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緑内障

プラトー虹彩症候群(Plateau Iris Syndrome)

プラトー虹彩症候群は原発閉塞隅角病の一型であり、毛様体突起が前方回旋して虹彩根部を機械的に押し上げることで隅角が狭小化・閉塞する病態である1, 2, 3)前房中央深度は正常もしくは軽度浅いにとどまる一方、周辺部は極度に浅くなる。「中央深度正常・周辺浅前房」という独特な形態が本疾患の特徴である。

病態の最初の記述はPavlinらが1992年に超音波生体顕微鏡UBM)で毛様体突起の異常位置を定量的に示したことに始まる2)。近年の総説でも、前方位置した毛様体虹彩根部を押し上げる非瞳孔ブロック機序として整理されている3)。その後、日本緑内障診療ガイドライン第5版は閉塞隅角の成因を4つに分類し、相対的瞳孔ブロックに次ぐ重要な機序として本疾患を位置づけている1)

日本緑内障診療ガイドライン第5版では、用語を以下のように階層的に定義している1)

項目プラトー虹彩形態(PICプラトー虹彩症候群(PIS)
定義虹彩根部が前方に立ち上がる解剖学的形態異常LPI後も散瞳負荷で隅角閉塞が持続する病態
LPI隅角は開大する散瞳隅角閉塞が再発
治療経過観察縮瞳薬・ALPI水晶体摘出などの追加治療

さらに眼圧上昇と緑内障視神経症を伴う場合をプラトー虹彩緑内障(plateau iris glaucoma)と呼ぶ1)PICの一部がPISに該当するため、LPI施行後に散瞳負荷試験を加えて両者を鑑別する。

プラトー虹彩の頻度は対象集団によって大きく異なる。

  • 原発閉塞隅角疑い(PACS)を対象としたシンガポールのUBM研究では、約30%に毛様体突起の前方位置を認めた5)
  • 原発閉塞隅角緑内障PACG)眼におけるPIC の頻度は32〜37%と報告されている6, 7)
  • LPI施行後の原発閉塞隅角眼のうち、約3分の1で隅角接触(ITC)が持続するとの報告がある9)
  • 閉塞隅角自体が東アジア人・イヌイット集団で有病率が高く、プラトー虹彩もこれらの集団で頻繁に遭遇する。

比較的若年(40歳未満)の急性閉塞隅角発作ではプラトー虹彩を疑う必要がある。通常の原発閉塞隅角が50歳以上で多いのに対し、本疾患は若年発症の典型的な原因となる。

Q PICとPISの違いは何ですか?
A

PIC(プラトー虹彩形態)は虹彩根部が前方に位置する解剖学的特徴であり、LPI瞳孔ブロックを解除すると隅角は開大する1)。PIS(プラトー虹彩症候群)はLPI後も散瞳負荷で2象限以上の虹彩線維柱帯接触(ITC)が残存する病態であり、追加治療が必要となる9)PICの一部がPISに該当するため、LPI後に散瞳負荷試験を行って鑑別する。プラトー虹彩症候群に緑内障視神経症を伴う場合はプラトー虹彩緑内障と呼ばれる1)

プラトー虹彩症候群のUBM画像。前方回旋した毛様体と狭小化した隅角を示す。
Shamseldin Shalaby W, et al. Contemporary Approach to Narrow Angles. J Ophthalmic Vis Res. 2024. Figure 1. PMCID: PMC11022020. License: CC BY.
前眼部UBMで、虹彩根部が平坦に保たれつつ隅角が狭く、毛様体が前方へ回旋している。プラトー虹彩症候群に特徴的な解剖学的所見を示す診断画像である。

慢性閉塞隅角緑内障の病型をとることが多く、他覚的所見ほど自覚症状は目立たない。眼圧上昇や視野障害の進行により初めて気づかれることも少なくない。一方、散瞳時に虹彩根部が隅角を機械的に閉塞して急性閉塞緑内障発作を起こすこともあり、その場合は眼痛・頭痛・嘔気嘔吐・霧視・虹輪視を呈する。

前眼部所見

前房深度:中央部は正常〜やや浅い程度にとどまる。周辺部は極度に浅くなる。この「中央深度正常・周辺浅前房」がプラトー虹彩の特徴的パターンである

虹彩形状虹彩面は膨隆せず平坦または軽度前弯。虹彩根部が急峻に前方へ立ち上がり、台形状の周辺部が形成される

隅角鏡所見:ダブルハンプサイン(二重こぶ徴候)が特徴的である9)。圧迫隅角鏡検査虹彩が二峰性となる。周辺の隆起は毛様体突起に乗り上げた虹彩によるもので、中央の隆起は水晶体表面に接する虹彩で形成される

急性発作時角膜浮腫、毛様充血、中等度散瞳固定、眼圧著明上昇を呈する

画像所見(UBM)

毛様体突起の位置異常毛様体突起が通常より前方に位置し、前方回旋している2, 3, 9)。プラトー虹彩の本態そのものである

Kumarの4徴候5)UBM画像で(1)虹彩-線維柱帯接触(ITC)、(2)毛様体突起の前方回旋、(3)毛様溝の消失、(4)虹彩の後方屈曲の4所見で診断する

前房中央深度瞳孔ブロック型と異なり、中央前房深度は保たれる。虹彩中央部は平坦である

AS-OCT隅角パラメータ(AOD、TISA等)を非接触で定量評価できるが、毛様体突起の描出は困難で、UBMの補完的役割にとどまる9)

急性発作時には角膜浮腫のためUBM隅角鏡検査が困難となる場合がある。その場合はまず薬物療法や前房穿刺眼圧を下げ、角膜が透明化してから画像診断を行う。

Q 超音波生体顕微鏡とAS-OCTはどちらがプラトー虹彩の診断に有用ですか?
A

UBMがより有用である2, 9)。プラトー虹彩の本態は毛様体突起の前方回旋であり、UBM毛様体突起を直接描出できる唯一の臨床検査である2)。Kumarらの4徴候(ITC・毛様体突起前方回旋・毛様溝消失・虹彩後方屈曲)を評価することで客観的に診断できる5)AS-OCT隅角のパラメータ(AOD・TISA等)を非接触で定量評価できるが、虹彩後方の構造(毛様体突起)は描出困難である9)。両者を相補的に使用するのが理想的である。

プラトー虹彩の根本的な原因は、毛様体突起の前方位置・前方回旋という解剖学的異常である2, 3)。周辺部虹彩毛様体の先天的な形態異常に起因すると考えられており、毛様体突起が通常の位置より前方にあることで、虹彩根部を前方に押し上げ、線維柱帯を覆うように隅角を閉塞させる。

散瞳時には虹彩根部の組織が周辺部に集積する。通常の眼では毛様体溝にこの余剰組織が収納されるが、プラトー虹彩では毛様体突起が毛様溝を占拠しているため虹彩組織が隅角方向に押し出され、隅角閉塞が増悪する。

AAOのPreferred Practice Patternでは、プラトー虹彩を含む原発閉塞隅角病のリスク因子として以下が挙げられている9)

  • 年齢:比較的若年(40歳未満)での急性閉塞隅角発作はプラトー虹彩を示唆する。通常の原発閉塞隅角は50歳以上で多い
  • 性別:女性に多い
  • 眼軸長:短眼軸遠視眼に多い。ただし瞳孔ブロック型ほど眼軸が短くない症例もある
  • 角膜:小角膜に多い
  • 人種:東アジア人・イヌイット集団で閉塞隅角が多く、プラトー虹彩の頻度も高い
  • 家族歴:閉塞隅角の家族歴は重要なリスク因子である

プラトー虹彩を持つ眼は薬剤誘発性の隅角閉塞発作のリスクが高い。以下の薬剤は散瞳毛様体浮腫を介して発作を誘発しうる9)

  • 抗コリン薬(散瞳点眼薬、抗ヒスタミン薬、三環系抗うつ薬、抗パーキンソン病薬)
  • 交感神経興奮薬(エフェドリン、気管支拡張薬の吸入)
  • 選択的セロトニン再取り込み阻害薬
  • スルホンアミド系薬剤(トピラマート、アセタゾラミド、サルファ剤)

これらの薬剤使用時には前房深度や眼圧の変化に注意し、必要に応じて眼科診察を行う。

プラトー虹彩の確定診断にはLPI後の評価が必須である1, 9)LPIを行うことで瞳孔ブロック要素を除去したうえで、残存する隅角閉塞がプラトー虹彩機序によるものかを評価する。

検査役割
暗室下動的隅角第一選択の診断法。ダブルハンプサインを確認
圧迫隅角隅角閉塞が可逆か不可逆か(PASの有無)を鑑別
超音波生体顕微鏡UBM毛様体突起の前方位置・毛様溝消失を描出2, 9)
前眼部OCTAS-OCT隅角パラメータの定量評価
散瞳負荷試験・暗室うつ伏せ試験PISの誘発試験
  1. 暗室下の動的隅角鏡検査でPACS/PAC/PACGを評価し、ダブルハンプサインの有無を確認する9)
  2. UBM毛様体突起の前方位置・毛様溝消失・虹彩根部の前方屈曲を確認する2, 3, 9)
  3. LPIを施行瞳孔ブロック要素を除去する1)
  4. LPI後の動的隅角鏡検査でダブルハンプサインが残存するか評価する9)
  5. 散瞳負荷試験または暗室うつ伏せ試験LPI後も隅角閉塞が誘発されるか確認する1)

プラトー虹彩UBM所見は以下の特徴を示す2, 5, 9)

  • 中央前房深度は比較的保たれる
  • 虹彩中央部は平坦
  • 虹彩根部は肥厚し前房側に屈曲
  • 隅角底はスリット状に狭窄
  • 毛様体突起が前方へ偏位し、虹彩根部と接触
  • 毛様溝が消失

Kumarらは2008年にこれらの所見を4徴候として整理した5):(1) 虹彩-線維柱帯接触(ITC)、(2) 前方回旋した毛様体突起、(3) 毛様溝の消失、(4) 虹彩後方屈曲。この4徴候すべてを満たすものをプラトー虹彩と診断する。

PIS(プラトー虹彩症候群)の国際的診断基準は、LPI後に中央前房深度が保たれたまま、散瞳負荷時に2象限以上のITCが残存することである9)。Mansooriらのインド人集団研究では、PACG眼の約34%でこの基準を満たした7)

プラトー虹彩以外の隅角閉塞機序も同時に評価する必要がある。主な鑑別疾患を以下に示す。

  • 相対的瞳孔ブロックによる原発閉塞隅角緑内障前房全体が浅く、虹彩が前方膨隆
  • 膨隆白内障(phacomorphic angle closure)水晶体の前後径増大による前方移動
  • 水晶体亜脱臼水晶体の位置異常
  • 悪性緑内障房水誤流入による硝子体前方偏位。手術歴やUBMで鑑別
  • 虹彩後癒着による続発瞳孔ブロック
  • 虹彩角膜内皮(ICE)症候群
  • 網膜光凝固後の毛様体浮腫によるニ次性隅角閉塞

プラトー虹彩症候群の治療は段階的に行う1, 4, 9)。日本緑内障診療ガイドライン第5版では、第6章(レーザー手術)および第8章(原発閉塞隅角緑内障の治療 3-B項)でプラトー虹彩機序に対する治療が詳述されている1)

第1段階:レーザー虹彩切開術(LPI)

Section titled “第1段階:レーザー虹彩切開術(LPI)”

まずLPIを行い瞳孔ブロック要素を除去する1)。プラトー虹彩症例においてもLPI瞳孔ブロック成分を除去する目的で推奨される(推奨度1C)1)PICであればこれで隅角は開大し、以後は定期的な隅角鏡検査で経過観察する。PISであれば追加治療が必要となる。

Nd:YAGレーザー単独もしくはアルゴン+YAG併用法が標準的であり、穿孔創は色素流出が確認できる100〜200 μmの大きさに拡大する1)。術前後にアプラクロニジン塩酸塩を点眼して一過性眼圧上昇を予防する。

第2段階:縮瞳薬(ピロカルピン点眼)

Section titled “第2段階:縮瞳薬(ピロカルピン点眼)”

PIS確認後の初期治療として低濃度ピロカルピン(0.5〜1%)を用いる1, 2)。縮瞳により周辺虹彩を中心方向に牽引し、虹彩根部と隅角との距離を広げて隅角を開大させる(推奨度2C)1)。Pavlinらの1992年の報告では、ピロカルピン投与後にUBM隅角開大が確認されている2)

ただし縮瞳薬の効果は不確実で、長期使用により以下の副作用が生じる1)

  • 調節けいれん・近視
  • 縮瞳による暗所視力低下
  • 散瞳不良
  • 虹彩後癒着形成
  • 白内障進行

このため縮瞳薬は中間的治療と位置づけられ、長期管理では他の治療法への移行が検討される。

第3段階:アルゴンレーザー周辺虹彩形成術(ALPI)

Section titled “第3段階:アルゴンレーザー周辺虹彩形成術(ALPI)”

ALPIはPISに対する有効な追加治療である1, 4, 9)。周辺虹彩にアルゴンレーザーを照射して虹彩実質を熱凝固・収縮させ、虹彩根部を中心方向に引き込んで隅角を開大させる(推奨度1B)1)

日本緑内障診療ガイドライン第5版が推奨するレーザー設定は以下の通りである1)

  • スポットサイズ:200〜500 μm
  • パワー:200〜400 mW
  • 照射時間:0.2〜0.5 秒
  • 照射数:1象限あたり15発程度、1〜2列の凝固
  • 照射範囲:全周または半周の虹彩周辺部

RitchらはALPIのプラトー虹彩症候群に対する長期成績を報告し、慢性的な隅角開大効果を示している4)。主な合併症は術後一過性眼圧上昇、術後虹彩炎瞳孔偏位、角膜内皮障害である1)。ただし2021年のCochraneレビューは慢性閉塞隅角に対するlaser peripheral iridoplastyのRCTエビデンスが限られることを指摘しており16)、効果の確実性については今後の検証が必要である。

急性原発閉塞隅角発作の際のALPIは、Asia-Pacific Glaucoma Society(APGS)ガイドラインでは第一選択薬物療法の代替として推奨されている14)ALPI施行により15〜30分以内に眼圧を安全域(20〜30 mmHg台)まで低下させることが可能で、プラトー虹彩を伴う急性発作では特に有用である14)

水晶体を摘出することで前房が深化し、毛様体突起の位置が後方に移動するため隅角が開大する1, 9)白内障を合併する例では積極的に水晶体摘出を検討する。

EAGLE study(Azuara-Blancoら、2016年)10)は原発閉塞隅角症/原発閉塞隅角緑内障155例を対象とした無作為化比較試験で、早期水晶体摘出がLPIより眼圧コントロール・QOL・費用対効果のすべてで優れることを示した。この結果は閉塞隅角病全般の治療戦略を大きく変え、プラトー虹彩症候群に対しても水晶体摘出の有効性が注目されるきっかけとなった。

ただしTranらの報告では、水晶体摘出単独では一部のPIS眼で虹彩毛様体の接触(iridociliary apposition)が残存することが示されている8)。この所見を踏まえ、FrancisらやHollanderらは水晶体摘出と内視鏡下毛様体光凝固術(endoscopic cyclophotocoagulation, ECP)の併用を提唱している11, 15)ECP毛様体突起そのものを直接凝固することで前方位置を改善し、追加の隅角開大効果をもたらす。Luらのパイロット研究では、水晶体摘出+ECP群で隅角深化度がより大きいことが示されたが、術後眼圧水晶体摘出単独群と同程度であった12)

レーザー治療

LPI瞳孔ブロック要素の除去が目的1)PICとPISの鑑別の第一歩でもある。設定はNd:YAGレーザーで穿孔創100〜200 μm

ALPI:PISに対する追加治療1, 4)。アルゴンレーザー スポット200〜500 μm、パワー200〜400 mW、時間0.2〜0.5秒、1象限15発目安1)。効果は経時的に減弱する可能性がある

急性発作時:APGSガイドラインでは薬物療法の代替としてALPIの即時施行が推奨14)。15〜30分で眼圧が安全域まで低下する

手術治療

水晶体摘出術前房深化と毛様体突起の後方移動で隅角開大1, 9)白内障合併例では積極的に検討。EAGLE studyで閉塞隅角病に対する水晶体摘出の有効性が示された10)

水晶体摘出+ECP毛様体突起を直接凝固することで前方位置を改善11, 12, 15)。重症PISに対する選択肢

濾過手術:上記治療が無効で緑内障が進行する場合に考慮する1)線維柱帯切除術またはチューブシャント手術が選択される

段階的治療が無効で緑内障視神経症が進行する場合は、線維柱帯切除術またはチューブシャント手術を選択する1)。ただしプラトー虹彩症候群は房水産生と流出経路の構造的問題を抱えており、濾過手術後にも悪性緑内障などの合併症に注意が必要である。

Q ALPIの効果はどのくらい持続しますか?
A

ALPIの効果は症例により異なるが、経時的に減弱する可能性が報告されている4)。レーザーによる虹彩実質の熱凝固・収縮効果が徐々に緩和されるためである。Ritchらの長期成績ではプラトー虹彩症候群に対するALPIの有効性が示されているが4)、2021年のCochraneレビューでは慢性閉塞隅角に対するiridoplastyのRCTエビデンスは限られるとされている16)。定期的な隅角鏡検査隅角開大の維持を確認し、効果不十分の場合はALPIの追加照射や水晶体摘出術を検討する。長期的には水晶体摘出術がより確実な隅角開大効果をもたらす1, 10)

6. 病態生理学・詳細な発症機序

Section titled “6. 病態生理学・詳細な発症機序”

プラトー虹彩の病態は非瞳孔ブロック機序による隅角閉塞である2, 3)。閉塞隅角の機序は日本緑内障診療ガイドライン第5版で以下の4つに分類されている1)

  1. 相対的瞳孔ブロック:最も多い機序。虹彩-水晶体間の房水通過障害によって後房圧が上昇し、虹彩が前方に膨隆して隅角を閉塞する
  2. プラトー虹彩機序毛様体突起の前方位置・前方回旋による虹彩根部の機械的押し上げ
  3. 水晶体因子:膨隆水晶体水晶体の前方移動による隅角閉塞
  4. 水晶体後方因子悪性緑内障など、毛様体脈絡膜硝子体由来の前方圧による隅角閉塞

多くの症例ではこれらの機序が複合的に関与している。プラトー虹彩症候群とされる症例でも瞳孔ブロック機序が合併することがあり、また瞳孔ブロック型の原発閉塞隅角緑内障にプラトー虹彩機序が加わることもある。そのため厳密には「LPI後に瞳孔ブロックが解除された状態で」プラトー虹彩の診断を行う。

プラトー虹彩では毛様体突起が通常より前方に位置し、かつ前方に回旋している2, 3, 6, 7)。この異常な毛様体突起の位置関係により、虹彩根部が直接前方に押し上げられ線維柱帯に接触する。UBM研究ではPACG眼の32〜37%でこの所見を認める6, 7)

散瞳時の機序は次の通りである。通常の眼では散瞳により虹彩組織が周辺部に集積しても、毛様体溝に収納される余裕がある。しかしプラトー虹彩では毛様体突起が毛様溝を占拠しているため、余剰の虹彩組織が収納されず隅角方向に押し出され、急性隅角閉塞が発生する。

LPI虹彩を貫通する孔を作成して瞳孔ブロックを解除するが、毛様体突起の前方位置という根本原因には影響しない1)。このためPISではLPI後も隅角閉塞が残存する。眼圧下降を得るには、縮瞳薬で虹彩根部を牽引するか、ALPI虹彩実質を収縮させるか、あるいは水晶体摘出により毛様体突起の位置関係を変える必要がある。

Tranらは水晶体摘出後もプラトー虹彩症候群の一部で虹彩-毛様体接触が残存することを報告している8)。これは水晶体摘出だけでは毛様体突起の前方位置という根本問題は解決されない可能性を示唆する。このため水晶体摘出と内視鏡下毛様体光凝固術ECP)を併用することで毛様体突起を直接凝固する治療が提唱されている11, 12, 15)ECP毛様体突起の前方突出部分を凝固することにより、解剖学的正常化を図る。

Q なぜLPIだけでは隅角が開かないのですか?
A

LPI虹彩水晶体の間の圧差(瞳孔ブロック)を解除する治療である1)。プラトー虹彩では瞳孔ブロックに加えて、毛様体突起の前方回旋による虹彩根部の機械的な押し上げが隅角閉塞の原因となっている2, 3)LPI瞳孔ブロックのみを解除し、毛様体突起の位置異常には影響しないため、PISでは隅角閉塞が残存する1, 9)。残存する隅角閉塞に対してはALPIによる虹彩実質の収縮、縮瞳薬による虹彩根部の牽引、あるいは水晶体摘出による前房深化と毛様体突起の後方移動が追加治療として必要となる。

閉塞隅角の治療においてEAGLE study(Effectiveness of early lens extraction for the treatment of primary angle-closure glaucoma)10)が大きな転機をもたらした。この無作為化比較試験では原発閉塞隅角症/原発閉塞隅角緑内障に対して早期水晶体摘出がLPIより眼圧コントロール・QOL・費用対効果に優れることが示された。プラトー虹彩症候群に対しても水晶体摘出の有効性が再評価されており、水晶体除去により前房が深化し、毛様体突起と虹彩根部の位置関係が改善することで隅角が開大する1, 9)

水晶体摘出単独では毛様体突起の前方位置が改善しない症例に対して、内視鏡下毛様体光凝固術ECP)との併用療法が提唱されている11, 12, 15)。Francisら(2016年)は重症プラトー虹彩症候群6例に対する水晶体摘出+ECP(endocycloplasty: ECPL)の成績を報告し、隅角開大と眼圧コントロールの改善を示した11)。Hollanderら(2017年)も同様の併用療法の有用性を報告している15)。Luら(2021年)のパイロット研究では、水晶体摘出+ECP群で隅角深化度がより大きく、ECPの追加効果が示唆された12)。ただし術後眼圧は単独群と同程度で、長期成績の検証が今後の課題である。

急性原発閉塞隅角発作に対する治療戦略も変化している。APGS(Asia-Pacific Glaucoma Society)ガイドラインでは、従来の薬物療法を主体とするアプローチの限界を指摘し、ALPI前房穿刺(ACP)・レーザー瞳孔形成術(LPP)を即時的代替治療として推奨している14)ALPIは施行後15〜30分で眼圧を安全域まで低下させることができ、プラトー虹彩を伴う急性発作では特に有用である14)

画像診断の分野では、AS-OCTUBMの技術進歩により、閉塞隅角の機序別分類がより精密になりつつある13)毛様体突起の定量的評価、AI支援による隅角評価の自動化、スウェプトソースOCTによる広範囲の隅角描出などが研究されている。2021年のCochraneレビューでは、慢性閉塞隅角に対するiridoplastyのRCTエビデンスが依然として限られることが示されており16)、プラトー虹彩症候群に対する治療の標準化には今後の質の高い比較試験が必要である。

今後の課題として、PISに対する水晶体摘出単独と水晶体摘出+ALPI併施、あるいは水晶体摘出+ECPの長期比較、若年PIS患者に対する最適な治療戦略の確立、UBM所見に基づく個別化治療の確立などが挙げられる。

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