SITAアルゴリズム
SITA Standard:片眼約7分。フル閾値と同等の精度で検査時間を約半分に短縮。最も推奨される標準プログラム3)
SITA Fast:片眼約4分。スクリーニング・高齢者・小児への使用に適する。変動がやや大きい
SITA Faster:片眼約2分。SITA Standardの検査時間を50%短縮。短時間で概略評価が可能
フル閾値:最も正確だが検査時間が長い。サイズI・IIの刺激使用時に必要6)

HFA(Humphrey Field Analyzer)は静的視野計の代表機種である。固定した視標の輝度を変化させて各測定点の光感度(閾値)を測定し、中心視野の等感度マップを作成する。
OCTの普及に伴い、眼底検査で検出できない異常所見を確認可能になってきた。しかし眼疾患の確定診断に構造と機能の整合性は不可欠であり、視野検査の重要性が低くなることはない。緑内障の診断のみならず経過観察においても、視野検査は中心的な役割を担う1)。
Goldmann視野計(GP)が視標を周辺から中心に移動させてイソプタ(等感度曲線)を作成するのに対し、静的視野計は視標を固定し輝度を変化させて視感度を測定する。この測定原理の差により、静的視野計はGPよりも局所的な視野障害を検出しやすい。特に緑内障ではGPが正常でも静的視野計で孤立暗点を検出でき、早期診断が可能となる症例を経験する。
| 項目 | 静的視野検査(HFA) | 動的視野検査(GP) |
|---|---|---|
| 刺激提示 | 固定位置で輝度を変化 | 見えない領域から移動 |
| 早期検出能 | 優れる(孤立暗点も検出可) | やや劣る |
| 定量性・再現性 | 高い | 検者依存で変動大 |
| 用途 | 緑内障の診断・経過観察 | 末期残存周辺視野、困難例の評価 |
静的視野計測は動的視野計測と比較して初期緑内障における視野異常の検出に鋭敏である1)。緑内障の診療には静的視野が推奨されている1)。動的視野検査は自動視野検査が困難な患者や進行期の残存周辺視野の評価に有用である1)3)。
主な視野計としてHumphrey視野計(HFA)とOctopus視野計が普及している1)。HFAは31.5 asbの背景照明を使用し、主に錐体細胞がテストされる明所視条件で検査を行う。刺激は0.2秒間提示され、50 dBの感度範囲を測定する。
HFAには目的に応じた複数の測定プログラムがある1)4)。
緑内障の約9割は中心30°内から発症するため、経過観察には24-2または30-2が標準である1)。OCTで黄斑部障害が疑われる場合には10-2検査の追加が推奨される。EGSは10-2検査で24/30°検査の頻度を減らすことは推奨していない3)。
SITAアルゴリズム
SITA Standard:片眼約7分。フル閾値と同等の精度で検査時間を約半分に短縮。最も推奨される標準プログラム3)
SITA Fast:片眼約4分。スクリーニング・高齢者・小児への使用に適する。変動がやや大きい
SITA Faster:片眼約2分。SITA Standardの検査時間を50%短縮。短時間で概略評価が可能
フル閾値:最も正確だが検査時間が長い。サイズI・IIの刺激使用時に必要6)
Octopus視野計のアルゴリズム
Dynamic Strategy:緑内障の診断と経過観察に推奨される3)
TOPストラテジー:短時間検査が可能だがSITAやDynamic Strategyとは異なる特性を持つ3)
G1プログラム:網膜神経節細胞の中心部密集を考慮した測定点配置
Eye Suite™:主にトレンド解析を用いた進行評価が可能
10-2検査は2°間隔で中心10°を精密に測定するプログラムである。視野障害が固視点に及ぶ場合や固視点近傍の視野障害がある場合に有用である4)5)。また、24-2や30-2では正常であってもOCTで黄斑部の網膜内層菲薄化が示唆される場合には、10-2検査を追加して早期の中心視野障害を検出することが推奨される5)。末期緑内障で固視点周囲のみに視野が残存する状態の管理にも不可欠である。前視野緑内障でも中心部障害が生じている可能性がある。
視野検査の精度は患者の理解・協力度と検査者の適切な関与によって大きく左右される。
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| 屈折矯正 | 検査面30 cmの距離に合わせた矯正レンズを設定する(老視・遠視・近視・乱視に対応) |
| 遮閉 | 非検査眼をアイパッチで遮閉する。眼球を圧迫しないこと |
| 眼瞼テーピング | 眼瞼皮膚のたるみ(眼瞼下垂)がある場合は絆創膏でテーピングし、上方視野への影響を防ぐ |
| 患者説明 | 具体的な検査時間や手順を丁寧に説明し、患者の不安感を和らげる |
| 姿勢調整 | 患者が楽になるよう椅子・顎台の高さを調整する |
| 固視説明 | 「光を感じたらボタンを押す。見えない光は押さない」と明確に説明する |

検査結果の解釈に先立ち、信頼性を確認する。SITAプログラムでは以下の基準が用いられる。
グレースケール(GS):隣接測定点の感度閾値を補間し、10段階のグレートーンシンボルで視覚化したもの。視野全体のイメージ把握に有用であるが、補間されたデータであり単独での判断は危険である。
トータル偏差(TD:Total Deviation):患者の実測値と年齢別正常値との差(dB)をマップ表示したもの。マイナスが大きいほど視野が悪い。白内障・縮瞳等の影響を受ける。
パターン偏差(PD:Pattern Deviation):TDから全体的な感度低下(縮瞳・白内障等の影響)を差し引き、局所的な視野障害を浮き彫りにした指標。早期緑内障の異常検出に優れる。TDとPDに大きな差がある場合は中間透光体(水晶体・角膜)の影響を疑う。
緑内障半視野テスト(GHT):網膜神経線維層の走行を考慮して上下半視野を対称的な5ゾーンに分け、緑内障性視野異常を判定する。単独の評価法としては緑内障の検出力が最も高い。
| 指標 | 意味 | 特徴・注意点 |
|---|---|---|
| 平均偏差(MD) | 視野全体の年齢別正常値からの偏位(dB) | 全病期の進行評価に有効。白内障の影響を受ける |
| 視野指数(VFI) | PDを基に算出。正常視野を100%とした割合 | 中心部に重み付け。100%=正常、0%=視野消失 |
| パターン標準偏差(PSD) | 局所的な感度低下の程度を示す | 初期〜中期緑内障に有効。後期では減少傾向 |
MD・VFIはトレンド解析に有用。PSD・LVはトレンド解析に使用すべきでない2)3)。
緑内障性視野障害の判定には以下の基準が用いられる1)。以下のいずれかを満たす場合に緑内障性視野障害と判断する。
GHTの5段階判定は「正常範囲外」「境界域」「全体的な感度低下」「異常な高い感度」「正常範囲」であり、「正常範囲外」が最も緑内障を強く示唆する。
GHTは網膜神経線維層の走行を考慮して上下半視野を対称的な5ゾーンに分け、各ゾーンの上下差を比較する。緑内障性視野障害は上下半視野の非対称性を特徴とするため、GHTはこの特徴を直接反映した判定法である1)。単独の評価法としては緑内障の検出力が最も高いとされている。ただしGHTが「正常範囲外」であっても必ずしも緑内障を意味するわけではなく、他の臨床所見との照合が必要である。また末期緑内障では上下半視野ともに障害が及ぶため、GHTの感度が低下することもある。
視野進行判定には最低でも5回の視野測定が必要であり、それ以上の測定ポイントがあることが望ましい1)。
イベント解析:ベースラインからの変化が事前設定された閾値を超えたかどうかを判定する。大規模RCT(EMGT・AGIS・CIGTS・UKGTS)で使用された2)3)。確認検査が必要であり、感度低下部位での経時評価が困難となる短所がある。
トレンド解析:MDやVFIの経時的回帰分析で進行速度(dB/年または%/年)を算出する2)3)。初期から進行期まで継続的に評価可能。進行速度の算出に通常少なくとも2年間の経過と十分な検査数が必要である。
検査頻度の推奨
新規診断後2年間:年3回のSAP検査が推奨される2)3)
進行速度の把握:進行判定には通常少なくとも2年間と十分な検査回数が必要2)3)
高眼圧症:頻回な検査は不要2)
進行速度確定後:観察された進行速度と病期に応じて検査頻度を調整する2)3)
進行期の評価と対応
OCTとの相補性:OCTによる構造評価は早期に有用だが、進行期ではfloor effectにより限界がある1)
視野検査が主体:進行した緑内障眼ではSAPによる進行判定が主体となる1)
半盲の場合:頭部MRI/CTで頭蓋内疾患(腫瘍・脳梗塞等)を除外する
中心暗点の場合:OCT・造影検査で黄斑疾患の精査を行う
進行の判定には最低でも5回の視野測定が必要であり、それ以上の測定ポイントがあることが望ましい1)。新規診断患者では最初の2年間に年3回の検査が推奨されている2)3)。測定頻度が高いほど進行の判定は容易になる1)。トレンド解析では通常少なくとも2年間の経過と十分な検査数が必要である2)3)。イベント解析では確認検査が不可欠である。初回検査は学習効果が不十分で信頼性が低いことが多いため、初回データをベースラインとする際は慎重に扱う必要がある1)。
静的視野計であるHFAは、測定点を固定したまま視標の輝度を変化させて閾値を測定する。
視覚刺激の検出は光受容器→双極細胞→網膜神経節細胞(RGC)→外側膝状体→後頭葉皮質の神経経路に依存する。緑内障における視野欠損はRGCの損傷の結果である1)。
RGCの主な3タイプは以下の通りである。
SAPは非選択的な白色刺激を用いるため複数のRGCタイプを同時に刺激する。この冗長性のため、SAPで視野欠損が顕在化する前にかなりの数のRGCが消失している可能性がある。
RGCの軸索は網膜神経線維層(RNFL)を形成し、鼻側線維・黄斑乳頭線維束・弓状線維の3区分に分けられる。
緑内障性視野障害は構造変化に伴い特徴的なパターンを示す1)。初期の障害は固視点から5°〜25°のBjerrum領域に生じやすい。弓状線維の損傷により弓状暗点(Bjerrum暗点)が生じ、鼻側で階段状の欠損となる。緑内障性視野欠損は水平正中線を越えない特徴がある。
鼻側線維と黄斑乳頭線維束は疾患後期まで保たれるため、進行した緑内障眼でも中心部または耳側に「視覚の島」が残る。
近視眼では乳頭周囲ピット(peripapillary pit)に起因する限局性のRNFL欠損と対応する視野障害が報告されている7)。ピットによる暗点は緑内障性暗点と類似するため、鑑別に注意を要する7)。
EGSによる視野障害のステージングは以下の通りである2)3)。
小児では集中力持続困難があるため、年齢に応じたプログラム選択が重要である。
主要な緑内障臨床試験ではすべてSAPが使用されている4)5)。代替検査法としてSWAP(短波長自動視野計検査)とFDT(頻度倍増技術)がある。
SWAP:K細胞経路を利用し、黄色背景に青色刺激で測定する。SAPより最大5年早く視野欠損を検出できる可能性がある。SITA SWAPにより検査時間と変動が改善された。ただし検査間変動がSAPより大きく、白内障の影響を受ける。
FDT:M細胞経路を優先的に標的とする。SAPより検査間変動が小さく、進行モニタリングに有利な場合がある。Matrixバージョンにより空間分解能が改善された。
標準的なGoldmann size IIIは中心視野の大部分の測定点においてRiccoの面積(完全空間加算の臨界面積)より大きいため、浅い視野欠損の検出感度が制限される6)。サイズI・IIの小刺激はsignal/noise比が有意に高く、標準size IIIで検出できない浅い欠損を明らかにできる6)。視交叉圧迫患者において、size IIIでは正常であった視野がsize I・IIで両耳側上方欠損として検出された報告がある6)。
日本緑内障学会. 緑内障診療ガイドライン(第5版). 日眼会誌. 2022;126:85-177.
European Glaucoma Society. Terminology and Guidelines for Glaucoma, 5th Edition. 2020.
European Glaucoma Society. Terminology and Guidelines for Glaucoma, 6th Edition. Br J Ophthalmol. 2025.
American Academy of Ophthalmology. Primary Open-Angle Glaucoma Preferred Practice Pattern®. 2020.
American Academy of Ophthalmology. Primary Open-Angle Glaucoma Suspect Preferred Practice Pattern®. 2020.
Tsai NY, Horton JC. Smaller spot sizes show bitemporal visual field defects missed by standard Humphrey perimetry. Am J Ophthalmol Case Rep. 2025;40:102448.
Kita Y, Hollό G, Narita F, Kita R, Hirakata A. Myopic peripapillary pits with spatially corresponding localized visual field defects: a progressive Japanese and a cross-sectional European case. Case Rep Ophthalmol. 2021;12:350-355.