臨床診断
細隙灯顕微鏡検査:両眼の上皮下びまん性混濁を確認する。中央部で密度が高く周辺部で薄くなるパターンが特徴的である。
家族歴の聴取:常染色体優性遺伝に一致する家族歴との相関を確認する。
上皮下粘液性角膜ジストロフィ(subepithelial mucinous corneal dystrophy: SMCD)は、角膜上皮下への粘液(mucin)の両眼性沈着を特徴とする常染色体優性遺伝性角膜ジストロフィである。Federらが1993年に最初に報告し1、沈着物の主成分はグリコサミノグリカンであるコンドロイチン-4-硫酸とデルマタン硫酸である1。
本疾患はこれまでに3世代にわたる単一の家系でのみ確認されている1,2。国際角膜ジストロフィ分類(IC3D)第3版では、SMCDは原因遺伝子座および責任遺伝子が未同定のCategory 4に分類されている2。SMCD患者には全身性ムコ多糖症の証拠は認められない1。
SMCDは角膜ジストロフィの中でも極めてまれであり、世界中で単一の家系のみで報告されている。3世代にわたる同一家系の複数メンバーで診断が確認されているが、他の家系での報告はない。原因遺伝子座も未同定であり、疾患の全貌はまだ解明されていない。
常染色体優性遺伝形式をとる1,2。遺伝子座は未同定であり、IC3D Category 4(責任遺伝子未同定)に分類される2,3。ボウマン層直前にコンドロイチン-4-硫酸とデルマタン硫酸が蓄積する1。全身性ムコ多糖症は伴わない1。
家族歴がある場合にリスクが高まる。その他のリスク因子は特定されていない。
臨床診断
細隙灯顕微鏡検査:両眼の上皮下びまん性混濁を確認する。中央部で密度が高く周辺部で薄くなるパターンが特徴的である。
家族歴の聴取:常染色体優性遺伝に一致する家族歴との相関を確認する。
病理・特殊検査
| 鑑別疾患 | SMCDとの相違点 |
|---|---|
| 上皮基底膜ジストロフィ | 地図状・点状・指紋状病変。びらん発症は40代以降 |
| メースマン角膜ジストロフィ | 乳児期発症の露滴状上皮内嚢胞。視力低下はまれ |
| 膠様滴状角膜ジストロフィ | 桑実状外観。コンゴーレッド陽性。PKP後に再発しやすい |
その他の鑑別疾患としてリッシュ角膜ジストロフィ(X連鎖優性、羽毛状・渦巻き状パターン、びらんなし)およびライス・バックラース角膜ジストロフィ(TGFB1遺伝子変異、魚網状・花冠状混濁)がある。非典型的なライス・バックラースジストロフィではSMCDとの形態学的鑑別が困難な場合があり、TGFB1遺伝子検査や免疫組織化学染色が有用となる。
再発性角膜びらん全般に対する第一選択は防腐剤無添加の人工涙液と就寝前の潤滑眼軟膏である4。眼痛の緩和と治癒促進が目的である。局所抗菌薬、調節麻痺薬、圧迫眼帯を併用する場合がある。さらなるびらんの予防には治療用ソフトコンタクトレンズも有用で、即時的な疼痛軽減と角膜保護が得られる4。SMCDの再発性びらんは思春期以降に自然消退する点が他の上皮性ジストロフィと異なる1,2。
角膜混濁により視力が著明に低下した場合に外科的介入を検討する。
表層角膜切除術(SK):上皮下沈着物を除去する。病変が表層に限局するため適応となる1。
全層角膜移植術(PKP):角膜混濁が高度な場合に施行する。Federらの原報告では後房眼内レンズ挿入と同時にPKPを行った1例で両眼2ライン以上の視力改善が報告されている1。術後の疾患再発は確認されていない1。
治療的レーザー角膜切除術(PTK):SMCDに対する明確な施行例の報告はないが、病変が表層性であるため理論的に適応となりうる2。ただしPTK後は病理組織学的染色による診断確定ができない点に留意する。
角膜上皮下にデルマタン硫酸およびコンドロイチン-4-硫酸が沈着する1,2。沈着物は中央部で密度が高く周辺部に向かって薄くなる1。前部実質へ局所的かつ不規則に伸展する1。上皮基底膜とは区別される均一なエオジン好性の層として観察される1,2。
上皮下沈着物が上皮の正常機能を妨げ、上皮の接着不良を引き起こす1。これにより小児期に再発性角膜びらんが生じる1。再発性角膜びらんでは一般に角膜上皮と基底膜の接着不良が根底にあり、ヘミデスモゾームの減少や基底膜の断裂が関与する4。
光学的透明性の喪失と角膜の正常な屈折曲率の乱れにより、数十年にわたる進行性の視力障害が生じる1。Federらの原報告では検査された最高齢の患者(初診時71歳と82歳)で最も顕著な視力障害が認められている1。