この疾患の要点
MOG抗体関連疾患(MOGAD)は、MOGに対するIgG自己抗体を特徴とする中枢神経系脱髄疾患 であり、MS およびAQP4陽性NMOSD とは独立した疾患単位である。
発症年齢は二峰性(小児5〜10歳・成人20〜45歳)で、性差はほぼなし(男女比≒1:1)。
11歳未満ではADEM (急性散在性脳脊髄炎 )が初発の約45%を占め、11歳以上では視神経炎 が主な発症形式となる。
急性期の第一選択はメチルプレドニゾロン静注療法(IVMP)であり、発症7日以内の早期開始は良好な最終視力 転帰(例:BCVA 20/25以上、OR 6.7)と関連する。これは再発リスク低下を示す数値ではない12) 。
診断には生細胞ベースアッセイ(live CBA)による抗MOG-IgG検査がゴールドスタンダード。2023年国際診断基準で感度96.5%・特異度98.9%が確認されている。
視力 予後はAQP4陽性NMOSD より良好(永続的失明はMOGADで6〜12%、AQP4陽性NMOSD で60〜69%)。
5年超の追跡では再発率が最大70%に達し、長期的な維持療法と経過観察が不可欠である。
MOG抗体関連疾患(MOGAD: Myelin Oligodendrocyte Glycoprotein Antibody-Associated Disease)は、ミエリン乏突起膠細胞糖タンパク質(MOG)に対するIgG自己抗体の存在を特徴とする中枢神経系(CNS)脱髄疾患 である。多発性硬化症 (MS )およびアクアポリン4(AQP4)抗体陽性NMOSD (視神経脊髄炎 スペクトラム障害)とは病態・臨床経過・予後が異なる独立した疾患単位として、2023年に国際診断基準が策定された4) 。非典型的視神経炎 の鑑別疾患として「抗MOG抗体 陽性視神経炎 」が知られている。
MOGADの世界的な年間発症率は百万人あたり約1.6〜4.8人、有病率は10万人あたり1.3〜2.5人と推定されている1) 。発症年齢は二峰性分布を示し、小児5〜10歳と成人20〜45歳にピークがある。全体の発症年齢中央値は20〜30歳である。
11歳未満の小児における急性脱髄症候群の約50%をMOGADが占める1) 。成人の初発症状としては視神経炎 が最多(30〜60%)、次いで横断性脊髄炎(10〜25%)が続く。11歳未満の小児では急性散在性脳脊髄炎 (ADEM )が初発の約45%を占める。オランダの研究では、MOG陽性急性脱髄症候群の発症率は小児10万人あたり0.31人に対し成人では0.13人であり、小児での発症がより多い。
性差については男女比がほぼ1:1であり、AQP4抗体陽性NMOSD にみられる強い女性優位性(F:M 7〜9:1)とは対照的である。
初期の MOG-IgG 研究はウエスタンブロット法やELISAの技術的限界から困難であった。生細胞ベースアッセイ(live CBA)の登場により、臨床的に意味のあるMOG-IgGの検出が可能となり、MS やAQP4陽性NMOSD とは独立した疾患概念として確立された。
Q
MOGADはMSやNMOSDとどう違うのか?
A
標的抗原・病態・性差・ステロイド 応答性・予後のすべてが異なる独立した疾患である。MOGADはMOGを標的とするオリゴデンドロサイト病であり、AQP4陽性NMOSD はAQP4を標的とするアストロサイト病、MS はCD8陽性T細胞優位の脱髄疾患 である。MOGADは性差がほぼなく(1:1)、ステロイド 応答性が高く、視力 予後がAQP4陽性NMOSD より良好という特徴がある。
MOGADの臨床像は発症年齢によって大きく異なる。
ADEM型(11歳未満に多い)
好発年齢 :主に11歳未満。全小児MOGAD の40〜50%。
主な症状 :発熱だけでは説明できない意識変容・行動変化。脳症の徴候が微妙で行動変化として現れることがある。
MRI所見 :両側性・境界不明瞭なT2高信号病変(2cm超)。深部白質と灰白質(視床・基底核)を侵す融合性病変。
視神経炎型(11歳以上・成人)
好発年齢 :11歳以上および成人。成人MOGADの30〜60%。
主な症状 :急性視力 低下・眼球運動痛(73〜92%)・頭痛・両眼性発症(31〜84%)。
眼底所見 :視神経乳頭 浮腫が45〜92%(小児では75〜86%)。中等度〜重度の乳頭浮腫 で乳頭周囲出血を伴うことがある。
脊髄炎型(全年齢)
頻度 :成人の20〜40%、小児の15〜20%。
特徴的所見 :LETM(3椎体以上のT2高信号)が約70%。H sign(軸位断でH字型を呈する灰白質限局性T2高信号)が小児100%・成人12.5%と顕著な年齢差あり2) 。
円錐部病変 :MOGADへの特異性が高い。造影効果は約50%に認められる。
自覚症状 :
眼球運動痛: 73〜92%に認められ、AQP4-ON(28〜50%)やMS -ON(10〜46%)より高頻度
頭痛: 眼窩 周囲から前頭側頭部に広がる痛みが視力 低下に先行し(中央値3日前から出現)
視力 低下: 急性発症、最低視力 時logMAR 1.0(Snellen 6/60)以下が多い
両眼性発症: 31〜84%(MS では極めて稀)
45歳以上では両眼性ONを呈しやすく再発リスクも高い
臨床所見 :
視神経乳頭 浮腫: 45〜92%(AQP4-ON 7〜52%、MS -ON 11〜14%と対照的)
RAPD : 両側性病変が多いため欠如することがある
OCT : 急性期にpRNFL 肥厚(MOG-ON中央値164μm vs MS -ON 103μm)。回復期にpRNFL 菲薄化(MS より顕著)。pRNFL 118μmをカットオフとした場合、感度74%・特異度82%でMS -ONと鑑別可能1)
以下に主要疾患との臨床的比較を示す。
項目 MOG-ON AQP4-ON MS -ON両眼性 31〜84% 13〜82% 極めて稀 乳頭浮腫 45〜92% 7〜52% 11〜14% 眼痛 73〜92% 28〜50% 10〜46% 性差(F:M) 1:1 7〜9:1 3:1 病変部位 前方(眼窩 内) 後方(管内・頭蓋内) 前方〜中間 視神経周囲炎 高頻度 稀 報告なし 視力 予後良好(20/30〜20/25) 不良(指数弁程度) 良好
縦断的視神経 病変(視神経 長の50%超): 23〜88%(小児81.3%、成人41.7%)2)
視神経周囲炎 (tram-track enhancement): MOG-ONの約50%に認められ特徴的
前方(眼窩 内)視神経 が主な病変部位(AQP4-ONは後方に好発)
脳: 境界不明瞭なT2高信号(fluffy lesions)・深部灰白質病変・橋/中小脳脚の広汎病変がMOGADに特徴的。T2病変は60〜79%が寛解期に消退(MS では0〜17%と対照的)3)
皮質脳炎: 小児の13.5%、成人3.6%。頭痛79%・痙攣68%・脳症63%を伴い小児でより高頻度
眼窩先端症候群 : 脳神経II/III/IV/VI障害として発症した報告がある。36歳男性例でIVMP→血漿交換+IVI G後に6/36まで改善5)
PAMM (傍中心窩 急性中間黄斑 症)の合併報告7)
ADEM -ON(ADEM に続く視神経炎 ): 再発性MOGADの最大40%1)
Q
MOG-ONとNAION(非動脈炎性前部虚血性視神経症)はどう区別するか?
A
両疾患ともに視神経乳頭 浮腫を呈しうる点で臨床像が重複する。NAION は無痛性・50歳以上・睡眠時無呼吸など血管リスク因子を有するのが特徴であり、MOG-ONは眼球運動痛が高頻度で若年者に多い。抗MOG抗体 検査が鑑別に有用である。
MOGはCNSミエリン最外層および乏突起膠細胞表面に発現するマイナー膜貫通タンパク質である。免疫系から露出しやすい位置に存在するため、自己抗体の標的となりやすい。MOG-IgG抗体はこれを標的とし、補体 活性化・細胞障害を通じて脱髄を引き起こす1) 。
末梢循環での免疫寛容の破綻から自己反応性リンパ球が活性化し、CNSへ免疫細胞が移行する。感染症・ワクチン接種は傍観者活性化(bystander activation)や分子模倣(molecular mimicry)を通じて自己免疫カスケードを誘発する可能性がある。
COVID-19感染後の発症報告: 感染45日後に両眼性MOG-ONを発症した69歳男性例。24週後にMOG-IgGが陰性化した10) 。
mRNAワクチン接種後の発症報告: Moderna mRNA-1273接種7日後に片眼性MOG-ONを発症した28歳女性例。IVMP→経口ステロイド 漸減で完全回復し、1年後の再発なし8) 。
他の自己免疫疾患との合併は稀(AQP4陽性NMOSD とは対照的)
悪性腫瘍との関連は<1%で背景リスクと同等
産後期においてMOGADの発症・再発リスクが上昇する可能性がある。47例の文献レビューでは21例が産後に診断されており、妊娠中の免疫抑制からのリバウンドが推定機序として挙げられている9) 。
長期再発リスク: 約35%。5年超フォローアップでは最大70%に達する1)
早期再発(3ヶ月未満)と遅延型早期再発(3〜12ヶ月)が長期再発リスクの予測因子
ステロイド 治療期間3ヶ月未満は再発リスクを有意に増大させる
MOG-IgGの持続的高力価は再発リスクと相関
45歳以上では再発リスクが高い
non-proline 42エピトープを認識する成人は再発リスクが高い
Q
感染症やワクチン接種はMOGADの発症にどう関与するか?
A
傍観者活性化や分子模倣により、感染・ワクチン接種が自己免疫カスケードを誘発する可能性がある。COVID-19感染後やSARS-CoV-2 mRNAワクチン接種後の発症例が報告されており、いずれもステロイド 治療に良好な反応を示した8, 10) 。
適切な臨床像を呈する患者の血清中にMOG-IgGが細胞ベースアッセイ(CBA)で陽性であることが確定診断の要件である。
血清検体が推奨。CSFは陽性率40〜60%にとどまり単独では見逃しが多い。ただしCSF単独陽性が3〜29%あり、血清陰性でもCSF検査を考慮することがある1)
生細胞CBA(live CBA)がゴールドスタンダード。固定CBAも使用可能だが低力価での偽陽性リスクあり
ELISA: 変性MOGを使用するため不一致が多く推奨されない
特異度: 約98〜99%。小児健常対照703例でMOG-IgG陽性ゼロ
低力価CBA陽性: 疾患対照群の1〜2%で偽陽性 → 高い事前確率のある症例に限定して検査すべき
10歳未満の脱髄症状を呈する小児全例にMOG-IgG検査を実施すべき1)
非典型的視神経炎 の鑑別指標として以下の5項目がある。該当する場合は抗AQP4抗体・抗MOG抗体 検査を含む精査が推奨される。
発症年齢15〜45歳以外
両眼発症
発症後2週間以降も症状が進行
ステロイド 依存性経過
全身症状の合併
両眼性ON・再発性ON・視神経乳頭 浮腫を認める全症例に抗MOG抗体 検査を行うことで、全MOG-ONを検出でき、かつON症例の50%の検査で済む。
Banwell et al. 2023(Lancet Neurology)による国際診断基準4) は以下の2段階から構成される。
確定診断 : 典型的臨床像(視神経炎 ・脊髄炎・ADEM ・脳幹/小脳症状・皮質脳炎・単/多焦点性脳病変のいずれか)+CBA力価≧1:100またはライブCBA陽性
支持的診断 (力価不明・低力価陽性・CSFのみ陽性の場合): 1つ以上の支持的臨床/MRI所見が必要
表現型 支持的臨床/MRI所見 視神経炎 両側同時性・縦断的視神経 病変(>50%)・視神経 鞘周囲造影・視神経乳頭 浮腫 脊髄炎 LETM・中心性脊髄病変/H sign・円錐部病変 脳/脳幹/大脳症状 境界不明瞭T2高信号・深部灰白質病変・橋/小脳脚/延髄T2高信号・皮質病変±軟膜造影
診断基準の検証データ (Varley et al. 2024、539例)2)
指標 小児(135例) 成人(404例) 全体 感度 100% 91.9% 96.5% 特異度 98.8% 98.9% 98.9% PPV 98% 89.4% 94.3% NPV 100% 99.2% 99.3% 精度 99.2% 98.3% 98.5%
MOG-Ab検査単独と比較して、2023年診断基準は成人での特異度を有意に改善(98.9% vs 95.6%, p=0.0005)。小児は成人より支持的所見が多い(p=0.0011)2) 。
CSF: 髄液細胞増多が44〜72%(50 cells/μL以上になることも)、蛋白上昇32〜42%
OCB(オリゴクローナルバンド): MOGAD約10〜20%(MS >88%)→ MOGADでの陽性は稀
MRZ反応(measles/rubella/varicella zoster抗体): MS 60%超で陽性、MOGAD 0% → 強力な鑑別指標1)
VEP : P100潜時延長・振幅低下。MS -ONより潜時は短い傾向
OCT angiography: 乳頭周囲・傍中心窩 血管密度低下
MS : 片眼性ON、乳頭浮腫 なし、MOG-IgG陰性、CSFオリゴクローナルバンド陽性が鑑別に有用
AQP4陽性NMOSD : 後方(管内・頭蓋内)視神経 病変、視交叉 単独進展、AQP4-IgG陽性、女性優位
GFA P抗体関連疾患 : 放射状血管周囲造影効果
NAION : 無痛性、50歳以上、血管リスク因子(睡眠時無呼吸等)
サルコイドーシス ・感染性視神経炎 ・LHON : 全身所見・炎症マーカーを含む鑑別精査が必要
CRION(慢性再発性炎症性視神経症 ) : 元のCRIONコホートの最大25%がMOG-IgG陽性3)
ウイルス性脳炎・CNS血管炎・ミトコンドリア疾患・悪性腫瘍・HLH (小児鑑別)
Q
低力価MOG-IgG陽性は信頼できるか?
A
疾患対照群の1〜2%で偽陽性がある。異なるアッセイ間でのborderline陽性の一致率はわずか33%とされる。高い事前確率を持つ症例に限定して検査し、臨床所見との整合性を確認することが重要である。MOGADを疑う根拠がある場合は定量的データを提供できるCBA法での再検を行う。
第一選択: メチルプレドニゾロン静注療法(IVMP)
MOGADは高度のステロイド 感受性を示す。急性期のほぼ全症例でIVMPが用いられる。
成人: 1g/日×3〜5日間
小児: 20〜30mg/kg/日(最大約1g/日)×3〜5日間(欧州小児MOGコンソーシアム推奨)
IVMP後に完全回復50%、部分回復44%。無治療と比較して回復率10〜20%改善1)
急性期の第一選択はメチルプレドニゾロン静注療法(IVMP)であり、発症7日以内の早期開始は良好な最終視力 転帰(例:BCVA 20/25以上、OR 6.7)と関連する。これは再発リスク低下を示す数値ではない12) 。
発症10日超の開始は3ヶ月時点の視力 回復不良およびpRNFL 菲薄化と有意に関連
IVMP後に経口プレドニゾン20〜40mgから週〜月単位で段階的に漸減。EU小児MOGコンソーシアムは合計3ヶ月以上の漸減を推奨
第二選択: IVMP抵抗性の場合
IVI G(免疫グロブリン静注療法 ): 合計1〜2g/kg、1〜5日間。IVMP抵抗性患者の40%が改善。小児での忍容性が良好6)
血漿交換療法 (PLEX): 隔日×5〜7サイクル。国際専門家調査で二次治療として81%が支持。早期開始が完全回復の最も強力な予測因子1) 。IVMP→PLEX+IVI Gの組み合わせで視力 改善が得られた症例がある5)
治療開始のタイミング
約50%が単相性経過をたどるため、通常は2回目の臨床イベント後に維持療法を開始する。初回発作が重症で後遺障害がある場合は例外的に初回から検討する3) 。
経口ステロイド
ステロイド 感受性が高い一方、ステロイド 依存性も高い点が管理を複雑にする。
70%のエピソードで経口プレドニゾン投与中に再発(特にプレドニゾン10mg/日未満への減量時・中止後2ヶ月以内)
ステロイド 治療期間3ヶ月未満は再発リスクを有意に増大させる
6ヶ月間プレドニゾン20mg以上を継続した患者の95%が1年以上再発なし1)
長期ステロイド の副作用(小児での成長障害・神経精神症状・代謝障害・感染リスク)に注意
免疫抑制剤(ステロイド 節約型)
アザチオプリン ・ミコフェノール酸モフェチル (MMF): 一般的に使用されるが完全な再発予防は困難。開始後3〜6ヶ月間は再発リスクが高く、経口ステロイド 漸減との並行が推奨3)
メトトレキサート : 無治療群より有効だが再発を完全に防げない
維持IVI G
大規模国際レトロスペクティブ研究で年間再発率の有意な低下が示された1) 。用量反応関係として4週ごとに1g/kg以上の投与で再発が有意に少ない。
リツキシマブ
再発率を低下させるが、B細胞除去にもかかわらず一部で再発する。メタ解析(19研究)では、AQP4陽性NMOSD と比較してMOGADでの年間再発率低下幅が有意に小さく、生物学的有効性はMOGADでは限定的と考えられている1) 。
トシリズマブ (IL-6受容体抗体)
最長29ヶ月の再発予防効果が報告されている(オフラベル使用)。IL-6受容体阻害薬はMOGADでの維持療法として臨床的に好まれる傾向がある3) 。
MS 治療薬について
MS 用疾患修飾薬はMOGADに無効であり、AQP4陽性NMOSD と同様に疾患を増悪させる可能性がある。
小児神経科・眼科・リハビリテーション科・心理職による多職種チームでの管理が推奨される。成長・発達、就学支援、心理的健康、視能訓練、家族負担への配慮が重要である。
ステロイド 減量・中止時の注意点
ステロイド を急速に減量または早期に中止すると、再発率が無治療と同等にまで上昇する可能性がある
プレドニゾン10mg/日未満への減量時が特に再発が起こりやすい時期
治療期間が3ヶ月未満の場合、再発リスクが有意に増大する
小児のステロイド 長期投与は成長障害・神経精神症状・代謝障害・感染リスクに留意する
アザチオプリン ・MMFの若年期開始は生涯悪性腫瘍リスクへの懸念があるが、これを裏付けるコホートデータはまだない
自己判断での服薬中止は避け、必ず主治医の指示に従ってください
Q
ステロイドはどのくらいの期間使い続けるのか?
A
急性期IVMP後、経口プレドニゾロンへの移行と段階的漸減を行う。欧州小児MOGコンソーシアムは漸減期間の合計を3ヶ月以上とすることを推奨しており、それより短い場合は再発リスクが増大する。6ヶ月間の十分量維持で95%が1年以上再発なし。小児では長期副作用も考慮しながら主治医と相談して方針を決める。
MOGはCNSミエリン鞘の最外層および乏突起膠細胞(oligodendrocyte)表面に発現する微量膜貫通タンパク質である。MOGADは乏突起膠細胞障害(oligodendrogliopathy)であり、AQP4抗体陽性NMOSD の アストロサイト障害(astrocytopathy) 、MS のCD8陽性T細胞優位の脱髄疾患 とは病態が根本的に異なる3) 。
MOGは網膜 には発現しない。網膜神経節細胞 変性にはグルタミン酸細胞毒性など別の機序が推定される。
MOG-IgGのサブクラス: IgG1。古典的・副経路の両補体 経路を活性化するが、AQP4-IgGより弱い(二価結合MOG-IgGが多いため)1)
Fc受容体経路: MOG-IgGは新生児型Fc受容体経路を活性化し、T細胞の活性化と組織浸潤を促進
T細胞プロファイル: 炎症性プラークではCD4陽性T細胞が優勢(MS ではCD8陽性T細胞が優勢)
IL-6の役割: IL-6がB細胞からMOG-IgG分泌形質芽球への分化を促進 → IL-6が治療標的としてのポテンシャルを持つ
サイトカインプロファイル: Th17・一部Th1関連分子の上方制御。AQP4陽性NMOSD と類似しMS とは異なる
髄腔内産生: MOGADではMOG-IgGの髄腔内産生が報告されている(AQP4陽性NMOSD では報告なし)
顆粒球の可変的浸潤、MOG含有マクロファージ、補体 ・Ig沈着、可変的な乏突起膠細胞・軸索破壊、アストログリオーシスが認められる1) 。前駆乏突起膠細胞が活動性再髄鞘化なしに認められることがある。
以下にMOGADとAQP4陽性NMOSD の病態生理学的比較を示す。
項目 MOGAD AQP4陽性NMOSD 標的抗原 MOG AQP4 標的細胞 乏突起膠細胞 アストロサイト 補体 活性化あり(弱い) あり(強い) 主な浸潤細胞 CD4+T細胞・マクロファージ 顆粒球 髄腔内抗体産生 あり なし GFA Pバイオマーカー 正常 高値 神経損傷の重症度 比較的軽度 重度
H sign(脊髄軸位断でH字型を呈する灰白質限局性のT2高信号)はMOGAD患者の30〜50%に認められる。AQP4陽性NMOSD では頻度が低く、MS では認められないため、MOGAD特異性が高い画像所見とされている11) 。脊髄炎型での小児100%対成人12.5%という顕著な年齢差は、MOGの発現分布の年齢依存性と関連すると考えられている。
Varley et al.(2024)は1,879例のMOG-Ab検査患者から539例(小児135例、成人404例)を後方視的に評価した2) 。小児では成人より支持的所見が多く(p=0.0011)、脊髄炎型ではH signが小児100%対成人12.5%と顕著な差が認められた。再発性疾患では支持的所見がフォローアップ時に増加した(中央値2→3.5、p=0.03)。偽陽性5例は全例最終的にMS と診断(OCB陽性・MS 典型的脳MRI)であった。
急性発作後に最大90%が完全または部分的回復を示す1)
永続的失明(VA 20/200以下): MOGAD 6〜12%(AQP4陽性NMOSD 60〜69%と対照的)
小児の75〜96%が完全回復(成人より良好)。MOG-ON患者の56〜73%で視力 完全回復
OCT と機能的回復の乖離: 小児は成人と同程度の構造損傷にもかかわらず機能回復は良好
発症年齢が遅いほど視力 予後が悪化する線形相関
再発性・多相性経過: 完全回復率31〜50%(単相性の約半分)。MDEM患者の50%に認知機能障害
5年超追跡で再発率最大70%。16%がCRION(ステロイド 依存性慢性型視神経症 )を発症
EDSS(障害度スコア)は1〜2程度と比較的良好(AQP4陽性NMOSD >3と対照的)
ロザノリキシズマブ(rozanolixizumab; NCT 05063162): 新生児Fc受容体阻害薬、第III相試験
サトラリズマブ(satralizumab; NCT 05271409): IL-6受容体阻害薬、第III相試験
リツキシマブ (NCT 05545384): 第III相試験1, 3)
Heroorら(2024)は、25歳女性のMOG-ONにPAMM (傍中心窩 急性中間黄斑 症)が合併した症例を報告した7) 。IVMP 1g×5日で1ヶ月後に完全回復。視神経周囲炎 による炎症性浮腫が表層毛細血管叢の血流低下を引き起こす可能性が示唆された。
COVID-19後のMOGADでは一過性MOG-IgG陽性化のパターンが示唆されている10) 。ワクチン関連MOGADでは、mRNAワクチンによる血液脳関門破壊と自己抗体産生の可能性が考察されている8) 。47例の文献レビューでは21例が産後に診断されており、産後期の発症・再発リスクの上昇が示唆される9) 。
Q
MOGADの長期的な予後はどのようなものか?
A
小児では75〜96%が完全回復し成人より良好な予後が期待できる。ただし再発性・多相性の経過をたどった場合は完全回復率が31〜50%と低下する。5年超の長期フォローアップでは再発率が最大70%に達するとの報告もあり、長期的な経過観察と維持療法の継続が重要である。
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