涙液減少型
Sjögren症候群:涙腺・唾液腺の慢性炎症性自己免疫疾患。推定患者数50万〜100万人。40歳代中心の中高年女性に多い(男女比1:14)
非Sjögren型:加齢による涙腺機能低下、糖尿病、サルコイドーシス、GVHD(移植片対宿主病)など
薬剤性:抗ヒスタミン薬・β遮断薬・利尿薬・向精神薬・経口避妊薬などが涙液分泌を抑制する
ドライアイ症候群(dry eye syndrome)は、さまざまな要因により涙液層の安定性が低下する疾患である。眼不快感や視機能異常を生じ、眼表面の障害を伴うことがある。
**日本のドライアイ研究会による定義(2016年改訂)**では、以下のとおり定義されている。
「さまざまな要因により涙液層の安定性が低下する疾患であり、眼不快感や視機能異常を生じ、眼表面の障害を伴うことがある」
日本の定義は涙液層の安定性低下を病態の首座と位置づけた点が特徴である。フルオレセイン染色などによる上皮障害の陽性所見は診断基準から除外されており、涙液安定性低下型DED(BUT短縮型)を確実に診断できるようになっている。
旧定義(2006年・ドライアイ研究会)では「さまざまな要因による涙液および角結膜上皮の慢性疾患であり、眼不快感や視機能異常を伴う」とされていた。日本は1995年、2006年、2016年と3回にわたって診断基準を改訂しており、ドライアイ診療の先進国として国際的に評価されている7)。
TFOS DEWS II(2016年) の定義は「涙液層の恒常性の喪失を特徴とする眼表面の多因子疾患であり、涙液層の不安定性および高浸透圧、眼表面の炎症および損傷、および神経感覚異常が病因的役割を果たす」とされている。日本の定義が「涙液層の安定性低下」を首座とするのに対し、国際定義では涙液浸透圧上昇・眼表面炎症・神経感覚異常も明示されている点が異なる。
日本の有病率:
海外の有病率:
40〜50歳代が最も罹患しやすく、女性に多い。眼科受診の主要な理由の一つであり、デジタルデバイスの普及に伴い増加傾向にある1)。
Sjögren症候群の推定患者数は日本で50万〜100万人とされ、40歳代を中心とする中高年女性に多く、男女比は約1:14である。Sjögren症候群は原発性(約70%)と続発性(約30%、膠原病合併)に分類される。膠原病のうち関節リウマチは重症ドライアイ(続発性Sjögren症候群)を伴うことが多い。

ドライアイの症状は多彩である。「涙液層機能不全(tear film dysfunction)」と呼ぶ方がより実態に即している。
不安定な涙液層が角膜を刺激し、脳に信号を送ることで反射性涙液分泌が誘発されます。しかし、この反射性の涙は量が一時的に多いだけで涙液層の安定性を回復させるには不十分であり、根本的な問題は解消されません。これがドライアイ患者に流涙が起こる理由です。
ドライアイは涙液減少型と蒸発亢進型に大別され、多くの症例で両者が混在する。さらに**水濡れ低下型(BUT短縮型)**はアジア人に多く報告される病型であり、涙液分泌量が正常でも涙液安定性が著しく低下する特徴を持つ。
涙液減少型
Sjögren症候群:涙腺・唾液腺の慢性炎症性自己免疫疾患。推定患者数50万〜100万人。40歳代中心の中高年女性に多い(男女比1:14)
非Sjögren型:加齢による涙腺機能低下、糖尿病、サルコイドーシス、GVHD(移植片対宿主病)など
薬剤性:抗ヒスタミン薬・β遮断薬・利尿薬・向精神薬・経口避妊薬などが涙液分泌を抑制する
蒸発亢進型
マイボーム腺機能不全(MGD):脂質層の質的・量的低下により涙液蒸発が亢進する。ドライアイの主要原因の一つ
瞬目異常:デジタルデバイス使用時の瞬目回数減少と不完全瞬目1)
環境因子:乾燥・エアコン・風・低湿度。加湿器やサイドパネル付き眼鏡が有効1)
コンタクトレンズ装用:世界のCL装用者は約1.5億人。装用によって涙液層の不安定化とDED症状リスクが上昇する8)
マスク関連ドライアイ(MADE):フェイスマスク上縁から漏出する呼気が眼表面への気流を生み、涙液蒸発を促進する。有病率は約18.3%と報告されている。マスク上縁を医療用テープで固定し気流を遮断することが有効な予防策である4)
その他の原因として、LASIK/PRK後(通常一過性)、眼瞼の異常(兎眼・内反)、神経栄養性角膜症(三叉神経障害)、Stevens-Johnson症候群、ビタミンA欠乏症などがある。
TFOS Lifestyle報告書(2023年)は、現代のライフスタイルがドライアイリスクを高める機序を体系的に整理している8)。
デジタル環境のリスク:
化粧品・アイメイクのリスク:
栄養のリスク:
危険因子(日本ドライアイ診療ガイドライン):
2型糖尿病とMGD:
スクリーン作業中、瞬目回数が通常の約16回/分から5〜7回/分まで著明に低下し、さらに不完全瞬目(まぶたが完全に閉じない瞬目)が増加します9)。不完全瞬目では脂質層が角膜全面に均一に伸展されず、油層が薄い部分から涙液蒸発が亢進します。20-20-20ルール(20分ごとに20フィート先を20秒見る)を実践し、意識的に完全瞬目を行うことが推奨されます9)。
以下の2項目をともに満たせばドライアイと確定診断される。
2016年改訂により、フルオレセイン染色による上皮障害の所見は確定診断の必須項目から除外された。涙液安定性低下型ドライアイ(BUT短縮型)が大半を占める日本の臨床実態を反映した変更である。
旧診断基準(2006年版)では「自覚症状・涙液異常・角結膜上皮障害の3要素」を満たすものがドライアイ(確定例)とされていた。
日本ドライアイ診療ガイドラインでは、症状評価に信頼性・妥当性・反応性を満たす質問票の使用が推奨されている7)。
4項目中2項目以上で診断する:
ドライアイでは症状と客観的検査所見が乖離することが多いため、主観的症状を定量化する質問票が開発されている。TFOS DEWS IIIでも症状評価は診断・治療効果判定の基盤として位置づけられている1)。日本ドライアイ診療ガイドラインも質問票の信頼性・妥当性・反応性を重視している7)。
OSDI(眼表面疾患指数): 12項目の質問票で、臨床試験の患者報告アウトカム(PRO)として国際的に最も広く使用されている。「眼症状」「視覚関連機能」「環境トリガー」の3サブスケールから構成され、0〜12点が正常、13〜22点が軽症、23〜32点が中等症、33〜100点が重症と分類される。特異度0.83、感度0.60である。
SPEED(標準的ドライアイ評価質問票): 8項目で症状の頻度と重症度を評価する。0〜28点。感度0.90、特異度0.80と日常臨床での経時的モニタリングに適する。
SANDE(ドライアイ症状評価): 2項目のみの最も簡潔な質問票。視覚的アナログ尺度(VAS)で頻度と重症度を評価する。
用途によって選択してください。OSDIは12項目でQOLへの影響も評価でき、臨床試験のPROとして国際的に標準化されています1)。SPEEDは8項目で迅速に施行でき、感度0.90と高いため日常臨床での経時的モニタリングに適しています。両者を併用するのも有効です。
日本のドライアイ研究会が提唱するわが国独自の診断分類である。開瞼直後の涙液層破綻パターンにより涙液層安定性低下の原因を特定し、TFOT(層別治療)に直結させる。
Area break
パターン:開瞼後にフルオレセインの上方移動がみられず、広範囲で直ちにBUTが起こる。mucous plaque/filamentを伴う
示唆する病態:重度の涙液減少型。上皮障害も高度
第一選択治療:上下涙点プラグ挿入で涙液量を増加させる
Line break
Spot break
パターン:開瞼直後に類円形の破綻が出現。涙液量はほぼ正常
示唆する病態:水濡れ低下型。膜型ムチン(MUC16)の発現異常による角膜水濡れ性低下
第一選択治療:ジクアホソルナトリウムまたはレバミピド点眼
Dimple break
パターン:上方伸展する油層の先端に窪み(dimple)ができ、水濡れ不良部で横線状に破綻
示唆する病態:水濡れ低下型
第一選択治療:ジクアホソルナトリウムまたはレバミピド点眼
Rapid expansion
パターン:小さなline breakが急速に拡大する
示唆する病態:水濡れ低下型
第一選択治療:ジクアホソルナトリウムまたはレバミピド点眼
Random break
BUT短縮型ドライアイは、涙液量は正常(Schirmer値正常)で生体染色所見もほとんどないにもかかわらず、BUTが著明に短縮し強い自覚症状を呈する特殊型である。膜型ムチン発現異常による水濡れ性低下が原因と考えられている。
涙液量は正常(Schirmer値正常)であるにもかかわらず、BUTが短縮しているタイプのドライアイです。日本で最も多い病型であり、従来の診断基準では「ドライアイ疑い」に分類されていました。2016年改訂で正式にドライアイと診断されるようになり、TFODに基づく治療選択が重要です。ジクアホソルナトリウムやレバミピドが有効とされています。
フルオレセインBUT(涙液層破壊時間):
非侵襲的BUT(NIBUT): フルオレセイン点眼自体が涙液層の安定性に影響を与えるため、Placidoディスクの反射像を利用した非侵襲的な測定法が開発されている。感度82〜84%、特異度76〜94%であり、赤外線照明により反射性流涙を抑制できる5)。日本国内ではKeratograph 5M(オクルス社)やIdra(SBM社)が利用可能である。
フルオレセイン染色: 角膜・結膜上皮の異常を検出する基本検査である。NEIスケールでは角膜を5区域に分け各区域0〜3点(合計0〜15点)で評価する5)。結膜上皮のバリア機能は角膜上皮よりも脆弱であり、ドライアイでは結膜上皮も同等以上に障害される。ブルーフリーフィルターを用いると結膜上皮の状態がより鮮明に観察できる。
リサミングリーンとローズベンガル: 結膜の死細胞・粘液を染色する。van Bijsterveldスコア(ローズベンガル9点満点)でSjögren症候群の眼科診断基準(≥3点で陽性)に用いられる。リサミングリーンはローズベンガルよりも毒性が低く忍容性が高い。
Schirmer試験: 1mm間隔目盛付の5mm×35mm濾紙を使用する。
再現性は乏しいがスクリーニングとして有用である。
涙液メニスカスの評価: 眼表面全体の涙液量の75〜90%がメニスカス部に存在する。正常値は約0.2mm。染色前に観察することで涙液量の多寡を直接把握でき、涙液減少型の判定に有用である。前眼部OCT(AS-OCT)で涙液メニスカス高(TMH)・面積・体積を客観的に定量測定できる6)。
涙液浸透圧: TearLab浸透圧計で測定する。300 mOsm/L未満(両眼差8未満)が正常、300〜320が軽度、320〜340が中等度、340超が重度である5)。
粘膜類天疱瘡-9検査(InflammaDry): 涙液中の粘膜類天疱瘡-9を測定するポイント・オブ・ケア検査で、40 ng/mL以上で陽性である。抗炎症治療の開始判断に有用であるが、アレルギー性結膜炎や感染症では偽陽性となりうる5)。
ラクトフェリン検査: 涙腺の腺胞細胞が産生する抗菌・抗炎症タンパク質で、ドライアイ患者では低下する。TearScan 270 MicroAssay Systemで測定可能である5)。
脂質層厚(LLT): LipiViewインターフェロメーターで干渉色単位(ICU)として定量的に評価する。測定範囲は0〜240 ICU。不完全瞬きの自動検出機能も搭載している6)。
マイボグラフィ: 赤外線透過照明法によりマイボーム腺構造を可視化する検査である。マイボーム腺消失(dropout)を4段階(0=0〜25%消失、1=26〜50%、2=51〜75%、3=76〜100%)で評価する6)。消失度や構造変化の程度がMGD治療方針の指針となる。
前眼部OCT(AS-OCT): 涙液メニスカスの定量測定に加え、角膜厚・上皮厚マップ・マイボーム腺の断面画像が取得可能である6)。
共焦点レーザー走査顕微鏡: 角膜の細胞レベル評価に用いる。神経線維密度・炎症細胞密度・上皮細胞形態を評価でき、角膜神経障害性疼痛や神経栄養性疾患の鑑別に有用である6)。
Keratograph 5M(Oculus社)
LipiView II(J&J Vision社)
機能:干渉計法によるマイボーム腺評価と脂質層の定量評価。不完全瞬目を自動計算するビデオモジュールを搭載する6)
日本のドライアイ研究会が推奨する治療概念である。TFODで涙液層安定性低下の原因を特定し、原因となる涙液層の恒常性維持に見合った治療を選択する。
TFOT 層別治療対応表:
| 治療対象層 | 治療法 |
|---|---|
| 油層 | 温罨法、眼瞼清拭、少量眼軟膏、ジクアホソルナトリウム(油層伸展促進) |
| 液層 | 人工涙液、涙点プラグ、ヒアルロン酸ナトリウム、ジクアホソルナトリウム |
| 分泌型ムチン | ジクアホソルナトリウム、レバミピド |
| 膜型ムチン | ジクアホソルナトリウム、レバミピド |
| 上皮細胞(杯細胞) | 自己血清、レバミピド |
| 眼表面炎症 | ステロイド、レバミピド |
現在日本で保険適用があり広く使用されている点眼薬を以下に示す。
0.1% / 0.3% ヒアルロン酸ナトリウム点眼液(ヒアレイン®): 角膜上皮の保護と水分保持に用いる。日本ドライアイ診療ガイドラインはヒアルロン酸点眼を「推奨」している7)。
3% ジクアホソルナトリウム点眼液(ジクアス® / ジクアスLX®): P2Y2受容体作動薬。水分・ムチン分泌促進および油層伸展促進作用を持つ。日本で開発された薬剤である。日本ドライアイ診療ガイドラインは「実施する」推奨(強い推奨)7)。
2% レバミピド点眼液UD(ムコスタ®点眼液UD): ムチン産生促進・抗炎症作用を有する。日本ドライアイ診療ガイドラインは「実施する」推奨(強い推奨)7)。
人工涙液(ソフトサンティア等、防腐剤フリー): 治療の基本である。防腐剤フリー製剤が望ましい。日本ドライアイ診療ガイドラインは人工涙液を「提案」(弱い推奨)している7)。
0.3% オフロキサシン眼軟膏(タリビッド®眼軟膏): 防腐剤無添加、油性成分が涙液上で伸展。重症例の保護剤として流用される。
反射性涙液分泌が低下している場合、防腐剤を含まない点眼薬を使用することが望ましい。炎症が症状の悪化に関与していると考えられる場合、ステロイド点眼薬の併用も考慮する。
軽度〜中等症:
重症:
シクロスポリン点眼: T細胞を介した炎症を抑制する。0.05%(レスタシス®)や0.09%ナノエマルジョン(Cequa®)がある1)。日本ドライアイ診療ガイドライン(2019年版)作成時点では保険適用外であったが、近年承認された製剤もある7)。
リフィテグラスト点眼(Xiidra®): LFA-1/ICAM-1相互作用を阻害し、T細胞の活性化と眼表面への遊走を抑制する1)。海外で使用可能。
ステロイド点眼: 急性増悪時の短期使用で炎症を制御する。日本ドライアイ診療ガイドラインは「提案」(眼圧上昇に留意)としている7)。
ドライアイ管理の基盤である1)。デジタルデバイス使用時間の管理、室内の加湿、十分な睡眠、オメガ3脂肪酸を含む食事が推奨される1)。ただし、DREAM試験(Dry Eye Assessment and Management、535名・多施設二重盲検RCT)では、オメガ3脂肪酸(EPA 2000mg+DHA 1000mg/日)の12か月間摂取はプラセボと比較してOSDIスコアの有意な改善をもたらさなかった(群間差-1.9、p=0.21)3)。高用量サプリメントとしてのオメガ3脂肪酸の追加効果には限界がある可能性がある。サイドパネル付き眼鏡や保湿眼鏡は蒸発を抑制し症状を改善する1)。
MGDは蒸発亢進型ドライアイの主因であり、積極的な治療が必要である1)。
マイボーム腺機能不全(MGD)による蒸発亢進型ドライアイに有効です1)。マイボーム腺の脂質の融点は約32〜35℃であり、温罨法で脂質を融解・排出させることで脂質層が改善します。LipiFlowなどの自動デバイスはより効率的な加温・圧出が可能で、前向き研究で術後3か月のBUT・OSDI改善が報告されています1)。
点眼治療で効果不十分な涙液減少型ドライアイに適応がある。日本ドライアイ診療ガイドラインは涙点プラグを「実施する」推奨としている7)。
シリコンプラグ:
液体プラグ(キープティア®、高研社): アテロコラーゲン液体プラグである。主な特徴:
挿入部位の選択:
合併症: 流涙、プラグ迷入、自然脱落、涙点径の拡大、角膜上皮障害、肉芽形成、涙囊炎
BUT短縮型ドライアイでは流涙や霧視を生じることがあり注意が必要である。また、眼表面の炎症が活動性の場合は、炎症制御後に挿入する方が望ましい。
いいえ。涙点プラグの適応は点眼治療で効果不十分な涙液減少型ドライアイです7)。Sjögren症候群、Stevens-Johnson症候群、GVHDに伴う重症例もよい適応となります。一方、涙液量が必ずしも低下していないBUT短縮型ドライアイでは流涙や霧視を生じることがあり注意が必要です。また、眼表面の炎症が活動性の場合は、炎症制御後に挿入する方が望ましいとされています。
日本ドライアイ診療ガイドラインはNSAID点眼を「実施しない」提案、自己血清点眼を一般的なドライアイには「実施しない」提案としている7)。
涙液層は外側から脂質層(マイボーム腺由来)、水層(涙腺由来)、ムチン層(杯細胞・角膜上皮由来)の3層構造をとる。この構造が安定した涙液膜を形成し、角結膜の保護・栄養供給・屈折力の維持・抗菌作用を担う。
涙液量が極端に少ないと第1段階が成立せず area break が生じる。水濡れが悪い(膜型ムチン異常)と spot/dimple break が、液層蒸発亢進では random break が生じる。
涙腺は主涙腺として涙液の水層成分(水・電解質・タンパク質)を分泌する2)。その分泌は副交感神経・交感神経・感覚神経による厳密な神経制御下にある2)。
環境変化に対する迅速な応答が可能であり、涙液の電解質濃度のわずかな変化がドライアイと相関する2)。
膜型ムチン(MUC1/MUC16)が角膜上皮の水濡れ性を維持している。発現が障害されると、リン脂質(疎水性)の細胞膜が露出し水濡れ性が低下する。これによりBUT短縮型ドライアイを発症し、高次収差も増加する。
涙液層の不安定化は以下の悪循環を形成する。
この炎症カスケードの悪循環がドライアイの慢性化・進行をもたらす。
DEWS IIは自覚症状の有無と眼表面所見の有無に基づき分類している。自覚症状・眼表面所見ともに陽性の場合がドライアイと診断される。眼表面所見があるが自覚症状がない場合は「神経麻痺状態(知覚機能不全)」として予防的管理の対象となる。
TFOS DEWS III(2025年)は、診断サブ分類(aqueous deficient / evaporative / mixed)に基づくエビデンスベースの治療アルゴリズムを提示している1)。涙液補充・涙液保持・涙液刺激・眼科サプリメント・マイボーム腺治療を病型ごとに組み合わせる体系的なアプローチが推奨されている1)。
白内障手術やLASIKの前にドライアイ(特に蒸発亢進型・MGD)を積極的に治療することで、術後の視覚的転帰と患者満足度が改善する1)。前向き研究では、LASIK前のLipiFlow治療により術後3か月のOSDI・BUTが有意に改善したことが報告されている1)。TFOS DEWS IIIは「術前のドライアイ管理を標準治療とすべき」と提言している1)。
モツギバトレプ点眼液0.3%(アバレプト®懸濁性点眼液): 世界初の TRPV1 拮抗作用 を持つドライアイ治療薬である。2025年12月に持田製薬が日本で承認取得し、2026年4月に千寿製薬から発売された。眼表面の侵害受容器であるTRPV1チャネルを阻害することで「ヒリヒリ・ゴロゴロ感」など神経感作由来の自覚症状を直接抑制する点が、涙液補充(人工涙液)や分泌促進(ジクアホソル・レバミピド)、抗炎症(シクロスポリン)といった既存薬とは異なる。用法は 1回1滴・1日4回 点眼。Phase 2b 試験(SJP-0132、本邦・国内多施設・無作為化二重遮蔽用量設定試験)では DEQS(Dry Eye-Related Quality-of-Life Score)の有意な改善が示されており13)、これに基づく Phase 3-02 試験で承認に至った。涙液量・染色スコアでは既存薬と差をつけにくいが、 自覚症状優位型(神経痛様症状) や 既存治療で症状残存例 での新たな選択肢として位置づけられる。
ペルフルオロヘキシルオクタン(Miebo®): 米国FDAが2023年に承認した新規 tear stabilizer である。蒸発亢進型DEDを標的とし、涙液の蒸発を物理的に抑制する。米国では処方薬、他地域では医療機器として扱われる場合がある。日本での承認状況は確認が必要である1)。
鼻内電気刺激(nasal neurostimulation): 三叉神経を電気刺激して nasolacrimal reflex(鼻涙反射)を誘発し、涙液分泌を促進する。TFOS DEWS IIIはNeuromodulationの選択肢として記載している1)。
バレニクリン点鼻薬(Tyrvaya®): 三叉神経末梢ニコチン受容体を刺激して反射性涙液分泌を誘発する。米国でドライアイに対して承認されている1)。
生物学的涙液代替物: 自己血清・同種血清・多血小板血漿(PRP)が難治例に対する選択肢として研究されている1)。
低レベル光線治療(LLLT): MGDへの抗炎症効果が報告されている1)。