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小児眼科・斜視

外斜視

外斜視とは、片眼が固視目標を注視しているときに他眼が外側(耳側)へ偏位している状態をいう。上下斜視や回旋斜視を伴わない外斜視のほとんどが共同性外斜視である。

欧米では内斜視と外斜視の比率が1.8:1と内斜視が優位であるのに対し、わが国では1:1.2〜2.8と外斜視が多く、東南アジアでも同様の傾向が認められる。間欠性外斜視はわが国の小児に最も多い斜視であり、小学生の約0.14%に認められる。米国での頻度は約0.06%と日本より少ない。発症時期は幼児期から8歳くらいまでで、3〜4歳頃の発症が最も多い。全人口の約1%に外斜視が認められるとされる。成人斜視の推定有病率は約4%であり、IRIS Registryでは2.7%と報告されている5)

間欠性外斜視(IXT)

基礎型(basic type):遠見と近見の斜視角差が10Δ以内。最も一般的な型。

開散過多型(divergence excess type):遠見>近見10Δ以上。真の開散過多型と偽開散過多型の鑑別が重要。

輻湊不全型(convergence insufficiency type):近見>遠見10Δ以上。

初期は融像性輻湊で斜位を維持できるが、疲労時・体調不良時・起床直後に外斜視化する。

恒常性・感覚性・特殊型外斜視

恒常性外斜視:常に外方偏位。間欠性から移行する例が多い。

乳児外斜視:1歳までに眼位の正位化が起きない。両眼視の発達は強く障害される。乳児期発症の60%に全身疾患・中枢神経系の異常が合併するため、CT/MRIが必須。

感覚性外斜視:片眼の長期的な網膜像不鮮明が原因。原疾患が4歳までに発症すると内斜視、4歳以降は外斜視になりやすい。

術後外斜視(consecutive exotropia)内斜視術後に生じる外斜視。頻度2〜29%。術後経過が長いほど発症頻度が増加する。

長期観察では約10%が自然治癒、約40%が不変、約50%が恒常性外斜視へ悪化する。138例を20年間追跡した北米の報告では74.0%が最終的に手術を必要とした。Von Noordenは未治療51人を平均3.5年追跡し、75%に進行、9%変化なし、16%改善を報告した。

Q 間欠性外斜視は放置すると悪化しますか?
A

長期観察では約50%が恒常性外斜視へ悪化するとされ、自然治癒は約10%にとどまる。138例の20年追跡では74%が最終的に手術を必要とした。ただし、恒常性化の速度は個人差が大きく、数年間不変のままの例もある。コントロールスコアの悪化や立体視の低下がみられた場合は手術を検討する。

外斜視の臨床写真。片眼が外側へ偏位している。
Breton S An Interesting Case of Pupillary Changes During the Testing of Ocular Movements and its Influence on the Diagnosis?. Br Ir Orthopt J. 2018. Figure 3. PMCID: PMC7510384. License: CC BY.
正面視の臨床写真で、片眼の外方偏位と左右の角膜反射のずれが見られる。外斜視の代表的な眼位異常を示し、主な症状と臨床所見の説明に適している。
  • 複視:外方偏位時に抑制がなければ自覚。小角度の場合は視界のぼやけとして感じることがある
  • 眼精疲労:融像維持の輻湊努力による調節過剰から頭痛・嘔吐が生じることがある
  • 斜位近視:輻湊努力に伴う調節が近視化を引き起こす。両眼開放時のみ裸眼視力が低下する現象
  • 片目つぶり(monocular eye closure):明るい屋外や強い光で融像が困難となり、外方偏位が顕在化して複視を回避するため片眼を閉鎖する
  • 無自覚:10歳までの小児では感覚適応(抑制)が生じるため複視を自覚しないことが多い

間欠性外斜視では斜位時も両眼視の発達は良好であり、正常網膜対応(NRC)、立体視60”未満の正常値を示す場合がほとんどである。斜位時の両眼視野(BVF)は20〜30度で、正常者の40度より狭い。乳幼児発症例では単眼固視症候群・軽度弱視(約5%)が合併することがある。

眼位コントロールの重症度を評価する(最高9点、高いほど不良)。家庭での評価(0〜3点)と診察での評価(0〜3点)の合算で算出する:

点数家庭での評価診察での評価
350%以上遠見・近見ともに斜視や片目つぶり遮閉をしなくても外斜視になる
250%以上遠見で斜視や片目つぶり遮閉後外斜視、遮閉除去後も斜位にならない
150%未満遠見で斜視や片目つぶり遮閉後外斜視、遮閉除去後は瞬目で斜位に戻る
0斜視や片目つぶりは全くない遮閉後外斜視、遮閉除去後すぐ斜位になる
Q 外斜視で片目をつむるのはなぜですか?
A

明るい屋外では眩しさにより融像が困難となり外方偏位が顕在化する。外斜視になると複視が生じるため、これを回避するために片眼を閉鎖すると考えられているが、正確な機序は未解明である。この「片目つぶり」は間欠性外斜視を疑う重要なサインである。

外斜視の病因は多因子性であり、融像・眼位整列維持能力の障害が根本的な機序と考えられている。

  • 神経支配因子:脳幹被蓋の開散中枢(中脳網様体の開散バースト細胞)の不均衡
  • 外眼筋プーリーの位置異常:機械的な眼球運動偏位
  • 融像不全:先天的な両眼視機能の欠陥とする古典的理論
  • 異常なAC/A比:高AC/A比が関与するとの報告がある
  • 屈折異常:未矯正近視→調節性内寄せ減少→外斜位(Donders理論)
  • 遺伝的因子:家族歴が多い
  • リスク因子:妊娠中の母親の喫煙・低出生体重は水平斜視発症の有意かつ独立したリスク因子である
  • 頭蓋顔面異常・神経発達障害:外斜視を呈しやすい
  • 感覚性外斜視の原因:片眼の視力不良による融像障害
  • 術後外斜視の原因内斜視術後の過矯正、または長期経過による両眼視機能低下。成人では内転不全(adduction deficit)が主因とされる5)

近年、スマートフォン等の長時間近業使用と輻湊不全型外斜視の関連を示す報告もある。

器質疾患・視力障害の除外が第一優先である。乳児外斜視では神経学的検査(CT/MRI)が必須となる。

  • Hirschberg試験角膜反射位置から眼位を推定(角膜縁=45°、虹彩上=30°、瞳孔縁=15°)
  • 交代遮閉試験間欠性外斜視では偏位が出現する状況と出現しない状況を区別して評価する
  • 交代プリズム遮閉試験(APCT):最大斜視角の定量測定。間欠性外斜視では融像幅が広いため、測定ごとに角度が異なる場合がある。最大角を検出することが重要
  • 遠見・近見の斜視角比較:基礎型/開散過多型/輻湊不全型の分類に必須
病型特徴鑑別ポイント
基礎型遠近差≤10ΔAC/A比正常。最も一般的
開散過多型遠見>近見10Δ以上偽開散過多型との鑑別必須
輻湊不全近見>遠見10Δ以上輻湊不全との鑑別。近見作業で症状出やすい
偽開散過多型初見で開散過多型に見える片眼遮閉/プリズム順応/+3D負荷後に近見変化あり

偽開散過多型の鑑別法(3法)

  1. 30〜60分間の片眼遮閉(融像の解除)
  2. 30分〜1時間の両眼開放下プリズム順応試験
  3. +3.0Dレンズ装用(調節性輻湊の除去)

これらの方法のいずれかで近見斜視角が遠見に近づく(遠近差が10Δ以内になる)場合は基礎型(偽開散過多型)と診断する。

Q 間欠性外斜視にはどのようなタイプがありますか?
A

遠近差によって基礎型(差≤10Δ)、開散過多型(遠見>近見10Δ以上)、輻湊不全型(近見>遠見10Δ以上)の3型に分類される。また、開散過多型に見えても遮閉や+3Dレンズ負荷で近見斜視角が増大する「偽開散過多型(潜在型基礎型)」との鑑別が重要である。

保存的管理

経過観察:コントロール良好・無症状の場合はまず経過観察。

パートタイム遮閉:健眼を1日3時間遮閉。3〜10歳で遠見コントロールスコア2点以上のIXTに有効1)。3か月で遠見コントロールスコア0.4点改善(95%CI 0.1〜0.7)、遠見偏位量2.1PD改善1)

光学的治療:フレネル膜プリズム、または調節麻痺下屈折値に+2〜3Dのマイナスレンズを加えた過矯正眼鏡。斜視角が小さく眼精疲労複視を訴える場合に適応。

屈折矯正近視は矯正レンズでコントロールが改善することがある。

視能訓練・輻湊訓練

視能訓練の適応条件矯正視力が左右同等、斜視角25Δ未満、間欠性、近見立体視あり、本人の意欲が必須。8〜12歳が最適年齢。

訓練の順序:抑制除去訓練→融像訓練→輻湊訓練の順序で実施。手術+視能訓練/遮閉の併用療法が単独より有効。

輻湊訓練輻湊不全型に特に有用。オフィスベース訓練が小児では自宅ベースより効果的5)。成人では結果が一貫しない5)

基底内方プリズム:融像を促進するが、融像性輻湊余力を減少させるため長期管理には稀にしか用いない。

主な術式

両外直筋後転術(BLR):基礎型・開散過多型の基本術式。

片眼後転+短縮術(R&R)弱視がある場合に選択。開散過多型IXTでBLRと成功率同等(83.3%)2)

両内直筋短縮術輻湊不全型に有用。近見偏位が大きい場合。

50Δ超の大角度例:両外直筋後転+内直筋短縮を併用。

A-V型外斜視の手術

斜筋過動あり(V型):水平直筋手術に下斜筋減弱術を併用。

斜筋過動あり(A型):水平直筋手術に上斜筋減弱術を併用。

斜筋過動なし:Trick法(水平直筋付着部の上下移動術)を施行。

斜視角(Δ)両外直筋後転量(mm)外直筋後転+内直筋短縮(mm)
154.04.0 / 3.0
205.05.0 / 4.0
256.06.0 / 4.5
307.06.5 / 5.0
357.57.0 / 5.5
408.07.5 / 6.0
509.08.5 / 6.5

手術は以下のいずれかに該当する場合に検討する:

  • 外斜視相の増加・顕性相の頻度増加
  • 偏位量の増大
  • 立体視鋭度の低下
  • 間欠性から恒常性への移行
  • 眼精疲労複視の持続
  • 整容的・精神的希望

手術は原則4歳以降に適応を判断する。正常立体視(60”以下)の獲得には①7歳までの手術、②発症から5年以内の手術が必要とされる。間欠性外斜視の段階での手術では93%が正常立体視を獲得できたのに対し、恒常性外斜視へ悪化してからの手術では39%にとどまった。

小児期手術では術直後と比較して10〜25Δのもどりが認められる。術直後の眼位を10PD以内の内斜視(意図的過矯正)にすることが理想とされる。成人のもどりは小児より少ない。

開散過多型IXTのBLR術後成績:遠見38.1±8.0PD→−1.5±7.6PD、近見26.3±9.1PD→−0.9±6.2PD、遠近差(NDD)15.4→0.6に改善した2)

Q 間欠性外斜視の手術はいつ行うべきですか?
A

原則4歳以降。正常立体視(60”以下)の獲得には7歳まで、かつ発症5年以内の手術が推奨される。間欠性の段階での手術で93%が正常立体視を獲得できるが、恒常性化後では39%にとどまる。コントロールスコアの悪化・立体視低下・眼精疲労・整容的問題が適応の判断基準となる。

Q 両外直筋後転術と片眼後転短縮術のどちらが良いですか?
A

開散過多型間欠性外斜視では、両外直筋後転術(BLR)と片眼後転・短縮術(R&R)の成功率はともに83.3%と同等との報告がある2)。術式の選択は偏位量・眼位特性・術者の経験を考慮して決定する。輻湊不全型では両内直筋短縮術が有効な場合がある。

6. 病態生理学・詳細な発症機序

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間欠性外斜視の融像維持機構は主に融像性輻湊によって担われる。近見では比較的容易に斜位を保てるが、遠見でコントロールが破綻して外斜視が顕在化する。

  • 感覚適応(抑制):幼少期発症では外斜位時に複視ではなく抑制を発達させる。両眼視野(BVF)は20〜30度(正常40度より狭い)に制限されるが、斜位時の立体視は保たれる
  • 屈折異常との関係(Donders理論):未矯正近視では調節を使わなくても近見で明視できるため、調節性内寄せが減少し外斜位になりやすい
  • AC/A比の関与:AC/A比(調節性輻湊/調節比)の測定にはheterophoria法とgradient法がある。遠近差10PD以上の場合に高AC/A比と判定する。高AC/A比は開散過多型の特徴であり、+3.0Dレンズ加入で関与を評価する
  • 進行の機序:外斜位→間欠性外斜視→恒常性外斜視の段階を経て進行する
  • 感覚性外斜視の発症機序:片眼の視力障害→融像維持不能→偏位発生。4歳が内斜視/外斜視の境界とされる(PPPでは2歳境界も報告:69%外斜視 vs 31%内斜視5)
  • 術後外斜視の機序内斜視術後に両眼視が不良になると眼位制御が困難となり外斜視化する。成人では内転不全(adduction deficit)が主因とされる5)
  • 乳児発症外斜視の神経可塑性:成人後の手術でも立体視(55秒弧)の回復が得られる症例が報告されており3)、残存する視覚的可塑性の存在が示唆される

パートタイム遮閉の長期効果

Hattら(2023)のPEDIGランダム化比較試験では、パートタイム遮閉(3時間/日)群が観察群に比べ3か月時点で遠見コントロールスコアが0.4点有意に改善した(95%CI 0.1〜0.7)1)。6か月でも0.3点の有意差が持続したが(95%CI 0.02〜0.6)、長期的な効果の検証が課題として残る。

開散過多型IXTにおけるR&R術式の適応拡大

Hanら(2023)は開散過多型IXTにおいて、R&R術式の適応拡大可能性を示した2)。BLRが標準であった開散過多型でもR&Rが同等の成功率(83.3%)を持つことが確認された。

成人乳児発症外斜視への手術と神経可塑性

Littlewoodら(2021)は乳児期に外斜視を発症し15年間4回の手術を受けた成人患者で、術後に両眼単一視(BSV)と立体視(55秒弧)が回復したことを報告した3)。成人の乳児発症外斜視への手術が残存する神経可塑性を活用できる可能性を示唆している。

術後一過性高度近視化の症例報告

Yoshimuraら(2022)は6歳女児での外斜視手術(外直筋後転6.0mm+内直筋短縮6.5mm)後に、術眼に+0.25Dから−9.00Dへの一過性高度近視化が生じた症例を報告した4)AS-OCTで前眼部の異常所見(前房深度1.955mm vs 対側3.007mm、水晶体厚4.216mm vs 対側3.528mm)を確認。8週間で自然回復した。前眼部虚血→毛様体剥離→Zinn小帯弛緩→水晶体変形の機序が推測された。

項目術眼対側眼
屈折値(術後)−9.00D+0.25D
前房深度1.955mm3.007mm
水晶体4.216mm3.528mm

調整縫合・ボツリヌス毒素の活用

調整縫合(adjustable sutures)は成人の再手術・予測困難例に有用とされる5)ボツリヌス毒素注射は新規発症・大角度の補強・術後残余・小角度の症例に使用可能であり5)、選択肢の一つとして注目されている。


  1. Hatt SR, Kraker RT, Leske DA, Chandler DL, Fallaha N, Mohney BG, et al. Improved control of intermittent exotropia with part-time patching. Journal of AAPOS : the official publication of the American Association for Pediatric Ophthalmology and Strabismus. 2023;27(3):160-163. doi:10.1016/j.jaapos.2023.02.011. PMID:37187406; PMCID:PMC10330853.
  2. Han M, Shen T, Wang X, Yu X, Zhu B, Wen Y, et al. Surgical outcomes of bilateral lateral rectus recession versus unilateral recession and resection for the divergence excess type of intermittent exotropia. Indian journal of ophthalmology. 2023;71(11):3558-3562. doi:10.4103/IJO.IJO_2977_22. PMID:37870024; PMCID:PMC10752302.
  3. Littlewood RA, Rhodes M, Burke J.. A Post-Surgical Stereovision Surprise in an Adult With an Exotropia Since Infancy Previously Managed, at Two Years With Surgery. Br Ir Orthopt J. 2021;17(1):97-103. doi:10.22599/bioj.174. PMID:34278225; PMCID:PMC8269783.
  4. Yoshimura A, Miyata M, Muraoka Y, et al. Unilateral transient high myopization after pediatric strabismus surgery: Observation by anterior segment optical coherence tomography. Am J Ophthalmol Case Rep. 2022;25:101421. doi:10.1016/j.ajoc.2022.101421. PMID:35198829; PMCID:PMC8850326.
  5. American Academy of Ophthalmology Pediatric Ophthalmology/Strabismus Panel. Adult Strabismus Preferred Practice Pattern®. San Francisco, CA: American Academy of Ophthalmology; 2023.

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