この検査の要点
双眼倒像鏡検査(BIO )は散瞳 下に行う広角立体眼底検査 であり,網膜裂孔 ・網膜剥離 の検索において他の検査法に代えがたい基本手技である
集光レンズ(20D・25D・28D)を両手に持ち,仰臥位の患者に対して行うことで全周の周辺網膜 を系統的に観察できる
直像鏡が倍率約15倍・視野約10°であるのに対し,倒像鏡は倍率2〜4倍・視野30〜60°と広く,立体視 が可能である
強膜 圧迫棒を組み合わせることで鋸状縁 近傍の最周辺部まで観察でき,裂孔と偽裂孔の鑑別や網膜下液 の有無の確認が可能になる
散瞳薬 (トロピカミド0.5%+フェニレフリン0.5%)を点眼後,約20〜30分で散瞳 が完成してから開始する
眼底所見は時計方向(1〜12時)と距離(後極・赤道部・鋸状縁 )で記録し,スケッチとともに診療録に残す
閉塞隅角 の既往がある場合は散瞳 により急性緑内障発作 を誘発するリスクがあり,事前の前房 深度確認が必要である
双眼倒像鏡検査(Binocular Indirect Ophthalmoscopy: BIO )は,頭部装着型の照明付きヘッドセットを用いて散瞳 下に眼底を両眼立体視 する眼底検査 の基本手技である。集光レンズ(通常20Dまたは25D)を患者眼前に保持し,眼底の倒立実像を眼前に形成して観察する。倍率は使用レンズにより2〜4倍,視野は30〜60°と広く,周辺網膜 の全周観察が可能である。
直像鏡に比べて倍率は低いが,広い視野と立体視 ,強膜 圧迫との組み合わせにより,周辺部の網膜裂孔 ・網膜剥離 ・格子状変性 を高い感度で検出できる。網膜 硝子体 疾患の診療において欠くことのできない検査であり,網膜剥離 術前の全周詳細眼底評価はBIO なくして行えない。米国眼科学会(AAO)のPreferred Practice Pattern 2025 でも,急性後部硝子体剥離 ・網膜裂孔 ・格子状変性 の評価において散瞳 下のBIO と強膜 圧迫が推奨されている[2] 。
Matteo Fallico; Pietro Alosi; Michele Reibaldi; Antonio Longo; Vincenza Bonfiglio; Teresio Avitabile. Scleral Buckling: A Review of Clinical Aspects and Current Concepts. J Clin Med. 2022 Jan 9; 11(2):314 Figure 1. PMCID: PMC8778378. License: CC BY 4.0 (
https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/ ).
(A) 若年有
水晶体 眼の左眼下方にみられる
裂孔原性網膜剥離 (
黄斑 は付着している),(B) 360度encircling bandと耳下側バックルによる
強膜バックリング術 後に完全に復位した
網膜 を示す。本項で述べた「
網膜剥離 術前の全周詳細眼底評価は
BIO なくして行えない」という点に対応する。
双眼倒像鏡の最大の特長は,集光レンズと強膜 圧迫子をそれぞれ両手に持てる点にある。強膜 を圧迫しながら網膜 を立体的に観察し,圧迫による動的観察(網膜 の動き・剥離の程度)や接線方向からの観察(裂孔辺縁の立ち上がり)が可能となる。これらの所見は単眼倒像鏡や前置レンズ法では得ることができない。
BIO の習熟には相応のトレーニングが必要であり,「双眼倒像鏡による眼底検査 は面倒なうえに習熟するのに時間がかかるため敬遠されることが多いが,ほかの検査法では得ることのできない多くの所見を観察できる。診断の精度を上げ,正しい治療法の選択のためには必ず必要な検査である」とされている。実際,倒立逆像による空間定位の困難さがレジデントの習熟を妨げる主因とされ,近年は拡張現実シミュレータを用いた教育法の有効性も報告されている[8] 。
また,Charles L. Schepens は1945年に双眼倒像鏡を開発し,網膜剥離 診療に革命をもたらしたことから「網膜剥離 の父」と称される[1] 。
Q
倒像鏡検査では像が逆さまに見えるが,正しく観察できるのか?
A
倒像鏡では眼底の倒立実像(上下反転・左右反転)が検者の眼前に形成される。すなわち上方網膜 が視野の下方に,右側網膜 が左側に見える。これは光学的に正確な現象であり,検者は訓練を重ねることにより倒立像を自動的に読み替えながら観察する。慣れるまでは空間的な方向把握に戸惑うが,眼底スケッチを並行して行いながら習熟するのが一般的な手順である。
Corr RH. Fundoscopy in the smartphone age: current ophthalmoscopy methods in neurology. Arq Neuropsiquiatr. 2023;81(5):502-509. Figure 4. PMCID: PMC10232018. License: CC BY 4.0 (
https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/ ).
上段の模式図と下段の臨床写真で、従来の直像検眼鏡(A・B)、PanOptic検眼鏡(C・D)、20ジオプトリーの集光レンズを用いた倒像鏡(E・F)、網膜 写真(G・H)による眼底像の視野と倍率の違いを示す。本文「直像鏡・前置レンズ法との比較」の項で扱う各検査法の視野・倍率特性に対応する。
倒像鏡は直像鏡・前置レンズ法(細隙灯顕微鏡+凸レンズ)と目的に応じて使い分けられる。
項目 直像鏡 双眼倒像鏡(BIO ) 前置レンズ法(78D/90D) 倍率 約15倍 約2〜4倍 約6〜8倍 視野 約10° 約30〜60° 約20〜30° 像の方向 正立像 倒立・左右反転像 倒立像(非接触) 立体視 なし あり あり 散瞳 の要否不要(小瞳孔 可) 必要 必要(推奨) 周辺網膜 観察 困難 優れている 赤道部まで良好 強膜 圧迫不可 可能 不可 主な用途 スクリーニング・乳頭観察 周辺網膜 ・剥離・裂孔 乳頭・黄斑 ・ガラス体
使い分けの原則として,網膜 周辺部の裂孔・剥離・変性の検索には倒像鏡が最適であり,視神経乳頭 や黄斑部 の詳細評価には前置レンズ法が適する。スクリーニング目的の簡易観察には直像鏡が用いられることもある。
BIO と細隙灯顕微鏡検査 (スリットランプ 検査)はそれぞれ異なる役割を担い,相補的に用いられる。
BIO の役割 : 眼底全体を俯瞰的に把握し,病変の位置関係・拡がり・立体的形状を評価する。強膜 圧迫で周辺部まで動的に観察する
細隙灯+前置レンズの役割 : 硝子体 と網膜 の癒着状態を含む詳細な観察に優れる。Goldmann三面鏡,スーパーフィールドレンズ,ボルクレンズなどと組み合わせて使用する
実際の臨床では,BIO による眼底チャート記載を先行させ,続いて細隙灯+Goldmann三面鏡などで網膜 硝子体 の精査を行う流れが標準的である。
Q
双眼倒像鏡と細隙灯検査はどのように使い分けるか?
A
双眼倒像鏡は広視野・立体的観察に優れ,眼底全体の位置情報を把握するのに適している。細隙灯+前置レンズは硝子体 と網膜 の癒着など詳細観察に優れる。両者は補完関係にあり,倒像鏡でチャートを作成したうえで細隙灯精査(Goldmann三面鏡など)を行うのが標準的な流れである。
BIO は以下の光路によって倒立実像を形成する。
ヘッドセット内の光源(ハロゲン/LED)から照明光を発する
コンデンサーレンズを通じて照明光を患者の瞳孔 に向けて集光する
照明光が眼底(網膜 )に到達し,反射・散乱光が瞳孔 から出射する
検者が保持する集光レンズ(凸レンズ)が出射光を屈折 させ,眼球と集光レンズの間(検者側)に倒立実像を形成する
検者の両眼がこの実像を通してそれぞれ異なる角度から観察することで,両眼視差による立体感が生じる
集光レンズの屈折 力(D値)が大きいほど焦点距離が短くなり,倍率は低下するが視野は広くなる。倍率の概算は「眼球の屈折 力(約60D)÷ 集光レンズのD値」で求められる。
レンズ 焦点距離 倍率(概算) 視野 主な用途 14D 約71 mm 約4.3倍 約37° 乳頭・黄斑 の詳細観察 20D 約50 mm 約3倍 約45° 成人の標準的な眼底検査 25D 約40 mm 約2.4倍 約50° 未熟児・小児 28D 約36 mm 約2.3倍 約53° 周辺網膜 の広角観察 30D 約33 mm 約2倍 約60° 最周辺部・小瞳孔
レンズと患者眼の距離は焦点距離に相当する約5〜8 cmが目安となる。散瞳 が十分なほど(瞳孔 径が大きいほど)立体視 の質が向上する。
観察目的に応じて,ヘッドセットのフィルターを切り替える。
白色光
フィルターなし :自然な色合いで眼底全体像を把握する際に使用する。
イエロー
イエローフィルター :光強度を低減する。羞明 を訴える患者に使用する。
レッドフリー
レッドフリーフィルター :血管・出血・神経線維層欠損の観察向上に有用である。
ブルー
ブルーフィルター :内境界膜 ・網膜 前層の病変の観察,フルオレセイン 蛍光観察に使用する。
倒像鏡は照明光と観察光の両方が瞳孔 を通過する構造上,散瞳 径が大きいほど明るく広い眼底像が得られる。小瞳孔 (4 mm未満)では観察可能な視野が制限され,特に周辺部の強膜 圧迫が行いにくくなる。
散瞳薬 を点眼し,完全散瞳 後に検査を開始する。
標準的な散瞳薬 : トロピカミド0.5%(ミドリンM®)+フェニレフリン塩酸塩0.5%の配合点眼液(ミドリンP®)
点眼後,約20〜30分で散瞳 が完成する
散瞳 の効果は通常4〜6時間持続し,その間は羞明 (光をまぶしく感じる)と近見困難が生じる
閉塞隅角 の既往・前房 の浅い患者では急性緑内障発作 のリスクがあるため,事前に前房 深度を細隙灯顕微鏡または眼軸長 検査で確認する
小児ではサイプレジン(シクロペントレート1%)の使用を検討する
Q
散瞳薬の副作用と注意点は?
A
散瞳薬 (トロピカミド0.5%+フェニレフリン0.5%)の主な副作用は,羞明 (4〜6時間持続)と調節麻痺による近見困難である。自動車・自転車の運転は検査後当日は避けるよう説明する。最も重要な合併症は急性閉塞隅角緑内障 発作であり,前房 が浅い患者(遠視 ・高齢・小眼球等)では散瞳 が隅角 を閉塞させ眼圧 が急上昇する危険がある。散瞳 前に細隙灯顕微鏡で前房 深度を確認し,浅前房 が疑われる場合は隅角検査 (ゴニオスコピー )を行ってから散瞳 を決定する。
基本手順(仰臥位)
仰臥位が基本。以下の順で行う。
患者をストレッチャー等に仰臥位にする
BIO ヘッドセットを装着し,照明輝度を適切に調整する(過度に明るいと瞳孔 が収縮)
患者の胸部にスケッチ用ボードを置く
20Dレンズを患者眼前約6〜8 cmの位置に保持する
反射光を利用して眼底像をレンズ内に捕捉する
上方→下方→耳側→鼻側→黄斑 →視神経乳頭 の順に系統的に観察する
観察しながらスケッチに所見を記録する
強膜圧迫手順(周辺網膜検索)
赤道部より周辺は強膜 圧迫を追加する。
圧迫棒(強膜 圧迫子)を検眼鏡観察と同時に使用する
圧迫棒の先端を瞼越しに強膜 に当て,軽く押し込む
眼底に網膜 の隆起が生じ,最周辺部(鋸状縁 近傍)が視野内に入る
圧迫しながら圧迫部位を移動させ,全周の最周辺部を順次確認する
裂孔・偽裂孔・変性部位が見られた場合は圧迫の前後で所見を確認し,動的変化(ゆがみ・剥離範囲変化)を記録する
強膜 圧迫を併用したBIO は周辺網膜裂孔 の検出におけるゴールドスタンダードであり[3] ,非接触細隙灯検査では急性の馬蹄形裂孔 が見逃されうるとの報告がある[5] 。一方,超広角眼底撮影 (UWF)と比較した近年の検討では,馬蹄形裂孔 の約半数がUWFのみでは検出できなかったとされ,UWF単独では強膜 圧迫付きBIO を完全には代替できないと考えられている[4] 。なお,強膜 圧迫中の眼内圧は外来検査でも平均65 mmHg程度・最大88 mmHgまで上昇しうるとの報告があり,眼灌流に影響を及ぼす可能性があるため,高眼圧症 例や緑内障 症例では圧迫の強さと時間に配慮する[6] 。
眼底所見は以下の形式で記録する。
時計方向 : 1〜12時(上方を12時として記録。例:「5時方向」)
赤道からの距離 : 後極(post),赤道部(equator),鋸状縁 (ora serrata)で区別
乳頭径(DD) : 距離の目安として乳頭径を1DDとし,「赤道部から1DD周辺」のように記載
スケッチ : 網膜剥離 ・裂孔の位置・形状・範囲を眼底スケッチ用紙(同心円付き)に色鉛筆で記録する。「スケッチを省略した網膜剥離 手術は,海図を持たずに航海に出るに等しく無謀である」とされている
座位での検査も可能だが,耳側・鼻側の立体視 が困難になるほか,圧迫検査できる範囲が制限される。全周の精密検索を行う場合は仰臥位が推奨される。
BIO を用いた眼底スケッチ(眼底チャート記載)は重要な臨床技能である。眼底チャートは網膜剥離 を中心とした眼底疾患の管理に不可欠であり,「スケッチを省略した網膜剥離 手術は海図を持たずに航海に出るに等しく無謀」とされる。強膜 バックリング 手術ではスケッチの質が手術成績・術者のスキルアップ・チームの病態共有に直結する。
チャート用紙 : SchepensやTolentinoが考案した網膜剥離 チャートが広く用いられる。通常3つの同心円(赤道部・鋸状縁 ・毛様体 突起後縁)が印刷されている。
カラーコード(AAO推奨) : 8色を使い分けて網膜 所見を記録する。
黒 :裂孔・断裂・透過性所見
赤 :出血・血管所見
青 :剥離部・液体
黄 :黄斑部 所見
緑 :格子状変性
茶・橙・紫 :その他の変性・色素変化など
Chu RL, et al. Morphology of Peripheral Vitreoretinal Interface Abnormalities Imaged with Spectral Domain Optical Coherence Tomography. J Ophthalmol. 2019;2019:3839168. Figure 3. PMCID: PMC6590607. License: CC BY 4.0 (
https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/ ).
眼底写真(a)で左眼の嚢胞状
網膜 タフトに伴う
網膜裂孔 (矢印)と圧迫白色変化(矢頭)がみられ、レーザー
網膜 固定術1か月後(b)・SD-
OCT 術前(c)・術後1週(d)の変化を示す。本文「代表的な検査所見と対応」の項で扱う裂孔・偽裂孔・white without pressureの鑑別に対応する。
所見 疑う疾患・状態 緊急度 対応 灰白色の波打つ隆起(網膜 がなびく) 裂孔原性網膜剥離 緊急 即日手術(バックリング /硝子体手術 ) 馬蹄形・円孔・蓋付き裂孔 網膜裂孔 (剥離前)準緊急 予防的レーザー光凝固 術を1〜2日以内に施行 格子状・蝸牛状の周辺変性 格子状変性 (裂孔好発部位)経過観察 自覚症状悪化時に再診指導 眼底透見不良(赤み) 硝子体出血 準緊急〜経過観察 原因精査(糖尿病・静脈閉塞・裂孔等) 新生血管 ・出血・白斑・浮腫増殖糖尿病網膜症 準緊急〜経過観察 福田分類等で病期評価。レーザー/硝子体手術 乳頭の発赤・隆起 うっ血乳頭 ・乳頭浮腫 準緊急 頭蓋内圧亢進を疑い神経内科に紹介 乳頭蒼白・境界鮮明 視神経萎縮 経過観察〜精査 原因精査(緑内障 ・虚血・視神経炎 ) 周辺の白色リング状病変 未熟児網膜症 (ROP )Stage分類緊急〜準緊急 25D/30Dレンズ使用。ICROP3分類で評価
強膜 圧迫は裂孔と偽裂孔(white with pressure: WWP)の鑑別にも有用である。
真性裂孔 : 圧迫で裂孔縁が明確に立ち上がる。周囲に網膜下液 を認める場合は剥離が進行していると判断する
WWP : 圧迫によって白く見えるが,周囲との境界が不明瞭で圧迫除去後に消失する
この鑑別は,予防的レーザー凝固が必要か経過観察で良いかの判断において極めて重要である。
BIO で観察される倒立実像の形成は幾何光学に基づく。集光レンズの屈折 力(D)と眼球の等価屈折 力(約60D)の比から倍率(M)が概算される。
倍率の概算式 : M ≒ 60D ÷ レンズのD値
例: 20Dレンズ使用時 → M ≒ 60 ÷ 20 = 3倍
例: 28Dレンズ使用時 → M ≒ 60 ÷ 28 ≒ 2.1倍
実際の倍率はレンズの設計(非球面・平面鏡補正)により上記より若干高くなる。
集光レンズは現代では非球面設計が標準となっており,周辺部の球面収差・色収差が補正されている。これにより20D/28Dレンズで実用的な視野端まで鮮明な像が得られる。
倒像鏡の立体視 は検者の両眼が瞳孔 を通じて眼底を異なる角度から同時に観察することで生じる。
左眼と右眼はそれぞれ異なる入射角で眼底からの反射光を受け取る
この両眼視差が網膜 の奥行き情報(隆起の高さ・陥凹の深さ)として認識される
散瞳 が不十分(瞳孔 径が小さい)と両眼の入射角の差が縮まり,立体感が乏しくなる
瞳孔 径が大きいほど立体感が向上するため,十分な散瞳 (6 mm以上が理想)が検査精度を左右する要因となる。
患者を仰臥位にすると以下の利点がある。
全周の周辺部を重力の影響なく観察しやすい
強膜 圧迫が瞼越しに均一に行いやすい
検者がスケッチを取りながら観察を継続しやすい
網膜下液 の分布が変化する(体位変換試験)の確認も可能
座位では耳側・鼻側の立体視 が困難になるほか,圧迫検査できる範囲が制限される。
Optos®(200°超広角走査型レーザー検眼鏡)やCLARUS®(45〜133°超広角眼底カメラ )は非散瞳 ・非接触で広角眼底像を取得できる。スクリーニング・記録・患者説明・遠隔読影において有用性が高い。
ただし,超広角眼底撮影 は平面画像であり,BIO が提供する立体視 ・動的観察(強膜 圧迫による所見変化)・鋸状縁 近傍の最周辺部評価を代替することはできない。二次元画像上で「裂孔様に見える病変」の最終確認にはBIO が不可欠であり,両者は補完関係にある。
デジタルセンサーを内蔵した記録機能付きヘッドセット(Digital BIO )が実用化されている。リアルタイムの映像を外部モニターに表示し,動画・静止画として記録できるため,術前説明・教育・遠隔コンサルテーションへの応用が進んでいる。
途上国・離島・NICU施設では眼科専門医の常駐が困難な場合があり,BIO 検査の映像をリアルタイムで遠隔地の専門医に転送し読影するシステムの開発が進んでいる。未熟児網膜症 (ROP )スクリーニングは特に有望な応用領域であり,デジタルBIO と遠隔読影の組み合わせは医療アクセスの格差解消に貢献する可能性がある。なお,ROP スクリーニングを広視野デジタル眼底撮影 とBIO で前向きに比較した試験では,デジタル撮影は単独でBIO を置き換えるのではなく補助的位置づけにとどまるべきであるとされている[7] 。
AIを用いた広角眼底カメラ による糖尿病網膜症 ・ROP ・緑内障スクリーニング が商業化されつつある。これらのシステムはファーストスクリーニングとして有用だが,精密診療(手術適応判断・治療モニタリング)の場面では依然としてBIO が主要な検査手技として機能し続けると考えられている。
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