静脈閉塞による原因
上強膜静脈圧上昇に伴う緑内障(Elevated Episcleral Venous Pressure Glaucoma)
1. 上強膜静脈圧上昇に伴う緑内障とは
Section titled “1. 上強膜静脈圧上昇に伴う緑内障とは”上強膜静脈圧(episcleral venous pressure: EVP)の上昇は、房水流出路の下流における静脈圧の異常上昇により眼圧が上昇し、続発開放隅角緑内障を引き起こす病態である3)。緑内障の分類ではSchlemm管より後方に房水流出抵抗の主座がある続発開放隅角緑内障に位置づけられる4)。隅角は基本的に開放隅角を呈する。
EVPの正常値とGoldmann式
Section titled “EVPの正常値とGoldmann式”EVPの正常値は8〜11.5 mmHg程度であり、体位によっても変動する。臨床的にEVPを測定する機器はなく、通常は臨床所見と画像検査から間接的にEVP上昇を推定する。Goldmann式によると、眼圧は以下の関係式で表される。
IOP = (F / C) + EVP
ここでFは房水産生量(μL/min)、Cは房水流出係数(μL/min/mmHg)、EVPは上強膜静脈圧(mmHg)である。この式から明らかなように、EVPの上昇は直接的に眼圧上昇をもたらす。実測データではEVPが1 mmHg上昇するとIOPは約0.83±0.21 mmHg上昇し、両者に線形関係が成立する。正常眼でのEVP正常値は文献により「8〜10 mmHg」から「8〜11.5 mmHg」まで幅があるが、いずれも房水流出路の下流圧として眼圧決定に重要な役割を果たしている。
房水流出路の解剖
Section titled “房水流出路の解剖”房水の従来型流出路では、房水はSchlemm管から集合管・深部強膜静脈叢・強膜内静脈叢・上強膜静脈叢を経て上眼静脈に合流する。上眼静脈は海綿静脈洞に流入し、内頸静脈から上大静脈を経て右心房に達する。この経路のいずれかで閉塞や圧上昇が生じるとEVPが上昇する3)。
眼圧が8 mmHg(上強膜静脈圧相当)以上では、眼圧に比例して直線的にSchlemm管への房水流入が増加する。
仰臥位とEVP
Section titled “仰臥位とEVP”夜間睡眠時の仰臥位ではEVPが上昇する。これが睡眠時の眼圧上昇の主な機序の一つである。座位から仰臥位への体位変換に伴い、頭部の静脈還流が減少し上強膜静脈圧が上昇する。正常人でも臥位では眼圧が1〜6 mmHg上昇するが、EVP上昇を基礎疾患として有する患者ではこの変動がさらに増幅される。体位変換による眼圧変動はEVP上昇の診断補助としても利用される。
特発性EVP上昇(Radius-Maumenee症候群)
Section titled “特発性EVP上昇(Radius-Maumenee症候群)”すべての原因が除外された場合は特発性(Radius-Maumenee症候群)と診断される1)。1968年にMinasとPodosにより初めて記載され、1978年にRadiusとMaumeneeが4例を報告したことから同症候群と命名された1)。文献上の報告は約60例と極めてまれである1)。
Goldmann式により、眼圧は房水産生量と流出抵抗に加え、上強膜静脈圧(EVP)によって決定される。房水はSchlemm管から集合管・上強膜静脈を経て体循環に排出されるが、この流出路の下流で静脈圧が上昇するとSchlemm管からの房水流出に対する抵抗が増大する。その結果、房水が眼内に貯留して眼圧が上昇する。EVPが1 mmHg上昇するとIOPは約0.83 mmHg上昇するという線形関係が成立する。
2. 主な症状と臨床所見
Section titled “2. 主な症状と臨床所見”
EVP上昇の患者は従来の治療に反応しない慢性の眼充血で受診することが多い。慢性結膜炎と誤診されることがしばしばある3)。通常、痛みや刺激感の訴えは少ない。
急性例(頸動脈海綿静脈洞瘻など)では眼刺激症状・眼痛が出現する3)。CCFでは頭蓋内に脈拍と同期した雑音(bruit)を自覚する。眼球運動障害による複視を伴うこともある。
臨床所見(医師が診察で確認する所見)
Section titled “臨床所見(医師が診察で確認する所見)”| 所見 | 特徴 |
|---|---|
| 上強膜血管 | 螺旋状(コルク抜き状)の非炎症性拡張 |
| 隅角鏡 | 開放隅角+Schlemm管への血液逆流 |
| 眼圧 | 慢性例で持続的上昇 |
| 眼球突出 | CCFでは拍動性 |
| 体位変換 | 臥位でEVP上昇→眼圧上昇 |
特徴的な所見は炎症を伴わない螺旋状の上強膜血管拡張であり、隅角鏡検査では開放隅角とSchlemm管への血液逆流が観察される1, 2)。慢性例ではSchlemm管壁の硝子化も認められることがある。
CCFの臨床所見
Section titled “CCFの臨床所見”CCFの3主徴は以下のとおりである。
- 拍動性眼球突出:海綿静脈洞から眼窩への動脈血流入による
- 血管雑音(bruit):聴診器で眼窩上や側頭部で聴取される
- 結膜の充血浮腫:蛇行・怒張した結膜血管は「メデューサの頭(caput Medusae)」と呼ばれる
その他にも眼運動神経(動眼・外転・滑車神経)麻痺による眼球運動障害・複視、網膜出血・静脈蛇行・拡張、脈絡膜剥離、眼痛・頭痛・耳鳴がみられる。
- Direct CCF:内頸動脈本幹から海綿静脈洞へ直接流入する。短絡量が多く症状が強い。75%は頭部外傷に起因するが、近年では特発性の割合が増加しているとの報告もある
- Dural CCF(硬膜瘻):内頸動脈または外頸動脈の硬膜穿通枝から海綿静脈洞へ流入する。先天性動静脈奇形や高血圧・糖尿病が誘因となる。短絡量が少なく慢性経過をとる。下錐体静脈洞などへ主に流出し上眼静脈への逆流が乏しい症例では、特徴的な眼症状が出現しないこともあるため注意を要する
海綿静脈洞血栓症の臨床像
Section titled “海綿静脈洞血栓症の臨床像”顔面・眼窩・咽頭・副鼻腔の感染症に続発する。原因菌としてブドウ球菌が最も多い。急性発症で発熱、眼瞼の著明な腫脹、眼球突出、外眼筋麻痺による複視が出現する。結膜血管の怒張・蛇行、視力低下に加え、うっ血乳頭を認めることが特徴的である。対側への進展を伴う両側性の症例もある。抗菌薬による迅速な治療が不可欠であり、治療の遅れは重篤な合併症を招く。
Sturge-Weber症候群の臨床所見
Section titled “Sturge-Weber症候群の臨床所見”顔面血管腫(ポートワイン母斑)+同側の髄膜血管腫+緑内障を三徴とする限局性母斑症である。ほとんどが孤発例であり、胎生期の交感神経障害による血管発生異常が原因と考えられている。三叉神経第1・2枝領域に出生時から特徴的な火炎状母斑(通常片側性)を認める。
眼所見としては緑内障が最も重要であり、以下の所見を伴う。
- 結膜・上強膜血管の拡張・蛇行:EVP上昇を反映する
- 脈絡膜血管腫:眼底にびまん性赤色を呈する。蛍光眼底造影では早期に大型の脈絡膜血管パターンを示し、後期に腫瘍全体が過蛍光となる
- 網膜血管の蛇行:脈絡膜血管腫に伴う循環障害を反映する
- 滲出性網膜剥離:脈絡膜血管腫が増大した場合に生じうる
同側の髄膜血管腫により大脳皮質萎縮・石灰化が進行し、3歳までに高頻度にてんかん発作(難治例が多い)を発症する。精神発達遅延、片麻痺、同名半盲を合併しうる。
甲状腺眼症の臨床所見
Section titled “甲状腺眼症の臨床所見”眼瞼症状として上眼瞼腫脹・上眼瞼後退が早期から出現する。眼球突出、複視、視力障害を認める。外眼筋肥大による眼窩内圧上昇が静脈うっ滞を惹起し、EVP上昇の機序となる。甲状腺機能亢進症に伴う場合が多いが、euthyroid ophthalmopathy(甲状腺機能正常眼症)として発症することもある。
Radius-Maumenee症候群の臨床所見
Section titled “Radius-Maumenee症候群の臨床所見”片側性または両側非対称性に発症することが多い1, 2)。38歳女性の症例では、3年以上持続する右眼の充血を主訴とし、びまん性に怒張した上強膜血管、IOP 22 mmHg(チモロール使用下)、正常な眼底所見が認められた1)。
3. 原因とリスク要因
Section titled “3. 原因とリスク要因”EVP上昇の原因は静脈閉塞、動静脈異常、特発性の3つに大別される3)。
| 分類 | 主な疾患 |
|---|---|
| 静脈閉塞 | 上大静脈症候群、海綿静脈洞血栓症、頸静脈閉塞 |
| 動静脈異常 | CCF(Direct/Dural)、硬膜瘻、Sturge-Weber症候群 |
| 特発性 | Radius-Maumenee症候群 |
動静脈異常と特発性
EGSではEVP上昇の病因をより詳細に分類している3)。
- 眼窩・上強膜疾患:化学熱傷・放射線による上強膜静脈障害、Sturge-Weber症候群、Nevus of Ota、内分泌性眼窩疾患(甲状腺眼症)、眼窩腫瘍・偽腫瘍、眼窩静脈炎
- 神経疾患:硬膜シャント(Dural shunts)、海綿静脈洞血栓症
- 全身的原因:上大静脈閉塞、頸静脈閉塞(頸部郭清術後)、肺静脈閉塞
- 特発性
CCFでは眼虚血が持続すると虹彩・隅角の血管新生が生じ、血管新生緑内障を発症するリスクがある。放置すると脳静脈系への血液逆流により海綿静脈洞の破裂・脳出血・くも膜下出血をきたす可能性があり、Direct CCFで特に注意を要する。生命予後に直結する場合がある。
強膜炎や上強膜炎では上強膜静脈への炎症の波及により房水流出障害が生じ、眼圧上昇をきたす10)。
Sturge-Weber症候群の発症時期と病因
Section titled “Sturge-Weber症候群の発症時期と病因”- 早期発症型(生直後〜4歳):約60%を占める。隅角の発育異常が主因である
- 晩期発症型(幼児期以降):EVP上昇と脈絡膜血管腫が関与する
4. 診断と検査方法
Section titled “4. 診断と検査方法”EVP上昇の診断では原因疾患の特定が最も重要である。
開放隅角とSchlemm管への血液逆流を確認する1)。EVP上昇を示唆する最も簡便な所見である。
- CT・MRI:海綿静脈洞の拡大、上眼静脈の拡張、外眼筋の腫大を評価する。軽症CCFではCT/MRIの所見が明らかでないこともある1)
- MRI特有の所見:正常の海綿静脈洞はMRIで造影増強効果を示すが、CCFでは血流速度が速いため**flow void(無信号域)**として描出される
- MRA:上眼静脈の拡張と海綿静脈洞・異常血管像の描出に有用である
- 確定診断:脳血管撮影(内頸動脈・外頸動脈からの動静脈短絡の確認)が必要である。Dural CCFでは両側の内頸動脈と外頸動脈の4血管造影が求められる
- CT血管造影:眼窩・頭蓋内の血管異常の評価に有用
- 眼窩ドップラー超音波:上眼静脈拡張の非侵襲的確認に用いられる
EVP測定法
Section titled “EVP測定法”直接穿刺法(最も正確)と間接法(静脈圧計・エアジェット等)が存在するが、日常臨床でのルーチン使用には至っていない2)。臨床的にEVPを測定する機器はない。
甲状腺機能検査
Section titled “甲状腺機能検査”すべてのEVP上昇症例で実施すべきである1)。TSH受容体抗体(TRAb, TSAb)、抗TG抗体(TgAb)、抗TPO抗体(TPOAb)のいずれかが陽性で甲状腺眼症と診断される。
Sturge-Weber症候群の診断
Section titled “Sturge-Weber症候群の診断”皮膚所見+てんかん発作+頭部CTでの脳皮質内石灰化で診断される。石灰化出現前でも造影MRI・SPECTで脳病変を検出可能である。小児では全身麻酔下の精密眼圧検査・前眼部・隅角・眼底検査が必須である。脈絡膜血管腫の診断には蛍光眼底造影が有用で、早期に大型の脈絡膜血管パターンを示し、後期に腫瘍全体が過蛍光となる。
慢性の眼充血を呈する疾患との鑑別が重要である。
- 上強膜炎・強膜炎:炎症性の血管拡張であり、圧迫で退色する。痛みを伴うことが多い10)
- 慢性結膜炎:結膜のびまん性充血。EVP上昇の螺旋状血管拡張とは異なる分布を示す
- 急性閉塞隅角緑内障:隅角閉塞を伴い、EVP上昇とは病態が異なる
- 酒さ(rosacea):顔面の潮紅・毛細血管拡張を伴う
- 真性多血症:結膜血管の怒張を伴うが、全身的な赤血球増加が背景にある
Radius-Maumenee症候群の症例では、頭蓋内MRI血管造影、甲状腺機能検査、脳血管造影がすべて正常であったことが報告されている1)。これらの検査で異常が認められない場合に初めて特発性と診断される。
5. 標準的な治療法
Section titled “5. 標準的な治療法”治療の基本は原因疾患の治療であり、脳神経外科など他科との連携が必要となる3)。原因疾患の治療によりEVPが正常化すれば眼圧は改善するが、原因疾患治療後も高眼圧が持続する症例もある。原発開放隅角緑内障に準じた薬物治療を行うが、薬物治療のみで眼圧コントロールが達成され手術に至らないことも多い。
房水産生抑制薬(第一選択)
Rhoキナーゼ阻害薬・その他
ネタスジル0.02%:線維柱帯流出増加+EVP低下作用。眼圧下降率20〜25%。点眼後にEVPが平均-0.79 mmHg低下する3)
リパスジル0.4%:線維柱帯流出増加。眼圧下降率約20%。点眼8時間後に上強膜静脈内房水柱幅が有意に増加3)
プロスタグランジン関連薬:上強膜血管全体を拡張させるため効果が限定的。副経路からの流出促進による一定の効果はある
Sturge-Weber症候群関連緑内障6眼においてもネタスジル追加後に有意な眼圧低下が報告されている。
原因別の特殊治療
Section titled “原因別の特殊治療”- 海綿静脈洞血栓症:抗菌薬投与が治療の中心
- CCF:短絡量が少なければ経過観察(数カ月で自然閉鎖することもある)。手術適応は短絡量が大きい場合、持続的眼圧上昇・視力低下・複視がある場合、脳出血・くも膜下出血の危険がある場合、自然閉鎖が期待できない場合である。外科的治療として脳神経外科による血管内手術(瘻孔閉鎖目的)が行われる
- 甲状腺眼症:甲状腺機能の是正が基本。眼窩減圧術が必要となる場合もある
- 強膜炎・上強膜炎:原因疾患(自己免疫疾患等)の治療による炎症制御
- 線維柱帯切除術:適切な手術選択肢だが、EVP上昇眼では脈絡膜滲出のリスクが高い。術中の急速な眼圧低下を防ぐために調整縫合が推奨される2)
- 緑内障ドレナージデバイス(GDD):Ahmed弁やBaerveldt implantが難治例に使用される。5年成績では反復手術例においてGDDが線維柱帯切除術より良好2)
- XEN45ゲルステント:低侵襲な代替法。結膜組織を温存できる2)
- レーザー線維柱帯形成術:EVP上昇に対するエビデンスは乏しい2)
Radius-Maumenee症候群の3症例の長期追跡では、線維柱帯切除術、XEN45、Ahmed弁、Baerveldt implant、毛様体光凝固術が施行された2)。全症例で少なくとも1眼が線維柱帯切除術を受けたが、反復手術が必要となることが多く、脈絡膜滲出(低眼圧を伴わない)が2例で発生した2)。症例1ではXEN45により73カ月の長期追跡で良好な眼圧コントロールが得られた2)。
Sturge-Weber症候群の年齢別治療アルゴリズム
Section titled “Sturge-Weber症候群の年齢別治療アルゴリズム”- 先天性・乳幼児期発症:線維柱帯切開術または隅角切開術が適応となる4, 6, 7)
- 年長者(EVP上昇が主体):薬物治療が第一選択である4)。薬物治療・流出路再建術が奏功しない場合は、線維柱帯切除術またはプレートのあるチューブシャント手術を考慮する4, 8)
- 手術合併症:同側の脈絡膜血管腫を伴う場合、上脈絡膜出血や網膜剥離などの重篤な合併症リスクがある4, 5)
- 脈絡膜血管腫が増大して滲出性網膜剥離を生じた場合は冷凍凝固の適応となる
治療の第一は原因疾患の治療である。CCFでは脳神経外科による血管内手術、海綿静脈洞血栓症では抗菌薬投与が行われる。眼圧コントロールにはβ遮断薬や炭酸脱水酵素阻害薬による房水産生抑制が有効である。Rhoキナーゼ阻害薬(ネタスジル0.02%・リパスジル0.4%)はEVP低下作用を持つ。Sturge-Weber症候群では年齢に応じた治療選択が重要で、乳幼児期発症は手術、年長者は薬物治療が第一選択となる。濾過手術は脈絡膜滲出リスクが高く、慎重な手技が求められる。
6. 病態生理学・詳細な発症機序
Section titled “6. 病態生理学・詳細な発症機序”房水流出路と眼圧の調節
Section titled “房水流出路と眼圧の調節”房水は主経路(全流出量の80〜95%)と副経路(5〜20%)の2つの経路で眼外へ排出される9)。主経路では房水は線維柱帯→Schlemm管→集合管→房水静脈→上強膜静脈→上眼静脈→海綿静脈洞→内頸静脈→上大静脈の順に流出する。
主経路の房水流出は眼圧依存性であり、眼圧の上昇とともに流出量が増加する。しかしEVPが上昇した状態ではこの代償機構だけでは眼圧正常化に不十分となる。
EVP上昇の病態
Section titled “EVP上昇の病態”上強膜吻合部より下流で静脈圧が上昇すると、Schlemm管から上強膜静脈への房水流出に対する抵抗が増大する3)。慢性例ではSchlemm管内への血液逆流が生じ、線維柱帯を介した房水流出が減少する。その結果、眼圧が慢性的に上昇し、緑内障性視神経障害に至る3)。
副経路(ぶどう膜強膜路)からの流出は非眼圧依存性であり、EVP上昇の影響を受けにくい。この特性がプロスタグランジン関連薬による副経路からの流出促進に一定の効果をもたらす根拠となる。
CCFの眼虚血と血管新生緑内障
Section titled “CCFの眼虚血と血管新生緑内障”CCFでは長期にわたるEVP上昇により眼血流が障害され、眼虚血が生じる。動脈血が海綿静脈洞へ短絡するため、眼動脈系の灌流圧が低下する。慢性の眼虚血が持続すると網膜虚血を介して血管内皮増殖因子(VEGF)が産生され、虹彩・隅角に血管新生が起こり血管新生緑内障を発症する。この段階に至ると開放隅角が閉塞し、治療はさらに難渋する。CCFの治療(瘻孔閉鎖)により眼虚血が改善すれば血管新生の退縮が期待されるが、進行例では不可逆的な隅角障害を残す。
Sturge-Weber症候群の眼圧上昇:多因子機序
Section titled “Sturge-Weber症候群の眼圧上昇:多因子機序”Sturge-Weber症候群の眼圧上昇は単一の機序ではなく、複数の因子が関与する4)。
- 原発性隅角形成異常:早期発症型の主因
- Schlemm管萎縮:房水流出路の構造的障害
- 上強膜静脈圧上昇:上強膜血管腫による
- 周辺虹彩前癒着(PAS)形成:隅角の慢性変化
- 脈絡膜血管腫関連の透過性亢進:菲薄化した血管壁からの漏出
これらの多因子が複合するため、Sturge-Weber症候群の緑内障は発達緑内障に比べて難治性である。しかし早期に良好な眼圧コントロールが達成されれば視力保持が可能となる。
Sturge-Weber症候群の眼圧上昇は単一の機序ではなく、原発性隅角形成異常・Schlemm管萎縮・EVP上昇・PAS形成・脈絡膜血管腫関連の透過性亢進という5つの因子が複合して生じる。このため薬物療法だけでは眼圧制御が困難な場合が多い。さらに手術治療においても同側の脈絡膜血管腫に伴う上脈絡膜出血・網膜剥離のリスクがあり、治療選択に慎重な判断が求められる。
7. 最新の研究と今後の展望
Section titled “7. 最新の研究と今後の展望”Rhoキナーゼ阻害薬の上強膜静脈流出への効果
Section titled “Rhoキナーゼ阻害薬の上強膜静脈流出への効果”ネタスジル0.02%点眼後にEVPが平均-0.79 mmHg低下したことが自動静脈圧計を用いた研究で報告されている。赤血球媒介血管造影でも上強膜静脈流出の有意な増加が確認された。リパスジルについても、点眼8時間後に上強膜静脈内の房水柱幅が有意に増加し、上強膜静脈流出の増強が示唆されている。
前房内ビマトプロストインプラント
Section titled “前房内ビマトプロストインプラント”前房内投与されたビマトプロストは上強膜静脈系を選択的に拡張させ流出を増強する。局所点眼のプロスタグランジン関連薬が上強膜血管全体を拡張させるのに対し、前房内投与では静脈系のみに作用する点で異なる。
QLS-111
Section titled “QLS-111”上強膜血管を選択的に標的としEVPを低下させる新規局所点眼薬である。ATP感受性カリウムチャネル調節を介した血管拡張作用を持つ。開発中であり、予備データでは有意な眼圧降下と重篤な副作用の不在が示されている。
Radius-Maumenee症候群の長期手術成績
Section titled “Radius-Maumenee症候群の長期手術成績”Elksneら(2023)は3症例の長期追跡を報告した。症例1では左眼にXEN45ゲルステントが挿入され、73カ月の長期追跡で良好な眼圧コントロールが得られた。術後の脈絡膜滲出や嚢胞様黄斑浮腫などの合併症管理が課題として残る2)。
8. 参考文献
Section titled “8. 参考文献”
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