早期手術の実施
手術時期:臨界期前の早期手術が視力予後に最も大きく影響する。形態覚遮断弱視が成立してしまうと治療は困難となる。
先天白内障は、狭義には生下時より認められる水晶体の混濁を意味する。一方、生下時に混濁がなく後に発生する混濁を発達白内障という。しかしながら、乳幼児期で外傷などの要因がない白内障を総称して先天白内障と呼ぶことも多い。本記事では発達白内障を含む広義の先天白内障を扱う。
小児白内障は形態覚遮断弱視の主要な原因となりうる。視機能獲得の臨界期に水晶体混濁が存在すると、急速に弱視が形成される。片眼性の臨界期は生後6週、両眼性では生後10〜12週であり、この時期に適切な手術を行うかどうかが予後を大きく左右する。
片眼性の小児白内障の原因の多くは特発性である。両眼性では遺伝性や全身疾患関連の割合が高くなる。
| カテゴリ | 具体的疾患・原因 |
|---|---|
| 特発性 | 30〜50%(全体の最多) |
| 遺伝性 | 常染色体優性遺伝(最多)、常染色体劣性遺伝、伴性劣性遺伝 |
| 代謝異常 | ガラクトース血症、低カルシウム血症、低血糖症、糖尿病、Fabry病、Wilson病、ホモシスチン尿症 |
| 染色体異常 | Down症候群(21トリソミー)、13・15・18トリソミー症候群 |
| 全身症候群 | Lowe症候群、Alport症候群、筋緊張性ジストロフィー、アトピー性皮膚炎、Hallermann-Streiff症候群、Pierre Robin症候群 |
| 子宮内感染 | 先天風疹症候群、サイトメガロウイルス、トキソプラズマ症、ヘルペス |
| 薬剤性 | ステロイド(長期全身投与) |
| 眼疾患合併 | 胎生血管系遺残(PFV)、先天無虹彩、網膜色素変性、コロボーマ、未熟児網膜症、小眼球 |
| 外傷 | 眼球打撲・穿通外傷 |
白内障の形態と混濁の位置・程度が視機能への影響と手術適応を左右する。
| 混濁型 | 英語名 | 混濁部位 | 視力への影響 |
|---|---|---|---|
| 囊白内障 | capsular cataract | 前囊・後囊・囊下 | 後囊型は影響大 |
| 極白内障 | polar cataract | 前極・後極 | 後極型は影響大 |
| 核白内障 | nuclear cataract | 胎生核 | 粉状なら影響小 |
| 層間白内障 | zonular cataract | 皮質の層状 | 左右差があれば影響大 |
| 点状白内障 | punctate cataract | 点状 | 影響小 |
| 縫合(軸性)白内障 | sutural cataract | Y字縫合部 | 影響小 |
| 完全白内障 | total cataract | 完全混濁 | 影響大 |
点状白内障・縫合白内障・前囊白内障は視力障害を生じない。左右差のない層間白内障や粉状の核白内障も形態覚遮断弱視を形成しないため、早期手術は不要である。
視機能への影響度は一般に「前囊側より後囊側」「周辺部より中心部」「混濁が淡いより濃い」ものが大きい。片眼性では3mm以上の混濁が視機能に影響すると判断する。
小児期は視機能獲得時期であり、この時期の白内障は形態覚遮断弱視のリスクをもっている。
臨界期の概念
臨界期は片眼性で生後6週、両眼性で生後10〜12週である。臨界期に視機能に影響する白内障があると、片眼性では特に急速に形態覚遮断弱視が成立する。
弱視形成を示唆する所見
白内障の診断と視機能への影響評価を同時に行う。
鑑別:白色瞳孔の最重要鑑別は網膜芽細胞腫(Retinoblastoma)であり、必ず除外する。
手術適応は、患児の年齢・実際の不便度・視力・白内障の程度・形態覚遮断弱視の状態・眼合併症・全身合併症の有無・保護者の理解と協力・希望などを総合的に判断して決定する。
積極的に手術適応となる場合
形態覚遮断弱視を形成する可能性が高い白内障で、重度の弱視がまだ成立していない場合。
手術を急がない場合
小児白内障手術の基本術式は年齢によって異なる。
6歳未満の標準術式:水晶体(乳化)吸引術+後囊切除+前部硝子体切除
6歳未満では、水晶体上皮細胞の活性が高く後発白内障がほぼ100%に生じる。また細隙灯顕微鏡下でのNd:YAGレーザー施行が困難なため、一次手術時に後囊切除と前部硝子体切除を施行して後発白内障を可能な限り予防することが基本となる。
IOL挿入を行う場合:水晶体(乳化)吸引術+後囊切除+前部硝子体切除+IOL挿入術
6歳以上で後囊温存可能な場合:水晶体(乳化)吸引術+IOL挿入術
IOL挿入の適否についてはInfant Aphakia Treatment Study(IATS)が重要な指針を示している。生後6か月以内の片眼性白内障手術例に対してIOL挿入とコンタクトレンズ管理を比較した無作為前向き試験であり、4歳6か月時の視力の差は認められなかった。一方、IOL挿入眼では1歳未満に再手術を必要とする視軸混濁が有意に多く生じた。結論として、生後6か月以内のIOL挿入はコンタクトレンズ管理が困難な場合など限られた症例に行うべきとされる。
IOL度数は20歳頃に軽度の近視になるよう選択することが多い。成長に伴う近視シフトを見越した意図的な遠視矯正を行い、1歳時で+5D、2歳時で+4Dを目安として遠視側に設定する。
小児へのIOL挿入では、現行の度数計算式の予測精度は成人と比較して著しく低い。108眼83例の小児初回IOL挿入における度数計算式の精度比較では、SRK/TとKane formulaが平均誤差・中央絶対誤差ともに最良の成績を示した1)。
低年齢・短眼軸長が屈折サプライズの有意な予測因子であり、手術方法やIOLの種類は精度に有意な影響を与えなかった1)。小児専用のIOL度数計算式の開発が求められている。
片眼性術後では健眼の遮閉療法が必須である。
小児では水晶体上皮細胞の活性が高く、水晶体囊を完全に除去しないため、ほぼ100%に前(後)囊切開縁の収縮やElschnig pearls型の後発白内障が生じる。6歳未満ではNd:YAGレーザー施行が困難なため、一次手術時に後囊切除+前部硝子体切除を施行して予防することが基本となる。前部硝子体切除を併施した場合の視軸混濁発生率は18%(95%CI 8〜28%)であり、非併施の60%(95%CI 0〜84%)と比較して有意に低かった2)。
小児白内障術後に緑内障が高率に発症する。多くは開放隅角緑内障であり、危険因子として手術時の低年齢・小眼球などの眼合併症が挙げられる。術後10年以上経過してからも発症するため、長期にわたる眼圧のフォローアップが必須である。
PFV関連白内障の5年成績を分析したPEDIG registryの報告では、無水晶体PFV眼の緑内障関連有害事象5年累積発生率は24%(95%CI 9〜37%)であった2)。偽水晶体PFV眼では7%(95%CI 0〜20%)と低く、PFV眼と非PFV眼の緑内障リスクに有意差はなかった(年齢調整HR=1.20、P=.66)2)。
PFV関連白内障64眼(無水晶体眼48眼・偽水晶体眼16眼)の5年成績2):
| 指標 | PFV無水晶体眼 | PFV偽水晶体眼 |
|---|---|---|
| 緑内障関連有害事象(5年累積) | 24%(95%CI 9〜37%) | 7%(95%CI 0〜20%) |
| 視軸混濁(前部硝子体切除あり) | 18%(95%CI 8〜28%) | — |
| 視軸混濁(前部硝子体切除なし) | 60%(95%CI 0〜84%) | 45%(95%CI 13〜66%) |
| 網膜剥離(5年累積) | 4%(95%CI 0〜10%) | 7%(95%CI 0〜19%) |
年齢相応の視力達成は全体の10%(4/42眼、95%CI 3〜23%)にとどまった。20/200より良好な視力を達成したのは無水晶体PFV眼59%(95%CI 39〜76%)、偽水晶体PFV眼23%(3/13眼)であった2)。後方型PFV(硝子体・網膜・視神経異常を伴う)は前方型より視力予後が不良な傾向を示した(視力中央値 20/800 vs 20/100)2)。
早期手術の実施
手術時期:臨界期前の早期手術が視力予後に最も大きく影響する。形態覚遮断弱視が成立してしまうと治療は困難となる。
眼合併症の有無
術後矯正と弱視治療
継続管理:術後の適切な屈折矯正と遮閉療法の継続が視力予後を大きく左右する。保護者の理解と協力が不可欠である。
長期フォローアップ
経過観察:術後緑内障は術後10年以上経過してからも発症する。成人になっても定期的な眼圧測定を継続する必要がある。