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コンタクトレンズの正しいケアと定期健診(Contact Lens Care and Regular Eye Examinations)

1. コンタクトレンズの正しいケアと定期健診とは

Section titled “1. コンタクトレンズの正しいケアと定期健診とは”

コンタクトレンズ(CL)は角膜上に直接装用する高度管理医療機器である。適切なケアを行わず使用すると、角膜感染症・角膜潰瘍など視力に永続的な影響を及ぼす重篤な合併症を引き起こしうる。

CL装用者数は約1,500〜1,800万人と推定される1)。CL関連角膜感染症の約65%がケア不良に起因すると報告されており2)、CL処方者・装用者双方がケア手順と定期健診の重要性を正確に理解することが求められる。

CLの種類別に必要なケアは異なる。1日使い捨て(1day)SCLは毎日廃棄するため、レンズケアが不要である3)。2週間交換型・マンスリーのSCLは毎日の適切なケアが不可欠である。ケア不備に起因する角膜障害を防ぐには、製品ごとの手順を守る必要がある。

CL関連合併症を予防するための二本柱は、正しいケア手順の実践定期的な眼科受診である。どちらが欠けても予防効果は半減する。

Q コンタクトレンズのケアを怠るとどうなるか?
A

ケアを怠ると角膜感染症(アカントアメーバ角膜炎・緑膿菌性角膜炎・ブドウ球菌感染等)や角膜潰瘍を発症するリスクが著しく高まる。特にアカントアメーバ角膜炎は治療が難しく、重症例では角膜移植が必要になることがある。また、ケア不良が慢性的に続くと角膜血管侵入・巨大乳頭結膜炎などの合併症が蓄積し、CLを継続装用できなくなる場合もある。

CL種類消毒要件主な特徴
ハードCL(HCL)原則不要角膜乱視・不正乱視に有効。洗浄とすすぎが基本
ソフトCL(SCL)1dayケア不要毎日廃棄
ソフトCL(SCL)2週間・マンスリー消毒必須毎日のケア(こすり洗い・すすぎ・消毒・保存)が必要
オルソケラトロジーレンズ消毒推奨複雑な形状のため消毒が推奨される

SCLはすべて消毒が必要である。HCLは消毒は原則不要だが、通常のケアで落ちにくい汚れには専用クリーナーの併用が推奨される。なお、研磨剤入りクリーナーは一部のHCLで使用不可であるため、使用前に確認が必要である。

HCLのフィッティング評価はフルオレセイン染色によるフィッティングパターン確認が基本となる。流涙が多い状態では判定を誤りやすく、流涙が収まってから評価する。SCLのフィッティング評価はプッシュアップテストと、上下左右に視線を向けたときにレンズエッジが角膜上に乗り上げないかで判定する。

種類特徴注意点
多目的溶剤(MPS/MPDS一液で洗浄・すすぎ・消毒・保存が可能真菌・ウイルスへの消毒効果弱い。こすり洗いが必須
過酸化水素製剤MPSより消毒効果が高い中和が不完全だと角結膜障害を起こす
ポビドンヨード製剤最も消毒効果が高いヨードアレルギーは禁忌

消毒効果がいかに高まっても、基本のこすり洗い・すすぎ・レンズケースの洗浄と乾燥を怠ると、角膜潰瘍などの重篤な眼障害を起こす。ケア溶液の選択よりも、正確なケア手順の遵守がはるかに重要である。

3. 正しいケアの手順とポイント

Section titled “3. 正しいケアの手順とポイント”

SCLの1日ケアは以下の手順で行う。

  • ① 手洗い:石鹸でよく洗い、ペーパータオル等でよく乾かす2)
  • ② こすり洗い:レンズを手のひらに置き、ケア溶液でこすり洗いを行う(片面20回以上)2)。MPSは「すすぎだけでOK」の表記があっても、こすり洗いを省略しない
  • ③ すすぎ:十分な量のケア溶液でレンズをすすぐ2)
  • ④ レンズケースへの浸漬:清潔なレンズケースにケア溶液を満たし、レンズを入れる
  • ⑤ 消毒時間の確保:MPSは通常4時間以上(製品に応じた時間を守る)

レンズケースはバイオフィルム(細菌・アカントアメーバ等が形成する膜)の温床となりやすく、管理を誤るとCL装用時の感染源となる4)

  • 使用後はケア溶液を捨て、ケース内を水道水ですすいだ後、逆さにして自然乾燥させる4)
  • レンズケースは3か月ごとに新品に交換する4)
  • ケースのバイオフィルム形成はアカントアメーバ角膜炎の主要リスク因子である4)
Q 水道水でコンタクトレンズを洗ってよいか?
A

SCLを水道水で洗浄・保存してはならない。水道水には塩素消毒によっても死滅しないアカントアメーバが含まれており、重篤なアカントアメーバ角膜炎の原因となる。CL関連アカントアメーバ角膜炎の90%以上がCL装用者であり、水道水との接触が主要な感染経路とされている4)。HCLのすすぎも専用のケア溶液や生理食塩水の使用が推奨される。

4. 定期健診の重要性と受診間隔

Section titled “4. 定期健診の重要性と受診間隔”

定期健診は自覚症状のない初期の角膜障害を早期に発見するために不可欠である。CL装用者の多くは違和感が出るまで眼科を受診しないが、その時点ではすでに合併症が進行していることがある。

定期健診で確認される主な項目

Section titled “定期健診で確認される主な項目”
  • 視力屈折測定屈折変動やレンズ度数の適正評価
  • 角膜結膜の合併症チェック角膜上皮障害(SPK)・角膜血管侵入・巨大乳頭結膜炎GPC)・角膜感染症の早期発見
  • レンズの状態確認:傷・汚染・変形の評価
  • フィッティング評価:装用中のレンズ動きとレンズエッジの位置確認
  • 眼圧測定眼底検査:必要に応じて実施
装用状況推奨受診間隔
新規装用者装用開始後1週間・1か月・3か月に受診5)
安定した装用者少なくとも年1回(6〜12か月ごと)5)
トラブル発生時即日受診

コンタクトレンズ診療ガイドラインでは、安定した装用者でも少なくとも年1回の受診が推奨されている5)。新規装用者は最初の3か月に集中して受診することで、早期に適正なフィッティングと合併症の有無を確認する。

Q コンタクトレンズの定期健診はどのくらいの頻度で受ければよいか?
A

安定した装用者では少なくとも年1回の受診が推奨される5)。新規装用者は装用開始後1週間・1か月・3か月のタイミングで受診し、フィッティングや合併症の有無を確認する。自覚症状がなくても角膜血管侵入・角膜上皮障害が進行していることがあるため、定期受診は欠かさない。また、処方の変更(眼鏡やCLの度数変更)、目の充血・痛み・かすみ等のトラブルが生じた場合は即時受診が必要である。

5. CL装用に伴う主な合併症と対処法

Section titled “5. CL装用に伴う主な合併症と対処法”
コンタクトレンズ関連細菌性角膜炎による角膜潰瘍(細隙灯写真)
Tanhapour M, et al. Corneal Ulceration in Bacterial Keratitis. Diagnostics (Basel). 2023;13(21):3358. Figure 1. PMCID: PMC10647798. License: CC BY 4.0.
細隙灯写真で角膜中央部に白色の間質浸潤巣と上皮欠損を伴う潰瘍底が確認できる。本文「CL装用に伴う主な合併症と対処法」の項で扱う細菌性角膜炎に対応する。

細菌性角膜炎

原因菌:緑膿菌・ブドウ球菌等が主体2)

特徴:急速に進行し、角膜潰瘍を形成する。適切な抗菌点眼治療を行わないと視力障害が残る

予防:こすり洗い・レンズケース適切管理・就寝時装用の回避

アカントアメーバ角膜炎

原因:CL装用者の90%以上で発症。水道水使用・水場での装用が主要リスク4)

特徴:激しい眼痛を伴い、初期は細菌性・ウイルス性との鑑別が難しい。治療抵抗性が高い

予防:水道水との接触を完全に避ける。CLのまま入浴・水泳禁止

真菌性角膜炎

報告:MPS使用者でフザリウム属感染の集団発生が報告されている6)

特徴:進行が遅く診断が遅れやすい。抗真菌薬治療が必要

予防:ケア手順の厳守。レンズケース定期交換

その他の合併症

角膜血管侵入:低酸素による血管新生。高酸素透過性(Dk/t)レンズへの変更を検討

巨大乳頭結膜炎GPC:上眼瞼結膜の乳頭増殖。レンズ種類の変更や抗アレルギー点眼を検討

角膜上皮障害(SPK:装用時間短縮・人工涙液の使用

マンスリーソフトコンタクトレンズ装用者のアカントアメーバ角膜炎(前眼部写真)
Nadia BA, Anis M, Ali SM, et al. Acanthamoeba keratitis in contact lens wearers in a tertiary center of Tunisia, North Africa. Ann Med Surg (Lond). 2021;70:102834. Figure 3. PMID: 34567549; PMCID: PMC8449026; DOI: 10.1016/j.amsu.2021.102834. License: CC BY 4.0.
マンスリー使い捨てソフトCL装用者の前眼部写真で、角膜間質に浸潤巣が広がるアカントアメーバ角膜炎の所見を示す。本文「CL装用に伴う主な合併症と対処法」の項で扱うアカントアメーバ角膜炎に対応する。

CL装用は涙液蒸発の増加や涙液層の不安定化を招き、ドライアイの発症・悪化の一因となる7)。特に長時間のスクリーン作業との組み合わせは涙液への負荷が大きい。CL対応の人工涙液(ベンザルコニウム塩化物:BAK非含有)の使用が推奨される。

長時間の装用は角膜への酸素供給を低下させ、合併症のリスクを高める。

  • 1日あたりの装用時間は眼科医の指示と製品説明に従う
  • 就寝時の装用(連続装用)は角膜感染症リスクを5〜10倍に高めるため原則禁止8)
  • 眼が疲れた・充血したと感じたら、その日は装用を中止して眼を休める
  • 点眼薬を使う場合はCL装用中に使用できる製品か確認する。CL対応の人工涙液を選択する
  • 処方点眼薬(抗菌薬・ステロイド・抗アレルギー薬等)を使用する際は、主治医・薬剤師にCL装用の旨を必ず伝える
  • 術後(白内障手術・レーシック後等):主治医の許可を得てから再装用を開始する。術後の角膜状態が安定するまで期間がかかる
  • アレルギー性疾患:花粉症シーズン等のアレルギー悪化時は1day使い捨てが推奨される
  • 妊娠中:ホルモン変動による屈折変化の可能性がある。度数調整が必要な場合がある

シリコーンハイドロゲル素材の普及

Section titled “シリコーンハイドロゲル素材の普及”

高酸素透過性のシリコーンハイドロゲル(SiHy)素材CLの普及が進んでいる。SiHy素材は角膜の低酸素負荷を減らす設計であり、症例ごとの適応判断が重要である。

スマートコンタクトレンズの開発

Section titled “スマートコンタクトレンズの開発”

眼圧センサーや血糖モニタリング機能を搭載したスマートコンタクトレンズの研究が進んでいる9)緑内障眼圧管理や糖尿病患者のグルコース監視へのCLの応用が期待されるが、現時点では臨床応用には至っていない。

CL表面への抗菌物質のコーティングによる感染予防技術の研究が進んでいる9)。バイオフィルム形成を抑制する表面処理やナノ材料の応用により、CL関連感染症の発生率をさらに低下させることが目標とされている。

人工知能(AI)を用いた角膜形状解析によるCLフィッティング最適化の研究が進んでいる。個々の角膜形状に合わせた精密なCL処方を支援するシステムの実用化が期待されている。

  1. 宇津見義一. 子どものコンタクトレンズQ&A. 公益社団法人日本眼科医会. https://www.gankaikai.or.jp/health/44/
  2. Stapleton F, Keay L, Edwards K, Naduvilath T, Dart JK, Brian G, et al. The incidence of contact lens-related microbial keratitis in Australia. Ophthalmology. 2008;115(10):1655-62. doi:10.1016/j.ophtha.2008.04.002. PMID:18538404.
  3. Morgan PB, Efron N. A decade of contact lens prescribing trends in the United Kingdom (1996-2005). Cont Lens Anterior Eye. 2006;29(2):59-68. doi:10.1016/j.clae.2006.02.008.
  4. Joslin CE, Tu EY, McMahon TT, Passaro DJ, Stayner LT, Sugar J. Epidemiological characteristics of a Chicago-area Acanthamoeba keratitis outbreak. American journal of ophthalmology. 2006;142(2):212-7. doi:10.1016/j.ajo.2006.04.034. PMID:16876498.
  5. 日本コンタクトレンズ学会. コンタクトレンズ診療ガイドライン. 日本眼科学会雑誌. 2014;118(6):557-591.
  6. Chang DC, Grant GB, O’Donnell K, Wannemuehler KA, Noble-Wang J, Rao CY, et al. Multistate outbreak of Fusarium keratitis associated with use of a contact lens solution. JAMA. 2006;296(8):953-63. doi:10.1001/jama.296.8.953. PMID:16926355.
  7. Nichols JJ, Willcox MD, Bron AJ, Belmonte C, Ciolino JB, Craig JP, et al. The TFOS International Workshop on Contact Lens Discomfort: executive summary. Investigative ophthalmology & visual science. 2013;54(11):TFOS7-TFOS13. doi:10.1167/iovs.13-13212. PMID:24058135; PMCID:PMC4686219.
  8. Schein OD, McNally JJ, Katz J, Chalmers RL, Tielsch JM, Alfonso E, et al. The incidence of microbial keratitis among wearers of a 30-day silicone hydrogel extended-wear contact lens. Ophthalmology. 2005;112(12):2172-9. doi:10.1016/j.ophtha.2005.09.014. PMID:16325711.
  9. Farandos NM, Yetisen AK, Monteiro MJ, et al. Contact lens sensors in ocular diagnostics. Adv Healthc Mater. 2015;4(6):792-810. doi:10.1002/adhm.201400504.

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