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角膜・外眼部疾患

周辺部潰瘍性角膜炎

周辺部潰瘍性角膜炎(peripheral ulcerative keratitis: PUK)は、角膜輪部近傍の角膜実質に三日月状の破壊性炎症を呈する疾患群である。角膜実質の変性・炎症細胞浸潤と上皮欠損を特徴とし、進行すると角膜菲薄化・デスメ膜瘤・穿孔に至る。角膜の周辺部に潰瘍を呈する疾患群の総称であり、原因には特発性のMooren潰瘍(蚕食性角膜潰瘍)、関節リウマチをはじめとする膠原病に合併する潰瘍、ブドウ球菌アレルギー(カタル性角膜潰瘍)、角膜フリクテンなどが含まれる。

発症率は年間100万人あたり0.2〜3例と稀であり、男女差はない8)。約50%に基礎となる全身疾患を認め、そのうち約20%が感染性である8)。関節リウマチ(rheumatoid arthritis: RA)が最も一般的な原因であり、PUK患者の34〜42%を占める2)

関節リウマチは膠原病のなかで最も頻度の高い疾患である。日本における有病率は、人口1,000人あたり女性で5.4人、男性で1.1人と報告される。30〜60歳の女性に多く、高齢になると男性の比率が増加する。RA患者の約70%にHLA-DR4との遺伝的相関が認められる。外傷や分娩後にRAを発症したり、病勢が増悪したりすることも知られる。

RAのなかで、血管炎を合併する病型は悪性関節リウマチ(malignant rheumatoid arthritis)と呼ばれる。強膜炎・胸膜炎・間質性肺炎・心膜炎・心筋炎・多発性単神経炎・腸間膜動脈塞栓症・指尖潰瘍を伴い、全身予後が悪い。RA関連PUKの多くはこの悪性関節リウマチに併発し、急速な角膜菲薄化と穿孔を生じる。

PUKの発症には、角膜抗原に対する自己免疫反応、循環免疫複合体の沈着、外来抗原に対する過敏反応が関与すると考えられている。角膜周辺部の特殊性として、輪部には血管網・免疫系・神経系が密集しており、免疫複合体が沈着しやすい環境にある。膠原病に伴うPUKでは、血中の自己抗体が角膜輪部〜周辺部に沈着してⅢ型アレルギー反応を惹起し、浸潤した免疫細胞から放出される細胞外基質分解酵素が潰瘍形成に関与する。

Mooren潰瘍は定義上、原因不明かつ全身性自己免疫疾患を伴わない周辺部角膜潰瘍を指す。一方、PUKは全身疾患に伴って発症する病態であり、両者の鑑別は治療方針を決定するうえで重要である。Mooren潰瘍では強膜炎の合併は軽度であるが、膠原病に伴う周辺部潰瘍では上強膜炎強膜炎に続発して、灰白色の病変が角膜中央に向かって進行し、血管侵入を伴うことが多い。

Q PUKとMooren潰瘍はどう違いますか?
A

PUKは関節リウマチやANCA関連血管炎などの全身性自己免疫疾患に伴って発症する角膜周辺部の潰瘍である。一方、Mooren潰瘍は全身疾患を伴わない特発性の角膜辺縁潰瘍であり、角膜上皮細胞に対する自己抗体の関与が示唆されている。臨床的にはMooren潰瘍で強膜炎の合併は軽度であるが、PUKでは約36%に強膜炎を合併する。全身検索が鑑別の鍵となる。

周辺部潰瘍性角膜炎の活動期から治癒期に至るAS-OCTおよび細隙灯顕微鏡像
Bonnet C, Debillon L, Al-Hashimi S, et al. Anterior segment optical coherence tomography imaging in peripheral ulcerative keratitis, a corneal structural description. BMC Ophthalmol. 2020;20:205. Figure 1. PMCID: PMC7249626. License: CC BY 4.0.
治療により良好な経過をたどった2症例(上段:1例目、中段:2例目)の細隙灯顕微鏡およびAS-OCT像であり、左から活動期、治癒過程、治癒期を示している。本文「2. 主な症状と臨床所見」の項で扱う病変の進行ステージ(活動期、治癒過程、治癒期)に伴う角膜周辺部の所見に対応する。
  • 眼痛角膜潰瘍に伴う強い疼痛を認める。強膜炎を合併する場合は、顔面やこめかみに放散する深部痛となり、睡眠を障害するほどに増強する
  • 充血:毛様充血を伴い、限局性のことが多い。強膜炎併発例では強膜血管の拡張と蛇行による全周性の強い充血を呈する
  • 視力低下角膜混濁や菲薄化の程度に応じて生じる
  • 羞明・流涙角膜上皮障害に伴い出現する
  • 乾燥感・異物感:関節リウマチ合併例では重症ドライアイ(続発性Sjögren症候群)を併発することが多く、眼表面の異物感や乾燥感を伴う

PUKの角膜所見は角膜輪部近傍に限局する三日月状の実質破壊である。膠原病に伴うPUKでは、強膜炎上強膜炎に続発して角膜中央へ病変が進行することが多い。

  • 角膜実質浸潤・潰瘍角膜輪部と平行に三日月状の浸潤・実質壊死を認める。潰瘍先端はunderminingと呼ばれる深い坑道状を呈する
  • 上皮欠損:潰瘍部の上皮が脱落し、フルオレセイン染色で陽性となる
  • 角膜菲薄化:進行すると角膜実質が著明に菲薄化する。高度例では砂時計様角膜(hourglass cornea)を呈する4)
  • 傍中心部角膜穿孔:重症例では角膜中央寄りに穿孔が生じる。穿孔例では梨状瞳孔虹彩組織の脱出を認める3)
  • 強膜炎合併:PUK患者の約36%に強膜炎を併発する。強膜炎は深層の強膜血管叢の炎症であり、強膜の浮腫と細胞浸潤を起こす
  • 角膜血管新生:慢性例では表層性・深層性の血管侵入を認める5)

関節リウマチの眼合併症スペクトラム

Section titled “関節リウマチの眼合併症スペクトラム”

関節リウマチに伴う眼合併症は、ドライアイから強膜穿孔まで幅広い重症度を示す。PUKを理解するうえで重要な関連所見を以下に示す。

  • 乾性角結膜炎:続発性Sjögren症候群として高頻度に合併する
  • 上強膜炎:Tenon囊血管叢など浅在性血管叢の炎症。痛みは軽微で視力は正常
  • 強膜炎(びまん性・結節性)眼痛を伴う深層血管の充血。肉芽腫性の炎症と血管炎が主体
  • 壊死性強膜炎:中央に黄白色の虚血部位を伴う。予後不良で、早期治療がなければ失明・眼球温存困難に至る
  • 穿孔性強膜軟化症(scleromalacia perforans):長期にRAを加療した患者に起こる。菲薄部周囲に充血や疼痛を伴わず、緩徐に強膜が菲薄化してぶどう膜が露出する
  • 周辺部角膜潰瘍:悪性関節リウマチに多く、急速に菲薄化・穿孔に至る
Q 関節リウマチのどの病型で角膜潰瘍が起きやすいですか?
A

血管炎を合併する悪性関節リウマチで周辺部角膜潰瘍や壊死性強膜炎が生じやすい。強膜炎、胸膜炎、間質性肺炎、心膜炎、多発性単神経炎、指尖潰瘍などの関節外症状を伴うRAはこの病型に含まれ、眼・全身ともに予後不良である。関節リウマチの病勢コントロールがPUK治療の基盤となる。

PUKは多岐にわたる全身疾患に続発する。大別すると自己免疫性、感染性、その他に分類される。

自己免疫性(最多)

関節リウマチ(RA):PUK患者の34〜42%を占め、最も一般的な原因である2)。血管炎を合併する悪性関節リウマチで特にリスクが高く、急速に穿孔に至ることがある。

ANCA関連血管炎多発血管炎性肉芽腫症GPA、旧Wegener肉芽腫症)では通常の治療に抵抗する強膜炎や周辺部角膜潰瘍を生じる。PR3-ANCA陽性率は約80%である。

結節性多発動脈炎(PAN):壊死性強膜炎輪部周囲角膜潰瘍を生じる。

全身性エリテマトーデスSLE:20〜30歳代女性に好発する。

再発性多発軟骨炎強膜炎ぶどう膜炎を伴うことがある。

炎症性腸疾患(IBD):IBD患者の2〜5%に上強膜炎強膜炎ぶどう膜炎などの眼症状を認める9)

感染性・その他

大血管炎:巨細胞動脈炎(GCA)に伴うPUKの報告がある。FDG-PETが診断に有用であった2)

化膿性汗腺炎(HS:まれな原因であるが、Th17経路の共有が示唆されている3)7)HS患者の眼炎症は前部ぶどう膜炎が最多であり、PUKは稀である。

肉芽腫性酒さ:慢性炎症とTh17活性化が関連し、PUKを合併した症例がある1)

免疫チェックポイント阻害薬:イピリムマブ/ニボルマブ併用療法の免疫関連有害事象(irAE)として両側性PUKが報告されている5)

感染性:Citrobacter koseri涙小管炎がPUKを惹起した症例がある6)。結核に伴うPUKの報告もある4)

Q どのような全身疾患がPUKを引き起こしますか?
A

最も多い原因は関節リウマチであり、PUK患者の約3分の1を占める。そのほかANCA関連血管炎(多発血管炎性肉芽腫症など)、結節性多発動脈炎全身性エリテマトーデス、再発性多発軟骨炎、炎症性腸疾患などの膠原病・自己免疫疾患が主な原因となる。まれに化膿性汗腺炎、肉芽腫性酒さ、免疫チェックポイント阻害薬による免疫関連有害事象としても発症する。感染性の原因としては細菌性涙小管炎や結核が報告されている。

  • 細隙灯顕微鏡検査角膜周辺部の浸潤・潰瘍・菲薄化の範囲と深度を評価する。上皮欠損の有無をフルオレセイン染色で確認する
  • 強膜炎結膜・上強膜充血の鑑別:1,000倍希釈エピネフリン点眼を行うと、結膜充血輪部充血は消退するが、強膜炎による血管拡張は消退しない
  • フルオレセイン蛍光強膜造影検査強膜無灌流領域の有無を評価し、壊死性強膜炎との鑑別に用いる
  • 眼球超音波検査(Bモード):後部強膜炎の評価に有用である。強膜厚の肥厚、強膜結節、強膜からのTenon囊の離開、外眼筋炎の所見を認める
  • 角膜擦過・培養:感染性の原因を除外するために施行する。感染が強く疑われる場合は病変部の生検も検討する
  • 前眼部OCTAS-OCT角膜混濁が高度で細隙灯検査による深度評価が困難な場合に有用である。前眼部OCTにより、PUKを以下の3段階に分類できる
    • 急性期角膜上皮の消失、不均一な反射を伴う前部実質の構造破壊、病変部の角膜厚減少を認める
    • 治癒過程期:再生途上の不整な上皮が低反射を呈し、実質の反射が均一化する
    • 治癒期:低反射上皮と高反射実質の間に明瞭な境界線が形成され、瘢痕性の角膜肥厚と菲薄化の安定化を認める

基礎疾患の特定のため、以下の検査を系統的に行う。関節リウマチの診断には、赤沈亢進、CRP上昇、リウマトイド因子(RF)陽性が有用である(RFは約1/4の症例で陰性となる)。MMP-3は滑膜増殖のマーカーとして有用で、疾患活動性評価にも用いられる。

検査項目目的
RF・抗CCP抗体関節リウマチ
MMP-3RAの疾患活動性
ANASLE・膠原病
ANCA(PR3/MPO)ANCA関連血管炎
RPR・FTA-ABS梅毒
CXR・PPD/IGRA結核・サルコイドーシス

そのほか末梢血検査、腎機能、尿検査、B型/C型肝炎ウイルス検査、仙腸関節X線、副鼻腔CTなどを必要に応じて追加する。大血管炎が疑われる場合はFDG-PETが有用であり、感度90%・特異度98%と報告されている2)

疾患PUKとの相違点
Mooren潰瘍全身疾患を伴わない。強膜炎なし〜軽度
Terrien角膜辺縁変性炎症所見乏しく進行緩徐。上皮欠損なし。脂肪沈着を伴う
カタル性角膜潰瘍輪部との間に透明帯あり。ブドウ球菌に対するIII型アレルギー

カタル性角膜潰瘍はブドウ球菌の菌体外毒素に対するIII型アレルギー反応により角膜周辺部に生じる無菌性の浸潤・潰瘍である。2時・4時・8時・10時の位置に好発し、輪部との間に1〜2mmの透明帯を認める点がPUKと異なる。Mooren潰瘍は片眼または両眼に突然発症し、輪部に沿った円弧状潰瘍で潰瘍辺縁に急激な掘込みを呈するが、輪部との間に透明帯はない。

PUK治療の目的は炎症の制御、二次感染の防止、潰瘍の治癒促進、穿孔の防止である。膠原病に併発する場合は原疾患である膠原病の治療が最優先であり、膠原病内科・リウマチ科と連携して治療を行う。関節リウマチのコントロールが不十分なままではPUKは制御できない。PUK単独の治療では短期的な炎症制御は可能でも、全身疾患の活動性が高ければ再発・穿孔リスクが持続する。そのため、治療計画は眼科と内科の合同判断で立案する。

  • 人工涙液・涙点プラグドライアイの治療と上皮化促進に用いる。防腐剤フリー製剤が推奨される。ヒアルロン酸点眼液(ヒアレイン®)やレバミピド点眼液(ムコスタ®)を併用する
  • 抗菌薬点眼:二次感染予防に使用する
  • 0.05%シクロスポリン点眼:局所の炎症抑制に用いる。市販の免疫抑制薬点眼は適用外であるため、0.05%の自家調製品を使用する。Mooren潰瘍に対してはタクロリムス点眼も報告されている
  • デキサメタゾン結膜下注射:デカドロン®注射液0.4mLを潰瘍近傍の結膜充血部に注射する
  • 局所ステロイド点眼角膜融解(keratolysis)を助長する可能性があるため、使用には細心の注意が必要である。強膜炎合併例では軽症の場合、0.1%ベタメタゾン点眼を1日4〜6回で開始する
  • ドキシサイクリン内服:コラゲナーゼ阻害作用を期待して併用する。ビタミンCもコラーゲン再構築を助ける目的で併用されることがある
  • COX2阻害薬(セレコキシブ):軽症の強膜炎に対してセレコキシブ100mgを1日2回内服する。疼痛に著効し炎症コントロールにも有効である。喘息などの禁忌がなければ初期から積極的に併用する
  • シアノアクリレート接着剤:穿孔が切迫した場合に潰瘍底に塗布する5)

全身的な免疫抑制療法が治療の中心となる。

  • 経口プレドニゾロン:PUKでは1〜1.5mg/kg/日で開始する。強膜炎合併例の初期治療では0.5〜1mg/kg/日を用いる
  • ステロイドパルス療法:壊死性強膜炎や急速進行性PUKではメチルプレドニゾロン1g/日×3日間のパルス療法を施行する
  • 免疫抑制薬(ステロイド温存薬):穿孔切迫例・ステロイド不応例・RA合併例では早期に導入する
    • メトトレキサート(MTX):関節リウマチに合併するPUK・強膜炎の第一選択。RA本体に対してもDMARDsとして早期から積極使用される
    • シクロホスファミド全身性エリテマトーデスやANCA関連血管炎・結節性多発動脈炎などの全身性血管炎に伴うPUK・壊死性強膜炎に選択される
    • アザチオプリン:治療抵抗性のRAや血管炎に適応があるが、強膜炎への有効性はMTX・シクロホスファミドに劣るとの報告があり、選択には注意が必要
    • シクロスポリン:2013年から保険適用が拡大され、非感染性ぶどう膜炎および強膜ぶどう膜炎に使用される。2〜3mg/kg/日で開始し、血中トラフ値が150mg/mLを超えないように調整する。副作用として腎機能障害があり、定期的な血液検査が必要。神経Behçet病随伴の強膜炎には禁忌
    • ミコフェノール酸モフェチルも選択肢となる
  • 生物学的製剤:免疫抑制薬治療抵抗性の難治例で導入する
    • 抗TNF-α抗体インフリキシマブ(レミケード®)、アダリムマブ(ヒュミラ®)が使用される。関節リウマチのDMARDsとしては骨破壊抑制に高い有効性を示し、強膜ぶどう膜炎にも有効である
    • リツキシマブ:抗CD20抗体。難治性PUKや血管炎に使用される
    • エタネルセプトは注意:TNFα阻害薬でも強膜炎を含む眼炎症を誘発する逆説的反応(paradoxical reaction)が報告されており、強膜炎例では推奨されない
    • 化膿性汗腺炎に伴うPUKではアダリムマブが有効であったとの報告がある7)
  • 関節リウマチ本体のDMARDs治療:疾患修飾性抗リウマチ薬を早期から積極的に用いて関節破壊の進行を阻止する。メトトレキサートなどの免疫抑制薬や抗TNF-α抗体などの生物学的DMARDsが中心となる。近年では発症早期から生物学的製剤を用いることで骨破壊が抑えられ、長期的な生活の質(QOL)が著しく改善してきている。関節症状緩和にはNSAIDsやステロイド内服を短期間併用する
  • 感染予防:免疫抑制薬や生物学的製剤の使用は導入前・導入中に全身検査を行い、B型肝炎ウイルスの再活性化や結核の潜在感染症のスクリーニングが必須である
Q PUKの治療でステロイド点眼は使えますか?
A

局所ステロイド点眼は角膜融解(keratolysis)を助長する可能性があるため、PUKの治療では慎重に使用する必要がある。治療の中心は全身的な免疫抑制療法であり、経口プレドニゾロン1〜1.5mg/kg/日を基軸に、関節リウマチ合併例ではメトトレキサート、血管炎合併例ではシクロホスファミドが併用される。局所治療としてはシクロスポリン点眼やドキシサイクリン内服が推奨される。

角膜穿孔または穿孔切迫例は外科的介入の適応となる。

  • 結膜切除術(Brownの手術):Mooren潰瘍に対して有効である。潰瘍両端から2時間分の位置まで、輪部から3〜4mm幅の充血した結膜を切除する。膠原病に併発する周辺部潰瘍にも応用される
  • 角膜上皮形成術結膜切除後に強膜を露出した状態では病的結膜が再伸展する可能性があるため、ドナー角膜から作製した薄い角膜上皮片を角膜輪部に堤防状に2〜3片縫着する。術後はコンタクトレンズを装用する
  • 表層角膜移植術:病勢が強く角膜穿孔が避けられない場合に施行する。保存角膜を用い、潰瘍底の増殖組織をゴルフ刀で十分に掻破してから移植する。Brownの手術や角膜上皮形成術と併用してもよい
  • 層状角膜移植(lamellar keratoplasty):チェックポイント阻害薬関連PUKの穿孔例で層状ミニ角膜移植が施行された報告がある5)
  • 羊膜移植:Mooren潰瘍や膠原病併発PUKに効果があったとの報告がある
  • Tenon嚢スリンググラフト:進行したPUKで砂時計様角膜を呈する例に対し、修正Tenon嚢スリング環状パッチ移植が報告されている4)。自家組織であり拒絶反応がない利点がある
  • パッチ移植術穿孔性強膜軟化症で穿孔部に対するパッチ移植術などの外科的強膜修復を行い、眼球萎縮を防ぐ

術後は拒絶反応抑制のため、ステロイドや免疫抑制薬の点眼・全身投与を継続する必要がある。強膜炎を背景とした穿孔例では、強膜の菲薄化が広範であり術後も病勢が持続しやすいため、全身免疫抑制療法との併用が不可欠となる。

結膜下デキサメタゾンインプラント(Ozurdex)の結膜下注射がPUKに対して奏効した症例が報告されている。全身的免疫抑制療法に耐えられない高齢患者において、3回の注射により11か月間にわたり強膜融解や眼圧上昇なく炎症が制御された8)

6. 病態生理学・詳細な発症機序

Section titled “6. 病態生理学・詳細な発症機序”

PUKの病態は液性免疫と細胞性免疫の両方が関与する。関節リウマチや血管炎では関節滑膜・血管壁に炎症性サイトカインが過剰産生され、全身にⅢ型アレルギー反応の素地がつくられる。自己反応性抗体が産生する免疫複合体は、角膜輪部〜周辺部の血管に沈着して補体系の古典経路を活性化する。補体活性化により好中球やマクロファージの走化性が誘導され、これらの炎症細胞がコラゲナーゼやプロテアーゼを放出する。

前炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-6など)は角膜実質細胞(keratocyte)を刺激してマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)を産生させる1)。MMPは角膜周辺部のコラーゲンを分解し、角膜菲薄化と潰瘍形成を進行させる。関節リウマチの関節病態では関節滑膜リンパ球浸潤・血管新生・滑膜増殖が生じ、炎症性サイトカインが軟骨細胞死や破骨細胞活性化を介して組織破壊を起こすが、同様の組織破壊機序が角膜周辺部でも働くと考えられている。

近年、Th17細胞とIL-17の役割が注目されている1)。TGF-β1・IL-6・IL-21などのサイトカインがTh17分化を促進し、IL-1がTh17の分化をさらに刺激する。Th17が分泌するIL-17はMMP産生を増強し、角膜実質の分解を促進する1)。Th17の抑制がPUKの眼合併症を軽減するとの報告がある1)

肉芽腫性酒さでは表皮からIL-37が放出され、肥満細胞を活性化してキマーゼ・トリプターゼ・MMPなどのプロテアーゼを放出させる1)。この炎症微小環境がTh17偏向を促し、PUK発症につながると考えられている1)

周辺部角膜潰瘍や壊死性強膜炎を合併した場合、視力予後は不良であることが多い。壊死性強膜炎は60歳代に好発し、両眼性発症は約60%を占め、早期の適切な治療が行われないと失明や眼球温存困難に至る。悪性関節リウマチでは、全身の血管炎による肺・心・腎合併症が視機能のみならず生命予後にも影響する。穿孔性強膜軟化症は典型的には長期にRAを加療していた患者に起こり、典型的な所見を呈する時期にはすでに治療時期を逸していることが多い。早期診断と早期治療介入が予後改善の鍵である。

角膜周辺部が病変の好発部位となる理由

Section titled “角膜周辺部が病変の好発部位となる理由”

角膜輪部角膜上皮結膜上皮の境界部であり、血管系・免疫系・神経系が密集した領域である。輪部にはランゲルハンス細胞が豊富に存在し、抗原提示に関与する。中央角膜は無血管であるのに対し、周辺部は輪部血管網から免疫複合体や炎症細胞が供給されやすい。この解剖学的特性により、膠原病に伴う周辺部潰瘍では免疫複合体が角膜輪部〜周辺部に沈着してⅢ型アレルギー反応を惹起し、浸潤した免疫細胞から放出される細胞外基質分解酵素が潰瘍形成に関与する。

Q なぜ角膜の周辺部に病変が生じるのですか?
A

角膜輪部は血管網・免疫系・神経系が密集した領域であり、ランゲルハンス細胞も豊富に存在する。中央角膜は無血管であるのに対し、周辺部は輪部血管網から免疫複合体や炎症細胞が供給されやすい。自己免疫疾患では免疫複合体が輪部血管に沈着して補体系を活性化し、好中球やマクロファージが集積して角膜実質を破壊するため、病変は周辺部に好発する。

免疫チェックポイント阻害薬関連PUK

Section titled “免疫チェックポイント阻害薬関連PUK”

免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の普及に伴い、irAEとしてのPUKが報告されている。イピリムマブ(抗CTLA-4抗体)とニボルマブ(抗PD-1抗体)の併用療法では、irAEの発症率が90%超とされる5)。ICI関連PUKは高用量ステロイド点眼やシクロスポリン点眼に抵抗性を示すことがあり、層状角膜移植が必要となった例も報告されている5)。腫瘍治療の継続とirAE管理の両立が課題であり、腫瘍内科との連携が不可欠である。

結膜下デキサメタゾンインプラント

Section titled “結膜下デキサメタゾンインプラント”

全身的免疫抑制療法に耐えられない患者に対し、結膜下デキサメタゾンインプラント(Ozurdex)の結膜下注射が試みられている8)。反復投与により長期的な炎症制御が達成され、強膜融解や眼圧上昇を認めなかった8)。全身副作用を回避できる局所治療として今後の検証が期待される。

Th17/IL-17経路がPUKの病態に深く関与することから、Th17を標的とした治療が注目されている。肉芽腫性酒さに合併したPUKに対しイソトレチノインが奏効した症例では、イソトレチノインのTh17抑制作用と制御性T細胞促進作用が関与した可能性が示唆されている1)

進行したPUKに対する修正Tenon嚢スリンググラフトが報告されている4)。自家組織であるため拒絶反応がなく、ドナー角膜が入手困難な状況でも施行可能である4)


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