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緑内障

濾過胞関連感染症

濾過胞関連感染症(bleb-related infection: BRI)は、緑内障濾過手術線維柱帯切除術など)後に濾過胞から細菌が侵入して生じる感染性合併症である。感染が濾過胞内にとまっているものをブレブ炎(blebitis)、感染が眼内にまで波及した場合を濾過胞関連眼内炎(bleb-associated endophthalmitis: BAE)と呼び、臨床的にはこの2病態を分けて扱う。

  • ブレブ炎(blebitis):感染が濾過胞内または周囲に限局した状態。軽度〜中等度の前房反応を伴うことがある
  • 濾過胞関連眼内炎(BAE):感染が硝子体まで波及した状態。視力予後が著しく不良である

臨床的な病期分類として、以下の段階が用いられる1)

  • Stage I:濾過胞の局所炎症(ブレブ炎)
  • Stage II前房内の細胞・フレア・前房蓄膿
  • Stage IIIa硝子体波及。眼底透見可能
  • Stage IIIb硝子体混濁が高度で眼底透見不能

濾過手術は他の内眼手術と異なり、術後早期だけでなく長期にわたり濾過胞感染を生じる危険性がある。マイトマイシンC併用線維柱帯切除術を対象とした多施設共同前向き研究(Collaborative Bleb-Related Infection Incidence and Treatment Study)では、術後5年間の濾過胞感染累積発症率は2.2%、うちBAEは1.1%と報告されている5)。この研究は日本緑内障学会が実施した全国規模の前向き調査であり、信頼性の高いデータである。術後1ヶ月以降の濾過胞関連感染症の頻度は0.97〜5%との報告もあり4)、他の内眼手術の晩期感染症と比較して発症頻度が高い。緑内障手術後の濾過胞感染は手術後数年経ってから発症することが多く、白内障手術後よりも発症率が高い。

発症時期により、術後1ヶ月以内の早期発症型と1ヶ月以降の晩期発症型に大別される1)。早期発症型は低毒性菌(コアグラーゼ陰性ブドウ球菌)が多く、晩期発症型は高毒性菌(連鎖球菌属、インフルエンザ菌)が関与し予後不良となりやすい1)。術後早期の濾過胞感染頻度は0.1〜0.2%と晩期に比べ低い4)濾過手術を施行された患者には、晩期感染のリスクについて十分に説明し、充血・流涙・霧視眼痛などの感染を示唆する症状があれば直ちに来院するよう指示することが重要である4)

Q ブレブ炎と濾過胞関連眼内炎はどう違いますか?
A

ブレブ炎は感染が濾過胞内に限局した状態であり、適切な局所治療で良好な視力予後が期待できる。一方、濾過胞関連眼内炎(BAE)は感染が硝子体まで波及した状態であり、積極的な治療を行っても視力予後が不良であることが多い。前房蓄膿と明らかなブレブ感染を認めた場合は、他の原因が証明されない限り眼内炎として取り扱う1)

黄白色に混濁した感染濾過胞(white-on-red)

Ohtomo K, Mayama C, Ueta T, et al. Outcomes of Late-Onset Bleb-Related Endophthalmitis Treated with Pars Plana Vitrectomy. J Ophthalmol. 2015;2015:923857. Figure 1. PMID: 26495137; PMCID: PMC4606135; DOI: 10.1155/2015/923857. License: CC BY.
充血した結膜上に黄白色の混濁した濾過胞が際立つ、ブレブ感染の特徴的な「white-on-red」所見。本文「2. 主な症状と臨床所見」の項で扱うStage I〜IIの外観評価に対応する。

  • 眼痛:急激に発症する。BAEではより激しい
  • 充血:濾過胞周囲から結膜全体に及ぶ
  • 視力低下:ブレブ炎では軽度、BAEでは著明
  • 羞明まぶしさ前房内炎症に伴う
  • 目やに・流涙:膿性分泌物を伴うことがある
  • 前駆症状眼瞼炎、眉部痛、頭痛、外眼部炎症が35%の患者で数日〜数週前に先行する1)

Stage I(ブレブ炎)

「赤の上の白(white-on-red)」充血した結膜の上に黄白色に混濁した濾過胞が特徴的。

濾過胞の混濁:黄白色に不透明化する。

軽度の前房反応前房蓄膿を伴う場合と伴わない場合がある。

Stage II-III(BAE)

著明な結膜充血:Stage Iより広範かつ強い。

前房蓄膿:フィブリン析出を伴う。

硝子体混濁:Stage IIIで出現。IIIbでは眼底が透見不能となる。

前房蓄膿と明らかなブレブ感染を認めた場合、他の原因が証明されない限り眼内炎として取り扱う1)濾過胞漏出がしばしば確認されるが、炎症性デブリが一時的に漏出部位を閉塞していることもある。

濾過手術後の濾過機能の予測や合併症の早期発見のために、ブレブは診察のたびに丁寧に観察する必要がある。細隙灯顕微鏡検査で以下の5項目を確認する。

  • 範囲(広がり):びまん性ブレブは限局性より眼圧下降効果が良好。角膜側に垂れ下がったoverhanging blebは視力を妨げることがある
  • 高さ:丈の低い平坦なブレブは濾過機能低下を示唆する
  • 壁の厚さ代謝拮抗薬併用例ではブレブ壁が菲薄化する頻度が高い。菲薄化ブレブは眼圧下降が良好なことも多いが、房水漏出を生じやすい。ブレブ内腔が厚い膜で囲まれた被包化ブレブ(encapsulated bleb)は眼圧下降が不良となることが多い
  • 血管分布:血管分布のない虚血性ブレブは房水漏出のリスクが高い
  • Seidel試験フルオレセイン試験紙でブレブ表面を染色し、房水漏出の有無を確認する。詳細は「診断と検査方法」の項を参照
  • 濾過胞漏出(最大のリスク因子):感染リスクを26倍に高める1)。濾過胞からの房水漏出が主要なリスク因子であり4)7)、晩期漏出は早期漏出よりもリスクが高い1)房水が染み出てくるoozingであれば感染に注意しつつ経過観察するが、明確なリーク(漏出)は原則として処置が必要である
  • 代謝拮抗薬(MMC・5-FU)使用:杯細胞減少からムチン産生低下をきたし、結膜の防御壁が減弱する。ブレブ壁の全般的な菲薄化と無血管化を促進し、マイトマイシンC使用で5年後の漏出リスクが15%に達する11)
  • ブレブ壁の菲薄化・無血管化代謝拮抗薬併用の線維柱帯切除術で頻度が高い。壁が菲薄化したブレブは房水漏出を生じやすく、漏出は濾過胞感染のリスク因子となる
  • 下方ブレブ:涙液溜まりへの曝露と上眼瞼の保護欠如により感染率が上昇する。上方(1.3%/患者・年)に比べ下方は7.8%/患者・年1)
  • 輪部基底結膜切開(limbus-based):円蓋部基底に比べ感染率が高い(8% vs 0%)1)。無血管ブレブは輪部基底結膜切開の手技で生じやすい
  • その他結膜炎眼瞼炎、上気道感染症、若年、軸性近視、抗菌薬の慢性使用

起炎菌は発症時期により異なる。文献上100以上の起炎微生物が報告されている1)

発症時期主な起炎菌特徴
早期発症コアグラーゼ陰性ブドウ球菌低毒性、予後比較的良好
晩期発症連鎖球菌、H. influenzae高毒性、予後不良

グラム陽性球菌が最も多く、Streptococcus属(約385分離株)とStaphylococcus属(約296分離株)が主要である。グラム陰性菌ではMoraxella属(約79例)とHaemophilus属(約63例)が多い1)。まれにCapnocytophaga canimorsusなどの人獣共通感染症も報告されている2)。スウェーデンの後方視的研究では、トラベクレクトミー後の眼内炎および重篤なブレブ炎の発症率は1000術あたり7.2件であったと報告されている12)

Q 濾過胞感染の最大のリスク因子は何ですか?
A

濾過胞からの房水漏出が最大のリスク因子であり、感染リスクを26倍に高める1)代謝拮抗薬の使用による濾過胞壁の菲薄化・無血管化が漏出リスクを増大させる。特に壁が薄く血管分布に乏しい虚血性ブレブでは漏出が生じやすい。診察のたびにSeidel試験で漏出の有無を確認することが重要である。

ブレブの外観観察が基本であり、前述の5項目(範囲・高さ・壁の厚さ・血管分布・Seidel試験)を確認する。

濾過胞からの房水漏出を確認するための基本的検査である。

  • 点眼麻酔薬を浸したフルオレセイン試験紙をブレブ表面に丁寧に塗布する
  • ブルーフィルター下でブレブ全体を観察する
  • 房水漏出がある場合、房水により希釈されたフルオレセインが流れるのが確認できる(Seidel試験陽性)
  • いったん閉瞼させ、開瞼した直後から数秒間ブレブ全体を観察すると判定しやすい
  • 漏出場所や漏出範囲の確認も重要である

外観によるブレブ分類として、以下の代表的な方法がある。

  • Moorfields bleb grading system(MBGS):ブレブの形態を標準化して評価する分類法8)
  • Indiana bleb appearance grading scale(IBAGS):ブレブの外観を体系的にグレーディングする分類法9)

いずれも濾過機能の評価や感染リスクの予測に有用である。前眼部OCTを併用することで、ブレブの内部構造やブレブ壁の厚さをより客観的に評価できる10)

  • 結膜スワブ・培養:膿性分泌物から検体採取し、血液寒天、チョコレート寒天、チオグリコール酸培地などに接種する1)
  • 前房水・硝子体穿刺:Stage II以上で必須。培養と同時に硝子体内抗菌薬注射を行う
  • PCR:培養の陰性率が21〜86%と高いため、PCRによる補完が有用である。検出率を47.6%から95.3%に改善したとの報告がある1)
  • B-scan超音波:Stage IIIbで眼底が透見不能な場合、硝子体混濁脈絡膜肥厚を確認する1)
  • 前眼部OCT:ブレブの内部構造評価に有用。強膜フラップの開口やブレブ内腔、マイクロシストなどを観察できる10)
  • 白内障術後の眼内炎:発症時期・術式が異なる。白内障術後眼内炎は通常術後早期(1週間前後)に発症するが、濾過胞関連感染症は術後数年経ってから発症することが多い。濾過胞の感染所見の有無で鑑別する
  • 急性前部ぶどう膜炎:ブレブの混濁・周囲の著明な充血(white-on-red)の有無が鑑別の決め手となる。非感染性のぶどう膜炎では濾過胞自体の白濁を伴わない
  • 被包化ブレブ(encapsulated bleb):術後数週間で生じる非感染性の合併症。ブレブ内腔が厚い膜で囲まれ、眼圧下降が不良となるが、感染所見(white-on-red)を欠く

硝子体波及がない場合、積極的な局所抗菌薬治療を行う。感染が濾過胞から前房内にとどまる場合は局所・全身的抗菌薬投与で対処できる。

  • 強化点眼薬レジメン:バンコマイシン(25〜50mg/mL)またはセファゾリン(50mg/mL)とトブラマイシン(14mg/mL)を30分毎に交互点眼。48時間後、改善に応じ漸減する
  • 代替レジメン:第4世代フルオロキノロン(モキシフロキサシンなど)1時間毎
  • 結膜下注射:濾過胞感染のステージに応じて抗菌薬の結膜下注射や前房内注射を行う場合がある

臨床的改善の24時間後に局所ステロイドの追加を検討するが、予後悪化の報告もあり慎重な判断を要する。培養結果に基づき抗菌薬の変更や調整を行い、治療反応を注意深くモニタリングする。ステロイドの使用は感染が制御されていることを確認してから開始する。

濾過胞関連眼内炎(BAE)の治療

Section titled “濾過胞関連眼内炎(BAE)の治療”

硝子体穿刺による検体採取と同時に、硝子体内抗菌薬注射を行う。

薬剤投与量備考
バンコマイシン1mg/0.1mLグラム陽性菌カバー
セフタジジム2.25mg/0.1mLグラム陰性菌カバー
デキサメタゾン0.4mg/0.1mL補助的(炎症抑制)

硝子体腔にまで感染が波及した場合は硝子体手術が必要となることが多い。硝子体手術PPV)は穿刺注入法よりも視力予後が優れるとの報告がある一方、近年のデータでは両者の視力予後は同等との報告もある。感染が硝子体腔にまで至ると視力予後はきわめて不良であるため、迅速な対応が必要である。なお、眼内炎硝子体切除研究(EVS)は白内障術後の眼内炎を対象としたものであり、BRI/BAEとは患者背景・起炎菌・発症機序が異なるため、EVSの結果をそのまま適用することは不適切である。特にBAEでは晩期発症で高毒性菌が関与することが多く、より積極的な硝子体手術の適応を考慮すべきである。

緑内障診療ガイドライン(第5版)CQ6では、線維柱帯切除術後の抗菌薬使用について以下のように推奨している4)

抗菌薬の予防的投与が推奨されるが、投与すべき薬剤・方法・期間に関してコンセンサスの得られたものは存在しない4)。研究に参加した専門医はおおむね術後1〜3ヶ月間は継続的に抗菌薬を点眼しており、その期間に術後感染が生じなかったことから、術後1〜3ヶ月間の抗菌薬の継続的使用が強く推奨されている(推奨の強さ:「実施すること」を強く推奨、エビデンスの強さ:C)4)

全国規模の濾過胞感染調査(104眼)では、抗菌薬の長期使用群と非使用群を比較した結果、濾過胞感染の発症を有意に遅延させることが示された6)

  • 非使用群:感染発症の中央値 3.9年
  • 長期使用群:感染発症の中央値 6.4年
  • 眼軟膏群:感染発症の中央値 10.5年

濾過胞壁が薄く、上眼瞼挙上時に房水が染み出す所見や、起床時に涙が溜まるなどの自覚症状がある場合は、就寝前のニューキノロン系抗菌薬眼軟膏の点入を積極的に検討する4)

長期使用群26眼中9眼に耐性菌が認められたが、そのうち6眼は眼内炎が重症化しにくい表皮ブドウ球菌であった4)。抗菌薬の漫然とした使用は医療経済の面からも避ける必要がある。

濾過胞感染の最大のリスク因子である漏出を認めた場合、適切な管理が必要である。

  • 保存的治療:バンデージコンタクトレンズ、圧迫縫合(compression suture)、シアノアクリレート組織接着剤、圧迫眼帯
  • 自己血注入:自己血を濾過胞内および濾過胞周囲に注射する方法。急激な眼圧上昇を来すこともある
  • 外科的治療結膜前転術(成功率100%)、羊膜移植(成功率45%)。感染の危険性が高い場合や低眼圧が回復しない場合は、遊離結膜片や上方からの有茎結膜弁による濾過胞再建術の適応となる。長期的にはブレブ形態の再評価と眼圧管理を並行して行う必要がある11)
Q 緑内障手術後、いつまで抗菌薬を使用すべきですか?
A

緑内障診療ガイドライン(第5版)では、術後1〜3ヶ月は抗菌薬の継続使用が強く推奨されている(エビデンスの強さC)4)。その後は濾過胞漏出の有無など感染リスクに応じ、長期的にニューキノロン系眼軟膏の就寝前使用を検討する。長期使用により感染発症の中央値が非使用群の3.9年から軟膏群の10.5年へ有意に遅延するとの報告がある6)。ただし漫然とした使用は避け、担当医と相談のうえ継続の判断を行う。

6. 病態生理学・詳細な発症機序

Section titled “6. 病態生理学・詳細な発症機序”

濾過胞関連感染症の病態は、緑内障濾過手術により形成された濾過胞が感染の入口(ポータル)となることに起因する。

線維柱帯切除術では、強膜弁の下から房水結膜下に導いて濾過胞を形成させる。この濾過胞の壁が菲薄化あるいは漏出すると、涙液や眼周囲の常在菌が眼内に侵入しうる。

代謝拮抗薬(MMC・5-FU)の使用は、以下の複合的な機序で感染リスクを高める。

  • 結膜の杯細胞数を減少させてムチン産生を低下させ、涙液の防御機能が低下する
  • 結膜の全般的な菲薄化と無血管化を促進し、ブレブ壁の機械的強度が減弱する
  • 物理的・免疫学的防御壁が減弱し、結膜表面から眼内への細菌の侵入が容易になる
  • 線維芽細胞の増殖を抑制するため、創傷治癒が遅延し、結膜上皮の修復能が低下する

代謝拮抗薬は現在の線維柱帯切除術において瘢痕化抑制に不可欠であるが、その使用に伴う長期的な感染リスクの増大を常に念頭に置く必要がある。

ブレブの形態は時間経過とともに変化する。線維柱帯切除術では術後の創傷治癒の過程で結膜下組織に瘢痕が形成される。マイトマイシンC(MMC)の併用により早期の過剰な組織反応は抑制され、長期的に濾過胞を維持できる確率が高まるが、瘢痕形成が急速に進行する術後数ヶ月間は強膜弁の流出抵抗と濾過胞形態が刻々と変化する。この期間に適切な管理が行われないと、ブレブ壁の菲薄化が進行しやすい。

血管分布のない虚血性ブレブは、房水漏出のリスクが特に高い。無血管ブレブは輪部基底結膜切開の手技で生じやすく、このことが輪部基底切開の感染率の高さ(8% vs 円蓋部基底0%)1)にも関連する。ブレブ壁が次第に薄くなって房水が漏れ出す房水漏出や、ブレブ内に細菌が侵入する濾過胞感染は長期的な合併症として注意が必要である。房水が染み出てくるoozingの場合は感染に注意しつつ経過観察するが、明確な漏出は処置の適応となる。

起炎菌の病原性は発症時期と相関する1)。早期発症型は白内障術後の眼内炎と同様の低毒性菌(コアグラーゼ陰性ブドウ球菌)が主体であり、涙液や眼瞼の常在菌叢に由来する。これらの菌は外毒素を産生せず、適切な治療で良好な予後が得られる。

一方、晩期発症型は連鎖球菌属(S. pneumoniae、S. viridans群)やHaemophilus influenzae、Serratia属などのより毒性の高い菌が関与する1)。外毒素産生や組織侵入性に優れ、急速な臨床経過と不良な視力予後をもたらす。

Kandarakisら(2022)は文献上報告されたBRI起炎菌を網羅的にレビューし、100以上の微生物を同定した。グラム陽性球菌ではStreptococcus属(約385分離株)とStaphylococcus属(約296分離株)が圧倒的に多く、グラム陰性菌ではMoraxella属(約79例)とHaemophilus属(約63例)が主要であった1)

Yangら(2021)は、トラベクレクトミー10年後にCapnocytophaga canimorsusによるブレブ炎を発症した81歳男性を報告した。患者は飼い犬に日常的に顔を舐められており、犬の口腔内常在菌が濾過胞を介して感染したと考えられた。トラベクレクトミーの再建術により良好な視力予後(20/70)を得た2)


7. 最新の研究と今後の展望(研究段階の報告)

Section titled “7. 最新の研究と今後の展望(研究段階の報告)”

Kandarakisら(2022)のレビューでは、従来の培養による陰性率が21〜86%と高い問題を指摘している。リアルタイムPCRは細菌検出率を47.6%から95.3%に向上させる。さらに、メタゲノミクス(高スループットDNAシーケンシング)による網羅的な微生物同定が次世代の診断手法として期待されている1)

低侵襲緑内障手術(MIGS)による感染リスク低減

Section titled “低侵襲緑内障手術(MIGS)による感染リスク低減”

MIGSの総説では、従来の濾過手術より侵襲を抑え、重篤な術後合併症を減らすことが期待されている。ただし術式によっては濾過胞を形成するデバイスもあり、感染リスクは手術の種類ごとに評価する必要がある3)

Yangら(2021)のCapnocytophaga canimorsusブレブ炎の報告は、ペット動物との接触が濾過手術既往眼における新たな感染リスク因子となりうることを示した。DNAシーケンシングにより、従来培養困難であった病原体の同定が可能となっている2)

緑内障診療ガイドライン(第5版)では、術後抗菌薬の長期使用が感染発症を有意に遅延させることが示された一方、投与すべき薬剤・方法・期間についてのコンセンサスは得られておらず、エビデンスレベルの高い研究が待たれると記載されている4)結膜細菌叢の変化と耐性菌出現の問題とともに、長期的なRCTの実施が今後の重要課題である。


  1. Kandarakis SA, Doumazos L, Mitsopoulou D, Economou MA, Mylona I, Dimitriou C, et al. A Review on Pathogens and Necessary Diagnostic Work for Bleb-Related Infections (BRIs). Diagnostics (Basel, Switzerland). 2022;12(9). doi:10.3390/diagnostics12092075. PMID:36140477; PMCID:PMC9497804.
  2. Yang MC, Ling J, Mosaed S. Capnocytophaga canimorsus blebitis: case report and review of literature. BMC ophthalmology. 2021;21(1):59. doi:10.1186/s12886-021-01823-8. PMID:33499831; PMCID:PMC7839216.
  3. Balas M, Mathew DJ, Bicket AK. Minimally Invasive Glaucoma Surgery: A Review of the Literature. Vision (Basel). 2023;7(3):54. doi:10.3390/vision7030054. PMID: 37606500.
  4. 日本緑内障学会緑内障診療ガイドライン改訂委員会. 緑内障診療ガイドライン(第5版). 日眼会誌. 2022;126(2):85-177.
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