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腫瘍・病理

脈絡膜骨腫

脈絡膜骨腫(choroidal osteoma)は、脈絡膜内に異所性の骨組織が形成される良性腫瘍である。眼底後極部に好発し、扁平黄白色の病変として観察される。原因は不明であり、骨性分離腫(異所性骨組織)説や炎症関与説がある。

経過中に色素沈着や網膜色素上皮RPE)の萎縮、脱灰などをきたすため、病期によって眼底所見が変化する。緩徐に増大する傾向があるが、病変はいずれ停止する。

  • 比較的まれな良性腫瘍であり、眼内腫瘍全体のごく一部を占める。
  • 若年女性に比較的多く、ホルモン分泌の関与が推定されているが原因は不明である。
  • 両眼性に生じることもある。
  • 後極部(特に視神経乳頭周囲)に好発する。

明確な分類体系はないが、病変の進行段階として以下が区別される。

段階特徴
初期後極部の黄白色または黄橙色調の斑状・扁平病変。隆起はほとんどない
進行期脱灰、RPE網膜外層への変性・萎縮が加わり眼底所見が変化する
CNV合併期脈絡膜新生血管CNV)を生じ、網膜出血・視力低下をきたす
Q 脈絡膜骨腫とはどのような腫瘍か?
A

脈絡膜に異所性の骨組織が形成される良性腫瘍である。後極部に好発し、若年女性にやや多い。悪性化や転移の報告はないが、黄斑部に進展すると視力低下をきたす。根本的な治療法はなく、経過観察が基本となる。

脈絡膜骨腫のマルチモーダル画像:眼底写真・蛍光眼底造影・超音波断層検査
脈絡膜骨腫のマルチモーダル画像:眼底写真・蛍光眼底造影・超音波断層検査
Shields CL, et al. Choroidal osteoma: multimodal imaging findings. Int J Retina Vitreous. 2018;4:30. Figure 1. PMCID: PMC6092861. License: CC BY.
眼底写真(a)では黄斑部に境界明瞭なオレンジ色の扁平病変を認める。蛍光眼底造影(b, c)では早期高蛍光と後期染色を示す。超音波断層検査(i)では脈絡膜骨腫に一致した高反射性プラーク像が確認できる。本文「2. 主な症状と臨床所見」の項で扱う眼底所見・画像所見に対応する。
  • 視野欠損:腫瘍部位に一致して生じる。初期は自覚しにくいことも多い。
  • 視力低下:病変が黄斑部に及ぶと著しい視力低下をきたす。
  • 網膜出血・硝子体出血CNVが発症した場合に生じる。急激な視力低下の原因となる。
  • 腫瘍が黄斑部に波及しない場合は、自覚症状が乏しいことがある。

後極部、特に視神経乳頭周囲に以下のような所見を呈する。

  • 黄白色〜黄橙色調の斑状病変であり、隆起はほとんどない。凹凸を伴うことがある。
  • 境界鮮明で扁平な黄白色隆起病変として観察される。腫瘍表面に微細な血管を伴うことが多い。
  • 進行とともに隣接するRPE網膜外層に変性・萎縮が生じ、眼底所見も変化する。

蛍光眼底造影FA

  • 早期から腫瘍に一致した斑状・顆粒状の過蛍光がみられる。
  • 後期にはびまん性の過蛍光となる。
  • CNV合併時は蛍光漏出が認められる。

超音波断層検査(Bモード)

  • 腫瘍に相当する部位の板状高反射像と、その後方の音響陰影(反射の消失・減弱)を認める。

CT(確定診断の決め手):

  • 腫瘍部位が骨と同等の高吸収値(高CT値)を示す。

OCT

  • 腫瘍高、CNV網膜下液の評価に有用である。

脈絡膜骨腫の発症機序は不明である。現時点では以下の仮説が提唱されている。

  • 骨性分離腫(choristoma)説:異所性の骨組織が脈絡膜に形成されるという先天的な異常を想定する。
  • 炎症関与説:炎症を契機とした骨化が生じるとする説。
  • ホルモン仮説:若年女性に比較的多いことから、ホルモン分泌との関連が推定されているが、具体的な機序は解明されていない。

悪性化や転移の報告はなく、腫瘍自体は良性の経過をたどる。

脈絡膜骨腫合併CNVのSD-OCTおよびOCTA像
脈絡膜骨腫合併CNVのSD-OCTおよびOCTA像
Rui X, et al. Intravitreal ranibizumab for choroidal neovascularization secondary to choroidal osteoma. Medicine (Baltimore). 2020;99(30):e21472. Figure 2. PMCID: PMC7386993. License: CC BY.
SD-OCT(A)では脈絡膜骨腫に合併した脈絡膜新生血管CNV)が高反射塊として検出され、網膜下液(SRF)の貯留と外網膜ブルッフ膜の構造異常を認める。OCTA(B)では脈絡膜毛細血管板層を越えた外網膜層へのCNV浸潤を確認できる。本文「4. 診断と検査方法」の項で扱うOCTOCTA所見に対応する。

後極部(特に視神経乳頭周囲)の黄白色扁平病変を眼底検査で認め、CTおよび超音波検査により確定診断を行う。

  • 眼底検査:後極部の黄白色〜黄橙色の扁平病変。病変の拡大・RPE変化・CNVの有無を評価する。
  • CT(確定診断):腫瘍部位に骨と同等の高吸収値(高CT値)を示すことが確定診断の決め手となる。
  • 超音波断層検査:板状高反射像と後方の音響陰影が特徴的であり、診断を支持する。
  • 蛍光眼底造影FA:早期からの斑状・顆粒状過蛍光、後期のびまん性過蛍光を認める。CNV合併時は蛍光漏出が加わる。
  • OCTRPE・神経網膜の変化、網膜下液CNVの有無を詳細に評価できる。

石灰化を伴う疾患との鑑別が重要である。

疾患鑑別ポイント
網膜芽細胞腫小児に多い。石灰化を伴う白色腫瘤。CT・超音波で評価する
星細胞過誤腫(結節性硬化症関連)視神経乳頭周囲・後極部の白色病変。石灰化あり
脈絡膜悪性黒色腫ドーム状隆起・色素性。FAで二重循環パターン。超音波で内部低反射
脈絡膜転移性腫瘍全身悪性腫瘍の既往。扁平・多発病変。FAで早期過蛍光
脈絡膜血管腫橙赤色。FAICGAで特徴的パターン。超音波で高反射
Q どうやって診断を確定するか?
A

CTで骨と同等の高吸収値を示すことが確定診断の決め手である。超音波検査での音響陰影と合わせて診断される。眼底検査で後極部の黄白色扁平病変を認めた場合に本疾患を疑い、CT・超音波による精査を行う。

根本的な治療法は確立されていないため、基本は経過観察を行う。腫瘍の拡大や新生血管の有無を定期的に評価することが重要である。黄斑部に波及しない間は視機能への影響が軽微であることが多い。

脈絡膜新生血管CNV)が確認された場合は、視力温存を目的として以下の対症療法が検討される。

  • 光凝固(レーザー光凝固CNVに対して行う。黄斑外の病変が適応になりやすい。
  • 光線力学療法(PDT:ベルテポルフィンを用いた光線力学療法。保険適用外ではあるが、一定の効果が報告されている。
  • 抗VEGF硝子体注射ラニビズマブアフリベルセプトベバシズマブなど。保険適用外であるが、CNVの退縮効果が期待される。

治療の適応と選択は、CNVの位置・視力・患者背景を考慮して個別に判断する。

Q 治療は必要か?
A

根本的な治療法はなく、基本的に経過観察を行う。脈絡膜新生血管が発症し視力低下を来した場合には、PDT抗VEGF硝子体注射による対症療法が行われる。いずれも保険適用外であるため、担当医と十分に相談のうえ方針を決定する。

6. 病態生理学・詳細な発症機序

Section titled “6. 病態生理学・詳細な発症機序”

脈絡膜骨腫の本態は脈絡膜内の異所性骨形成である。正常の脈絡膜組織に骨組織が生じる機序は未解明だが、以下の点が知られている。

  • 病変は徐々に拡大するが、いずれ停止する傾向がある。
  • 若年女性に比較的多くみられることから、ホルモン分泌の関与が推定されているが、分子的機序は不明である。
  • 骨性分離腫(choristoma)説は、胎生期の異常による骨組織の迷入を想定する。
  • 炎症説は、炎症後の骨化誘導を想定するが、明確な炎症既往を確認できないことが多い。

経過中に腫瘍の脱灰が生じることがある。脱灰が起こると、眼底での骨腫の境界が不明瞭となり、色調も変化する。脱灰後にCNVが発症しやすいとされる報告がある。脱灰の頻度や視力予後への定量的な影響については、現在も症例集積が進められている。

  • 腫瘍の直上に位置するRPE視細胞が経時的に変性・萎縮する。
  • CNVが発症すると血管からの漏出により網膜下液網膜出血が生じ、急激な視力低下をきたす。
  • 黄斑部に波及した場合は中心窩の光受容体が障害され、視力の著しい低下をきたす。一度生じた視力低下は回復が困難である。
  • 黄斑部に波及しない限り、視機能への大きな障害はない。
  • 病変が黄斑部まで及ぶと著しい視力低下をきたし、回復は望めない。
  • 両眼性例では、片眼の進行が先行しても他眼の経過に注意が必要である。
  • 悪性化・転移の報告はない。

保険適用外ではあるが、ラニビズマブアフリベルセプトによる抗VEGF硝子体注射CNV合併例に応用されている。症例報告・小規模シリーズでCNVの退縮・視力改善が報告されているが、投与プロトコル(間隔・回数・他治療との併用)に関するランダム化比較試験は現時点では存在しない。今後のエビデンス蓄積が期待される。

OCT血管造影(OCT-A)の進歩により、CNVの血管構造を非侵襲的に詳細に評価できるようになりつつある。脈絡膜骨腫におけるOCT-Aを用いたCNVの定量評価や経過観察への応用が今後の課題である。

脱灰がなぜ生じるか、脱灰後にCNVが発症しやすいのかについての分子機序は未解明である。骨代謝関連因子(RANKL・OPG等)との関連を調べる研究が進められている。

  1. Shields CL, Sun H, Demirci H, et al. Factors predictive of tumor growth, tumor decalcification, choroidal neovascularization, and visual outcome in 74 eyes with choroidal osteoma. Arch Ophthalmol. 2005;123(12):1658-1666.
  2. Shields JA, Shields CL. Intraocular Tumors: An Atlas and Textbook. 3rd ed. Philadelphia: Wolters Kluwer; 2015.
  3. Tsui I, Gillies MC, Barlow R, et al. Photodynamic therapy for choroidal neovascularization complicating choroidal osteoma. Retina. 2006;26(7):804-810.
  4. Nadarajah S, Blumenkranz MS. Intravitreal bevacizumab for choroidal neovascularization secondary to choroidal osteoma. Retina. 2009;29(6):888-890.

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