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超音波Bモード検査(眼エコー)(B-Scan Ultrasonography)

1. 超音波Bモード検査(眼エコー)とは

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超音波Bモード検査(眼Bエコー)は、超音波の反射強度を二次元画像として表示する画像診断検査である。プローブから発射した超音波が組織界面で反射し、その反射強度(輝度)と反射時間(組織深度)を二次元マップ化することで眼内・眼窩の断面像を得る。

眼科領域では、透光体混濁眼で眼内が観察できないときと眼窩内病変の診断に使用する検査として確立されている。角膜混濁・高度白内障・高度な硝子体出血など透光体混濁が存在すると、細隙灯顕微鏡や眼底鏡による眼内観察が不可能になる。そのような状況においてBエコーは眼内の構造情報を得る唯一の画像検査となる。

1956年にMundt & Hughesが眼科への超音波応用を報告し、その後AモードおよびBモードとして発展を遂げた。現在では硝子体網膜脈絡膜眼窩内構造の評価に幅広く用いられており、眼科外来・手術前後の管理において欠かせない検査手段となっている。

  • 高度硝子体出血での眼内・眼底評価(術前の網膜剥離・眼内腫瘍の有無確認)
  • 高度白内障の術前眼底評価(網膜剥離硝子体混濁の把握)
  • 眼内異物の局在確認と材質推定(金属・非金属・木片の鑑別)
  • 眼内腫瘍(脈絡膜黒色腫・転移性腫瘍・脈絡膜血管腫等)の診断と経過観察
  • 眼窩腫瘍眼窩炎症のスクリーニング
  • 裂孔原性網膜剥離牽引性網膜剥離の術前評価と鑑別
  • 硝子体手術前の術前計画(牽引膜の範囲・形状把握)
  • 術後の硝子体網膜変化のモニタリング
Q 超音波Bモード検査はどのような場合に必要ですか?
A

主に透光体(角膜水晶体硝子体)に混濁があって眼内が直視できないとき、またはBエコーでしか評価できない病変がある場合に必要となる。高度硝子体出血・成熟白内障角膜混濁例での網膜剥離や腫瘍の有無確認、眼内異物の局在確認、眼窩腫瘍の診断などが代表的な適応である。眼内が直視できる場合でも、眼窩内病変の精密評価には有用である。

検査は原則として以下の手順で実施する。

  1. 経瞼アプローチ:閉瞼させた上眼瞼にスコピゾール等のカプリングジェルを十分に塗布する(点眼麻酔は不要)
  2. 角膜直接アプローチを選ぶ場合のみ、開瞼して点眼麻酔(0.4%オキシブプロカインなど)を使用する
  3. プローブを眼瞼上からそっと密着させる(眼球を圧迫しない)
  4. 頭部を固定し、プローブの位置・角度を変えながら全周スキャンを行う
  5. 眼球運動をさせながら硝子体膜・網膜の動態を観察する(kinetic echography)
  6. ゲイン(増幅感度)を高く始めて徐々に下げ、病変の輝度変化を確認する1)

経瞼アプローチが標準的で、患者侵襲が少なく多くの場面で第一選択となる。プローブで眼球を圧迫しないことが基本であり、頭部の固定が重要である。仰臥位では枕で頭部を安定させることが望ましく、坐位で検査する場合は後方からの介助者による頭部固定が不可欠である。

走査方式特徴利点欠点
リニアスキャン(電子走査)多数の振動子を電子的に切り換えて超音波ビームを移動させる欠損のない均一な画像が得られるプローブが幅広く高価
セクタスキャン(機械走査)振動子を機械的に高速で走査させるプローブ先が小さく走査性がよく安価前眼部周辺側に画像の欠損が生じる

眼球後部・眼窩の評価にはセクタスキャンが日常的に用いられることが多く、前眼部の詳細評価にはリニアスキャンが適している。

Q 検査に痛みはありますか?
A

標準的な経瞼アプローチ(閉じたまぶたの上からプローブを当てる方法)では点眼麻酔は不要で、痛みはほとんどない。角膜上に直接プローブを当てる方法を選択した場合のみ、0.4%オキシブプロカインなどの点眼麻酔を施行する。検査時間は数分程度である。カプリングジェルを使用するが、検査後に拭き取ることができる。

正常眼では、眼内は水晶体網膜脈絡膜強膜が一層の組織として描出される。眼外は比較的均一な組織像を示し、視神経は低輝度の管状構造として確認される。

超音波の輝度は組織の音響インピーダンス差を反映する。高輝度エコーは音響インピーダンス差が大きい界面(強膜・石灰化・眼内異物等)に由来し、低輝度エコーは液体(正常硝子体前房液・嚢胞液等)に由来する。

眼Bエコーを読影する際には以下の5点に着目する。

  • 眼窩内スペースの有無: 眼窩内の低輝度・高輝度領域の存在は腫瘍や炎症の指標となる
  • 視神経乳頭の描出: 視神経乳頭の位置を確認し、病変との位置関係を把握する
  • 隆起病変の性状: 充実性か嚢胞性かを輝度と形状から判断する(腫瘍鑑別に重要)
  • 硝子体内高輝度病変の有無: 出血・炎症・増殖膜などの存在を確認する
  • 網膜剥離の有無: 膜状エコーの形態・連続性・動態から剥離網膜を同定する
眼Bエコー:裂孔原性網膜剥離のV字状膜エコー(視神経乳頭に連続する両葉)
眼Bエコー:裂孔原性網膜剥離のV字状膜エコー(視神経乳頭に連続する両葉)
CheckDO. Ultrasound of a retinal detachment in a patient presenting with complete vision loss and light perception only. Wikimedia Commons. 2022. Figure 1. Source ID: commons.wikimedia.org/wiki/File:Retinal_Detachment.jpg. License: CC BY-SA 4.0.
視神経乳頭を頂点とするV字状の高輝度膜エコーが硝子体腔内に認められ、裂孔原性網膜剥離に特徴的な形態を示す。本文「網膜剥離硝子体膜の鑑別」の項で扱う形態的診断(視神経乳頭との連続性)に対応する。

硝子体出血を伴う眼では、Bエコー上に膜状の高輝度エコーが出現する。これが剥離網膜硝子体膜(後部硝子体剥離に伴う線維膜等)かの鑑別は治療方針を大きく左右する。動的Bスキャンは急性後部硝子体剥離症例の網膜裂孔検出において感度約96%・特異度約98%と報告されている2)。以下の3種類の診断法を組み合わせて評価する。

形態的診断

評価内容:膜エコーが視神経乳頭とつながっているかどうかを確認する

剥離網膜の特徴視神経乳頭に連続している。膜エコーの連続性・平滑性があり、曲線を描く。膜の厚さが一定

硝子体膜の特徴視神経乳頭とのつながりが不明瞭。断続的で不規則な形態を示すことがある

定量的診断(ゲイン減衰法)

評価内容:増幅感度調整ダイヤル(ゲイン)を徐々に下げながら膜エコーの消失順序を観察する

剥離網膜の特徴:強い反射を示すためゲインを下げてもエコーが残存する

硝子体膜の特徴:反射が弱いため、ゲインを下げると網膜エコーよりも先に消失する

動態的診断(眼球運動)

評価内容:患者に眼球運動をさせながら膜エコーの動き方を観察する

剥離網膜の特徴:眼球運動に伴い規則的・平滑・連続的な動きを示す。眼球運動停止とともに動きが止まる

硝子体膜の特徴:眼球運動に伴い不規則・粗雑・非連続的な動きを示す。眼球運動停止後もゆっくりと波打つような動きが残る(アフターモーション)

Q 網膜剥離と硝子体膜はどうやって区別しますか?
A

3つの方法を組み合わせて鑑別する。①形態的診断:剥離網膜視神経乳頭とつながり、平滑で厚みが均一な連続性のある膜として描出される。②ゲイン減衰法:ゲインを徐々に下げると硝子体膜のほうが先に消えるため、最後まで残るエコーが網膜に相当する。③眼球運動:剥離網膜は規則的・滑らかに動き、眼球静止とともに止まる。硝子体膜は眼球停止後もゆらゆらと波打つ残余運動(アフターモーション)を示す。

眼Bエコー:眼球後方の眼窩内占拠病変(13.6 mm計測)
眼Bエコー:眼球後方の眼窩内占拠病変(13.6 mm計測)
Nevit Dilmen. Eye ultrasound — orbital mass with caliper measurement (6.6 MHz, D1 13.6 mm). Wikimedia Commons. 2010. Figure 2. Source ID: commons.wikimedia.org/wiki/File:Eye_ultrasound_110318153108_1539230.jpg. License: CC BY-SA 3.0.
6.6 MHzセクタスキャンで撮像した眼球後方の眼窩内占拠病変。キャリパー計測値D1 13.6 mmが表示され、充実性腫瘤の大きさ評価が行われている。本文「臨床的意義と適応疾患」の項で扱う眼窩腫瘍スクリーニングおよび眼内腫瘍の精密検査に対応する。

Bエコーは透光体混濁眼のみならず、眼底鏡が困難な状況でも眼内・眼窩の構造情報を提供する重要な検査法として、以下の臨床場面で活用される。

  • 硝子体手術前の術前計画: 牽引膜の範囲・形状・網膜との位置関係を把握し、手術アプローチを計画する。硝子体出血合併例での網膜剥離の有無確認が特に重要である
  • 裂孔原性網膜剥離の術前評価: 剥離範囲・高さ・新鮮度・牽引の有無を評価し、バックリング硝子体手術かの選択に役立てる
  • 牽引性網膜剥離糖尿病網膜症)の術前評価: 牽引膜の広がり・黄斑部への牽引の有無を評価する
  • 眼内腫瘍の精密検査: 脈絡膜黒色腫は前縁の高輝度反射と内部の低反射性(acoustic hollowness)、脈絡膜陥凹(choroidal excavation)、しばしばマッシュルーム状(collar-stud)の形態を示し、A・Bスキャン併用での診断精度は3mm以上の腫瘍で95%と報告されている3)
  • 眼窩腫瘍のスクリーニング: 眼窩内占拠病変の存在を確認し、MRIやCTによる精査の適応を判断する1)
  • 眼内異物の検出: 金属・ガラス・木片等の異物はそれぞれ異なる超音波反射パターンを示す。金属は強い高輝度エコーと後方の音響陰影を呈し、木片は初期には低輝度、炎症後に高輝度化することがある。開放性眼外傷例における網膜剥離硝子体出血の検出感度は概ね高いが網膜裂孔の検出には限界があると報告されている4)
  • 術後経過観察: 硝子体手術後のガス・シリコーンオイルの充填状態、網膜復位の確認、増殖性変化のモニタリング

5. 関連する治療指針(検査所見と対応)

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Bエコーで確認された所見に応じて、以下の治療・精査を選択する。

Bエコー所見対応する治療・精査
裂孔原性網膜剥離硝子体手術硝子体切除・レーザー・SF6等ガスタンポナーデ)またはバックリング
牽引性網膜剥離(糖尿病)硝子体手術(牽引膜除去・シリコーンオイルタンポナーデ等)
眼内腫瘍(脈絡膜黒色腫疑い)精密検査(蛍光眼底造影・MRI・エコー詳細)→ 放射線治療(陽子線・ブラキセラピー)または眼球摘出
眼窩腫瘍疑いMRI・CT精査、生検の要否を検討
眼内異物異物の位置・材質確認の上で摘出術を検討(磁性体か非磁性体かで術式が異なる)
硝子体出血のみ(網膜剥離なし)原因検索・経過観察、出血吸収しない場合に硝子体手術

超音波Bモード検査の原理は以下のとおりである。

  • プローブに内蔵された圧電素子から超音波パルスを発射し、眼組織の界面(音響インピーダンスの不連続面)で反射した超音波を受信する
  • 受信した反射波の強度(輝度)が高いほど点の輝度を高くし、反射時間(伝播時間)から深度を算出して二次元画像を構成する
  • 輝度が高い(高輝度):音響インピーダンス差が大きい界面(強膜・石灰化・眼内異物など)
  • 輝度が低い(低輝度):均質な液体(正常硝子体前房液・囊胞など)

周波数と分解能・深達性のトレードオフ

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周波数帯域分解能深達性主な用途
30 MHz以上高い浅い前眼部(角膜虹彩水晶体)の精細観察
10〜20 MHz中程度中程度後眼部(硝子体網膜脈絡膜)の標準観察
5〜10 MHzやや低い深い眼窩内病変の評価

周波数が高いほど波長が短くなるため分解能が上がるが、組織内での減衰が大きくなり深部までの超音波到達性(深達性)が下がる。10 MHzの探触子であれば分解能は計算上約0.2 mmである。後眼部の標準評価には10 MHz前後の探触子が広く用いられ、前眼部超音波生体顕微鏡UBM)では50〜80 MHz帯の高周波探触子が使用される。

カラードプラ超音波は通常のBモード像に血流速度情報を色分けして重畳する技術である。眼窩内血管(眼動脈・中心網膜動脈・短後毛様動脈・眼静脈)の血流速度・抵抗指数(RI)を定量評価できる。緑内障では眼動脈ドプラ波形パラメータの変化が緑内障視神経障害の重症度と相関するとの報告があり、虚血性視神経症眼窩内血管病変の評価への応用が研究されている。

術中リアルタイムBモード超音波

Section titled “術中リアルタイムBモード超音波”

硝子体手術中に超音波Bモードをリアルタイムで使用することで、牽引膜の剥離状況・シリコーンオイル充填状態の確認・眼内異物の追跡に活用できる。顕微鏡下での眼底観察が困難な開放性眼外傷症例などで補助的手段として注目されている。

超音波Bモード画像の自動解析への深層学習の応用が進んでおり、InceptionV3-Xception融合モデルでは網膜剥離硝子体出血・眼内腫瘍などの分類で精度0.97、AUC 0.999が報告されている5)。将来的には検査者依存性の低減と診断均質化が期待される。

  1. Aironi VD, Gandage SG. Pictorial essay: B-scan ultrasonography in ocular abnormalities. Indian J Radiol Imaging. 2009;19(2):109-115.
  2. Lorenzo-Carrero J, Perez-Flores I, Cid-Galano M, et al. B-scan ultrasonography to screen for retinal tears in acute symptomatic age-related posterior vitreous detachment. Ophthalmology. 2009;116(1):94-99.
  3. Soliman N, Mamdouh D, Elkordi A. Choroidal melanoma: a mini review. Medicines (Basel). 2023;10(1):11.
  4. Mansoor M, Hunt MS, Binkley EM, et al. Diagnostic accuracy of B-scan ultrasonography in detecting vitreoretinal pathology after open-globe injury. Ophthalmol Retina. 2025;9(5):453-459.
  5. Li Z, Yang J, Wang X, Zhou S. Establishment and evaluation of intelligent diagnostic model for ophthalmic ultrasound images based on deep learning. Ultrasound Med Biol. 2023;49(8):1760-1767.

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