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角膜・外眼部疾患

フックス角膜内皮ジストロフィ(Fuchs Endothelial Corneal Dystrophy)

1. フックス角膜内皮ジストロフィとは

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フックス角膜内皮ジストロフィ(Fuchs Endothelial Corneal Dystrophy; FECD)は、角膜内皮細胞が両眼性に異常をきたす進行性疾患である。1910年 Ernst Fuchs が13例の症例を「dystrophia epithelialis corneae」として初報告し、後に内皮疾患であることが判明して現在の名称となった1)

角膜中央部の内皮面に滴状角膜(guttae/guttata)が出現し、徐々に周辺へ広がる。内皮細胞のバリア機能・ポンプ機能(Na⁺/K⁺-ATPase)が低下すると角膜実質の浮腫、さらに上皮浮腫・水疱形成へと進行する。Descemet膜が肥厚し不整となることで角膜の透明性が失われる。

IC3D(国際角膜ジストロフィ分類)第2版(Weiss 2015)では、FECDは「角膜内皮ジストロフィ」カテゴリに分類される15)。発症時期によって以下の2型に大別される。

  • 早期発症型(FECD1): 幼少期〜若年期に発症。VIII型コラーゲンα2鎖をコードする COL8A2 遺伝子(1p34.3-p32.3)の点変異(L450W, Q455K等)が主な原因1)
  • 後期発症型(FECD2以降): 第5〜6十年代で緩徐に発症。TCF4 遺伝子のCTGトリヌクレオチドリピート拡張が最多原因(欧米で79%)1)
指標数値出典
白内障術前患者の滴状角膜頻度1.2%国内多施設調査
日本・Kumejima Study 40歳以上有病率4.1%Higa 20117)
日本・女性有病率(40歳以上)5.8%Higa 20117)
日本・男性有病率(40歳以上)2.4%Higa 20117)
アイスランド・Reykjavik Eye Study 55歳以上女性11%, 男性7%Zoega 200610)
男女比(国際)2.5:1〜3.5:1(女性優位)Matthaei 20191)
日本人におけるTCF4リピート拡張の頻度47例中12例(26%)Nakano 20158)

黄色人種である日本人は、白色人種・黒色人種に比べてFECDの発症頻度が低い傾向がある。しかし、わが国でも高齢化社会の進行に伴い、今後さらに増加すると予測される。日本人は白人に比べ角膜内皮細胞密度が高いため、相対的に発症が遅いと考えられている。

隅角眼が多い日本人ではレーザー虹彩切開術(LI)後に内皮細胞が減少する症例が少なくなく、FECDの早期発見に注意が必要である。

Q どれくらいの頻度で発症しますか?
A

沖縄・久米島で行われた住民研究(Kumejima Study)では、40歳以上の4.1%に角膜 guttae が検出されました。女性では5.8%、男性では2.4%でした7)白内障術前検査を受けた患者の1.2%に滴状角膜がみられるという国内データもあります。日本人は欧米人より頻度が低いとされていますが、長寿化社会とともに増加傾向にあります。

フックス角膜内皮ジストロフィの細隙灯・スペキュラ・AS-OCT画像。角膜内皮のguttaeと後面高反射所見を示す。
フックス角膜内皮ジストロフィの細隙灯・スペキュラ・AS-OCT画像。角膜内皮のguttaeと後面高反射所見を示す。
Iovino C, et al. Corneal endothelium features in Fuchs’ Endothelial Corneal Dystrophy: A preliminary 3D anterior segment optical coherence tomography study. PLoS One. 2018. Figure 2. PMCID: PMC6264151. License: CC BY.
フックス角膜内皮ジストロフィの角膜内皮異常を示す複合画像である。細隙灯で beaten metal 様外観、スペキュラとAS-OCTで内皮細胞消失や角膜後面の高反射点が確認できる。

通常、50歳以下では無症状で推移する。症状は浮腫の程度と相関しながら緩徐に進行する。

  • 朝方の霧視: 夜間の閉瞼で角膜浮腫が増悪し、起床直後に最も視力が低下する。日中に開瞼が続くと浮腫が改善し、夕方には視力が回復するパターンが特徴的である1)
  • 終日の視力低下: 浮腫が高度になると終日にわたる視力低下となる2)
  • 羞明・グレア感: 不整なDescemet膜による光散乱で増悪する1)
  • 眼痛・流涙: 上皮浮腫が高度になると水疱が形成され、その破裂で激しい眼痛・流涙が生じる1)

臨床所見(医師が診察で確認する所見)

Section titled “臨床所見(医師が診察で確認する所見)”

細隙灯顕微鏡検査が基本である。直接照明・後方散乱照明・鏡面反射法を組み合わせて観察する。

Grade 0-1(無〜軽症)

所見: 中央部に12個以下(Grade 0)または12個超の非融合性 guttae(Grade 1)

症状: 通常無症状。スペキュラマイクロスコープで dark spot として検出される。

Grade 2-3(中等症)

所見: 中央1〜5 mmに融合性 guttae。軽度の beaten-metal appearance。

症状: 朝方の霧視。スペキュラで内皮像が不鮮明になる。

Grade 4(重症)

所見: 中央5 mm超の広範融合性 guttae。色素沈着を伴う beaten-metal appearance。

症状: 朝方から日中にかけての持続的霧視羞明

Grade 4+浮腫(最重症)

所見: 実質浮腫・上皮浮腫・水疱形成。角膜混濁が著明。

症状: 終日の重篤な視力低下・眼痛・流涙。生活の質が著しく低下。

この臨床的病期分類は Krachmer ら(1978年)による修正分類に基づく5)

スリットランプ所見の詳細:

  • 滴状角膜(guttae): 変性した内皮細胞が産生した異常コラーゲン様物質がDescemet膜後面に半球状に前房側へ突出した所見。灰白色または褐色の粒状物として角膜後面に見える。
  • beaten-metal appearance(金槌で叩いた金属板様外観): guttae の融合・増加と色素沈着が組み合わさった特徴的な外観。鏡面反射法で最もよく観察できる。
  • 角膜浮腫: Descemet膜不整→実質膨化(実質浮腫)→上皮下液体貯留(上皮浮腫)の順に進行する。
Q 朝見えにくく、昼間は見えるのはなぜですか?
A

健康な角膜は内皮細胞が常に水分を前房側へポンプアウトして透明性を保っています。FECDでは内皮のポンプ機能が低下しているため、眠っている間(まぶたを閉じている間)は蒸発による水分排出も止まり、朝方に角膜が最も浮腫んで霧視が強くなります。目を開けていると角膜表面から水分が蒸発し、昼間は浮腫がある程度改善するため視力が回復します。病気が進行するとこの日内変動がなくなり、終日霧視が続くようになります。

FECD常染色体優性遺伝が主体だが、浸透率(penetrance)や表現度(expressivity)にばらつきがあり、家族歴が明らかでない例も存在する。

主要原因遺伝子:

  • TCF4 遺伝子(18q21.2): CTGトリヌクレオチドリピート(CTG18.1)の拡張が最多原因。リピート数50回超が病的とされ、欧米のFECD患者の約79%で検出される1,9)。日本人FECD患者47例では12例(26%)と欧米より低頻度であり8)、欧米では重症度と相関するが日本人では相関が乏しい1)
  • COL8A2 遺伝子(1p34.3-p32.3): VIII型コラーゲンα2鎖をコード。L450W、Q455K、Q455V 等の点変異が早期発症型(FECD1)の原因1)
  • その他の候補遺伝子: SLC4A11, TCF8/ZEB1, AGBL1, LOXHD1, TGFBI, CLU 等が報告されている1)

日本人では TCF4 リピート拡張の頻度が欧米より低いため、他の遺伝的背景の解明が求められている8)

  • 女性: 発症リスクが高く、男女比は国際的に 2.5:1〜3.5:11,2)
  • 加齢: 第5〜6十年代で症状が顕在化1)
  • 家族歴: 一親等に患者がいる場合リスク上昇2)
  • 喫煙: 酸化ストレス増加を介して発症を促進2)
  • 糖尿病: 代謝障害が内皮細胞に影響2)
  • 眼科的背景疾患: 偽落屑症候群PEX)、狭隅角眼、レーザー虹彩切開術(LI)後の内皮減少
  • 全身合併症: 筋強直性ジストロフィ(DM1)との合併が報告されている1)
Q 遺伝しますか?子どもに影響しますか?
A

FECDは主に常染色体優性遺伝のパターンで遺伝します。理論上、子どもへの遺伝確率は50%です。ただし発症の時期や重症度には大きなばらつきがあり(浸透率が不完全)、遺伝子を受け継いでも症状がごく軽微なまま一生を過ごす方も多くいます。特に日本人では欧米で最多原因であるTCF4遺伝子異常の割合が低く8)、遺伝背景が異なる可能性があります。ご心配な場合は遺伝専門医へのご相談をお勧めします。

日本の統一された診断基準は存在しないが、以下の検査を組み合わせた臨床診断が行われる。

  • 直接照明法で角膜後面の guttae・浮腫を評価する。
  • 鏡面反射法が最重要で、beaten-metal appearance の確認に不可欠。
  • 後方散乱照明で実質浮腫・混濁の程度を把握する。
  • 日本人の角膜内皮細胞密度は白人より高いため、同程度の内皮減少でも症状が出にくい点に留意する。

スペキュラーマイクロスコープ(鏡面反射型内皮細胞撮影装置)

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FECD の診断・経過観察に最も重要な検査である。

パラメータ正常値異常の閾値
内皮細胞密度(新生児期)3,500〜4,000 cells/mm²
内皮細胞密度(20代)2,700 cells/mm²
内皮細胞密度(70歳以上)平均 2,200 cells/mm²
透明性維持限界400〜500 cells/mm² 以下
CV値(変動係数)0.2〜0.3≥ 0.35
六角形細胞出現率(hexagonality)60〜70%≤ 50%
  • dark spot: guttae の隆起が鏡面反射の平面から外れ、スペキュラ上で黒色の円形領域として観察される。内皮細胞が実際に欠損しているわけではなく、隆起によって同一平面上に存在しないため映らないものである。
  • 浮腫・混濁が高度な症例では非接触型より接触型スペキュラーマイクロスコープが有用で、より広範囲・鮮明な内皮像が得られる。
  • 正常での内皮細胞減少率は0.5%/年。白内障術後は2%/年、緑内障術後は10%/年と加速する。
  • 共焦点顕微鏡: 角膜の全層を層別に観察可能。guttae の形態やDescemet膜の詳細が評価できる1)
  • 前眼部OCT: 角膜厚・Descemet膜肥厚・上皮下浮腫を非侵襲的に定量化できる1)
  • 超音波パキメトリー(角膜厚測定): 術前評価のゴールドスタンダード。中央角膜厚 >640 μm は術後角膜代償不全リスク上昇の目安1)
  • Scheimpflug 画像: 中心部〜周辺部の厚さ比(central-to-peripheral thickness ratio)を評価できる1)
  • 修正 Krachmer 分類(Krachmer et al. 1978)5): 病期判定と手術適応の判断に使用する。
疾患鑑別のポイント
後部多形性角膜ジストロフィPPCDAD遺伝、両眼性、Descemet膜の帯状・水疱様混濁。遺伝子は PPCD1(20p11.2-q11.2)、PPCD2(COL8A2)、PPCD3(ZEB1)
先天性遺伝性角膜内皮ジストロフィCHEDAR遺伝(SLC4A11変異)、出生時〜乳児期発症、出生時から角膜浮腫・混濁
水晶体水疱性角膜症(PBK)白内障手術後の内皮障害。guttae なし、手術歴あり
偽落屑症候群角膜PEX物質沈着、眼圧上昇、水晶体前面のPEX物質が鑑別の鍵
ICE(虹彩角膜内皮)症候群片眼性、虹彩萎縮・前方癒着・緑内障を伴う。guttae なし
隅角眼の内皮変化滴状角膜様所見が出ることがある。眼圧隅角形態で鑑別
Q スペキュラーマイクロスコープとは?何がわかりますか?
A

スペキュラーマイクロスコープ(鏡面反射型内皮細胞撮影装置)は、角膜の最内層にある内皮細胞を特殊な光の反射を利用して非侵襲的に撮影・計測する装置です。検査では内皮細胞の数(細胞密度)・大きさのばらつき(CV値)・形の均一性(六角形細胞率)などを測定します。FECDでは guttae の部分が黒い点(dark spot)として映り、病期の評価に役立ちます。撮影は数分で終わり、痛みはありません。

治療の目標は角膜透明性の回復と視力の維持である。病期に応じて対症療法から手術療法を選択する。

手術適応前の症状緩和を目的とする。内皮細胞数の回復や病勢進行の抑制効果はない。

  • 5%高張食塩水点眼・眼軟膏: 浸透圧の差を利用して角膜から水分を引き出し、浮腫を軽減する。主に朝方の霧視緩和に有用。
  • 治療用コンタクトレンズ: 水疱の破裂による眼痛・流涙を軽減する目的で装用する。
  • ヘアドライヤーによる角膜乾燥: 暖風を閉眼した眼に当てて角膜表面の水分蒸発を促す1)。一時的な浮腫改善が得られる。

DMEK(デスメ膜角膜内皮移植術)

グラフト: Descemet膜+内皮のみ(厚さ約15 μm)

特徴: 2006年 Melles が初報告11)視力回復が速く、拒絶率が低い。熟練した術者が必要。

日本保険適用: 2016年〜

DSAEK(デスメ膜剥離自動装置補助角膜内皮移植術)

グラフト: 薄層実質+Descemet膜+内皮(厚さ50〜150 μm)

特徴: 超薄型(UT-DSAEK <130 μm)、nano-thin(<70 μm)でDMEKに近い視力成績。操作が容易で学習曲線が短い4,12)

日本保険適用: 2009年〜

PKP(全層角膜移植)

グラフト: 全層角膜(直径7.0〜8.5 mm)

特徴: 古典的な選択肢。縫合・乱視管理・長期の拒絶リスクが課題。FECD分野では内皮移植術に徐々に置換されている。

DSO(Descemetorhexis Without Endothelial Keratoplasty)

手技: Descemet膜中央4 mmを選択的に剥離のみ。グラフト不要。

適応: 残存末梢内皮細胞が中央へ遊走・増殖できる症例。約75%で角膜透明化14)

ROCK阻害点眼: リパスジルを術後に併用することで不応例でも透明化が促進される14)

指標DMEKUT-DSAEK出典
12か月BCVA(logMAR差)−0.06(DMEK優位)Sela 2023 メタ解析3)
20/25以上達成率66%33%(p=0.02)Dunker 2020 RCT4)
リバブリングのOR2.76(DSAEK优位)Sela 20233)
12か月ECD差なし差なしDunker 20204)
グラフト厚 <70 μmDMEK視力差なしSela 20233)

Sela ら(2023年)のメタ解析(8研究376眼)では、12か月時点のBCVAはDMEKが有意に良好だった(−0.06 logMAR)3)。Dunker ら(2020年)の多施設RCTでもDMEKは UT-DSAEK より20/25以上達成率が高かった(66% vs 33%, p=0.02)4)。ただしグラフト厚70 μm未満のUT-DSAEKではDMEKとの差が縮小した3)

培養ヒト角膜内皮細胞注入療法(京都プロトコル)

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京都大学グループ(Kinoshita 2018)は、培養した健常ドナー角膜内皮細胞をROCK阻害薬(Y-27632)と同時に前房内注入する治療法を開発した13)

  • 術後24週時点で11眼中10眼(91%)の細胞密度が 1,000 cells/mm² 超に回復
  • 11眼中10眼で角膜厚が <630 μm に改善
  • グラフト不要・少数のドナー細胞で多数の患者を治療できる可能性がある

ROCK阻害薬は内皮細胞の接着促進・アポトーシス抑制・細胞周期進行を促すことで効果を発揮する13)

FECDでは白内障との合併が多く、手術時期と方法の選択に注意が必要である。

  • 術前中央角膜厚 >640 μm は白内障単独手術後の角膜代償不全リスクが高いため、内皮移植との同時手術が推奨される1,16)
  • Krachmer grade 2.5〜4 では白内障単独手術後に内皮移植が必要となる例が約20%あり、同時手術が勧められる1)
  • 術中は Soft-shell 法など粘弾性物質を用いた内皮保護手技を用いる1)
Q DMEKとDSAEKはどちらを選ぶべきですか?
A

DMEKは最薄グラフト(約15 μm)のため、視力回復が速く術後屈折変化が少ない利点があります。メタ解析でも12か月のBCVAはDMEKが優位でした3)。一方、DSAEKはグラフト操作がやや容易で術者の学習曲線が短く、国内でも広く行われています。超薄型DSAEK(<70 μm)ではDMEKとほぼ同等の視力成績が得られるとの報告もあります3)。担当医の術者経験・施設の経験数・患者の角膜状態を総合的に判断して選択します。いずれも2016年(DMEK)または2009年(DSAEK)から国内で保険適用されています。

6. 病態生理学・詳細な発症機序

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内皮細胞の進行性喪失とDescemet膜変化

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正常角膜内皮細胞は前房内では細胞分裂が起こらない。内皮が欠損すると隣接する細胞が拡大・遊走して欠損部を補うため、細胞密度は加齢とともに不可逆的に低下する。400〜500 cells/mm² を下回ると角膜の透明性維持が困難になる。

FECDでは変性した内皮細胞が異常なコラーゲン様物質をDescemet膜後面に産生・堆積させ、guttae を形成する。Descemet膜は肥厚・不整となり、内皮機能をさらに障害する悪循環が成立する。

  • 酸化ストレス経路: 紫外線・喫煙・加齢による活性酸素種(ROS)産生 → ミトコンドリア機能障害 → さらなるROS産生 → DNA損傷・アポトーシス
  • 小胞体(ER)ストレス経路: 変異タンパク(COL8A2等)の小胞体内蓄積 → UPR(unfolded protein response)活性化 → アポトーシス促進
  • 内皮-間葉転換(EndMT): 内皮細胞が線維芽細胞様に形質転換 → ECM(細胞外基質)異常堆積 → guttae 形成促進
  • guttae による二次的ストレス: guttae の機械的障害・接触ストレス → 残存内皮細胞のさらなるアポトーシス → 悪循環の加速

加齢・UV曝露・喫煙はいずれも酸化ストレスを増大させ、悪循環の入り口となる2)

TCF4 CTGリピート拡張の分子機序1)

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  1. 核内 RNA foci 形成: 拡張したCTGリピートから転写されたRNA が核内で凝集し foci を形成する。
  2. MBNL1 タンパク質の隔離: RNA foci が splicing 因子 MBNL1 を捕捉・隔離する。
  3. mRNA missplicing: MBNL1 機能喪失 → 多数の mRNA の異常スプライシング → 内皮細胞機能障害。
  4. RAN翻訳: Repeat-Associated Non-ATG Translation(RAN translation)で毒性ペプチドが産生され、内皮細胞を障害する。

角膜内皮のポンプ機能は Na⁺/K⁺-ATPase に依存する。内皮細胞が障害されると以下の経路で浮腫が生じる。

  • 内皮ポンプ機能低下 → 房水から角膜実質への水分移動 → 実質膨化(実質浮腫)
  • 実質浮腫の高度化 → 上皮下への液体貯留 → 上皮浮腫 → 水疱形成 → 破裂による疼痛

角膜実質の膨潤圧を超えるような眼圧上昇(高眼圧)がある場合は、内皮が比較的健常でも上皮浮腫が生じることがあり注意を要する。

  • アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)療法: TCF4 CTGリピート由来RNA foci を標的に、核内 foci の消失・MBNL1 の解放・missplicing の正常化を図る(Hu 2018, Zarouchlioti 2018)1)
  • 酸化ストレス軽減療法: NAC(N-acetyl cysteine)・リチウム・スルホラファン等の抗酸化薬が候補として研究中1)
  • 培養ヒト角膜内皮細胞注入療法(京都プロトコル)の多施設展開13)。少数のドナー角膜から多数の患者を治療できる可能性があり、ドナー不足への対応策として期待される。
  • ROCK阻害薬(リパスジル、Y-27632)単独またはDSO後の補助療法としての適応拡大14)
  • genotype(TCF4 リピート数)・性・年齢・人種・喫煙歴を組み合わせた早期診断スコアリングシステムの開発研究1)
  • UV誘発性 in vivo マウスモデルによる病態解明と薬剤スクリーニング2)

日本人ではTCF4リピート拡張の寄与が相対的に小さいため8)、日本人に特有の遺伝的・環境的背景の解明が今後の重要課題である。

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