となる研究も異なるため、単一の処方をすべての症例に当てはめるものではない5)。

Q 手術はいつまでに行うべきですか?
A

可能な限り早期に、一般には受傷から24時間以内を目安に創閉鎖を目指す。開放性眼外傷のメタ解析では早期修復と眼内炎の少なさに関連がみられるが、主に穿孔性外傷・眼内異物例の後方視的研究に基づく1)。全身状態を優先する場合もあり、搬送や手術体制を含めて判断する。

Q 眼球破裂の予後はどうですか?
A

視力の回復が難しい症例は少なくないが、予後には幅があり、初診時視力、損傷の部位・範囲、合併症などに左右される。重症例でも視機能が一部回復することがあり、初診時の所見だけで回復の程度を断定することは難しい5)。眼球の形態を保つことと視機能の回復を分けて説明し、眼内炎・網膜剥離・交感性眼炎などに注意して長期に経過をみる。

6. 病態生理学・詳細な発症機序

Section titled “6. 病態生理学・詳細な発症機序”

鈍的外傷による眼球破裂の機序

Section titled “鈍的外傷による眼球破裂の機序”

鈍的外傷が眼球に加わると、眼球内圧が急激に亢進する。眼球は閉じた空間であるため、圧力は全方向に伝達され、眼球壁の最も薄い部位で断裂が生じる。眼球壁の最薄部は輪部(角膜・強膜移行部)と外眼筋付着部付近の強膜であり、これらの部位に開放創が形成されやすい。

鈍的外傷と穿孔性外傷との病態の違いとして、穿孔性外傷では鋭利な物体が外圧を加えた部位に直接開放創が形成されるのに対し、眼球破裂では間接的に眼球壁最薄部で断裂が生じる。このため眼球破裂の開放創は受傷部位から離れた位置、特に結膜下の見えにくい部位に形成されることが特徴である。

鈍的外傷の衝撃波は眼球全体に伝播し、受傷部位の対側にも網膜・脈絡膜損傷を引き起こす場合がある。このため、直接の開放創から離れた部位の網膜損傷・脈絡膜断裂・視神経損傷が合併することがある。

開放創から眼球内容(ぶどう膜組織・硝子体・水晶体)が脱出・嵌頓する。処置は組織ごとに異なり、生存性のあるぶどう膜組織は温存・整復を目指す一方、脱出・嵌頓した硝子体は牽引を避けて切除する。すべての脱出組織を一律に眼内へ戻すわけではない4)。

爆発による眼球破裂は複合的な機序による損傷を呈する。ベイルート港爆発の解析では、一次障害(爆風圧力波)・二次障害(破片飛散)・三次障害(身体の吹き飛ばし)が複合し、39患者48眼のうち10眼(20.8%)が開放性眼損傷、53.8%に手術介入が必要であった2)。異物の混在・多発外傷の合併が爆発性外傷の特徴であり、系統的な評価と多職種連携が必要である。

一次修復の最適時期に関するさらなるエビデンス

Section titled “一次修復の最適時期に関するさらなるエビデンス”

引用したメタ解析では、一次修復の時期に関する研究はすべて後方視的で、GRADEによるエビデンスの確実性は低かった。今後は損傷の重症度や種類を考慮した検討が必要である。同論文は、24時間を超えて意図的に修復を遅らせる試験には倫理的な問題がある一方、夜間の即時修復と翌朝の修復などを比較する余地に言及している1)。

IGATES レジストリによる前方視的データ収集

Section titled “IGATES レジストリによる前方視的データ収集”

IGATES(International Globe and Adnexal Trauma Epidemiology Study)レジストリは、開放性眼球外傷の国際的な前方視的データ収集を目的としたプロジェクトである。蓄積されるデータにより、より精度の高い予後予測モデルの構築と最適な治療戦略の確立が期待される1)。

OTS の改良と予後予測精度の向上

Section titled “OTS の改良と予後予測精度の向上”

OTS(Ocular Trauma Score)のさらなる改良と外的妥当性の検証が進められている。初診時の予後予測精度の向上は、治療方針決定と患者説明の両面で重要である。

抗菌薬予防投与の最適レジメン

Section titled “抗菌薬予防投与の最適レジメン”

術前・術中・術後の抗菌薬の最適な種類・投与量・投与期間については、統一されたエビデンスが乏しく、今後の研究課題である。

災害時眼科対応プロトコルの整備

Section titled “災害時眼科対応プロトコルの整備”

ベイルート港爆発の報告は、大規模爆発災害時の眼外傷対応の重要性を示した。眼科医が参加する災害医療体制の整備と、爆発性眼外傷への対応プロトコルの確立が国際的な課題とされている2)。

PVR(増殖性硝子体網膜症)予防の研究

Section titled “PVR(増殖性硝子体網膜症)予防の研究”

眼球破裂後の重大な合併症として増殖性硝子体網膜症(PVR)がある。PVR予防を目的とした薬剤・手術手技の研究が進められており、機能予後の改善に向けた取り組みが続いている。

  1. McMaster D, Bapty J, Bush L, Serra G, Kempapidis T, McClellan SF, Woreta FA, Justin GA, et al. Early versus Delayed Timing of Primary Repair after Open-Globe Injury: A Systematic Review and Meta-analysis. Ophthalmology. 2025;132(4):431-441. doi:10.1016/j.ophtha.2024.08.030. PMID:39218161.
  2. Kheir WJ, Awwad ST, Bou Ghannam A, Khalil AA, Ibrahim P, Rachid E, El Salloukh NA, Yehia M, Torbey J, El Zein L, Jabbur NS, Noureddin B, Alameddine RM. Ophthalmic Injuries After the Port of Beirut Blast-One of Largest Nonnuclear Explosions in History. JAMA Ophthalmol. 2021;139(9):937-943. doi:10.1001/jamaophthalmol.2021.2742. PMID:34351374; PMCID:PMC8343520.
  3. Mahmoud TH, Govindaraju VK. Primary Repair of Ruptured Globe on No Light Perception Eyes and the Role of Vitreoretinal Surgery. Ophthalmol Retina. 2024;8(7):615-616. PMID: 38969437.
  4. Zhou Y, DiSclafani M, Jeang L, Shah AA. Open Globe Injuries: Review of Evaluation, Management, and Surgical Pearls. Clin Ophthalmol. 2022;16:2545-2559. doi:10.2147/OPTH.S372011. PMID:35983163; PMCID:PMC9379121.
  5. Blanch RJ, McMaster D, Patterson TJ. Management of open globe injury: a narrative review. Eye (Lond). 2024;38(16):3047-3051. doi:10.1038/s41433-024-03246-3. PMID:39085596; PMCID:PMC11543839.

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