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腫瘍・病理

結膜乳頭腫(Conjunctival Papilloma)

結膜乳頭腫は、ヒトパピローマウイルス(HPV: Human Papillomavirus)感染によって生じる結膜の良性上皮性腫瘍である。腫瘍血管を枝として腫瘍細胞が木の葉のように増殖し、ピンク色でカリフラワー状の腫瘤を形成する。

形態上、以下の2型に大別される。

  • 有茎性(exophytic)型:細い血管茎を介して結膜面から外側へ成長する典型形態
  • 無茎性(sessile)型:広基性に発育し、結膜扁平上皮癌との鑑別が困難な場合がある

結膜良性腫瘍のなかでは比較的多く遭遇する疾患である。若年者から中年にかけての発症が多い。HPV感染が多くの症例で発症に関与し、多発することもある。免疫抑制状態では多発・再発しやすい傾向がある。

結膜乳頭腫の細隙灯写真:有茎性病変と毛細血管茎(ヘアピン血管)
結膜乳頭腫の細隙灯写真:有茎性病変と毛細血管茎(ヘアピン血管)
Theotoka D, Morkin MI, Galor A, Karp CL. Update on Diagnosis and Management of Conjunctival Papilloma. Eye Vis (Lond). 2019;6:18. Figure 1. PMCID: PMC6580461. DOI: 10.1186/s40662-019-0142-5. License: CC BY 4.0.
(a)眼瞼を翻転した細隙灯写真で、融合した乳頭腫病変(50歳男性、上眼瞼結膜)が確認できる。(b)透明上皮を通じて、乳頭腫の特徴的な毛細血管茎(指状突起・ヘアピン血管)が明瞭に可視化されている。本文「2. 主な症状と臨床所見」の項で扱う有茎性乳頭腫の毛細血管茎(ヘアピン血管)に対応する。
  • 異物感・違和感:腫瘤による機械的刺激が原因となる
  • 充血:腫瘍血管由来の結膜充血
  • コンタクトレンズ不耐症:無茎性の大型病変では着用困難になることがある
  • 無症状:小型病変では自覚症状を欠く場合もある

臨床所見(医師が診察で確認する所見)

Section titled “臨床所見(医師が診察で確認する所見)”

典型的な有茎性病変では、ピンク色(赤色調)のカリフラワー状腫瘤が細い血管茎で結膜面に付着した所見が認められる。表面は凹凸不整で血管が豊富であり、多発することがある。

無茎性型は広基性発育を示す。上眼瞼結膜では多発性の巨大乳頭状肥大病変として現れ、中央壊死を伴うカリフラワー状外観を呈することがある1)。この形態は巨大乳頭結膜炎との臨床的鑑別が困難な場合があり、コンタクトレンズ装用者での報告もある1)

  • HPV 6型・11型(低リスク型):良性乳頭腫の主要な原因ウイルス。悪性化のリスクは低い
  • HPV 16型・18型(高リスク型):まれに関与し、悪性転化のリスクを持つ
  • HPV感染:性行為・手指接触・医原性などの感染経路が考えられる
  • 免疫抑制状態:全身免疫低下により多発・再発しやすくなる
  • 小児・若年者:下円蓋・眼球結膜への好発が報告されている

細隙灯顕微鏡検査で腫瘤の形態・血管茎の有無・境界を観察する。有茎性病変では細い血管茎が確認できることが診断の助けとなる。

確定診断には必ず病理組織検査を行う。結膜乳頭腫と結膜扁平上皮癌の鑑別は臨床的に困難な場合があり、組織学的診断が不可欠である。

組織学的には、血管を伴う乳頭状突起に沿って角化をほとんど伴わない棘細胞増殖性上皮が増殖する。細胞異型は通常認められない。

  • 結膜扁平上皮癌:広基性発育・花火状腫瘍血管を特徴とし、有茎性血管茎を欠く
  • 結膜母斑:色素沈着(メラニン)を伴うことが多い
  • 化膿性肉芽腫霰粒腫・術後などの炎症歴があり、急速発育が特徴的
  • 巨大乳頭結膜炎:コンタクトレンズ装用者に多い。無茎性乳頭腫との鑑別にはときに生検が必要1)
Q 結膜乳頭腫と結膜扁平上皮癌はどう見分けるか?
A

最も重要な臨床的鑑別点は腫瘍の付着形態である。乳頭腫は細い血管茎を介して結膜面から成長する有茎性を示すのに対し、扁平上皮癌は広基性に発育し血管茎を欠く。ただし無茎性乳頭腫は広基性発育を示すため、臨床的鑑別が困難な場合がある。この場合は病理組織検査による確定診断が必須となる。

腫瘍根部を含む完全切除が第一選択である。単純切除のみでは再発しやすいため、切除面に冷凍凝固(freeze and thaw)を2セット追加する。

治療フロー:

  1. 腫瘍根部を含む切除(血管茎を根部から含める)
  2. 切除面に冷凍凝固(freeze and thaw)2セット施行
  3. 切除検体は必ず病理組織検査へ提出(扁平上皮癌の除外)

単純切除後に再発した場合は以下を検討する。

  • 再切除+冷凍凝固:再発病変の外科的切除を繰り返す
  • マイトマイシンC(MMC)点眼:適応外使用として報告あり
  • インターフェロンα点眼:局所免疫療法として使用される場合がある
  • 経口シメチジン(H2受容体拮抗薬):HPV関連乳頭腫への免疫調節効果が報告されている。48歳女性の無茎性乳頭腫例で手術後に経口シメチジンを投与し、3か月の経過観察中に再発を認めなかった症例が報告されている1)
Q 結膜乳頭腫は切除後に再発するか?
A

再発は比較的多く認められる。HPVウイルスが切除断端周囲に残存するためと考えられており、これが単純切除のみでは再発しやすい理由である。再発抑制のためには腫瘍根部を含む切除と冷凍凝固(freeze and thaw)2セットの追加が重要である。免疫抑制状態では特に再発しやすい。

6. 病態生理学・詳細な発症機序

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HPV(主にtype 6, 11)は扁平上皮細胞に感染し、ウイルスDNAが核内で増殖する。ウイルスがコードするE6・E7タンパクが宿主細胞の増殖制御因子(p53・Rbなど)に干渉し、上皮細胞の異常増殖を引き起こす。

結果として腫瘍血管を枝として腫瘍細胞が木の葉状に増殖し、乳頭状突起を形成する。この増殖パターンが臨床的なカリフラワー状外観をもたらす。

有茎性型では細い血管茎を通じた乳頭状成長が主体となる。これに対して無茎性型は広基性の水平方向の増殖パターンを示し、形態上は扁平上皮癌の広基性発育と類似する。無茎性型でも基底膜は保たれており、これが悪性腫瘍との本質的な相違点となる。

通常のtype 6・11型は低リスク型であり、良性経過をたどる。まれにHPV高リスク型(16・18型)が関与する場合があり、理論的に悪性転化のリスクが生じる。この場合も確定診断は病理組織検査による。

  1. Chang KL, Yeh SI. Sessile Papilloma Mimicking Giant Papillary Conjunctivitis. Ophthalmology.
  2. Liu Z, Lin Y. Conjunctival Papilloma. N Engl J Med. 2024;391(3):259. PMID: 39018535.
  3. Hsu CJ, Chang C, Huang YH. Successfully Treated Giant Conjunctival Papilloma. Ophthalmology. 2023;130(12):1341. PMID: 36681593.

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