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緑内障

アクセンフェルト・リーガー症候群

1. アクセンフェルト・リーガー症候群とは

Section titled “1. アクセンフェルト・リーガー症候群とは”

アクセンフェルト・リーガー症候群(Axenfeld-Rieger syndrome; ARS)は、前眼部形成異常と全身異常を組み合わせた先天性疾患群である。根本病因は神経堤細胞の遊走・分化の異常とされている。胎生末期に前房を覆う未分化内皮細胞が虹彩隅角から正常に消失する過程が障害され、その遺残が索状物形成や虹彩高位付着を引き起こす。

歴史的背景として、1920年にAxenfeldが後部胎生環(Schwalbe線の前方偏位・肥厚)と虹彩突起を記述した。1934〜1935年にRiegerが虹彩低形成・瞳孔偏位・多瞳孔症を追加報告した。現在は以下の3段階で分類されている。

  • Axenfeld異常:肥厚し前方に突出したSchwalbe線(後部胎生環)に周辺虹彩が索状癒着するもの
  • Rieger異常:さらに虹彩実質の形成不全で瞳孔偏位・ぶどう膜外反・偽多瞳孔を呈するもの
  • Rieger症候群(ARS):歯牙異常・顔面骨異常など全身異常を伴うもの

これらを総括してアクセンフェルト・リーガー症候群と呼ぶ。50〜60%に緑内障を併発し、常染色体優性遺伝で通常は両眼性である。高率に白内障水晶体位置異常も合併する。

疫学については、有病率は約1/200,000とされてきたが、最近の報告では1/50,000〜100,000との推計もある2)4)。性差はなく、乳幼児期に診断されることが多い。

遺伝型分類は以下の通りである。

ARS 1型

原因遺伝子:PITX2(4q25)

主な異常:前眼部異常、歯牙異常、臍周囲の余剰皮膚・臍帯ヘルニア、頭蓋顔面異常、心血管異常

ARS 2型

原因遺伝子:13q14(未確定)

主な異常:前眼部異常、緑内障。全身異常は1型・3型より少ない

ARS 3型

原因遺伝子:FOXC1(6p25)

主な異常:前眼部異常、緑内障、感音性難聴、心房中隔欠損、腎異常、白質病変

FOXC1とPITX2の変異がARSの40〜70%を占める5)。ただしARSの60%では原因遺伝子が未同定であり4)、遺伝的多様性は大きい。

小児・若年発症緑内障の大規模レジストリ解析では、分子診断率は56.5%であった11)。FOXC1変異が20.3%、PITX2変異が17.4%、PAX6変異が10.1%を占め、既知遺伝子で説明できない症例も少なくない11)

Q ARS 1型・2型・3型はどのように区別されますか?
A

原因遺伝子で区別される。1型はPITX2(4q25)変異で歯牙・臍・顔面骨の異常を伴う。3型はFOXC1(6p25)変異で難聴・心欠損・腎異常・神経異常を伴う。2型は13q14にあるが原因遺伝子は未確定で、前眼部異常と緑内障が主体である。遺伝子検査で確定診断できる。

ARS患者(OD/OS)の前眼部写真。黄矢印:後部胎生環(全周性)、青矢印:虹彩角膜癒着・虹彩萎縮・裂孔形成、赤矢印:角膜白斑、緑矢印:虹彩水晶体嚢癒着
Gong X, Lei X, Li Z, et al. Identification and functional study of a novel FOXC1 missense mutation in a Chinese family with Axenfeld-Rieger syndrome. Sci Rep. 2025;15(1):19957. Fig. 1B. PMID: 40481210; PMCID: PMC12144153; DOI: 10.1038/s41598-025-04872-x. License: CC BY.
両眼(OD/OS)の前眼部写真。黄矢印は輪部全周に分布する後部胎生環、青矢印は虹彩角膜癒着と虹彩萎縮・裂孔形成を示す。本文「2. 主な症状と臨床所見」の項で扱う後部胎生環・虹彩角膜癒着に対応する。
  • 羞明まぶしさ虹彩異常・偽多瞳孔症による光の乱入が原因。加齢とともに悪化することがある。
  • 視力低下緑内障が進行した場合に顕著となる。
  • 無症状の場合あり:乳幼児期は症状を自覚・訴えられず、健診や偶発的に発見されることも多い。

眼所見の主要項目を以下に示す。

眼所見特徴
後部胎生環Schwalbe線の前方偏位・肥厚
虹彩突起細糸状〜幅広帯状
瞳孔偏位後部胎生環の反対方向へ偏位
偽多瞳孔虹彩実質の穿孔様外観
ぶどう膜外反虹彩色素上皮の翻転

後部胎生環は、Schwalbe線部に未分化細胞が残存したもので、輪部から0.5〜2.0 mm中央寄りに輪部に沿って線状に認められる。全周性ではなく一部に限局することが多い。突出したSchwalbe線と虹彩が癒着すればAxenfeld異常、さらに虹彩実質の萎縮を伴えばRieger異常と呼ばれる。

角膜は通常透明で内皮構造も正常であるが、遺残組織との物理的接触により二次的に角膜混濁を生じうる。角膜混濁は周辺部に限局することが多く、視力に直接影響しないことが一般的である。ただしFOXC1変異では角膜混濁・角膜血管新生がより顕著であり、PITX2変異と比較して角膜異常の程度が大きく緑内障の頻度も高い1)

隅角所見では虹彩高位付着、索状ぶどう膜遺残、Schwalbe線肥厚(後部胎生環)を認める。小球状水晶体水晶体亜脱臼を合併する例も報告されている7)

緑内障は50〜60%に合併する。乳児期より眼圧上昇が生じる場合もあるが、ほとんどが小児期〜若年期に発症する。進行性視力低下を契機に診断される例もあり、前眼部所見と緑内障性変化を見逃さないことが重要である6)

Li et al.(2021)の7歳男児例(ARS 3型、de novo FOXC1変異)では、角膜径14mm、眼軸長27.16/26.56mm、C/D比0.9、IOP 33/20mmHgを呈した。生後36日から両眼の抗緑内障手術が必要であった5)

全身所見は以下の通りである。

  • 頭蓋顔面異形成眼窩間離解、内眥間距離延長、上顎低形成(鞍鼻)、広く平坦な鼻梁、薄い上唇、突出した下唇3)
  • 歯牙異常:小歯症、乏歯症、欠損歯、齲蝕しやすいエナメル質1)
  • 臍部の余剰皮膚・臍帯ヘルニア:臍周囲皮膚の過剰が特徴的8)
  • 心血管異常:心房中隔欠損、心弁膜異常5)2)
  • 感音性難聴:特にFOXC1変異(3型)2)4)
  • 下垂体異常・成長ホルモン欠損症
  • 白内障水晶体位置異常
Q ARSで緑内障が合併する確率はどの程度ですか?
A

ARSの約50〜60%に緑内障が合併する。小児期から若年期にかけて発症することが多いが、乳幼児期から眼圧上昇を来す例もある。定期的な眼圧測定視神経評価が必要であり、詳しくは「標準的な治療法」の項を参照されたい。

ARSは常染色体優性遺伝を示し、浸透率は完全である。ただし同一家系内で同じ遺伝子変異を持っていても、臨床像に大きな個人差(variable expressivity)が生じる1)

  • PITX2(4q25):1型の原因遺伝子。眼・歯・腹壁臓器の発達に関与するペアード様ホメオドメイン転写因子3)。PITX2変異者ではARSとして同定される例が多く、FOXC1変異者より緑内障発症が遅い傾向がある9)
  • FOXC1(6p25):3型の原因遺伝子。フォークヘッドボックス転写因子で、眼・心・腎・脳の発達に関与5)2)。かつてFKHL7として報告された遺伝子であり12)、80種以上の変異が報告されている5)。FOXC1変異者ではPITX2変異者より若年で緑内障を発症しやすく、乳幼児期から先天緑内障として発見される場合がある9)
  • PAX6(11p13)無虹彩症との関連が知られている。
  • FOXO1A(13q14):2型候補遺伝子。
  • CYP1B1:変異を伴うARS例の報告あり。

大規模コホート研究では、FOXC1とPITX2の変異が小児期から成人期まで幅広い緑内障スペクトラムと関連した9)。臨床的にPCG(原発先天緑内障)と初診された症例が遺伝子検査により再分類されることもあり、乳幼児の前眼部所見が微妙な場合には遺伝子検査が正確な病型診断に寄与する。

PITX2遺伝子周辺の微小欠失を有する例では、NEUROG2・UGT8・NDST4の欠失が重なることで発達遅滞・知的障害を合併しうる8)3)

Kawanami et al.(2023)は、4q25に2.5Mbの微小欠失(PITX2・NEUROG2・ANK2を含む)を有する3歳日本人男児を報告した。臍帯ヘルニア・虹彩コロボーマ・発達遅延を呈したが、ANK2欠失にもかかわらず心電図は正常であった。NEUROG2のハプロ不全が発達遅滞の原因候補とされた8)

Q 親がARSの場合、子どもに遺伝する確率はどの程度ですか?
A

常染色体優性遺伝のため、変異を持つ親からの遺伝確率は50%である。浸透率は完全だが表現型には個人差があり、同じ変異でも症状の重さが大きく異なりうる1)。遺伝子検査と遺伝カウンセリングの受診が推奨される。

ARSの診断は両眼性の隅角異常・虹彩異常に基づく。後部胎生環(posterior embryotoxon)に周辺虹彩が一部付着していることが診断の条件とされる13)。細隙灯顕微鏡で後部胎生環が確認できない例では隅角鏡検査が必要である。全身異常を認める場合はARS症候群として小児科への全身精査を依頼する13)

なお、正常人口の8〜15%に軽微な後部胎生環が見られるが、これ単独では緑内障等を伴わない。家族歴の聴取も診断において重要である。

緑内障診療ガイドライン(第5版)における小児緑内障の分類体系では、ARSは先天眼形成異常に関連した緑内障の代表例として位置づけられている13)。出生時から存在する眼形成異常が小児緑内障の診断基準を満たす場合に診断される。

  • **次世代シーケンシング(NGS)**によるパネル検査が用いられる5)
  • **全ゲノムシーケンシング(WGS)**で大規模欠失・複合再配列も検出可能3)
  • 非典型例やChandler症候群との鑑別で遺伝子検査が重要1)
  • FOXC1変異を有する乳児では原発先天緑内障(PCG)と初診される例があり9)、遺伝子検査で正確な病型診断が可能となる

ARSと鑑別すべき主な疾患を示す。

疾患ARSとの相違点
ICE症候群片眼性・後天性・女性優位
Peters異常角膜中央部混濁・Descemet膜欠損
無虹彩症角膜パンヌス・中心窩低形成
後部多形性角膜ジストロフィ両眼性・家族性・性差なし

ICE症候群(進行性虹彩萎縮症・Chandler症候群など)はARSとの鑑別が重要であるが、ICEは片眼性・後天性であるのに対し、ARSは両眼性・先天性である点が最大の鑑別点となる。

ARSそのものの根治療法は現在存在せず、緑内障の管理と全身合併症のサーベイランスが治療の中心となる。治療方針は早発型発達緑内障原発先天緑内障:PCG)に準じる13)

緑内障はARS症例の約50〜60%に合併する。薬物治療は一般の緑内障に準じて行われるが、無効なことも多い。

房水産生抑制薬

β遮断薬:第一選択の一つ。安全かつ有効だが小児では無効なことも多い。

炭酸脱水酵素阻害薬(CAI)点眼ブリンゾラミドなど。β遮断薬との併用も可。

α2作動薬(ブリモニジン):2歳未満には精神神経症状(無呼吸・徐脈・低血圧・筋緊張低下・中枢抑制)のため禁忌である13)

房水流出促進薬

プロスタグランジン関連薬:ラタノプロスト、トラボプロストなど。小児での効果は成人に比し弱いとされる13)

実例:7歳男児例ではトラボプロスト+ブリンゾラミドで長期管理5)。77歳男性例ではラタノプロスト・チモロール+ブリンゾラミドでもIOP 35mmHgと制御困難であった2)

プロスタノイドFP受容体作動薬とβ遮断薬では効果に差はないという報告がある13)

乳幼児では体重・体表面積に比して点眼薬の投与量が相対的に多くなるため、可能な限り低濃度薬剤から使用すべきである13)

薬物治療で眼圧制御が得られない場合、手術を行う10)13)

  • 隅角手術(隅角切開術・線維柱帯切開術隅角が開放していて周辺虹彩前癒着PAS)による線維柱帯被覆範囲が広くなければ第一選択。虹彩前癒着の少ない部位を選んで切開することで成功率が高まる。ただし成功率はPCGより低い13)
  • 線維柱帯切除術(マイトマイシンC併用)眼圧下降率82〜95%。2年長期成功率は約59%。晩期眼内炎リスクは7〜8%。
  • 房水ドレナージデバイス(GDD)隅角手術に無効な場合に第一選択となることもある13)。小児緑内障を対象としたメタ解析では、12ヶ月時成功率87%、24ヶ月時77%、48ヶ月時54%であった14)。術後平均IOPは12ヶ月時16.5mmHg、24ヶ月時17.6mmHgであった14)
  • 毛様体破壊術:難治例への最後の手段。成功率は低く、再治療必要性・合併症率ともに高い。
  • マイクロパルス毛様体光凝固術:PITX2欠失を有するARS児例で眼圧コントロールが得られた報告がある3)

GDD術後の合併症として、前房浅在化13.6%、低眼圧11.7%、脈絡膜滲出8.3%、眼内炎1.7%が報告されている14)

Chakraborty et al.(2022)は、ARS合併網膜剥離(15歳男児)の1例を報告した。小球状水晶体水晶体亜脱臼を伴い、硝子体手術後にIOP 41mmHgへ上昇し強膜瘤を形成した。ダイオード毛様体光凝固術を施行し最終的にIOP 18mmHgが得られた7)

  • 屈折矯正角膜乱視遠視が高度の場合があり、眼鏡などによる屈折矯正を行う。角膜混濁は周辺部に限局するため、通常は視力に影響しない。
  • 着色コンタクトレンズ虹彩萎縮・多瞳孔症による羞明の軽減に有効
  • 弱視の予防:小児期から定期的な眼科管理が必要
  • 角膜移植PKP:FOXC1変異による高度な角膜混濁がある場合に視力改善を目的として施行される1)
  • 集学的サーベイランス緑内障・難聴・心疾患・内分泌・歯科・頭蓋顔面の専門的フォローが必要5)
Q ARSに合併する緑内障の手術成功率はどの程度ですか?
A

隅角手術の成功率はPCGより低い13)。MMC併用線維柱帯切除術では2年長期成功率は約59%、GDDでは12ヶ月時87%・24ヶ月時77%と報告されている14)。難治例では複数回の手術が必要となることがある。

6. 病態生理学・詳細な発症機序

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ARSの根本的な病因は、神経堤細胞の遊走・分化の欠陥である。前房・前眼部隅角・顔面骨・歯・心血管系・臍周囲皮膚において神経堤細胞の発育が障害されることで多臓器の形成不全が生じる。

胎生末期に前房を覆う未分化内皮細胞は、正常であれば虹彩隅角から消失する。ARSではこの消失過程が障害され、未分化内皮細胞が虹彩上に遺残して索状物形成を引き起こす。隅角では虹彩高位付着を生じ、線維柱帯を機械的に被覆する。

組織学的には、角膜後面から前房隅角虹彩表面にかけてデスメ膜様の膜を伴う内皮様細胞の単層が異常に広がる。ぶどう膜外反・瞳孔偏位を伴う象限に膜が存在し、反対側の象限では虹彩萎縮が認められる。

FOXC1とPITX2はともに転写因子であり、特定のDNA配列に結合して下流遺伝子の発現を調節する。両者は前眼部発生において相乗的に作用し、共通の下流標的遺伝子を調節する3)。FOXC1のフォークヘッドドメイン(110アミノ酸のDNA結合ドメイン)が機能的に最重要であり2)、このドメインの変異は神経精神症状とより強く関連することが示唆されている。

眼圧上昇の機序として以下の2つが指摘されている。

  • 虹彩前癒着による機械的閉塞虹彩高位付着が線維柱帯を機械的に被覆する。虹彩の付着位置が高い眼ほど緑内障を伴いやすい。
  • 隅角部の形成不全:Schlemm管・線維柱帯を含む房水流出路の発達不全。傍Schlemm管結合組織が肥厚してSchlemm管下に厚く存在し、線維柱帯の細胞間隙を占めることで房水流出を障害する。

虹彩欠損の程度・隅角虹彩突起の量は、緑内障重症度と必ずしも相関しない。ただし隅角虹彩癒着の程度が高度だと緑内障になりやすい。

FOXC1変異は他の変異と比較して先天緑内障をより促進し1)毛様体・排出隅角の形態異常がIOP上昇に関与する可能性がある1)

FOXC1変異マウスでは、角膜実質のコラーゲン線維の減少・構造異常と角膜実質細胞の障害が観察される1)。さらにFOXC1は角膜血管新生の抑制因子として機能し(VEGFの生物学的利用能の制御を介する)1)、FOXC1変異によりこの抑制が失われると角膜血管新生が生じる。

FOXC1はFOXファミリー転写因子として脳の発達にも重要な役割を果たす4)

系統的レビューでは、ARSの白質異常が41.3%の症例に出現することが報告された4)。FOXC1変異は脳小血管病(CSVD)・白質高信号・拡大血管周囲腔・微小出血・ラクナ梗塞を誘発しうる。

Ohkubo et al.(2025)は、2歳日本人男児(FOXC1変異: c.240del, p.Y81Ifs21)で脳MRIによる脳室周囲白質病変・拡大血管周囲腔・椎骨脳底動脈の迂曲拡張を確認した。父には18歳での脳梗塞の既往があった4)

FOXC1変異95例のレビューでは6.3%に神経精神症状(学習困難・てんかん・知的障害・嫉妬妄想など)が認められ、フォークヘッドドメイン変異を持つ症例の83.3%に神経精神症状が出現した2)

Q ARSで脳の異常が起きることはありますか?
A

はい。FOXC1変異を有するARSでは白質異常が約41%の症例に出現するとの系統的レビューがある4)。FOXC1変異は脳小血管病や脳卒中リスクと関連する可能性が指摘されており、特にFOXC1変異型ARSでは神経学的な長期フォローが重要である。


7. 最新の研究と今後の展望(研究段階の報告)

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近年、次世代シーケンシング・全ゲノムシーケンシングにより多くの新規変異が報告されている。

Wowra et al.(2024)は、ポーランド人3姉妹のARSにおいてFOXC1エクソン1の一部と3’UTR全体を含む大規模欠失(新規変異)を同定した。同一家系でも表現型が大きく異なり、当初はChandler症候群と誤診されていた1)

Jiang et al.(2024)は中国人家族のARS1型においてPITX2を含む6.15Mbの染色体4q25欠失・45.71Mbの逆位・14bpの欠失という複合ゲノム再配列を同定した。11歳女児はIOP 43.5/44.0mmHgを呈した3)

その他の新規変異の報告として、FOXC1 p.Phe136Leu(フォークヘッドドメイン)2)、FOXC1 p.S82R(de novo変異)5)、FOXC1 c.240del, p.Y81Ifs214)が挙げられる。

Yoshino et al.(2024)は77歳日本人男性のARS3型例を報告した。72歳から嫉妬妄想が出現し、白質脳症を確認した。FOXC1変異95例の文献レビューでは6.3%(6/95例)に神経精神症状が認められ、そのうち83.3%(5/6例)がフォークヘッドドメイン変異を有していた2)

この知見はFOXC1変異の機能的ドメインが神経精神症状の発現に関与する可能性を示しており、メンタルヘルスの観点からの長期フォローの重要性を示唆している。

FOXC1変異がCSVDを誘導し脳卒中リスクを増加させる可能性が指摘されている4)。ARS患者における神経血管疾患の予防と早期介入の重要性が今後の研究課題とされている。

FOXC1変異による角膜強膜化」の病態解明が進んでいる1)角膜混濁の分子メカニズムの理解が、遺伝子治療・抗線維化薬・生体材料を用いた新規治療開発へ繋がりうると期待されている1)


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