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ぶどう膜炎

感染性ぶどう膜炎


ぶどう膜炎(uveitis)は眼内炎症の総称であり、病因による分類では「外因性(感染性)ぶどう膜炎」と「内因性(非感染性)ぶどう膜炎」に大別される。感染性ぶどう膜炎(infectious uveitis)は、細菌・ウイルス・真菌・寄生虫などの病原体が直接または免疫介在機序によって眼内炎症を引き起こすものを指す。ぶどう膜炎の年間新規発症患者数は10万人あたり17〜52人、有病率は10万人あたり38〜714人とされている1,16)

日本眼炎症学会が2002年に実施した疫学調査(3,060例)では、感染性ぶどう膜炎は全体の**約16%**を占めた1,7)。このうちヘルペス性虹彩炎3.6%、細菌性眼内炎3.8%、急性網膜壊死ARN)1.3%、眼トキソプラズマ症1.1%、眼トキソカラ症1.1%、CMV網膜炎0.8%、HTLV-1関連ぶどう膜炎1.0%などが主要疾患として挙げられている。一方、国際的にはトキソプラズマ症や結核性ぶどう膜炎が発展途上国で感染性の50%以上を占めるとされており2,13)、地域差が顕著である8)

感染性ぶどう膜炎の原因同定が重要な理由は、治療戦略が非感染性と根本的に異なるためである。非感染性には免疫抑制(ステロイド・免疫調節薬)が主体となるが、感染性ではまず病原体への特異的治療が不可欠であり、不用意なステロイド投与は病勢を急激に悪化させる危険がある。


ぶどう膜炎は炎症の主座により以下の4型に分けられる(SUN Working Group分類):

分類部位代表疾患(感染性)
前部ぶどう膜炎虹彩毛様体虹彩炎虹彩毛様体炎)HSV/VZV虹彩炎CMV前部ぶどう膜炎ライム病
中間部ぶどう膜炎硝子体毛様体扁平部HTLV-1関連ぶどう膜炎ライム病
後部ぶどう膜炎脈絡膜硝子体後部CMV網膜炎眼トキソプラズマ症眼トキソカラ症
汎ぶどう膜炎全層ARN、結核性、梅毒性、真菌性眼内炎

感染性ぶどう膜炎は病原体の種類により4群に分類される。

ヘルペスウイルスファミリー(HHV-1〜8)が最多であり、特にHSV-1/2・VZV・CMV・HTLV-1が臨床上重要である。宿主の免疫能に応じて多彩な臨床像を呈し、免疫正常者ではHSV/VZVによる前部ぶどう膜炎ARNが、免疫不全者ではCMV網膜炎PORNが典型的である。

結核菌(Mycobacterium tuberculosis)・梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)・バルトネラ(猫ひっかき病)・ライム病ボレリアなどが主要病原体。内因性細菌性眼内炎ではグラム陰性桿菌(大腸菌・クレブシエラなど)が多く、進行が速く予後不良である。

カンジダ・アスペルギルス・クリプトコッカスなどが内因性感染を起こし、易感染性宿主(中心静脈カテーテル留置・免疫抑制・HIV感染)に発症する。特にカンジダ血症後の眼内炎が問題となる。

眼トキソプラズマ症Toxoplasma gondii)と眼トキソカラ症Toxocara canis/cati)が代表疾患。トキソプラズマは成人後天感染でも再活性化し、リンパ節腫脹・後天網脈絡膜炎をきたす。

分類感染経路代表疾患
内因性(endogenous)血行性散布(他臓器→眼)細菌性眼内炎真菌性眼内炎、結核、梅毒、CMV網膜炎
外因性(exogenous)直接侵入(外傷・手術)術後感染性眼内炎、外傷後眼内炎

3. ウイルス性ぶどう膜炎の概観

Section titled “3. ウイルス性ぶどう膜炎の概観”

ぶどう膜・網膜硝子体の炎症にウイルスが関与するものをウイルス性ぶどう膜炎と呼ぶ。ヒトヘルペスウイルス(HHV)は網膜組織への親和性が強く、眼部にさまざまな疾患を生じる。ウイルス性ぶどう膜炎は、ウイルスによる直接的な毒性と免疫反応により惹起される炎症が、宿主の免疫能に応じて多彩な臨床像を呈することが特徴である。眼内液を用いたPCRによる網羅的検索が可能となったことで、診断率は大きく向上した。

3-1. ヘルペスウイルス系統の病原体と眼病変

Section titled “3-1. ヘルペスウイルス系統の病原体と眼病変”
ウイルス免疫正常者の眼病変免疫不全者の眼病変
HSV-1/2(HHV-1/2)ヘルペス虹彩毛様体炎、ARNPORN(まれ)
VZV(HHV-3)眼部帯状疱疹、ヘルペス虹彩毛様体炎、ARNPORN
CMV(HHV-5)角膜内皮炎、CMV前部ぶどう膜炎CMV網膜炎、免疫回復ぶどう膜炎(IRU)
EBV(HHV-4)軽度ぶどう膜炎(まれ)ARN類似病変(まれ)
HTLV-1中間部〜汎ぶどう膜炎(ベール状硝子体混濁同左(重症化)
風疹ウイルスFuchs虹彩異色性虹彩毛様体炎との関連

ARNは色素性角膜後面沈着物を伴う急性虹彩毛様体炎で発症し、眼底周辺部に黄白色顆粒状病変が急速に融合拡大する壊死性網膜炎である。VZVが最多(重症例も多い)、次いでHSV-1/2が病因となる。網膜裂孔を伴う裂孔原性網膜剥離が高率(約75%)に発症し、視力予後は不良である18)

日本眼炎症学会ARN診断基準(確定診断群):

  • 初期眼所見:①前房細胞または豚脂様KP、②1つまたは複数の黄白色病変(周辺部)、③網膜動脈炎、④視神経乳頭発赤、⑤炎症性硝子体混濁、⑥眼圧上昇のうち①と②が必須
  • 経過項目:急速な円周方向拡大・網膜裂孔/網膜剥離・血管閉塞・視神経萎縮・抗ヘルペス薬反応のうち1項目以上
  • 眼内液検査:前房水または硝子体液のPCRでHSV-1、HSV-2、VZVのいずれかが陽性

臨床診断群(眼内液検査を要しない)は初期所見①②に加え、③〜⑥から2項目と経過項目1項目を満たす場合に診断可能である。

急性網膜壊死の眼底写真とOCT。黄白色網膜病変、乳頭浮腫、血管閉塞性変化、網膜浮腫を示す。

Zhu W, et al. Atypical presentation of acute retinal necrosis mimicking Vogt-Koyanagi-Harada disease leading to misdiagnosis: a case report. Front Med (Lausanne). 2024. Figure 2. PMCID: PMC11620890. License: CC BY.
急性網膜壊死ARN)の眼底写真とOCT。周辺部に黄白色の壊死性網膜病変、出血、血管白線化、乳頭浮腫がみられ、ARN診断基準の初期眼所見に対応する。本文「急性網膜壊死ARN)」の項で扱う周辺部壊死性網膜炎の臨床所見に対応する。

CMVはAIDSを中心とした免疫不全患者に発症する日和見感染であり、CD4陽性T細胞数が50〜100/µLまで低下したAIDS患者に多く発症する20)。病型は①周辺部顆粒型(白色顆粒を伴う扇型病巣)、②後極部血管炎型(出血と浮腫)、③樹氷状血管炎型(大血管中心の白輯化)の3型があり、臨床上は混在することが多い。免疫回復に伴う免疫回復ぶどう膜炎(IRU)も重要な合併症であり15)、抗レトロウイルス療法開始後の眼科管理が必要である。

HTLV-1のキャリアの**約0.1%**に発症し、九州・沖縄を中心とした地域に多い12)。白色顆粒状KP、虹彩結節、ベール状・索状・顆粒状の硝子体混濁網膜血管周囲の白色顆粒付着が特徴的所見である。甲状腺機能亢進症を高頻度に合併する。視力予後は比較的良好であるが、ステロイドへの反応後に減量・中止で再燃することがある。

3-5. 風疹ウイルスとFuchs虹彩異色性虹彩毛様体炎

Section titled “3-5. 風疹ウイルスとFuchs虹彩異色性虹彩毛様体炎”

Fuchs虹彩異色性虹彩毛様体炎(虹彩異色・虹彩毛様体炎・白内障の3主徴)は風疹ウイルスとの関連が示唆されている。先天風疹症候群では妊娠3か月以内の経胎盤感染により、salt-and-pepper様眼底所見を呈する網脈絡膜炎が発症する。


結核菌(Mycobacterium tuberculosis)による眼内炎症は直接感染免疫介在性(過敏反応)の2機序が関与する。臨床病型は多彩であり、脈絡膜肉芽腫(結節)・漿液性網膜剥離・散弾様脈絡膜炎・血管炎型・汎ぶどう膜炎など様々な形態をとる。

診断にはIGRA(QuantiFERON®-TBゴールドプラスまたはT-スポット®-TB)が有用であり、ツベルクリン反応は高齢者・AIDSなどの細胞性免疫低下例で陰性となることに注意する。結核性ぶどう膜炎視力予後については、最良矯正視力が3/60未満となる例が約1/3に達すると報告されている3)。SUN Working Group(2021年)が提唱する結核性ぶどう膜炎の病型基準には①虹彩結節を伴う前部ぶどう膜炎、②蛇行性様脈絡膜炎、③脈絡膜結節(結核腫)、④活動性全身結核例の多巣性脈絡膜炎、⑤閉塞性網膜血管炎が含まれる5)。インドおよびインドネシアでは感染性ぶどう膜炎の約22.9〜48.0%が結核性とされており3,14)、結核高蔓延地域での重要性は特に高い。

梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)による眼内炎症は「偉大なる模倣者(great mimicker)」と称され、前部・後部・汎ぶどう膜炎いずれの形態もとりうる。近年は男性同性愛者(MSM)を中心に世界的な再増加がみられており、HIV共感染例では約2倍の眼梅毒リスクがある4)。世界全体で年間約570〜600万例(15〜49歳)の新規梅毒感染が報告されており4)、梅毒患者の約1〜1.5%に眼病変が生じるとされる4,10)

診断は血清学的検査(TPHA・RPR/VDRL)で行い、TP抗原法と非TP法の組み合わせで解釈する。治療は神経梅毒に準じてベンジルペニシリンG(アクアシリン®)24百万単位/日を10〜14日間静注が第一選択であり、セフトリアキソン静注が代替選択肢となる。ヤーリッシュ・ヘルクスハイマー反応(治療後24時間以内の発熱・炎症増悪)に注意が必要である。

梅毒性ぶどう膜炎の眼底・FAF・OCT・蛍光眼底造影で、後極のplacoid脈絡網膜病変を示す画像。

Ye Z, et al. Syphilis and the Eye: Clinical Features, Diagnostic Challenges, and Evolving Therapeutic Paradigms. Pathogens. 2025. Figure 1. PMCID: PMC12472546. License: CC BY.
梅毒性後部ぶどう膜炎ASPPC)の眼底・FAFOCT蛍光眼底造影。後極に黄白色のplacoid病変と外網膜障害、乳頭過蛍光がみられる。本文「梅毒性ぶどう膜炎」の項で扱うposterior placoid chorioretinitis(ASPPC)に対応する。

4-3. 猫ひっかき病(バルトネラ感染)

Section titled “4-3. 猫ひっかき病(バルトネラ感染)”

Bartonella henselaeによる感染で、ネコとの接触歴が重要な問診事項となる。眼底所見として神経乳頭炎(macular star所見)・黄斑部星状白斑・漿液性網膜剥離が特徴的であり、後部ぶどう膜炎の形態をとることが多い。抗Bartonella henselae抗体価の測定で診断し、アジスロマイシン・ドキシサイクリン・リファンピシンによる抗菌治療を行う。

マダニを媒介とするBorrelia属スピロヘータの感染症であり、第2〜3病期に多彩な眼病変(ぶどう膜炎網膜血管炎視神経炎角膜炎など)が出現する。慢性遊走性紅斑が第1病期の特徴的皮疹であり、マダニ咬傷歴が診断の手がかりとなる。ELISAによる血清IgM抗体価上昇で診断し、ペニシリン系またはテトラサイクリン系抗菌薬で治療する。梅毒・サルコイドーシスとの鑑別を要する。

らい菌(Mycobacterium leprae)による慢性肉芽腫性感染症で、眼病変は7〜8割(近年の新規患者では3〜4割)に発症するとされてきた。慢性肉芽腫性前部ぶどう膜炎が主体で、虹彩真珠(iris pearl)・虹彩萎縮・小瞳孔・テント状周辺虹彩前癒着が特徴的所見。多剤併用療法(リファンピシン・ジアミノジフェニルスルホン・クロファジミン)でぶどう膜炎を伴う場合はステロイド点眼を追加する。

他臓器感染(肝膿瘍・心内膜炎・肺炎など)から血行性に眼内に感染が伝播する内因性細菌性眼内炎は、グラム陰性桿菌(クレブシエラ・大腸菌など)が主な起炎菌であり、予後は極めて不良である。外因性(術後)のグラム陽性球菌感染と比較して進行が速く、全身の感染源検索・治療が必須である。


真菌性眼内炎は内因性感染が大部分を占め、カンジダ(Candida spp.)が最多であり、アスペルギルス・クリプトコッカスも重要な病原体である。

主なリスク因子

  • 中心静脈栄養(IVH)・留置カテーテル
  • 長期広域抗菌薬使用
  • 免疫抑制(HIV感染・臓器移植・悪性腫瘍・化学療法)
  • 糖尿病
  • 静脈麻薬使用

真菌性眼内炎では白色球状または綿花状の硝子体混濁(「塊状混濁」)が特徴的であり、細菌性眼内炎と比べ進行が遅い。初期は無症状か軽度の飛蚊症のみで見逃されやすく、進行すると充血眼痛汎ぶどう膜炎が出現する。内因性真菌性眼内炎の**30%**が両眼に発症する8)

診断は血液/カテーテル先端培養・β-D-グルカン・カンジダ抗原測定および硝子体培養で行い、治療は抗真菌薬(ボリコナゾール・アムホテリシンB・フルコナゾール)投与と硝子体切除術の組み合わせが基本となる。


Toxoplasma gondii(細胞内寄生性原虫)は世界人口の約1/3が感染しているといわれ、日本人成人の抗体陽性率は**20〜30%**とされる11)。ネコ科を終宿主とし、ネコの糞便からのオーシスト経口摂取または加熱不十分な肉の摂取で感染する。

眼トキソプラズマ症ぶどう膜炎の原因疾患の**約1%**を占める11)。後天感染の眼底所見は周辺部の境界不鮮明な白色〜乳白色の滲出性網脲絡膜炎であり、陳旧性瘢痕病巣に接する「衛星病巣(satellite lesion)」が再発時の特徴的所見となる。前房炎症・硝子体混濁(「霧中のヘッドライト headlights in the fog」)を伴う。先天感染では両黄斑部に中心部厌白色線維性増殖と色素沈着を伴う瘢痕病巣がみられる。

診断は特徴的な眼所見と血清抗体価(IgG・IgM)の測定が主体となる。Q値(Goldmann-Witmer比)やPCRによる眼内液検査も有用である。治療はスピラマイシン酢酸エステル(アセチルスピラマイシン)あるいはクリンダマイシン1.2 g/日を4〜6週間内服し、滲出病変のコントロール目的でステロイド0.5 mg/kg/日を併用する。

眼トキソプラズマ症の眼底写真。黄斑近傍に色素性脈絡網膜瘢痕と衛星病変を認める。

Miyagaki M, et al. Ocular Toxoplasmosis: Advances in Toxoplasma gondii Biology, Clinical Manifestations, Diagnostics, and Therapy. Pathogens. 2024. Figure 2. PMCID: PMC11509995. License: CC BY.
眼トキソプラズマ症の眼底写真。後極部に色素沈着を伴う陳旧性脈絡網膜瘢痕と、その近傍に白色の衛星病変(satellite lesion)を認める再発像。本文「眼トキソプラズマ症」の項で扱う衛星病変(satellite lesion)に対応する。

イヌ回虫(Toxocara canis)またはネコ回虫(Toxocara cati)の幼虫移行症であり、片眼性が多い。眼内炎型・後極部腫瘤型・周辺部腫瘤型(最多)の3病型があり、強い硝子体混濁網膜剥離をきたすことがある。ELISA(Toxocara CHECK®等)による血清抗体検索と特徴的眼所見で診断する。治療は駆虫薬(ジエチルカルバマジン)内服・ステロイド内服に加え、冷凍凝固・レーザー凝固・硝子体手術が適応となりうる。


感染性ぶどう膜炎の診断には系統的な問診が不可欠である:

  • 年齢・性別CMV網膜炎はAIDS患者(20〜40代男性に多い)、HAUは九州・沖縄在住者
  • 地域・渡航歴:結核高蔓延地域(東南アジア・アフリカ等)への渡航歴
  • 動物接触歴:ネコ(トキソプラズマ・バルトネラ)、イヌ(トキソカラ)
  • 食事歴:生肉・生魚食(トキソプラズマ)
  • 性行為歴・HIV検査歴:梅毒・CMV
  • 免疫抑制状態:HIV・悪性腫瘍・臓器移植・免疫抑制薬使用
  • IVH・カテーテル歴真菌性眼内炎
  • 過去の帯状疱疹・口唇ヘルペス歴:VZV・HSV虹彩炎
所見示唆される感染性疾患
豚脂様KP(mutton-fat KP)HSV/VZV虹彩炎ARN結核性ぶどう膜炎
眼圧眼圧≥25 mmHg)を伴う前部ぶどう膜炎HSV/VZV虹彩炎CMV前部ぶどう膜炎
周辺部融合性白色壊死病巣ARN(VZV/HSV)
後極部出血を伴う白色浸潤CMV網膜炎(血管炎型)
塊状硝子体混濁(増大傾向)真菌性眼内炎
ベール状・索状硝子体混濁HTLV-1関連ぶどう膜炎
陳旧性瘢痕+衛星病巣眼トキソプラズマ症
周辺部白色腫瘤+硝子体索状物眼トキソカラ症
肉芽腫性虹彩炎脈絡膜肉芽腫結核性ぶどう膜炎、梅毒性
神経乳頭炎+黄斑部星状白斑猫ひっかき病(バルトネラ)
検査対象疾患
血清TPHA・RPR/VDRL梅毒性ぶどう膜炎
IGRA(QuantiFERON・T-スポット)結核性ぶどう膜炎
CMV抗原血症(C7-HRP法)・CMV-PCRCMV網膜炎
抗HTLV-1抗体HTLV-1関連ぶどう膜炎
抗HIV抗体・CD4カウントCMV/PORN/眼梅毒
β-D-グルカン・カンジダ抗原真菌性眼内炎
抗Toxoplasma IgG/IgM眼トキソプラズマ症
抗Toxocara抗体(ELISA)眼トキソカラ症
抗Bartonella henselae抗体猫ひっかき病
血液培養・心臓超音波内因性細菌性眼内炎

7-4. 眼内液検査(前房水・硝子体液)

Section titled “7-4. 眼内液検査(前房水・硝子体液)”

眼内液を用いた検査は感染性ぶどう膜炎の診断において最も重要な確定手段であり、前房穿刺前房水採取)または硝子体手術硝子体液採取)により検体を得る9)

前房水または硝子体液からDNAを抽出し、各病原体のDNAをPCR法で検出する。マルチプレックスリアルタイムPCRにより少量検体で複数ウイルスを網羅的に検索でき、ARNの鑑別診断に特に有用である19)

感染性ぶどう膜炎キット(先進医療)HSV-1/2、VZV、CMV、EBV、HHV-6/7、HTLV-1、Toxoplasma gondii DNA等を一度に検索可能であり、複数病原体の同時感染や難治例の診断に活用される。ただし、CMV網膜炎の初期(前房内炎症細胞が出現する前)にはPCRで検出されないことがあるため注意する。

眼内での病原体特異的抗体産生の有無を検出する方法であり、以下の計算式で算出する:

Q値 =(眼内液ウイルス抗体値 ÷ 眼内液中IgG量)÷(血清ウイルス抗体値 ÷ 血清中IgG量)

  • Q値 >1:眼内での局所抗体産生の可能性あり
  • Q値 ≥6:有意な局所抗体産生が確認され、当該ウイルスを病因と同定可能

Q値は発症10日以内の早期には眼内抗体産生が不十分なため過小評価となる点に注意する。血清抗体価のみでは病因診断はできない(成人の多くは既感染のため陽性)6)

眼内炎症患者
├─ ウイルス性疑い(高眼圧・前房炎症・壊死性網膜炎)
│ → 前房水PCR(HSV/VZV/CMV)+ Q値 ← 第一選択
│ ─ 前房水で陰性かつ壊死性病変 → 硝子体液PCR
│ ─ 免疫不全者 → マルチプレックスPCR(先進医療)
├─ 寄生虫疑い(衛星病巣・周辺部腫瘤)
│ → 眼内液Q値(Toxoplasma)または眼内液PCR
├─ 真菌疑い(塊状混濁・リスク因子あり)
│ → 硝子体液培養 + β-D-グルカン(血液)
└─ 細菌疑い(急速進行・IVH歴)
→ 硝子体液グラム染色・培養(至急)

病原体第一選択治療補足
HSV(ARN虹彩炎ACV 10 mg/kg×3回 静注 2週→VACV 1,000 mg×3回/日 内服抗炎症にステロイド点眼・静注を併用
VZV(ARN虹彩炎ACV 10〜15 mg/kg×3回 静注 + VACV 内服PORNはCMV治療に準ずる
CMV(網膜炎)GCV 5 mg/kg×2回 静注 2〜3週(導入)→VGCV 900 mg×2回/日 内服(維持)免疫能回復が根治療法
CMV(前部ぶどう膜炎GCVゲル0.15%点眼(73%の専門家が第一選択)±VGCV内服慢性経過には12か月の維持治療も考慮(73%の専門家がGCVゲル0.15%を選択)2)
結核INH・RFP・PZA・EMBの4剤(標準6か月レジメン)ステロイドを適宜併用
梅毒ベンジルペニシリンG 24百万単位/日 静注 10〜14日ヘルクスハイマー反応に注意
真菌(カンジダ)ボリコナゾールまたはアムホテリシンB ± 硝子体切除術β-D-グルカン指標でモニタリング
トキソプラズマアセチルスピラマイシン+ステロイド or クリンダマイシン妊婦に注意(スピラマイシン使用)
トキソカラジエチルカルバマジン+ステロイドレーザー・硝子体手術の適応検討
ライム病アモキシシリン or ドキシサイクリン 3週間眼病変にはステロイド点眼を追加
ハンセン病MDT(リファンピシン・DDS・クロファジミン)らい反応時はステロイド必要

感染性ぶどう膜炎においてステロイドを使用する場合は、必ず抗病原体治療を先行・並行させる。ステロイドの役割は炎症による二次的な組織障害を軽減することであり、ARN・トキソプラズマ症・結核性ぶどう膜炎ハンセン病ぶどう膜炎など多くの感染性ぶどう膜炎で適切な病原体治療との組み合わせで使用される。

一方、CMV網膜炎(純粋な日和見感染)では基礎疾患(AIDS)の治療による免疫能の改善が根治療法であり、ステロイドは基本的に使用しない。

虹彩後癒着の予防のため、前眼部炎症に対してはトロピカミド・フェニレフリン点眼(1〜6回/日)を用いる。高眼圧HSV/VZV虹彩炎CMV前部ぶどう膜炎では眼圧上昇が特徴的)に対しては炭酸脱水酵素阻害薬β遮断薬などの眼圧降下薬を選択するが、プロスタグランジン関連薬は炎症増悪のリスクがあり使用に注意する。


9. 免疫抑制状態別の危険度マトリクス

Section titled “9. 免疫抑制状態別の危険度マトリクス”
背景特に注意すべき病原体優先検査
HIV感染(CD4 50/µL未満)CMV(網膜炎・ARNPORN)、真菌(クリプトコッカス)、梅毒眼内液PCR(マルチプレックス)・CMV抗原・β-D-グルカン
固形臓器移植後・免疫抑制薬使用CMV、真菌(アスペルギルス・カンジダ)、EBVCMV-PCR・β-D-グルカン・血液培養
悪性腫瘍・化学療法後真菌(カンジダ・アスペルギルス)、CMVβ-D-グルカン・血液培養
長期IVH・カテーテル留置カンジダ眼内炎β-D-グルカン・血液培養(眼科コンサルトは必須)
結核高リスク(渡航・接触歴)結核(脈絡膜肉芽腫・血管炎型)IGRA・胸部CT
MSM(男性同性愛者)・HIV+梅毒(眼梅毒は約1〜1.5%)、CMVTPHA・RPR・HIV検査
免疫正常者(中年以上)HSV/VZV虹彩炎ARN前房水PCR・Q値
小児・ペット接触歴トキソカラ・トキソプラズマ血清抗体(ELISA)

Q 感染性ぶどう膜炎が疑われる場合、どの時点で眼内液検査を行うべきですか?
A

臨床所見だけでは感染性か非感染性かの鑑別が困難な場合、または感染性が疑われるにもかかわらず血清学的検査が陰性の場合に積極的に前房穿刺を検討します。特に壊死性網膜炎(ARNPORNCMV網膜炎)が疑われる場合は、早期の確定診断が治療選択と予後に直結するため、可能な限り眼内液PCRを行います。初期段階でのPCR陰性例や難治例にはマルチプレックスPCRが有用です。

Q ステロイドを使ってしまった感染性ぶどう膜炎の患者はどう対処すべきですか?
A

まず病原体同定のための眼内液PCRを速やかに行い、病原体が判明次第、特異的治療薬を開始します。ステロイドを急激に中断すると炎症の反跳が起こる可能性があるため、抗病原体治療開始後に慎重に減量します。特に結核性ぶどう膜炎ステロイド単独投与が行われた場合、潜在性結核の再燃・播種のリスクが高まっているため、呼吸器内科との連携のもとで全身精査(胸部CT・IGRA)を緊急に行います。

Q 眼トキソプラズマ症の再発を予防できますか?
A

治療終了後も、トキソプラズマは萎縮瘢痕化病巣の中に薬剤抵抗性のシストとして残存します。免疫力の低下や妊娠をきっかけに約5〜30%の症例で再発します。頻繁に再発する患者にはトリメトプリム-スルファメトキサゾールによる長期予防投与が検討される場合があります。妊娠中はトキソプラズマ抗体陰性の妊婦が初感染を起こした場合、胎児への垂直感染(約40%)リスクがあるため、猫の糞便・土壌接触や生肉摂取を避けるよう指導します。


細菌性・その他の感染性ぶどう膜炎

Section titled “細菌性・その他の感染性ぶどう膜炎”

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