コンテンツにスキップ
屈折矯正

円錐角膜用ハードコンタクトレンズ(RGPレンズ)

硬性ガス透過性コンタクトレンズ(rigid gas permeable lens; RGP/HCL)は、酸素透過性素材からなる硬質コンタクトレンズであり、円錐角膜・外傷後・角膜不正乱視に対して涙液レンズ効果による光学的矯正を発揮する。

ソフトコンタクトレンズ(SCL)は角膜形状になじんで変形するため不正乱視の矯正能が低い。一方、HCLは装用中に眼表面との間に安定した涙液層(涙液レンズ)を形成し、角膜不正をマスキングして良質な光学面を提供する。Rabinowitz(1998)の円錐角膜総説によれば、不正乱視の矯正においてRGPレンズが基盤的な光学矯正手段として確立されている9)。Romero-Jiménez et al.(2010)のレビューも、円錐角膜管理においてRGPの処方が中心的役割を果たすことを確認している10)

角膜乱視が-3.0 Dを超える症例や円錐角膜が疑われる症例では、SCLである程度視力が出ても、HCLと比較して見え方の質が落ちる。また、円錐角膜が進行するとSCLでは十分な視力が出なくなるが、その段階ではHCLへの切り替えが困難となる症例も多い。初めてCLを処方する際には、患者の将来的なQOLを考慮してHCL処方を積極的に行うことが重要である。

Q 円錐角膜の診断後、コンタクトレンズはいつから必要になりますか?
A

円錐角膜の初期段階では眼鏡で矯正できることもありますが、不正乱視が進行すると眼鏡では十分な視力が得られなくなります。その段階でHCL(RGPレンズ)が第一選択となります。円錐角膜が進行してからSCLで間に合わせると、後にHCLへの切り替えが困難になる場合があるため、早期に眼科専門医を受診し処方を受けることをお勧めします。

円錐角膜患者がHCL処方の対象となる段階では、以下の自覚症状が典型的にみられる。

  • 視力のぼやけ・ゆがみ:不正乱視による視力低下。眼鏡では矯正困難になる。
  • 単眼複視・重複視:不整な角膜面による光の散乱で複数の像が見える。
  • 眩しさ・ハロー・グレア:夜間の光周囲の輪状・放射状の光の乱れ。
  • コンタクトレンズの装用困難:進行した円錐角膜でSCLの視力矯正が不十分になる。
  • 頻繁な眼鏡度数の変化:進行とともに近視乱視が急速に増加する。

重度の円錐角膜では裸眼視力が指数弁(CF)まで低下する場合があり、強膜レンズにより20/30への改善が達成されたとの報告もある(Almaweri 2025)4)。Romero-Jiménez et al.(2010)のレビューでも、円錐角膜の進行段階に応じたコンタクトレンズ選択の体系が論じられている10)

HCL装用に伴う合併症の臨床所見

Section titled “HCL装用に伴う合併症の臨床所見”

HCL装用眼で特徴的な合併症所見を以下に示す。

3時9時染色

部位角膜輪部の3時・9時方向に限局

原因:瞬目時にHCLが約2mm上下動し、3時・9時方向から涙を吸い込む際に局所乾燥が生じる

経過:軽症は3〜5日で治癒。びらんに進行した場合は約1週間を要し角膜混濁を残しうる

角膜浸潤・感染性角膜潰瘍

機械的刺激による非感染性浸潤:軽度の充血と周辺角膜の白い混濁

感染性角膜潰瘍充血・眼脂・疼痛の三徴を伴う。原因菌として緑膿菌・ブドウ球菌が多い。AAO細菌性角膜炎PPP(2024)1)に基づいた培養検査と抗菌点眼の早期開始が重要

要注意充血・眼脂・疼痛がすべてそろった場合は感染性角膜炎を疑い即受診

その他のHCL関連所見として、固着時のレンズエッジ圧痕、偽樹枝状角膜炎(ヘルペス角膜炎との鑑別が必要)なども報告されている。

すべてのCLは角膜知覚を低下させる(hypoesthesia)。知覚低下によりCL装用者は角膜障害の初期症状を自覚しにくい場合があるため、定期検診が特に重要である。

乱視の種類主な原因CL選択
規則乱視角膜前面由来)角膜形状の規則的変化トーリックSCLまたはHCL
不正乱視円錐角膜・外傷後・角膜移植HCLの涙液レンズが有効。SCLは不適
強度角膜乱視(≥-3.0 D)円錐角膜・外傷SCLでは見え方の質が低下。HCL推奨

円錐角膜でHCLが困難になるリスク

Section titled “円錐角膜でHCLが困難になるリスク”

円錐角膜の進行に伴い以下の状況でHCL装用が困難になる。

  • 錐の偏心・非対称化が進むとセンタリング不良・脱落が頻発する
  • 頂点クリアランスが不十分になりHCLが角膜頂点に直接接触する(中央タッチ)
  • 高度進行例(Amsler-Krumeich Grade 3〜4;Kmax >55 D、角膜厚 <400 μm)では適切なフィッティングが極めて困難になる
  • 角膜瘢痕が出現した場合は視力改善が限定的になる

このような症例では強膜レンズへの移行を検討する。Almaweri(2025)は重症円錐角膜(Kmax 69.3 D)において強膜レンズで裸眼CF→矯正20/30への改善を報告している4)

  • 瞬目時の機械的刺激:HCLは瞬目のたびに約2 mm上下動し、3時・9時方向の涙液を吸い込む。この局所乾燥が点状表層角膜症を引き起こす。
  • 感染リスク:レンズケース内バイオフィルム形成が感染性角膜炎の主因。定期的なケース交換が必須。
  • 角膜知覚低下:HCL長期装用で角膜知覚が低下し(hypoesthesia)、障害の初期症状を自覚しにくくなる。

円錐角膜へのHCL処方では、通常のケラトメトリーが信頼できないため、以下の検査を組み合わせる。

検査目的円錐角膜での特記事項
角膜形状解析(トポグラフィ)頂点位置・形状の確認頂点のずれがフィッティングに直接影響
前眼部OCT(Itoi Method)BFS値によるBC選択ケラトメータが不信頼な症例に特に有効
ケラトメトリー通常症例のBC選択円錐角膜では参考にならないことが多い
Pentacam角膜トモグラフィーKmax値・最薄部角膜病期評価と強膜レンズ移行の判断に有用。重度例(Kmax 69.3D)でも強膜レンズで視力改善が可能4)
角膜内皮細胞密度装用適格性の判定強膜レンズ検討時は1000 cells/mm²以上が必要5)

前眼部OCT(CASIA、トーメーコーポレーション)に内蔵されたCL処方プログラム「Itoi Method」では、傍中心部から周辺部を含めた角膜形状を反映したBFS(best fit sphere)値を用い、レンズ径8.5 mm・8.8 mm・9.4 mmそれぞれでのファーストトライアルレンズを表示する。ケラトメータ値が参考にならない円錐角膜・不正乱視症例においても有効である。

ケラトメータ値を使用できる通常症例では以下の3通りの方法がある。

角膜乱視が大きい円錐角膜症例では、ステープなフィッティングになりやすいため、弱主経線値R1に近い値を選ぶとよい。最終的にはフィッティングパターンを確認しながらBCとサイズをtrial and errorで決定していく。

フィッティングのアプローチ:頂点クリアランス型(apical clearance)vs 頂点タッチ型(apical touch)

円錐角膜のHCLフィッティングには大きく2つのアプローチがある。

アプローチ特徴適応
頂点クリアランス型コーン頂点を浮かせてクリアランスを保つ。フルオレセインで頂点部に緑色の貯留軽〜中等度。頂点への機械的刺激を最小化
頂点タッチ型(三点タッチ)コーン頂点・中間周辺・最周辺の3点でサポート。センタリングが安定しやすい進行例。ただし頂点刺激で瘢痕形成リスク

最近では頂点クリアランス型を推奨する施設が多く、頂点への機械的刺激による角膜瘢痕・ニップル形成を防ぐため、微量のクリアランスを維持するフィッティングが好まれる。Yıldız Taşcı et al.(2023)の比較研究では、進行した円錐角膜においてRGPとハイブリッドCLの矯正視力に有意差はなく、患者のライフスタイルと耐用性に応じた選択が適切とされている8)

強膜レンズへの移行を検討する基準:

  • Kmax ≥56 D(重症円錐角膜
  • 角膜最薄部厚 ≤450 μm
  • HCLによる適切なフィッティングが得られない
  • HCL装用時の疼痛・角膜上皮障害が繰り返す
  • 頂点瘢痕が明瞭で中央タッチが避けられない

Almaweri(2025)の報告では、Kmax 69.3 Dの重症例においても強膜レンズで20/30への視力改善が達成されており4)、手術を回避する選択肢として有力である。

円錐角膜眼に装用したRose K2 RGPレンズ:細隙灯所見(a)とコバルトブルー光フルオレセイン染色パターン(b)
円錐角膜眼に装用したRose K2 RGPレンズ:細隙灯所見(a)とコバルトブルー光フルオレセイン染色パターン(b)
Yıldız Taşcı Y, Saraç Ö, Çağıl N, Yeşilırmak N. Comparison of Hybrid Contact Lenses and Rigid Gas-Permeable Contact Lenses in Moderate and Advanced Keratoconus. Turk J Ophthalmol. 2023;53(3):142-148. Figure 2. PMCID: PMC10286838. DOI: 10.4274/tjo.galenos.2022.82754. License: CC BY.
進行円錐角膜眼に装用したRose K2 RGPレンズの細隙灯所見(a)およびコバルトブルー光によるフルオレセイン染色パターン(b)。(b)では角膜頂点部(コーン中央)に緑色のフルオレセイン貯留(クリアランス)が確認され、周辺部は涙液層が薄い暗帯として描出されている。このパターンがRGPフィッティング評価の基準となる頂点クリアランス型(apical clearance)の典型所見である。本文「診断と検査方法」の項で扱うフルオレセインによるフィッティング評価に対応する。

フィッティング検査は最初に低倍率で行い、染色をせずに瞼裂幅とHCLのバランスを確認する。フルオレセイン染色でフィッティングを確認するが、涙が多すぎると判定を誤るため、涙が収まるまで待つか点眼麻酔薬を併用して適正な涙量になってから判定する。

BCと角膜曲率の関係はレンズが中央にあるときの位置関係で判定する。

追加矯正の球面度数が±3.0〜4.0 Dを超える場合は、角膜頂点間距離(12 mm)の影響が生じる。角膜頂点間距離補正表を用いた計算が必要である。

HCLのフィッティングパターンによっては涙液がレンズのような役割を果たし(涙液レンズ効果)、BCを変更した場合に球面度数が変化する点にも注意する。BCを0.05 mmフラットにすると涙液レンズは凹レンズ(-0.25 D)として働き、0.05 mmステープにすると凸レンズ(+0.25 D)として働く。

Q LASIK後に白内障手術を受けると屈折誤差が多いと聞きましたが、RGPレンズでも問題がありますか?
A

LASIK後のRGPレンズ処方では、角膜前面の平坦化によりBC選択が通常と異なります。角膜形状解析で実際の形状を把握した上でフィッティングを行う必要があります。ケラトメータ値だけに依存せず、前眼部OCTを活用することで適切なフィッティングが可能になります。

  1. 角膜形状解析:トポグラフィーまたは前眼部OCTでBFS値を取得
  2. ファーストトライアルレンズ決定:Itoi Method等で径8.5/8.8/9.4 mmの候補を選択
  3. 試験装用フルオレセインパターンで確認(涙が安定してから評価)
  4. フィッティング調整:BCと径をtrial and errorで調整
  5. オーバーレフラクション:追加矯正度数を決定。角膜頂点間距離補正を考慮
  6. 最終度数決定・処方

HCLの基本的なケアは洗浄とすすぎである。通常は消毒は必要ないとされているが、オルソケラトロジーレンズのような複雑な形状のレンズではHCLでも消毒が推奨される。

通常のケアで落ちにくい汚れには専用クリーナーの併用が推奨されるが、研磨剤入りクリーナーは一部のHCLに使用できないため注意が必要である。コンタクトレンズ関連感染性角膜炎の早期診断・治療は感染性角膜炎診療ガイドライン(第3版)11)に基づいて行う。Sonsino and Mathe(2013)は強膜レンズ装用時の角膜クリアランス管理についての指針を示している12)。Barnett and Johns(2017)の強膜レンズの理論と応用も処方の参考となる13)。Visser et al.(2007)は強膜レンズの臨床特性について、AAO角膜拡張症PPP(2024)7)円錐角膜管理のエビデンスに基づく推奨を提供している15)

円錐角膜眼に装用したAirFlexハイブリッドコンタクトレンズ:細隙灯所見(a)とコバルトブルー光フルオレセイン染色パターン(b)
円錐角膜眼に装用したAirFlexハイブリッドコンタクトレンズ:細隙灯所見(a)とコバルトブルー光フルオレセイン染色パターン(b)
Yıldız Taşcı Y, Saraç Ö, Çağıl N, Yeşilırmak N. Comparison of Hybrid Contact Lenses and Rigid Gas-Permeable Contact Lenses in Moderate and Advanced Keratoconus. Turk J Ophthalmol. 2023;53(3):142-148. Figure 1. PMCID: PMC10286838. DOI: 10.4274/tjo.galenos.2022.82754. License: CC BY.
進行円錐角膜眼に装用したAirFlexハイブリッドコンタクトレンズの細隙灯所見(a)およびコバルトブルー光によるフルオレセイン染色パターン(b)。(b)では中央の硬性ゾーン下に緑色の貯留(角膜頂点へのクリアランス)が確認され、外周のソフトスカートとの境界部が円環状に描出されている。ハイブリッドレンズはRGP単独では装用困難な症例に対してRGP適性を保ちながら安定性を高める選択肢である。本文「標準的な治療法」の項で扱う強膜レンズ移行前の代替選択肢に対応する。

HCLでは対応困難な進行した不正乱視円錐角膜症例に対し、強膜コンタクトレンズが有力な選択肢となる。強膜レンズは角膜全体を円蓋状に覆い強膜上に接地する硬性ガス透過性レンズであり、レンズと角膜の間に液体貯留部(fluid reservoir)を形成する6)

特徴HCL強膜レンズ
接地部位角膜強膜結膜
異物感初期は大きいHCLより少ない
角膜保護直接接触あり液体貯留部で保護
不正乱視矯正有効より高度な不正乱視にも対応
日本での使用一般的自費・専門施設限定

846眼の研究では強膜レンズ使用により角膜移植が必要となったのはわずか1.65%であり、進行した円錐角膜でも角膜移植を回避できる可能性がある4)

BostonSight PROSE(Prosthetic Replacement of the Ocular Surface Ecosystem)は1994年にFDA承認を取得した高度カスタマイズ可能な義眼デバイスによる治療モデルである3)。最大8つの独立した子午線で仕様指定が可能であり、市販の強膜レンズの2〜4子午線に比べ複雑な眼表面形状に対応できる3)

強膜レンズは自費診療として一部の専門施設で処方が可能であり、眼類天疱瘡・スティーブンス・ジョンソン症候群などの重症ドライアイにも使用されている6)。TFOS DEWS III管理・治療報告(2025)では重症ドライアイ管理における強膜レンズの位置づけが記述されている6)。Schornack and Patel(2010)は円錐角膜における強膜レンズ管理の実践的指針を提示しており15)角膜移植回避の治療戦略として有用な参考資料となる。AAO角膜浮腫・混濁PPP(2024)2)角膜移植適応の判断基準として参照される。

BostonSight PROSE(1994年FDA承認)3)などの高度カスタマイズ可能な強膜レンズは、専門的な訓練を受けたスタッフが複数回の診察をかけてフィッティングを行う。

一般的な強膜レンズの処方フローは以下のとおりである。

  1. 評価角膜形状解析前眼部OCT角膜内皮細胞密度(1,000 cells/mm²以上が必要)5)・涙液評価
  2. 初期トライアル:直径16〜18mmの標準デザインから開始。フルオレセイン前眼部OCTでクリアランスを評価
  3. カスタマイズ:ランディングゾーンのカーブを調整し、圧迫・気泡のない安定したフィッティングを目指す
  4. 装用トレーニング:着脱の練習。特に脱却が困難な場合はプランジャー等の補助器具を使用
  5. 定期フォロー:3〜6か月ごとに角膜内皮密度・クリアランス変化を確認

ミッドデイフォギング対策:フィッティング中の気泡混入を最小化し、SmartChannels設計のレンズを使用することで改善が期待できる6)。充填液の交換も効果的である。Visser et al.(2007)の臨床特性報告では、1年装用継続率が73%であり、中止の主因は着脱困難であることが示されている14)

Q IOL交換はいつまでに行えばよいのか(強膜レンズ移行の場合)
A

円錐角膜でHCLが装用困難になった場合、強膜レンズへの移行が推奨されます。進行した円錐角膜(Amsler-Krumeich Grade 4)でも、強膜レンズにより裸眼視力(指数弁)から矯正視力20/30への改善が達成されたと報告されています4)。移行のタイミングはHCLのフィッティングが困難になった時点で眼科専門医に相談してください。

6. 病態生理学・詳細な発症機序

Section titled “6. 病態生理学・詳細な発症機序”

HCL装用時、レンズ前面が安定した光学面を提供し、レンズ後面と角膜前面の間に涙液レンズが形成される。この涙液レンズが角膜不正乱視を補正することでHCLの矯正効果が発揮される。

強膜レンズの3ゾーン構造は以下のとおりである。

  1. 光学部(オプティックゾーン):前面は光学矯正を担う球面または非球面設計。後面と角膜前面の間に液体貯留部(fluid vault)を形成。
  2. ランディングゾーン(ハプティック)角膜輪部強膜上に接地する周辺部。レンズの安定性・センタリングを担う。SmartChannels(放射状溝)は涙液交換を促進する。
  3. エッジゾーン:ランディングゾーン外縁。眼表面との圧迫を最小化する設計。

液体貯留部のクリアランスは一般に200〜500 μmが適切とされる。装着後数時間で結膜組織への沈み込みにより約100〜150 μm減少するため、初期設定では変化を考慮する必要がある。Sonsino and Mathe(2013)は装着後のクリアランス変化を測定し、適切な初期設定の重要性を報告している12)

高Dk材料(Dk 141〜180)と低中心厚(CT 0.30〜0.35 mm)の組み合わせにより角膜への酸素供給を最大化する3)

瞬目時のHCLと眼表面の摩擦が上皮障害を引き起こす。HCLでは瞬目のたびにレンズが約2 mm上下に移動し、3時・9時方向から涙液を吸い込む。この際に当該部位の涙液が枯渇し点状表層角膜症が生じる。レンズエッジの機械的刺激が加わると角膜びらん角膜浸潤に進行する。

レンズケース内のバイオフィルム形成は感染性角膜炎の重要なリスク因子であり、レンズケースの定期交換が予防の要となる。

  1. 装用前:レンズを専用クリーナーでこすり洗いし、生理食塩水でよくすすぐ
  2. 装用後:洗浄後、専用保存液に保存する(水道水・蒸留水は使用不可)
  3. レンズケース管理:毎日使用後に専用液でケースをすすぎ、逆さにして乾燥させる。1〜3か月ごとに交換する
  4. 特殊クリーナー:タンパク除去の週1回処置。研磨剤入りクリーナーはレンズ素材によって使用不可のものがあるため確認が必要
  5. 緊急時対応:眼脂・充血・疼痛・視力低下が出現した場合は即座に装用を中止し、感染性角膜炎を疑って当日受診する1)

円錐角膜に合併する感染性角膜炎では、角膜の構造的脆弱性から急速に進行するリスクがあるため、早期受診・早期培養・早期抗菌治療が視力予後改善の鍵となる。

強膜レンズの液体貯留部を薬剤送達プラットフォームとして活用する研究が進行している。bevacizumab(抗VEGF薬)の貯留部充填による角膜血管新生の改善や、シクロスポリン0.05%のドライアイ治療への応用が報告されている6)

SmartChannels(ハプティック後面の放射状溝)は涙液交換を促進しレンズ下の吸引圧を軽減する設計である3)。フェネストレーション(直径0.25〜0.50 mmの小孔)による空気換気も角膜内皮機能不全を伴う症例に使用されている。

強膜レンズはスティーブンス・ジョンソン症候群・シェーグレン症候群・慢性眼部GVHD・露出性角膜症(CPEO)にも有用とされ、OSDI(Ocular Surface Disease Index)スコアの劇的な改善(95.83→4.17)が報告されている5)。KID症候群においても、PROSE装用により角膜上皮プラークの退縮と眼表面の長期安定が維持された3)

Visser et al.(2007)の強膜レンズの臨床特性に関するレポートでは、装用継続率と患者満足度の高さが報告されており14)、進行した不正乱視症例での生活の質向上に貢献している。

ハイブリッドコンタクトレンズ

Section titled “ハイブリッドコンタクトレンズ”

RGP単独では装用困難な症例に対し、中央RGP+周辺ソフトスカートのハイブリッドコンタクトレンズも選択肢となる。Yıldız Taşcı et al.(2023)の比較研究では、中等度・進行円錐角膜においてRGPとハイブリッドCLの矯正視力が同等であることが示された8)。ハイブリッドCLはRGPより異物感が少なく装用感に優れる場合がある。

強膜レンズのミッドデイフォギング(midday fogging:日中の視力低下現象)は涙液貯留部内の残渣蓄積が原因であり、SmartChannelsの追加と適切なフィッティングが対策となる6)強膜レンズのドライアイ管理における使用を支持する質の高い比較研究は現時点では不足しているとされ6)、今後の前向き長期研究が期待される。AAO角膜拡張症PPP(2024)7)では円錐角膜の管理においてコンタクトレンズが中心的役割を果たすことが明記されており、RGPから強膜レンズまでの段階的アプローチが推奨されている。

  1. American Academy of Ophthalmology. Bacterial Keratitis Preferred Practice Pattern. Ophthalmology. 2024;131(2):P265-P330.
  2. American Academy of Ophthalmology. Corneal Edema and Opacification Preferred Practice Pattern. Ophthalmology. 2024.
  3. Gagliardi M, Asghari B. Two cases of therapeutic scleral lenses for KID syndrome. Am J Ophthalmol Case Rep. 2025;37:102261.
  4. Almaweri A. Avoiding Surgery: Successful Management of a Patient With Severe Keratoconus Using Scleral Contact Lenses. Cureus. 2025;17(8):e90263.
  5. Erdinest N, Shemesh N, London N, et al. Chronic Progressive External Ophthalmoplegia (CPEO): Rehabilitation utilizing scleral contact lenses. Am J Ophthalmol Case Rep. 2025;39:102411.
  6. Tear Film & Ocular Surface Society. TFOS DEWS III Management and Therapy Report. Am J Ophthalmol. 2025;279:72-178.
  7. AAO Corneal/External Disease PPP Panel. Corneal Ectasia Preferred Practice Pattern. San Francisco: American Academy of Ophthalmology; 2024.
  8. Yıldız Taşcı Y, Saraç Ö, Çağıl N, Yeşilırmak N. Comparison of Hybrid Contact Lenses and Rigid Gas-Permeable Contact Lenses in Moderate and Advanced Keratoconus. Turk J Ophthalmol. 2023;53(3):142-148.
  9. Rabinowitz YS. Keratoconus. Surv Ophthalmol. 1998;42:297-319.
  10. Romero-Jiménez M, Santodomingo-Rubido J, Wolffsohn JS. Keratoconus: a review. Cont Lens Anterior Eye. 2010;33:157-166.
  11. 感染性角膜炎診療ガイドライン作成委員会. 感染性角膜炎診療ガイドライン(第3版). 日眼会誌. 2024.
  12. Sonsino J, Mathe DS. Central corneal clearance in patients successfully wearing scleral lens for keratoconus. Optom Vis Sci. 2013;90:e272-e278.
  13. Barnett M, Johns LK. Contemporary Scleral Lenses: Theory and Application. Bentham Science Publishers; 2017.
  14. Visser ES, Visser R, van Lier HJ, Otten HM. Modern scleral lenses part I: clinical features. Eye Contact Lens. 2007;33:13-20.
  15. Schornack MM, Patel SV. Scleral lenses in the management of keratoconus. Eye Contact Lens. 2010;36:39-44.

記事の全文をコピーして、お好みのAIに貼り付けて質問できます