急性期
楕円体帯(IS/OS接合部)の断裂・消失:中心窩直下に認める。最も特徴的な所見。
高反射病変:外顆粒層〜光受容体層に認める小病変。
網膜外層の菲薄化:中心窩周囲の構造変化を反映する。
日光網膜症(Solar retinopathy; SR)は太陽光による光線黄斑症(photic maculopathy)である。精神障害者や宗教的理由で太陽を凝視する例のほか、日食観察時の不適切な器具使用でも生じる。強い光エネルギーの中心窩への集中が光毒性網膜障害を引き起こし、「日食網膜症(eclipse retinopathy)」とも呼ばれる。1)
原因は多岐にわたる。1)
発症後3〜6か月で自然回復することが多いが、永続的な視力障害が残る例もある。1)若年者は水晶体の光透過率が高く瞳孔径も大きいため、高齢者よりも障害が起こりやすい。
保護フィルターなしで数秒間であっても、集光された紫外線・可視光が中心窩に達すれば光毒性障害が生じうる。晴天であれば1秒程度の凝視でも障害を生じることがある。ISO 12312-2認証の日食観察グラスを使用することが必須である。2)
症状は光曝露後数時間〜数日以内に出現する。1)2)光化学的障害では受傷直後には異常がなく、数日後に自覚症状が出現することがある。
高地での強い太陽光曝露例では、複数名が同時発症し、紫外線量増加が病因に関わっていた。4)
OCTは日光網膜症の診断と経過観察に最も重要な検査である。1)2)受傷早期には中心窩に直径160μm程度の黄色斑がみられ、1〜2週で消失することが多い。病期によってOCT所見が変化する。
急性期
楕円体帯(IS/OS接合部)の断裂・消失:中心窩直下に認める。最も特徴的な所見。
高反射病変:外顆粒層〜光受容体層に認める小病変。
網膜外層の菲薄化:中心窩周囲の構造変化を反映する。
回復期
楕円体帯の部分的再生:数週〜数か月で断裂部が縮小する。
高反射病変の縮小・消退:外層の修復過程を反映する。
残存する微細変化:完全消失しない例では視力障害が持続する。
慢性期
中心窩嚢胞様変化・偽嚢胞:一部症例で認める永続的変化。
Verhoeff膜(IZ層)の破壊:特定の光毒性パターンに特異的。1)
全層欠損(フルサイズ欠損):高度障害例の最終像。視力予後不良。
マイクロペリメトリは中心窩機能を定量的に評価できる。 写真家の両側性日光網膜症例では、中心暗点の大きさと残存感度の低下が記録された。2)
直射光の当たり方や保護用具の使用状況によって片眼性・両眼性のどちらもありうる。写真家による太陽光露光では両眼性の発症が報告されている。2)
日光網膜症の原因ごとに、光の波長・強度・曝露状況が異なる。1)
リスク因子
若年・透明水晶体:若年者は水晶体の光透過率が高く瞳孔径も大きいため、より多くの光エネルギーが網膜に到達する。
高地での活動:海抜が高いほど大気の紫外線遮蔽が低下する。4)
散瞳状態:暗所からの突然の露光、散瞳薬使用後の太陽直視。
SNS・ピアプレッシャー:若年者が仲間の誘導により長時間太陽を直視する。2)
保護因子
白内障(水晶体混濁):混濁した水晶体が紫外線・可視光を吸収・散乱し、網膜への到達量を減少させる。
強度近視・屈折異常:一般に太陽光の焦点が網膜面でずれる可能性がある。
ISO認証フィルター装着:ISO 12312-2認証の日食観察グラスは適切に遮光する。2)
診断において太陽観察歴の聴取が最重要である。天候は重要な要因であり、晴天であれば1秒程度の凝視でも障害を生じうる。以下の事項を確認する。
OCTは日光網膜症の診断において最重要の検査である。1) 外層(楕円体帯・外顆粒層・視細胞層)の変化を高解像度で評価できる。 病期判断・視力予後予測・経過観察すべてに有用である。
日光網膜症と鑑別が必要な疾患の比較を以下に示す。
| 疾患 | 主な原因 | OCT所見 |
|---|---|---|
| 日光網膜症 | 太陽光・強光源 | IS/OS断裂、高反射病変 |
| レーザー網膜症 | レーザーポインター等 | 外層破壊、瘢痕形成 |
| 溶接工網膜症 | 溶接アーク紫外線 | 日光網膜症と類似 |
鑑別には詳細な曝露歴の聴取が不可欠である。 網膜動脈閉塞症(cherry-red spot類似)・外傷性黄斑症・黄斑変性・傍中心窩毛細血管拡張症(MacTel)・急性黄斑神経網膜症(AMN)・傍中心窩急性中層黄斑症(PAMM)なども鑑別に挙げる。2)
日光網膜症に対して有効な治療はない。多くの症例は自然経過で回復する。
写真家の両側性日光網膜症例では、適切な保護フィルターなしの撮影後3か月で視力が改善した経過が記録されている。2)自然回復率は50〜83%と報告される。2)
主な治療選択肢とその評価を以下に示す。
| 治療法 | 評価 | 備考 |
|---|---|---|
| 経過観察 | 第一選択 | 多くは3〜6か月で自然回復 |
| ステロイド全身投与 | 不確実・リスクあり | 効果は不明。CSCR誘発の危険性2)3) |
| 抗酸化剤(ビタミンC・E等) | 理論的根拠のみ | in vitroで障害抑制報告あるが受傷後服用の効果は不明1) |
永続的な中心暗点が残存した場合、低視力補助具の活用・偏心固視訓練が有益となりうる。
多くの症例は3〜6か月の自然経過で視力が改善する。回復率は50〜83%と報告されるが、重度の光毒性や遅延受診例では永続的な視力障害が残ることがある。2)
日光網膜症の損傷機序は主に光化学損傷と光熱損傷の2経路からなる。2)
光化学的障害では受傷直後には眼底に異常がなく、数日後に自覚症状と黄斑部の変性が出現するのが特徴である。
光が強ければ、真夏の南天を短時間直視した場合のように、網膜での熱変換により凝固損傷が即時に生じる。熱作用の場合は受傷直後から自覚症状と黄斑部の凝固斑がみられる。
軽度〜中等度の損傷では、光受容体核(外顆粒層)が温存されていれば外節の再生が可能である。5)
Marticorenaら(2022)のモバイルデバイス反射光例では、光受容体核が保存された状態での光毒性損傷後に外節の部分的回復が観察された。5)
高度の損傷・嚢胞様変化・全層欠損に至った場合、組織再生は限定的となり永続的な視力障害につながる。障害の程度は眼底に異常のみられないものから網脈絡膜萎縮を残すものまでさまざまである。
OCT・眼底自発蛍光・mfERG・マイクロペリメトリを組み合わせたマルチモーダル評価が、病期判定・視力予後予測のバイオマーカーとして研究されている。1)2) 特に楕円体帯の損傷範囲と残存視力との相関が検討されている。1)
スマートフォンのカメラレンズを介した太陽光集光による網膜障害が2022年に世界で初めて報告された。5) モバイルデバイスの普及に伴い、特に若年者・アウトドア活動中の偶発的な露光リスクが高まっている。 この新たな曝露形態に対応した予防教育の必要性が提唱されている。5)
ROSを介した光化学損傷の機序から、抗酸化剤(ビタミンC・E、ルテイン)や神経保護薬の治療的可能性が理論的に検討されている。in vitroでビタミンC等の抗酸化物質が障害を抑制すると報告されているが、受傷後に服用することの効果は不明であり、臨床的有効性を示すエビデンスは現時点では不十分である。1)
光化学損傷に対する抗酸化療法や神経保護療法の研究が進んでおり、発症早期への介入が重要と考えられている。現時点では確立した治療法はなく、予防が最も重要な対策である。1)