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角膜・外眼部疾患

治療的角膜切除術(PTK)

1. 治療的角膜切除術(PTK)とは

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治療的角膜切除術(phototherapeutic keratectomy: PTK)は、エキシマレーザー(波長193 nm)を用いて角膜表層の混濁・不整・沈着物を切除する手技である。角膜疾患における内科的治療と外科的治療の架け橋と位置づけられ、治療的および屈折矯正的な目的で使用される。

1980年代後半から1990年代初頭にかけて、エキシマレーザーは屈折矯正的角膜切除術(PRK)やLASIKに応用された。PTKは1995年に米国FDAにより前眼部角膜疾患の治療として承認された。

エキシマレーザーは光切除(photoablation)の原理で作動し、分子間結合を切断して角膜組織を蒸散させる。1パルスで約0.25 µmの組織が除去されるため、切除深度を精密に制御できる。上皮(約50 µm)を含め表面から150 µmまでの混濁が除去対象となる。用手的な角膜切除と比較して不正乱視が少なく、治療時間も短い。

Q PTKとPRK(屈折矯正的角膜切除術)はどう違うのか
A

PTKは角膜表層の混濁や不整を除去する治療目的の手技である。PRKは正常な角膜の曲率を変えて屈折異常を矯正する目的の手技である。両者とも同じエキシマレーザー(193 nm)を使用するが、レーザーの照射プロファイルと目的が異なる。

PTKは角膜前部10〜20%に混濁があり、顕著な菲薄化がない症例が最適な適応である1)

角膜変性・その他

帯状角膜変性:カルシウム沈着部をEDTAキレーション後にPTKで整形する1)

Salzmann結節変性:上皮下線維化の平滑化に有効1)

再発性角膜上皮びらん:保存的治療に抵抗する難治例の切り札となる。

水疱性角膜症:視機能回復が望めない場合の疼痛緩和目的で使用。

  • 格子状角膜ジストロフィI型では、角膜表層のアミロイド沈着が主体の場合にPTKが第一選択となる。PTKは2回程度まで施行可能であるが、再発しやすい例や混濁が実質中層より深い場合は表層・深層・全層角膜移植を選択する
  • 顆粒状・格子状角膜ジストロフィでは、PTKは最終的な深層層状角膜移植術やPKを遅延させる手段として合理的である1)。ただし術後ヘイズを生じうる
  • シールド潰瘍後の角膜混濁では、実質浅層に強い瘢痕性混濁を伴う場合にPTKが視機能・創傷治癒の両面で有利である
  • 難治性の糸状角膜炎で中央部に限局する場合もPTKの適応となる
  • 深い実質瘢痕:深い切除が必要となり、ヘイズ・遠視化のリスクが高い
  • 全身性疾患:コントロール不良の糖尿病や膠原病(関節リウマチ、SLEなど)は上皮治癒遅延の原因となる
  • 6ヶ月以内のヘルペス活動:エキシマレーザーによる単純ヘルペスウイルス再活性化のリスクがある1)
  • 角膜知覚低下:上皮治癒障害と実質融解のリスクを高める
Q どのような角膜混濁がPTKの対象になるか
A

角膜の前部10〜20%(表面から約150 µm以内)に限局する表層性の混濁が最適な対象である。深い実質瘢痕は切除量が多くなりヘイズや遠視化を招くため適応外となる。残存実質が250 µm以上確保できることが条件である。

Phototherapeutic Keratectomy image
Kymionis G, Oikonomakis K, Petrelli M, et al. Treatment of anterior corneal scarring, following DSAEK graft failure, with combined graft exchange and phototherapeutic keratectomy. Eye Vis (Lond). 2017;4:12. Figure 2. PMID: 28484724; PMCID: PMC5418814; DOI: 10.1186/s40662-017-0078-6. License: CC BY.
前眼部OCTで、治療前後の角膜表面形状と実質厚の変化を上下で比較できる。PTK が角膜表層の不整に与える影響を示す画像である。
  • 細隙灯顕微鏡検査:混濁の範囲・深さ・密度を臨床的に評価する
  • 前眼部光干渉断層計OCT角膜混濁の深さを定量的に測定する。残存実質が250 µm以上であることを確認する。上皮厚の変化もモニタリングできる
  • 角膜形状解析(トポグラフィー):不正乱視の評価と術後フォローアップに使用する。トポグラフィーガイドレーザー治療により不正乱視を軽減できる
  • 超音波生体顕微鏡UBM角膜病変を過大評価する傾向があるため、手技の計画立案には補助的な位置づけとなる

混濁の深さに応じた外科的治療選択を以下に示す1)

病変層代表疾患PTK適応
上皮不整上皮×(上皮デブリドマン)
上皮下Salzmann結節変性
Bowman膜帯状角膜変性・Reis-Bücklers
前部〜中部実質顆粒状ジストロフィ○(ALK/DALKも可)
中部〜後部実質瘢痕×(深層層状角膜移植術DALK〕/全層角膜移植術〔PK〕)

点眼麻酔(4%キシロカインまたは0.5%プロパラカイン塩酸塩)下で行う。小児では全身麻酔とする場合がある。開瞼器を装着して手技を開始する。

ホッケースティック型ナイフによる手動剥離、またはエキシマレーザーによる経上皮剥離(transepithelial PTK)のいずれかで行う。

患者に固視灯を注視させるか、手動でレーザーの中心を合わせて切除を行う。表面が粗い場合はマスキング剤(ヒドロキシプロピルメチルセルロース[HPMC] 0.7〜2%)を塗布して平滑化し、突出部のみにレーザーが当たるようにする。

目標切除量の70〜80%を照射した時点で、細隙灯顕微鏡による確認を行う。

  • 組織切除時:パチパチという音
  • マスキング液切除時:柔らかい音
  • 泡立つ音:HPMC過多のサイン
  • 暗室での蛍光:上皮切除では青い蛍光を発するが、実質切除では蛍光を生じない
  • 治療用コンタクトレンズ(BCL):シリコーンハイドロゲルレンズを上皮治癒まで装用する
  • 予防的抗菌点眼薬:フルオロキノロン系を上皮治癒まで使用する
  • ステロイド点眼薬:フルオロメトロンまたはプレドニゾロン酢酸エステルを1日4回投与し、1ヶ月かけて漸減する
  • 人工涙液:防腐剤フリー製剤を1日4〜6回使用する
  • 経口鎮痛薬:必要に応じて投与する

矯正視力は混濁密度の減少と不正乱視の軽減により改善する。フラップ作成とPTKを併用した場合、矯正視力は術後2・6・12ヶ月の各時点で有意に改善する1)

ただし中央部の切除は角膜を平坦化させ遠視化(hyperopic shift)を招く。径6 mm・深さ100 µmの照射で約1.5 Dの遠視化が生じる。

Q PTK後にどの程度の遠視化が生じるか
A

径6 mmで100 µmの照射を行った場合、約1.5 D(ジオプター)の遠視化が生じるとされる。切除が深くなるほど遠視化の程度は大きくなる。場合によってはPTKとPRKを併用して屈折変化を調整することもある。


エキシマレーザー(ArFレーザー、波長193 nm)は遠紫外線領域のレーザーである。この波長の光子エネルギーは炭素-炭素結合や炭素-窒素結合の解離エネルギーを超えるため、角膜組織の分子間結合を直接切断して蒸散させる。熱損傷が極めて少なく、周辺組織への影響が最小限に抑えられる。

帯状角膜変性においてPTKが独特な効果を発揮する理由は、石灰(カルシウム)沈着が周囲の角膜組織よりも速くアブレーションされるためである1)。ただし、この差異的アブレーションにより表面に凹凸が生じる可能性があり、マスキング剤の適切な使用が重要となる。

合併症対策・備考
原疾患の再発特に角膜ジストロフィで多い
ヘイズ(角膜混濁)MMC塗布で抑制可能1)
角膜エクタジア前部1/3超切除 or 残存<250 µm時1)
単純ヘルペスウイルス再活性化ヘルペス既往例は抗ウイルス薬予防投与1)
上皮治癒遅延自己血清点眼・羊膜で対応1)
感染性角膜上皮バリア消失に伴うリスク
遠視中央切除で不可避。照射縁の補正で軽減可能

経上皮PTKと角膜クロスリンキングの併用

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角膜クロスリンキングCXL)では上皮除去が必要であるが、PTKを用いた経上皮的上皮除去(transepithelial PTK)は角膜クロスリンキングとの併用手技として注目されている2)

角膜クロスリンキング施行時の上皮除去にPTKを用いる方法(Cretan protocol)と機械的上皮除去を比較し、PTK群がより良好な視力および屈折成績を示すことが報告された2)。PTKは単なる上皮除去にとどまらず、角膜前面の不整を整形する効果も併せ持つ。

同時併用(PTK/PRK+角膜クロスリンキング)は逐次併用(角膜クロスリンキング施行6ヶ月後にPRK)よりも有効との報告もあり2)、今後さらなるエビデンスの蓄積が期待される。


  1. American Academy of Ophthalmology Corneal/External Disease Preferred Practice Pattern Panel. Corneal Edema and Opacification Preferred Practice Pattern. San Francisco: AAO; 2024.
  2. Randleman JB, Khandelwal SS, Hafezi F. Corneal cross-linking. Open Ophthalmol J. 2018;12:181-195.

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