皮膚・眼窩周囲所見
特徴的皮膚病変:硬結を伴う黄色〜オレンジ色の丘疹・結節・斑。通常多発性で眼窩周囲に最多。
進行所見:萎縮、毛細血管拡張、潰瘍化、瘢痕化が生じる。瘢痕部位に新病変が頻発する。
眼窩周囲合併症:瘢痕性外反、兎眼を引き起こす。
分布:顔面以外に体幹・四肢近位部にも生じうる。

壊死性黄色肉芽腫は、非ランゲルハンス細胞組織球症の一種である。皮膚および眼窩周囲組織を主に侵す慢性肉芽腫性多臓器疾患である。1980年、KossardとWinkelmannが初めて報告した。1)
発症年齢は60代が多く、性差はない。1) 皮膚外病変として心臓、肺、気管支、肝臓、脾臓、口咽頭、消化管にも及ぶことがある。
壊死性黄色肉芽腫の最大の特徴は血液疾患との強い関連である。
なお、多発性骨髄腫(形質細胞の腫瘍性増殖)ではまれに皮膚の黄色腫が生じることが教科書的に知られている。また、肉芽腫はマクロファージ由来の類上皮細胞と多核巨細胞からなる小結節状病巣を特徴とする増殖性慢性炎症であり、壊死性黄色肉芽腫はその一形態である。
壊死性黄色肉芽腫患者の77〜84%が生涯いずれかの時点で血液疾患を発症するとされており、必ずしも全例ではないが高頻度である。多発性骨髄腫への進行は壊死性黄色肉芽腫発症から最大6年後まで報告されているため、定期的な血液疾患のスクリーニングが重要である。

皮膚・眼窩周囲所見
特徴的皮膚病変:硬結を伴う黄色〜オレンジ色の丘疹・結節・斑。通常多発性で眼窩周囲に最多。
進行所見:萎縮、毛細血管拡張、潰瘍化、瘢痕化が生じる。瘢痕部位に新病変が頻発する。
眼窩周囲合併症:瘢痕性外反、兎眼を引き起こす。
分布:顔面以外に体幹・四肢近位部にも生じうる。
眼症状
壊死性黄色肉芽腫患者の約50%に眼症状が認められる。眼窩腫瘤・眼球突出・拘束性斜視・眼瞼下垂などの眼窩病変に加え、結膜病変・強膜炎・角膜炎・兎眼・瘢痕性外反など多彩な所見を呈する。詳細は「臨床所見」の項を参照。
壊死性黄色肉芽腫の直接的な病因は不明である。パラプロテイン血症との強い関連が知られているが、具体的な因果関係は解明されていない。
多発性骨髄腫は形質細胞の腫瘍性増殖による疾患で、50歳以上の男性に多く、骨と骨髄を主に侵す。
Nelsonら(2020年)が提唱した診断基準は以下の通りである。異物・感染症・その他の特定可能な原因がない場合にのみ適用する。
主要基準(両方必須)
皮膚病変:丘疹・斑・結節(黄色〜オレンジ色が多い)の存在。
病理所見:リンパ血漿細胞浸潤と壊死変性領域を伴う柵状肉芽腫。コレステロール裂隙・巨細胞は症例による。
副基準(1つ以上)
血液疾患:パラプロテイン血症(多くはIgG-κ型)、形質細胞疾患、および/またはリンパ増殖性疾患の合併。
病変分布:皮膚病変が眼窩周囲に分布している。
各検査の意義を以下に示す。
| 検査項目 | 所見・目的 |
|---|---|
| 血清タンパク電気泳動 | 血液疾患スクリーニング(強く推奨) |
| 補体値(C4) | 64%でC4低値 |
| 脂質パネル(HDL-3C) | 低HDLコレステロール血症の確認 |
| クリオグロブリン値 | 23%でクリオグロブリン血症 |
| ビタミンDパネル | 25-OHビタミンD低値、1,25-(OH)₂D正常〜高値 |
多発性骨髄腫の診断においては、Bence Jones蛋白の尿中検出および骨髄生検が重要である。
以下の疾患との鑑別が必要である。
Nelsonら(2020年)の診断基準に基づき、主要基準2項目(特徴的皮膚病変+病理所見)を両方満たし、副基準(パラプロテイン血症や眼窩周囲分布)を1つ以上充足することが必要である。血清タンパク電気泳動は血液疾患の既往がない場合には強く推奨される。
壊死性黄色肉芽腫に対する特定治療のコンセンサスガイドラインは存在しない。無作為化比較試験は稀少疾患のため実施されておらず1)、治療方針は関連する悪性腫瘍の有無を考慮して決定する。
系統的レビュー(175例)に基づく各薬剤の奏効率を以下に示す(完全奏効:CR、部分奏効:PR)。1)
| 治療法 | 例数 | 完全奏効+部分奏効 | 奏効持続期間中央値 |
|---|---|---|---|
| 免疫グロブリン静注療法 | 26例 | 81%(完全27%・部分54%) | 12か月(範囲6-48か月) |
| 副腎皮質ステロイド | 45例 | 31%(完全11%・部分20%) | 12か月(範囲2-24か月) |
| レナリドミド±ステロイド | 22例 | 50%(完全18%・部分32%) | — |
全体では175例中128例(73%)で改善(完全奏効+部分奏効)、25例で安定、22例(13%)で進行であった。1) 免疫グロブリン静注療法と副腎皮質ステロイドを壊死性黄色肉芽腫の第一選択治療とすることが推奨される。1)
多発性骨髄腫に対する治療として、眼窩内浸潤には放射線療法(20〜40グレイ)が用いられる。全身療法としてはメルファラン投与、ステロイド+メルファラン併用、造血幹細胞移植がある。分子標的薬としてボルテゾミブ、サリドマイド、サリドマイド誘導体のレナリドミド(副作用軽減)が使用される。
シクロスポリン、代謝拮抗剤、インフリキシマブ、血漿交換、アルキル化剤(クロラムブシル、シクロホスファミド、メルファラン)、クラドリビンなど複数の薬剤が報告されている。
外科的切除後の再発率は最大40%と高い。重度の瘢痕性外反や兎眼など視力に影響する場合にのみ推奨される。
系統的レビューで免疫グロブリン静注療法が奏効率(完全奏効+部分奏効)81%と最も高く、副腎皮質ステロイドとともに第一選択治療として推奨されている。1) ステロイド単独の奏効率は31%にとどまるが、免疫グロブリン静注療法との併用が標準的である。
壊死性黄色肉芽腫の病態生理は完全には解明されていない。パラプロテイン血症との関連から、以下の仮説が提唱されている。
肉芽腫はマクロファージ由来の類上皮細胞と多核巨細胞からなる小結節状病巣を特徴とする増殖性慢性炎症である。壊死性黄色肉芽腫における特徴的所見は以下の通りである。
これらの組織学的特徴は、脂質代謝の異常とパラプロテイン血症が組み合わさった特有の病態を反映していると考えられている。
Steinhelferら(2022)の系統的レビュー(175例)は、壊死性黄色肉芽腫に関する最大規模の解析であるが、ほとんどが症例報告・症例シリーズに基づく。壊死性黄色肉芽腫の重症度スケールが存在せず、治療反応の標準化評価が困難であるという根本的な問題がある。1) 前向きランダム化比較試験が必要だが、症例数の少なさから実現は困難とされている。
ボルテゾミブ、リツキシマブ、アダリムマブ、ミコフェノール酸モフェチル、クロファジミンなどの個別症例報告が蓄積しつつある。1) いずれも症例数が少なく、標準治療としての位置づけには至っていない。
また、毎月の免疫グロブリン静注療法+毎日のサリドマイド+シクロホスファミド+低用量経口プレドニゾンの多剤併用療法で長期寛解が得られた症例が報告されている。