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ぶどう膜炎

若年性特発性関節炎に伴うぶどう膜炎

1. 若年性特発性関節炎に伴うぶどう膜炎とは

Section titled “1. 若年性特発性関節炎に伴うぶどう膜炎とは”

若年性特発性関節炎(Juvenile Idiopathic Arthritis; JIA)は、16歳未満の小児に発症する原因不明の慢性関節炎の総称である。かつては若年性関節リウマチとも称された。国際リウマチ学会ILAR基準により7病型(全身型・少関節炎・RF陰性多関節炎・RF陽性多関節炎・乾癬性関節炎・付着部炎関連関節炎・分類不能)に分類される。このうち全身型・少関節型・RF陰性多関節型・RF陽性多関節型の4病型は従来の若年性関節リウマチ(JRA)に相当し、JIAの94%を占める。

慢性ぶどう膜炎はJIAの最も重要な眼合併症であり、小児ぶどう膜炎の中で最も頻度が高い原因疾患である。小児の全ぶどう膜炎の41〜47%を占める。1) ぶどう膜炎は関節炎発症後に現れることが大半だが、3〜7%では関節炎より先に発症する。発症までの期間の中央値は5.5か月であり、関節炎発症後5〜7年以内に発症することが多く、特に82〜90%は最初の4年以内に発症する。3)

ぶどう膜炎合併率はJIAの病型によって大きく異なる。

JIAサブタイプぶどう膜炎合併率リスク
持続性少関節炎41〜46%
RF陰性多関節炎5〜23%中〜高
乾癬性関節炎10〜36%
付着部炎関連関節炎7〜25%
全身型0%
3)

少関節型に約20%、多関節型に約5%がみられ、全身型では発症しないとされる。Nordic コホートでは全JIA患者の10〜22%にぶどう膜炎が合併することが確認されている。3)

Q 若年性特発性関節炎関連ぶどう膜炎はなぜ見落とされやすいのか?
A

初期には充血・痛み・羞明といった自覚症状がほとんどなく、「White uveitis」と形容されるほど静かに進行する。特に幼小児では自覚症状の訴えが乏しく、診察が困難なこともある。細隙灯顕微鏡による定期的なスクリーニングなしに発見することは非常に困難である。

若年性特発性関節炎関連ぶどう膜炎の眼所見。後癒着、角膜後面沈着物、右眼の黄斑浮腫を示す。
Mahendradas P, et al. Reactivation of juvenile idiopathic arthritis associated uveitis with posterior segment manifestations following anti-SARS-CoV-2 vaccination. J Ophthalmic Inflamm Infect. 2022. Figure 1. PMCID: PMC9043884. License: CC BY.
前眼部写真で後癒着による不整瞳孔角膜後面沈着物がみられる。眼底写真とOCTでは右眼の混濁と嚢胞様黄斑浮腫が示され、若年性特発性関節炎に伴うぶどう膜炎の臨床所見を示している。

JIA関連ぶどう膜炎の最大の特徴は初期の無症状性である。

  • 無症状(大多数)充血眼痛羞明を欠くことが多い。これが長期間の診断の遅れにつながる。
  • 霧視視力低下:炎症が進行し合併症(白内障黄斑浮腫)が生じた段階で初めて気づくことが多い。
  • 頭位異常・集中力低下:幼児に特有の症状として現れることがある。
  • 例外:HLA-B27陽性の男児では急性再発性前部ぶどう膜炎として充血眼痛羞明を呈する。

JIA関連ぶどう膜炎の97.8%は前部ぶどう膜炎虹彩毛様体炎)の形態をとり、両眼性・非肉芽腫性が典型である。2) 眼科受診時にはすでに多くの合併症を有していることが多い。

帯状角膜変性

発生頻度:症例の約32%

慢性炎症による角膜中央部への石灰沈着。視力障害の原因となる。EDTAキレーション・エキシマレーザーで治療する。

虹彩後癒着

発生頻度:症例の約28%

虹彩水晶体の癒着。発見時からすでに存在することが多く、瞳孔ブロックの原因となる。散瞳薬による予防が重要。

併発白内障

累積発症率:0.05/眼年

長期の炎症とステロイド使用により発症(約22%)。活動炎症制御下での白内障手術が必要。

続発緑内障

累積発症率:0.03/眼年

15%に認める。JIA関連ぶどう膜炎で特発性ぶどう膜炎より高頻度。視力予後不良の主要因。2)

そのほか、前部硝子体の炎症細胞・嚢胞状黄斑浮腫(3%)・低眼圧(9%)・視神経炎網膜血管炎の報告もある。大規模コホートでは、初診時にすでに3分の1が視力障害を有していたと報告されている。帯状角膜変性後発白内障緑内障の合併症は累積約67%の症例に発症することが報告されている。

Q 子供が痛がらないのにぶどう膜炎と言われました、放置してよいですか?
A

放置すると視力を失う危険性がある。JIA関連ぶどう膜炎はまさに「痛くないぶどう膜炎」の代表疾患(White uveitis)であり、症状がないままで炎症が続いて帯状角膜変性白内障緑内障が進行する。無症状でも定期的に眼科受診を続けることが視力を守るための唯一の手段である。

JIA関連ぶどう膜炎は自己免疫機序による慢性炎症疾患であり、その発症には環境要因と複数の遺伝子の相互作用が関与する。炎症性サイトカイン(IL-1・IL-6・TNF-α)の過剰産生が病態形成に中心的役割を果たす。関節滑膜においてはパンヌスと呼ばれる肉芽組織が形成され、ぶどう膜においても同様の炎症カスケードが持続的に活性化される。

ぶどう膜炎発症のリスク因子(Nordic guideline 2023)3)

  • 若年発症:JIA発症時6歳未満で特にリスク高い。
  • 抗核抗体(ANA)陽性ぶどう膜炎合併例の約80%が陽性。発症リスクが最大45%に上昇。
  • 特定のサブタイプ:持続性少関節炎・RF陰性多関節炎・乾癬性関節炎。
  • 罹病期間が短い:発症初期4年以内に82〜90%が発症。
  • HLA-DR5、HLA-DR11関連遺伝素因

保護因子ぶどう膜炎発症リスクを有意に低下させる)3)

  • メトトレキサート(MTX):ハザード比 HR 0.14〜0.63。
  • モノクローナルTNF阻害薬アダリムマブ:HR 0.09(単独またはMTX併用)。
  • エタネルセプト(TNF受容体阻害薬)は保護効果なし:TNFモノクローナル抗体とは機序が異なるため効果を発揮しない。

JIA患者に対するぶどう膜炎の診断はスクリーニング検査中に行われることが多い。無症状の段階での発見が視力予後の改善に直結する。

  • 細隙灯顕微鏡検査前房炎症・角膜後面沈着物・虹彩後癒着を評価。
  • 眼圧測定:高眼圧低眼圧を確認。
  • 視力検査:年齢に応じた方法で実施。幼児では麻酔下での検査が必要なこともある。
  • 散瞳眼底検査黄斑浮腫視神経変化を評価。
  • OCT光干渉断層計:嚢胞状黄斑浮腫の検出。
  • 抗核抗体(ANA):陽性(1:40以上)はぶどう膜炎リスクを大きく高める。少関節型では抗核抗体陽性率が高く、ぶどう膜炎合併例では約80%が陽性を示す。
  • リウマチ因子(RF):RF陰性多関節型のリスク層別化に有用。少関節型では低陽性率。
  • HLA-B27:付着部炎関連関節炎で陽性となりやすく、急性再発性前部ぶどう膜炎と関連。
  • 赤沈・CRP:全身型では亢進するが、少関節型では正常の場合が多い。

スクリーニング間隔(リスク別)

Section titled “スクリーニング間隔(リスク別)”

リスク層別化の基準にはJIAサブタイプ・ANA陽性・発症年齢・罹病期間を組み合わせる。3, 4)

リスク層主な基準スクリーニング頻度
高リスク少関節炎+ANA陽性+発症≤6歳+罹病<4年3か月毎
中リスク上記の一部を満たす6か月毎
低リスク全身型・RF陽性多関節炎・ERA・発症>6歳12か月毎(2年間のみ)
  • MTX・モノクローナルTNF阻害薬投与中はスクリーニング頻度を減らせる。3)
  • 16歳以降は自己モニタリングへ移行するが、Nordic コホートでは434例中12例が23歳時点での発症も報告されている。3)

関節炎とぶどう膜炎を合併する疾患として以下を鑑別する:強直性脊椎炎・Reiter症候群・乾癬性関節炎・サルコイドーシス・炎症性腸疾患・若年性サルコイドーシス(EOS)・Blau症候群・TINU症候群

Q どれくらいの頻度で眼科受診が必要ですか?
A

リスクによって異なるが、高リスク(少関節型かつANA陽性かつ6歳未満発症かつ罹病期間4年未満)では3か月毎のスクリーニングが推奨される。3, 4) 中リスクでは6か月毎、低リスク(全身型・RF陽性多関節炎など)では12か月毎の2年間観察が目安となる。担当の小児リウマチ専門医・眼科医と連携して個別に間隔を設定することが重要である。

JIA関連ぶどう膜炎の管理は通常、小児リウマチ専門医と眼科医との共同管理を必要とする。炎症の長期コントロールが合併症予防と視力保護の根本となる。ぶどう膜炎診療ガイドラインでは、局所治療から始め、難治例には免疫調節療法生物学的製剤の段階的導入を推奨している。8)

  • ベタメタゾン(リンデロン)0.1%点眼:1日4〜6回(活動期)。炎症の急性コントロールに用いる。
  • デキサメタゾン点眼:同等の効果を示す。
  • 散瞳薬(ミドリンP点眼):1日1〜3回。虹彩後癒着の予防と瞳孔管理を行う。炎症が落ち着いている時期は散瞳薬のみで経過観察する。
薬剤用量・用法位置づけ
メトトレキサート(MTX)10〜15 mg/m²/週(皮下または経口)第一選択。ぶどう膜炎発症リスク HR 0.14〜0.63
アダリムマブ体重<30kg: 20mg/2週、≥30kg: 40mg/2週(皮下)MTX不応例への第二選択。SYCAMORE試験で有効性確立
インフリキシマブ5 mg/kg、0/2/6週後8週毎(点滴)難治例への選択肢
トシリズマブ(IL-6阻害薬)JIA関節炎への保険適用ありぶどう膜炎へはエビデンス蓄積中
エタネルセプトぶどう膜炎には無効(TNF受容体阻害薬のため)

**メトトレキサート(MTX)**は若年性特発性関節炎関連ぶどう膜炎免疫調節療法の第一選択である。5) 効果発現には4〜12週を要する。27〜48%の症例ではMTX単独では炎症コントロールが不十分であり、20%が副作用(嘔吐・肝機能障害)を経験する。2)

アダリムマブはMTX不応例の第二選択として位置づけられる。SYCAMORE試験(Ramanan 2017)は二重盲検RCTであり、MTX単独群と比較してMTX+アダリムマブ併用群での治療失敗率を60%から27%に有意に減少させた(P<0.0001)。6) 小児非感染性ぶどう膜炎への保険適用がある。モノクローナルTNF抗体であるため、TNF受容体阻害薬のエタネルセプトと異なりぶどう膜炎への保護効果を持つ。3)

ADJUVITE試験(Quartier 2018)はアダリムマブの早期慢性JIA関連前部ぶどう膜炎に対する二重盲検RCTである。7) 早期導入のメリットを示した研究として位置づけられる。

TNF阻害薬の導入に際しては、結核・HBVスクリーニング・感染症評価を事前に行うことが必須である。眼炎症学会会員の眼科医と連携した投与管理が求められる。9)

  • 帯状角膜変性:EDTAキレーション・エキシマレーザー切除。
  • 併発白内障超音波乳化吸引術+眼内レンズ挿入(炎症コントロール確認後に実施)。幼小児では眼内レンズを挿入せずコンタクトレンズ矯正を選択する場合もある。弱視予防のため術後後嚢切開と前部硝子体切除を併施する。
  • 続発緑内障房水産生抑制点眼。難治例では線維柱帯切開術・切除術・Baerveldt implantを検討。
Q アダリムマブは必ず使わないといけないのですか?
A

必ずしもそうではないが、SYCAMORE試験(Ramanan 2017)で治療失敗率をMTX単独の60%から27%に有意に低下させた強いエビデンスがある。6) まずMTXを用い、十分な炎症コントロールが得られない場合にアダリムマブの併用を検討する段階的なアプローチが現在の標準的考え方である。子どもの将来の視力を守るため、必要と判断された場合には積極的な治療が推奨される。

6. 病態生理学・詳細な発症機序

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JIA関連ぶどう膜炎の病態は完全には解明されていないが、免疫学的機序が主体と考えられる。

細胞性免疫:CD4+T細胞(Th17優位)がぶどう膜組織に浸潤し、IL-17・IL-6・TNF-αを産生する。炎症性サイトカインの過剰産生が血管内皮透過性を亢進させ、虹彩毛様体の浮腫・炎症細胞浸潤を持続させる。関節滑膜ではパンヌス形成→軟骨・骨破壊という経路をたどるが、発熱・倦怠感・貧血・成長障害などの全身症状も誘導される。

自己抗体との関連:抗核抗体(ANA)陽性はぶどう膜炎合併例の約80%に認められる。HLA-DR5(DRB1*1101)・HLA-DR11との関連が少関節型で報告されている。自己抗原特異的T細胞反応・補体古典経路の活性化も関与する。

関節炎との病態解離:関節炎症状の沈静化後もぶどう膜炎が独立して遷延することがある。異なる炎症経路で持続するため、関節炎が落ち着いていても継続的な眼科モニタリングが必要である。

慢性炎症の結果として生じる主な組織変化:

  • 帯状角膜変性(32%):カルシウムが角膜上皮下のボーマン層に沈着。
  • 虹彩後癒着(28%):虹彩水晶体の線維性癒着により瞳孔ブロックが生じる。
  • 続発白内障(22%):炎症とステロイドの双方が水晶体混濁を引き起こす。
  • 続発緑内障(15%):全周性虹彩後癒着による房水流出障害、ステロイド緑内障
  • 嚢胞状黄斑浮腫(3%):視力予後に影響する重篤な合併症。

7. 最新の研究と今後の展望(研究段階の報告)

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Ramanan ら(2017)による二重盲検RCTは、MTX単独群 vs MTX+アダリムマブ群において、アダリムマブ群で治療失敗率を27%対60%(P<0.0001)に抑制することを示した。6) この試験が小児非感染性ぶどう膜炎に対するアダリムマブの承認根拠となった。試験中止基準を設定しつつ長期追跡データも蓄積されている。

Cann ら(2018)によるブリストル地区の後方視的研究では、166名の小児非感染性ぶどう膜炎患者において、生物学的製剤の使用率は35%に達し、視力喪失発生率(logMAR>0.3)は0.05/眼年、重度視力喪失(logMAR≥1.0)は0.01/眼年であった。2) これは生物学的製剤導入前の0.10/眼年より改善しており、治療進歩の成果を示している。

Foeldvari ら(2023)による多国間作業グループ(MIWGUC)の最新推奨では、MTX不応のJIA関連ぶどう膜炎に対する早期のアダリムマブ導入と、エタネルセプトをぶどう膜炎治療として選択しないことを明確に勧告した。10)

ルキソリチニブ・トファシチニブなどのJAK阻害薬の難治性JIA関連ぶどう膜炎への有効性が症例報告・小規模シリーズで報告されているが、現時点では確定的なエビデンスは得られていない。

Nordic コホートではJIA患者の16歳以降の成人移行後にも発症例が確認されており(434例中12例が23歳時点での新規発症)、小児期から成人期へのシームレスな連携が課題となっている。3) MTXおよびMMFは催奇形性を有するため、妊娠可能年齢の女性への薬剤選択においてはアダリムマブが比較的安全な選択肢とされる。


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  8. 日本眼炎症学会ぶどう膜炎診療ガイドライン作成委員会. ぶどう膜炎診療ガイドライン. 日眼会誌. 2019;123(6):635-696.
  9. 日本眼炎症学会 TNF阻害薬使用検討委員会. 非感染性ぶどう膜炎に対するTNF阻害薬使用指針および安全対策マニュアル(改訂第2版、2019年版). 日眼会誌. 2019.
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