この疾患の要点
ぶどう膜炎性黄斑浮腫(UME)はぶどう膜炎 患者の約8〜40%に合併する視力 障害の主因である。
炎症が消退した後も黄斑浮腫 が遷延する場合があり、炎症と浮腫の双方への対応が必要となる。
血液網膜関門 の破綻と炎症性サイトカインの関与が病態の中心である。
第一選択はステロイド 投与であり、投与経路は局所点眼からTenon囊下注射、硝子体 内投与まで多岐にわたる。
デキサメタゾン硝子体内インプラント (Ozurdex )は慢性・難治性UMEに有効である。
上脈絡膜 腔トリアムシノロン アセトニド(Xipere)はUME専用に承認された初の薬剤である。
治療に伴う眼圧 上昇と白内障 に注意が必要であり、定期的なモニタリングが不可欠である。
ぶどう膜炎性黄斑浮腫(uveitic macular edema; UME)は、ぶどう膜炎 に伴い黄斑部 に液体が貯留する状態である。ぶどう膜炎 は先進国における全失明原因の最大15%を占める2) 。その最も頻度の高い合併症がUMEであり、ぶどう膜炎 患者の約3分の1に視力 障害を引き起こす2) 。
非感染性ぶどう膜炎 患者の約8.3%にUMEが生じるとされる1) 。囊胞様黄斑浮腫 (CMO)はぶどう膜炎 患者の10〜70%に認められ、前部ぶどう膜炎 で5.1%、中間部ぶどう膜炎 では40.7%と報告されている5) 。サルコイドーシス ・中間部ぶどう膜炎 ・Behçet病はUME合併が特に多い病型である。
囊胞様黄斑浮腫 とは、黄斑部 網膜 の神経細胞間隙に組織液が貯留することにより、黄斑部 に囊胞様の浮腫をきたした状態をいう。ぶどう膜炎 では血液網膜関門 (BRB)の破綻を介して囊胞様黄斑浮腫 が生じ、外網状層・内顆粒層の囊胞様変化が特徴的である。囊胞の隔壁はMüller細胞・軸索線維が形成する。白内障 手術・硝子体手術 後に生じる術後囊胞様黄斑浮腫 はIrvine-Gass症候群 と呼ばれ、ぶどう膜炎性黄斑浮腫とは区別する7) 。
炎症が制御された後も浮腫が持続することがあるため、炎症と浮腫の両方に対する介入が必要である2) 。感染性ぶどう膜炎 が背景にある場合は、まず原因病原体に対する治療を優先する。ぶどう膜炎 診療ガイドラインは嚢胞様黄斑浮腫 を活動性ぶどう膜炎 の重篤な合併症として位置づけ、早期治療介入を推奨している7) 。
Q
ぶどう膜炎の炎症が治まっても黄斑浮腫は残るのか?
A
炎症消退後も黄斑浮腫 が遷延することがある。そのため浮腫そのものに対する追加治療が必要となる場合がある。詳細は「標準的な治療法」の項を参照。
Takeda A, et al. Recent advances in the diagnosis and treatment of refractory ocular inflammatory diseases: focus on uveitic macular edema, acute retinal necrosis, and vitreoretinal lymphoma. Jpn J Ophthalmol. 2026. Figure 1. PM
CI D: PMC12948802. License: CC BY.
眼底写真、
蛍光眼底造影 、
OCT でぶどう膜炎性黄斑浮腫を示す多パネル画像である。
FA の
黄斑部 漏出と
OCT の嚢胞様腔が、主な臨床所見・診断所見を具体的に示している。
UMEの主な自覚症状は中心視力 の低下である。
視力 低下 :黄斑部 への液体貯留により中心視力 が障害される。緩徐に進行する場合が多い。
霧視 :黄斑浮腫 による網膜 構造の変化で視界全体がぼやける。
変視症 (ゆがみ) :黄斑 の変形に伴い、直線が曲がって見える。
中心暗点 :重症例では視野の中心部に暗い領域を自覚する。
ぶどう膜炎 では前房 や硝子体 への細胞浸潤、角膜 混濁、併発白内障 などでも視力 低下が生じる。これらの所見以上に視力 が低下している場合、囊胞様黄斑浮腫 の存在を疑う。視力 低下が中等度から高度に及ぶ場合が多く、黄斑部 の詳細な評価が欠かせない。
UMEの臨床所見は原因となるぶどう膜炎 の種類と炎症の活動性によって異なる。
囊胞様黄斑浮腫 :蛍光眼底造影 (FA )で花弁状の蛍光漏出を示す。光干渉断層計 (OCT )では網膜 内囊胞と網膜 肥厚を認める。ぶどう膜炎 では囊胞様パターンが多い。
びまん性黄斑浮腫 :OCT で網膜 全層のびまん性肥厚を呈する。
漿液性網膜剥離 :Vogt-小柳-原田病 の発症初期に特徴的で、下方に胞状剥離を呈することもある。
網膜血管炎 :血管の拡張蛇行、白鞘化を伴う。FA での蛍光漏出の確認が有用である。
前房 内炎症所見 :前房 細胞、フレア、硝子体混濁 を伴う。
UMEの根本原因は眼内炎 症であり、その病因は多岐にわたる。
非感染性
Behçet病 :眼炎症発作に伴いUMEを生じやすい。
Vogt-小柳-原田病 :発症初期に漿液性網膜剥離 を伴う。
サルコイドーシス :網膜 静脈炎・脈絡膜 肉芽腫に伴う。
若年性特発性関節炎 :慢性虹彩 毛様体 炎を介してUMEに至る。
感染性
ヘルペスウイルス :急性網膜壊死 に伴うUME。
結核 :脈絡膜 結核腫や血管炎を介して浮腫を生じる。
トキソプラズマ :網脈絡膜 炎による黄斑部 への波及。
梅毒 :後部ぶどう膜炎 に伴いUMEを合併する。
UMEのリスク因子には以下がある。
中間部・後部・汎ぶどう膜炎 :前部ぶどう膜炎 より発症頻度が高い5)
慢性・遷延性の炎症 :長期にわたる炎症がUME発症リスクを高める
ステロイド 長期使用 :ステロイド 白内障 やステロイド緑内障 の合併リスクも増大する
硝子体 の牽引 :後部硝子体 膜の黄斑部 への牽引もUMEの一因となる
予防・日常のケア
ぶどう膜炎の治療 を自己判断で中断しないでください。炎症の再燃がUMEの原因となります。
定期的な眼科受診で黄斑浮腫 の早期発見が可能です。
視力 低下やゆがみの自覚があれば速やかに受診してください。
UMEの診断には光干渉断層計 (OCT )が最も重要な検査である。前置レンズと細隙灯顕微鏡を用いた詳細な眼底検査 、OCT 、蛍光眼底造影 検査を組み合わせて診断する。
OCT :非侵襲的に黄斑部 の断面を可視化する。網膜 肥厚・囊胞形成・漿液性網膜剥離 の検出が可能である。中心窩 網膜 厚(CST)が300 μm以上でUMEと判定されることが多い2) 。治療効果の評価にも不可欠であり、経時的な厚さ変化の追跡に用いる。
蛍光眼底造影 (FA ) :網膜 血管の透過性亢進や新生血管 の検出に有用である。囊胞様黄斑浮腫 では後期に中心窩 を中心とした花弁状の蛍光漏出・蛍光色素貯留パターンを呈する。
インドシアニングリーン蛍光造影 (ICG) :脈絡膜 循環の評価に用いる。サルコイドーシス やVogt-小柳-原田病 の脈絡膜 病変の評価に有用である。
OCTA (OCTアンギオグラフィー ) :造影剤不要で網膜 血管・脈絡膜新生血管 の評価が可能であり、合併する新生血管 の描出に有用である。
細隙灯顕微鏡検査 :前房 細胞・フレア・硝子体混濁 の評価により炎症の活動性を判定する。
眼底検査 :黄斑部 の浮腫、網膜血管炎 、硝子体混濁 の有無を確認する。
鑑別すべき疾患として、糖尿病黄斑浮腫 、網膜静脈閉塞症 に伴う黄斑浮腫 、加齢黄斑変性 、黄斑上膜 による牽引性黄斑浮腫 がある。白内障 術後の黄斑浮腫 (Irvine-Gass症候群 )も鑑別に挙がる。
Q
定期検査ではどのくらいの頻度でOCTを受けるべきか?
A
UMEの経過観察中はOCT による黄斑部 評価が欠かせない。炎症活動性や治療段階に応じて主治医が判断するが、治療中は1〜3か月ごとの検査が一般的である。
UMEの治療は複雑であり、患者ごとに最適な方法が異なる1) 。感染性ぶどう膜炎 では原因治療を優先し、非感染性UMEにはステロイド を中心とした治療を行う。ぶどう膜炎 診療ガイドラインでは、遷延する囊胞様黄斑浮腫 に対してTenon嚢下ステロイド 注射を推奨し、ステロイド 抵抗性の難治例には硝子体手術 を選択肢として挙げている7) 。
ステロイド 点眼薬 :前部ぶどう膜炎 に伴う軽度のUMEに使用する。ベタメタゾンまたはデキサメタゾン点眼を1日3〜6回投与し、炎症の程度に合わせて増減する。後眼部病変への効果は限定的である1) 。
散瞳薬 :虹彩後癒着 の予防にトロピカミド・フェニレフリン点眼を併用する。
NSAIDs点眼 :偽水晶体 眼の黄斑浮腫 には有用だが、UMEへの有効性は明確に証明されていない1) 。
後眼部慢性炎症のコントロールに最初に行う局所手技であり、黄斑浮腫 や網膜血管炎 を伴う硝子体混濁 などが良い適応である。
トリアムシノロン アセトニド後部Tenon囊下注射 :囊胞様黄斑浮腫 など後眼部に及ぶ遷延性ぶどう膜炎 に有効である。眼底後極部の炎症性変化が強い場合に用いる7) 。
手技:耳側下方の結膜 円蓋部を穿刺し、24〜25G鈍針または鋭針でトリアムシノロン アセトニド20 mg/0.5 mLを後部Tenon嚢下に注入する。上方からの注射は眼瞼下垂 のリスクがあるため、耳側下方からの穿刺が推奨される。薬剤は注入後約3か月はTenon嚢下に留まり、効果ピークは1か月前後である。
サルコイドーシス およびBehçet病に伴う囊胞様黄斑浮腫 に対しては、ケナコルト-A 40 mg/mL(トリアムシノロン アセトニド)0.5 mLの後部Tenon嚢下注射が施行される(保険適用外)。
眼圧 上昇(15〜20%の患者に発現)に注意が必要であり、後方への注射で眼圧 上昇リスクが低減する可能性がある1) 。
Q
テノン嚢下注射を繰り返しても大丈夫ですか?
A
ぶどう膜炎性黄斑浮腫は再発を繰り返すことがあるため、複数回の注射が必要となる場合がある。繰り返し投与の際は2か月以上の間隔をあけることが推奨される。ただし、毎回眼圧測定 を行い、眼圧 上昇・白内障 の有無を確認してから実施する。眼圧 上昇が問題になる場合は硝子体 内投与など他の治療法への切り替えを検討する。
硝子体 内投与は高い薬物濃度を得られるが、眼内感染や眼圧 上昇のリスクがある。
薬剤 作用持続期間 特徴 トリアムシノロン (4 mg)約3か月 広く使用。繰り返し投与が必要 Ozurdex (DEXインプラント 0.7 mg)約4〜6か月 緩徐放出型。UMEへの有効性確認済み Iluvien (フルオシノロン 0.19 mg)約36か月 長期作用。白内障 ・緑内障 リスク高い Retisert(フルオシノロン 0.59 mg) 約30か月 長期作用。緑内障 手術率40%
トリアムシノロン アセトニド硝子体内注射 :4 mgの投与で約50%の患者に視力 改善が得られる1) 。白内障 進行は注射回数に関連し、4〜5回でほぼ確実に発症する。眼圧 上昇は20〜45%に認められるが、多くは点眼で管理可能である1) 。
デキサメタゾン硝子体内インプラント (Ozurdex ) :0.7 mgのデキサメタゾンを徐放するポリマー製インプラントである。HURON試験(第III相)では26週時にOzurdex 0.7 mg群の42%が硝子体混濁 のゼロスコアを達成した(偽薬群12%、p<0.001)9) 。8週時点で中心窩 網膜 厚の有意低下と硝子体混濁 改善が確認された9) 。
Fanらの系統的レビュー・メタアナリシス(2023)では、単回DEXインプラント後にBCVAが1か月で-0.15 logMAR、3か月で-0.22 logMAR、6か月で-0.24 logMAR改善した3) 。中心黄斑 厚(CMT)は1か月で-179.77 μm、3か月で-179.13 μm、6か月で-140.25 μm減少した。
DEXインプラント後の眼圧 上昇(IOP >21 mmHg)の発生率は13.6%、白内障 形成は5.4%であり、いずれも点眼で管理可能であった3) 。
POINT試験では、眼周囲トリアムシノロン (PTA)・硝子体 内トリアムシノロン (ITA)・硝子体 内DEXインプラント(IDI)を直接比較し、中心窩 網膜 厚減少率はそれぞれ23%、39%、46%であった1) 。硝子体 内投与が眼周囲投与より優れていたが、眼圧 上昇リスクも硝子体 内投与群で高かった。
フルオシノロンアセトニド 硝子体 内インプラント :Iluvien (0.19 mg、36か月持続)やRetisert(0.59 mg、30か月持続)がある。長期の作用が得られるが、白内障 手術が73.8%(Iluvien )〜90%以上(Retisert)の有水晶体 眼で必要となり、緑内障 手術もそれぞれ11.9%、40%で必要となった1) 。
トリアムシノロン アセトニド上脈絡膜 腔注射用懸濁液(Xipere; SCS-TA)は、UME治療として初めて承認された薬剤であり、上脈絡膜 腔投与として初の承認製剤でもある2) 。
上脈絡膜 腔(SCS)は脈絡膜 と強膜 の間に位置する潜在的空間であり、薬剤は後眼部に選択的に分布する2) 。動物実験では、上脈絡膜 投与により硝子体 内投与と比較して後眼部への薬物曝露が12倍高く、前眼部への曝露は96%低下した2) 。この特性により白内障 や眼圧 上昇のリスクが軽減される。
PEA CHTREE試験(第III相)では、SCS-TA 4 mg投与群で24週時に15文字以上のBCVA改善を達成した患者が46.9%(偽処置群15.6%、p<0.001)であった2) 。中心窩 網膜 厚減少は平均152.6 μm対17.9 μm(p<0.001)であり、4週時点から有意差が認められた。
MAGNOLIA延長試験では、SCS-TA群の50%が2回目投与後最長9か月間レスキュー治療を必要としなかった2) 。48週間を通じたレスキューまでの中央値はSCS-TA群257日、偽処置群55.5日であった。
SCS-TAは全身性ステロイド の併用の有無、ぶどう膜炎 の解剖学的位置、罹患期間にかかわらず有効性が示されている2) 。非レスキュー患者におけるステロイド 関連眼圧 上昇の発生率は10.8%であり、偽処置群でレスキュー治療を受けた患者の21.7%より低かった2) 。
ステロイド 全身投与 :両眼性や重症のUMEではプレドニゾロン0.5〜1 mg/kgで開始する1) 。Vogt-小柳-原田病 ではステロイドパルス療法 を行う。副作用が多いため、減量はゆっくりと6か月以上かけて行う。
免疫抑制薬 :シクロスポリン (ネオーラル 3〜5 mg/kg/日)はステロイド 減量が困難な場合に併用する。血中濃度(トラフ値50〜200 ng/mL)のモニタリングと腎機能管理が必要である。Behçet病ではコルヒチン(0.5〜1.5 mg/日)が炎症発作抑制の第一選択となる。
抗TNF -α抗体(インフリキシマブ ) :コルヒチン・シクロスポリン でも発作を繰り返す重症Behçet病に使用する。通常5 mg/kgを2か月ごとに点滴静注する。
若年性特発性関節炎(JIA)関連ぶどう膜炎 :慢性虹彩 毛様体 炎に伴うUMEでは、メトトレキサート や生物学的製剤 (アダリムマブ )を含む段階的治療が推奨される4) 。IOISレポートでは、UMEを伴うぶどう膜炎 に対する免疫抑制薬の導入として、メトトレキサート ・アザチオプリン ・ミコフェノール酸モフェチル などが第一選択として推奨されている8) 。アダリムマブ はメトトレキサート 治療でも効果不十分なJIA関連ぶどう膜炎 の嚢胞様黄斑浮腫 に対して、97.7%のCME コントロール達成率が報告されている8) 。
VEGF阻害薬 はUMEに対してオフラベルで使用される1) 。脈絡膜新生血管 を合併した場合は第一選択となる。ステロイド 不耐やステロイド レスポンダー(眼圧 上昇を起こしやすい患者)では有力な選択肢である。ただし、UMEに対する明確な投与レジメンは確立されていない1) 。
硝子体手術 は薬物治療抵抗例やステロイド 抵抗性の囊胞様黄斑浮腫 が適応となる7) 。内境界膜 剥離を併用した硝子体手術 、囊胞切開を併用した硝子体手術 などが遷延する囊胞様黄斑浮腫 に対して行われる。黄斑上膜 ・黄斑円孔 ・硝子体出血 も手術適応である。炎症所見が落ち着いている時期の施行が望ましく、術前後のステロイド 補充を考慮する。
術後に炎症が増悪する場合があるため、リスク・ベネフィットを慎重に評価する1) 。硝子体 切除後はトリアムシノロン の半減期が18.6日から3.2日に短縮するため、長時間作用型薬剤の使用が推奨される1) 。
治療における注意点・副作用
ステロイド 局所投与に伴う眼圧 上昇と白内障 形成に定期的な検査が不可欠である。
感染性ぶどう膜炎 では、感染が除外されるまでステロイド や硝子体 内治療を開始してはならない1) 。
ステロイド 全身投与は漸減・中止後に激しい炎症発作を引き起こすことがあるため、自己判断での中断は危険である。
眼圧 上昇に対しては降圧点眼薬(β遮断薬 、プロスタグランジン関連薬 、炭酸脱水酵素阻害薬 )を用いる。点眼で管理困難な場合は線維柱帯切開術 などの手術が必要となることがある。
Q
ステロイド治療で眼圧が上がった場合はどうするのか?
A
まず降圧点眼薬で管理を試みる。多くの場合は点眼でコントロール可能である。点眼・内服で不十分な場合は線維柱帯切開術 などの緑内障 手術が検討される。ステロイド緑内障 には線維柱帯切開術 が特に有効とされる。
UMEの発生には内側および外側血液網膜関門 (BRB)の破綻が中心的役割を果たす。
正常時、BRBは網膜 血管内皮細胞(内側)と網膜色素上皮 細胞(外側)のタイトジャンクションにより維持されている。ぶどう膜炎 では炎症性サイトカイン(TNF -α、IL-1β、IL-6)がタイトジャンクション蛋白(ZO-1、オクルディン、クローディン)の発現を低下させ、血管透過性が亢進する5) 。VEGFも血管透過性亢進と新生血管 形成を促進する2) 。液体貯留は内核層・Henle線維層を中心に生じ、外網状層・内顆粒層の囊胞様変化として観察される。
ぶどう膜炎 による炎症では以下の連鎖が生じる。
免疫細胞の浸潤 :T細胞・マクロファージが眼内に遊走し、炎症性メディエーターを放出する
プロスタグランジン産生 :シクロオキシゲナーゼ活性化により産生が亢進し、血管透過性を増大させる1)
VEGF上昇 :血管透過性亢進と浮腫形成の直接的原因となる
補体 活性化 :末梢血管の障害や網膜 内皮細胞への直接傷害を促進する
後部硝子体 膜の黄斑部 への牽引もUME発生の一因となりうる。黄斑上膜 や黄斑 硝子体 牽引症候群では、硝子体 の牽引によって黄斑浮腫 が生じることがある。ぶどう膜炎 に伴う硝子体混濁 ・硝子体 線維化は黄斑 への牽引を生じやすい。
トリアムシノロン アセトニドは細胞内グルококルチコイド受容体に結合し、リポコルチン産生を促進して抗炎症性のアラキドン酸放出を抑制する2) 。免疫細胞の浸潤・活性化を抑え、VEGFの発現を低下させることで血管透過性を改善し、浮腫を軽減する2) 。治療が奏効し浮腫が消退すれば視力 改善が期待できるが、慢性ぶどう膜炎 では浮腫の再発・持続により視力 予後が悪化する場合もある。
Muyaらのウサギを用いた研究では、SCS-TAは硝子体 内投与用トリアムシノロン 製剤と比較して注入時のグライドフォースが低く、ばらつきも少ないことが示された2) 。これにより上脈絡膜 腔への安全な薬剤送達が容易になる。上脈絡膜 投与後、後眼部への高濃度が最初の2か月間維持され、3か月目には硝子体 内投与と同等レベルとなった。
Mackensenらの試験では、インターフェロンβ(44 mg皮下注3回/週)投与群で黄斑 厚が平均206 μm減少し、メトトレキサート (20 mg皮下注週1回)群では47 μm増加した(p<0.0001)1) 。インターフェロンα2aはBehçet病を含む難治性UMEに対して80%以上の有効率が報告されている。
Taylorらの15例を対象とした前向き研究では、硝子体 内メトトレキサート 400 μg投与により黄斑 厚が平均425 μmから275 μmに減少した1) 。3分の1の患者が中央値4か月で再発したが、再注射は初回と同等の効果を示した。
オクトレオチド(100 μg皮下注3回/日、または長時間作用型20 mg筋注月1回)は、従来治療に抵抗した慢性UMEの9眼中7眼で浮腫を消退させたとの報告がある6) 。局所眼内投与製剤の開発も進行中である。
硝子体 内シロリムス(mTOR阻害薬)はSAVE-2試験でUME軽減の統計的有意差を達成できなかったが、一部の患者では著明な改善が認められた1) 。適切な患者選択が今後の課題である。
faricimab(抗VEGF-A/Ang-2二重阻害薬)はVEGFとアンジオポエチン-2の両方を標的とし、網膜 血管の安定化と透過性抑制の相乗効果が期待される。糖尿病黄斑浮腫 ・滲出型AMD での承認を経て、ぶどう膜炎性黄斑浮腫への応用が研究段階にある。抗VEGF薬 の多面的な作用を活かした新たな治療展開として注目されている。
Q
上脈絡膜腔注射は日本でも受けられるのか?
A
SCS-TA(Xipere)は2021年に米国で承認されたが、2026年3月時点で日本では未承認である。国内での使用可能性については今後の規制動向を確認する必要がある。
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