隅角後退(angle recession)
断裂部位:毛様体輪状筋(Müller筋)と縦走筋(Brücke筋)の間
特徴:毛様体が後方へ移動し、隅角が拡大して見える。
合併症:線維柱帯機能障害による遅発性眼圧上昇(隅角後退緑内障)。
隅角後退(angle recession)は、毛様体輪状筋(Müller筋)と縦走筋(Brücke筋)との間で断裂が生じ、毛様体が虹彩とともに後方へ移動した状態である。隅角解離とも呼ばれる。
隅角後退は鈍的眼外傷の合併症として生じる。前房出血を伴う鈍的外傷患者の多くに隅角後退が認められ、外傷の程度が強いほど発生率が高い。受傷後すぐに問題となるより、数年後の緑内障発症として初めて認識されることも少なくない。
隅角後退(angle recession)
断裂部位:毛様体輪状筋(Müller筋)と縦走筋(Brücke筋)の間
特徴:毛様体が後方へ移動し、隅角が拡大して見える。
合併症:線維柱帯機能障害による遅発性眼圧上昇(隅角後退緑内障)。
毛様体解離(cyclodialysis)
隅角後退そのものへの処置は特に必要としない。ただし、合併する前房出血・低眼圧の治療と、将来の緑内障発症を監視するための長期的な経過観察が必要である。眼圧上昇の可能性を患者に説明し、定期的な通院を継続させることが重要である。
隅角後退そのものによる自覚症状は特にない。症状は合併する損傷の種類と程度により異なる。
隅角鏡所見が最も重要な所見である。
その他の所見:
鈍的外力による前房内圧の急激な上昇が隅角後退の原因である。外力が眼球に加わると前房内圧が瞬間的に上昇し、最もストレスのかかる隅角部の毛様体筋層間で断裂が生じる。

隅角後退の確定診断には隅角鏡検査が必須である。受傷後の眼科的精査において、前房出血を認めた場合は常に隅角後退の合併を念頭に置く。
虹彩根部から強膜岬までの距離の増大と、毛様体部の幅広い灰色の帯が特徴的所見である。隅角後退の範囲と程度を正確に評価するには、僚眼(非受傷眼)との比較が重要となる。
前房出血が存在する間は再出血の可能性があるため、隅角鏡検査は出血が吸収されるまで避ける。
| 検査 | 目的 | 備考 |
|---|---|---|
| 隅角鏡検査 | 隅角後退の範囲・程度の評価(僚眼比較) | 前房出血中は施行禁忌 |
| 超音波生体顕微鏡(UBM) | 毛様体・虹彩根部の詳細構造評価 | 前房出血中でも施行可能 |
| 前眼部OCT | 隅角構造の非接触評価 | UBMに比べ簡便 |
| 眼圧測定 | 急性期高眼圧・慢性期緑内障の検出 | 長期的な定期測定が重要 |
| 眼底検査 | 網膜・硝子体損傷の確認 | 隅角後退と網膜損傷は合併しやすい |
隅角後退そのものへの処置は特に必要としない。治療の対象は合併する前房出血・低眼圧・隅角後退緑内障である。
低眼圧に対しては、まず保存的に薬物療法を行い、持続する場合は手術療法を行う。
薬物治療(処方例):
上記2剤の併用が基本となる。
外科的治療(薬物療法で低眼圧が持続する場合):
受傷後数年〜数十年を経て発症した隅角後退緑内障は、開放隅角緑内障に準じた治療を行う。
| 治療段階 | 選択肢 | 備考 |
|---|---|---|
| 第一選択 | プロスタグランジン(PG)関連点眼薬・β遮断薬 | 房水産生抑制または流出促進 |
| 第二選択 | 炭酸脱水酵素阻害薬(CAI)点眼・α2作動薬 | 複数薬剤の組み合わせ |
| レーザー治療 | SLT(選択的レーザー線維柱帯形成術) | 線維柱帯損傷のため効果が限定的とされる |
| 手術治療 | 線維柱帯切除術・チューブシャント手術 | 薬物治療抵抗例 |
受傷後数年〜数十年の経過で発症しうる。隅角後退の範囲が広い(特に180°以上)ほど発症リスクが高い。受傷後の低眼圧が回復した後、数年後に眼圧上昇が生じることがある。定期的な眼圧測定・視野検査・眼底検査を継続することが、早期発見のために重要である。
鈍的外力が眼球に加わると、前房内圧が急激に上昇する。その圧力により角膜輪部が伸展し、房水が後方および隅角部へ移動することで虹彩が伸展される。この一連の物理的変化が虹彩根部の損傷を引き起こす。
毛様体筋は輪状筋(Müller筋)と縦走筋(Brücke筋)、放射筋の3層からなる。鈍的外力による急激な圧力変化は、解剖学的に脆弱な輪状筋と縦走筋の間で断裂を生じさせる。この断裂が隅角後退の本態である。
外傷の瞬間に線維柱帯が物理的損傷を受ける。この損傷が房水流出障害を引き起こし、眼圧上昇へとつながる。受傷直後には顕在化しないことが多く、線維柱帯の機能的代償が低下するにつれて数年〜数十年の潜伏期間を経て発症する。
具体的な機序として以下が考えられる:
毛様体解離(cyclodialysis)を合併する場合は異なる病態を示す。毛様体が強膜から剝離すると、隅角と脈絡膜上腔が交通し房水が脈絡膜上腔へ大量流出する。その結果、著明な低眼圧・低眼圧黄斑症が生じる。毛様体解離が自然閉鎖または治療により閉鎖されると、今度は急激な眼圧上昇をきたすことがある。
前眼部OCTおよびUBMを用いた隅角後退の定量的評価法が進歩している。隅角後退の範囲・深さを客観的に数値化し、緑内障発症リスクの予測因子として活用する研究が進められている。2)
隅角後退が180°以上の症例における長期緑内障発症率を追跡した研究では、受傷後5〜10年での発症リスクが正常眼と比較して有意に高いことが示されている。隅角後退の範囲と線維柱帯への損傷程度が、緑内障発症の独立した予測因子となる可能性が検討されている。1)
低侵襲緑内障手術(MIGS)の隅角後退緑内障への適応が研究されている。線維柱帯が損傷している隅角後退緑内障では、線維柱帯を標的とするMIGSの効果が限定的となる可能性があり、脈絡膜上腔または結膜下へのバイパス経路を作成するアプローチの有効性が検討されている。