眼球突出・偏位
眼球突出:腫瘍による眼窩内容積の増大に起因する。最も多い所見の一つである。
眼球陥凹:スキルス型の胃癌や乳癌の転移では、線維性結合組織の収縮・硬化により眼球が陥凹することがある。
眼瞼後退・眼瞼下垂:腫瘍の部位や大きさにより、いずれも出現しうる。

外眼筋への転移(metastasis to the extraocular muscles)は、他臓器の悪性腫瘍が血行性に眼窩内の外眼筋へ播種する病態である。ICD-10ではC69.6(眼窩の悪性新生物)に分類される。
眼窩への転移性播種自体が稀であり、全がん患者の2〜4.7%、全眼窩腫瘍の4〜14.7%を占めるにすぎない。がんにより死亡した227名を対象とした調査では、28名(約12%)に眼窩への浸潤が認められた。正常の眼窩内にはリンパ組織が存在しないため、転移は血行性に生じる。片側性が約90%を占める。
眼窩転移のなかでも外眼筋単独の播種はさらに稀であり、全眼窩転移症例の5〜9%にとどまる。外眼筋転移は進行した全身性悪性腫瘍において発生し、予後不良の指標とされている。
全がん患者の2〜4.7%に眼窩転移が認められ、そのうち外眼筋単独の転移は5〜9%にすぎない。極めて稀な病態であり、進行がんの徴候として発見されることが多い。
外眼筋転移の症状は数日から数週間の経過で出現する。
前眼部および後眼部の検査は通常正常であり、眼圧も正常範囲内である。外眼部構造と眼球運動の評価が特に重要となる。
眼球突出・偏位
眼球突出:腫瘍による眼窩内容積の増大に起因する。最も多い所見の一つである。
眼球陥凹:スキルス型の胃癌や乳癌の転移では、線維性結合組織の収縮・硬化により眼球が陥凹することがある。
眼瞼後退・眼瞼下垂:腫瘍の部位や大きさにより、いずれも出現しうる。
運動障害・炎症徴候
眼球運動制限:罹患した外眼筋の機能障害による。複視の原因となる。
結膜浮腫・充血:眼窩内の腫瘤効果や静脈還流障害に伴う。
眼瞼腫脹:眼窩前方への病変進展に伴って認められる。
血流が豊富な腫瘍(腎癌や甲状腺癌など)では、拍動を触れることがある。
数日〜数週間にわたる片側性または両側性の眼痛・複視・眼球突出・眼球運動制限があり、前眼部・後眼部検査が正常な患者では、外眼筋転移を疑う必要がある。全身性悪性腫瘍の既往がある場合は、臨床的疑いをさらに強めるべきである。
外眼筋に転移する原発巣は多岐にわたる。
| 性別・年齢 | 主な原発巣 | 頻度 |
|---|---|---|
| 女性 | 乳癌 | 全体の約50% |
| 男性 | 肺癌 | 最多 |
| 男性 | 消化器癌・前立腺癌 | 次いで多い |
| 小児 | 神経芽細胞腫 | 89%と最多 |
外眼筋転移で最も報告が多い原発巣は、乳腺腺癌・皮膚メラノーマ・消化器癌・肺癌の4種である。
その他に報告のある原発腫瘍は以下の通りである。
通常、受診時には原発腫瘍の診断がついている。しかし、外眼筋転移に関連する眼症状が未診断の遠隔転移性悪性腫瘍の初発症状となることもある。
最も多いのは乳腺腺癌・皮膚メラノーマ・消化器癌・肺癌の4種である。女性では乳癌が全体の約50%を占め、男性では肺癌が最多となる。小児では神経芽細胞腫が89%と圧倒的に多い。
眼窩のCTまたはMRIが最も頻繁に使用される画像診断法である。
細針吸引生検が行われることもあるが、診断に必須ではない。組織病理学的特徴は原発腫瘍によって異なり、眼窩転移の組織所見が原発腫瘍と異なる場合もある。
外眼筋の腫大をきたす疾患との鑑別が重要である。
| 疾患 | 鑑別のポイント |
|---|---|
| 甲状腺眼症(TED) | 筋腹が紡錘状に肥厚、腱の肥厚は軽度 |
| 非特異的眼窩炎症(NSOI) | 疼痛が主症状、ステロイドに反応 |
| サルコイドーシス | 非乾酪性肉芽腫、多臓器病変 |
| 眼窩リンパ腫 | 原発性腫瘍、外眼筋を高率に侵す |
| 頸動脈海綿静脈洞瘻 | 拍動性眼球突出、血管雑音 |
甲状腺眼症では外眼筋の筋腹が紡錘状に肥厚し、腱の肥厚は軽度であるのが画像上の特徴である。一方、転移性病変では結節状の腫瘤を呈することがある。全身悪性腫瘍の既往の有無も重要な鑑別要素となる。
外眼筋転移に対する標準化された治療アプローチは確立されていない。眼窩転移は進行期に発生するため、治療の目標は緩和的である。疾患負荷と患者の治療目標に基づき、治療方針が決定される。
放射線療法
外照射放射線療法:好ましい第一選択である。様々な原発腫瘍が放射線に対して高い感受性を示す。
局所効果:眼窩内病変の縮小および症状緩和に有効である。
薬物療法
化学療法:二次治療として使用される。エトポシド・メトトレキサート・アクチノマイシンD・シクロホスファミド・ドセタキセル・ビンクリスチンなどが報告されている。
ホルモン療法:乳癌や前立腺癌にはホルモン療法が奏効する。
外科的治療
腫瘍減量術:稀に行われるが、症状改善の可能性がある。
全摘出の適応:眼窩内の転移巣が全摘出の適応となることはほとんどない。
治療効果のモニタリングには、外眼筋のPETまたはMRIが利用される。原発癌を扱う他科の医師と連携した集学的治療が重要である。眼窩転移をきたした患者のQOL(生活の質)維持を図ることも治療上の重要な目標である。
眼窩内の転移巣が全摘出の適応となることはほとんどない。治療の目標は緩和的であり、外照射放射線療法が第一選択とされる。原発癌に有効な薬物療法やホルモン療法が併用される場合もある。
外眼筋への転移性病変は、進行した全身性悪性腫瘍の血行性播種(hematogenous seeding)によって眼窩に到達すると考えられている。正常の眼窩内にはリンパ組織が存在しないため、リンパ行性転移ではなく血行性転移が主たる経路である。
腫瘍微小環境として外眼筋がなぜ選択されるのかについては、十分に解明されていない。しかし、以下の特徴が報告されている。
画像検査では、罹患した外眼筋の単独腫大が認められるのが典型的であるが、結節状の病変を示すこともある。
外眼筋転移患者の平均年齢は53歳であり、一般的な眼窩転移の平均年齢(62〜73歳)よりも若い。性別による偏りや左右の眼の選択性は認められていない。眼症状の発現までの期間は原発腫瘍の部位によって異なり、皮膚メラノーマで平均2年、乳癌で平均3年、全腫瘍で平均30ヶ月と報告されている。
外眼筋転移の正確な発症機序はいまだ解明されておらず、今後の研究課題である。症例報告レベルでは、外陰部メラノーマ・カルチノイド腫瘍・乳癌・横紋筋肉腫の患者を含む外眼筋転移に対して放射線療法が使用されている。
近年では、眼部の悪性黒色腫の転移に対してニボルマブ(オプジーボ)などの分子標的薬(免疫チェックポイント阻害薬)の投与が開始されており、転移性眼窩腫瘍への応用が期待される。
眼窩転移をきたした患者の生命予後は一般に非常に不良である。外眼筋内の病変は疾患負荷の不吉な兆候とされ、不良な臨床転帰と関連している。