色素関連の角膜障害
色素の滲出・溶出:レンズ表面に露出した色素が角膜上皮を直接障害する3)
プリント構造のリスク:色素をレンズ表面に塗布するプリント構造は色素脱落・角膜摩擦のリスクがある3)
サンドイッチ構造の優位性:色素をレンズ素材で挟むサンドイッチ構造は安全性が高いが、レンズ厚が増すため酸素透過性は低下する傾向がある3)
表面粗造性の増大:色素により表面が粗くなり、涙液のwettabilityが低下してドライアイ様症状を引き起こす3)

カラーコンタクトレンズ(カラーCL、装飾用コンタクトレンズ)は、視力矯正よりも虹彩の色やデザインの変更を主目的としたコンタクトレンズである。度あり(視力矯正+カラー)と度なし(装飾用のみ)の2種類があり、度ありは以前から処方箋が必要とされていた。
度なし装飾用カラーCLは長らく雑貨として扱われていたため品質基準が不明確であり、重篤な角膜障害が社会問題化した。これを受けて2009年11月に薬事法が改正(現・医薬品医療機器等法)され、装飾用カラーCLも「高度管理医療機器」として指定された1)。販売には「高度管理医療機器等販売業許可」が必要となり、製品には医療機器承認番号の記載が義務付けられた1)。
カラーCL使用者は主に10〜30代の女性でファッション目的の使用が多い2)。日本眼科医会が実施したカラーCL眼障害アンケート調査では、カラーCL関連の眼障害報告数は通常のCLに比べて高いことが示された2)。規制整備後も無承認品・個人輸入品の流通は完全には根絶されておらず、眼科受診なしに装用されるケースが依然として多い。
カラーCLは通常のソフトコンタクトレンズ(SCL)に比べて固有のリスクを持つ。色素構造による角膜直接障害、着色部分の酸素透過性低下、ケア意識の低さに起因する感染症リスクの上昇が三大リスクといえる3)4)5)。
医療機器として承認された製品を眼科医の処方・指導のもとで正しく使用すれば、安全に使用できる。ただし、無承認品・個人輸入品は品質基準が不明確であり、色素の溶出や低酸素透過性による角膜障害が生じやすい。また、ケア不良による角膜感染症(アカントアメーバ角膜炎等)は重篤化した場合に視力障害が残ることがある。眼科受診と適切なケアの遵守が安全使用の前提条件である。

カラーCLには通常のSCLには存在しない色素構造があり、これが固有のリスクを生む。また装用者の特性として若年層・ケア行動の遵守率が低い傾向も重なり、多様なトラブルが報告されている。
色素関連の角膜障害
色素の滲出・溶出:レンズ表面に露出した色素が角膜上皮を直接障害する3)
プリント構造のリスク:色素をレンズ表面に塗布するプリント構造は色素脱落・角膜摩擦のリスクがある3)
サンドイッチ構造の優位性:色素をレンズ素材で挟むサンドイッチ構造は安全性が高いが、レンズ厚が増すため酸素透過性は低下する傾向がある3)
表面粗造性の増大:色素により表面が粗くなり、涙液のwettabilityが低下してドライアイ様症状を引き起こす3)
低酸素による角膜障害
着色部分の酸素透過性低下:カラーCLの着色部分はDk/t(酸素透過係数)が低く、角膜への酸素供給が不足する4)
角膜上皮細胞への影響:酸素供給不足により角膜上皮細胞のバリア機能が低下し、感染リスクが上昇する4)
角膜血管侵入:慢性的な低酸素により角膜への血管新生が生じ、視力障害につながりうる4)
角膜浮腫:低酸素が持続すると角膜浮腫が生じ、霧視・視力低下の原因となる4)
感染症リスク
細菌・真菌・アカントアメーバ角膜炎:ケア不良を主因として発症。アカントアメーバ角膜炎は治療抵抗性が高く、重症例では角膜移植が必要になる5)
ケア遵守率の低さ:カラーCL使用者は通常のCL使用者に比べてケア行動の遵守率が低いことが報告されている2)
購入経路の問題:インターネット購入者は眼科受診なしにカラーCLを入手することが多く、フィッティング不良・ケア指導不足が重なる2)
その他のトラブル
カラーCLによるトラブルでは以下の症状が出現する。いずれかを自覚した場合は直ちに装用を中止し、眼科を受診する必要がある。
カラーCLによる眼障害の発生には、製品要因・使用者要因・購入経路要因が複合的に関与する。
カラーCLを選ぶ際には、以下の点を確認することが重要である。
カラーCLの安全な使用のために、眼科医による処方と定期健診が欠かせない。
カラーCLのケアは通常の2週間交換型・マンスリーSCLと同様に行う(詳細は「コンタクトレンズの正しいケアと定期健診」参照)。ここではカラーCL使用者が特に注意すべき点を示す。
高度管理医療機器等販売業許可を持つ店舗(眼科・許可を持つ眼鏡店・薬局等)で、医療機器承認番号が記載された製品を購入する。初回は必ず眼科医の処方・フィッティング確認を受ける。インターネット通販・雑貨店・コンビニで販売されている製品の中には、国内で承認されていない無承認品が含まれる場合があり、安全性が担保されない。購入前に承認番号の有無を確認し、眼科を受診してから使用を開始することが推奨される。
装飾用カラーCLは長らく「雑貨」として販売されていた。しかし眼科医療現場での重篤な眼障害の増加を受け、2009年11月に薬事法が改正され、度なし装飾用カラーCLも「高度管理医療機器(クラスIII)」として指定された1)。これにより以下の規制が適用される。
厚生労働省・消費者庁・国民生活センターは繰り返しカラーCLによる眼障害事例を公表し、注意喚起を行っている7)。
特に若年層(高校生・大学生)はカラーCLを初めて使用するにあたって眼科受診の必要性を認識していないことが多く、安全教育の充実が課題とされている2)。
度ありカラーCLは処方箋が必要である。度なし装飾用カラーCLは2009年より高度管理医療機器として規制されており、法律上は処方箋なしに販売されうるが、適切な使用のためには眼科医の検査・フィッティング確認・使用指導を受けることが強く推奨される。眼科受診なしに装用を開始すると、自分の眼に合わないレンズによる角膜障害や、ケア指導不足による感染症リスクが高まる。消費者庁・日本眼科医会ともに、度なしカラーCLでも眼科受診を推奨している2)。

カラーCLによる眼障害には複数の病態生理学的メカニズムが関与する。これらが単独あるいは複合的に作用することで、通常のSCLより高頻度のトラブルが生じる。
着色部分のDk/t(酸素透過係数)の低下が角膜上皮細胞への酸素供給を不足させる4)。酸素供給不足が続くと角膜上皮細胞の代謝が低下し、上皮間の密着結合(タイトジャンクション)が弱体化する。バリア機能の低下した上皮は細菌・真菌・アカントアメーバが侵入しやすくなり、感染リスクが上昇する4)。慢性的な低酸素が続けば角膜への血管新生(角膜血管侵入)が生じ、視力障害につながりうる。
プリント構造のカラーCLでは色素がレンズ表面に露出しており、この色素が直接角膜上皮に接触する3)。電子顕微鏡・エネルギー分散型X線分析の研究(Hotta 2015)では、カラーCLの色素成分が角膜上皮に付着・沈着する所見が確認されている3)。色素による表面粗造性の増大は涙液の濡れ広がり(wettability)を低下させ、ドライアイ様症状・涙液層不安定化をもたらす3)。
カラーCL使用者は若年層・ファッション目的の使用者が多く、CLの取扱いに関する知識・経験が乏しい傾向がある2)。日本眼科医会の調査では、カラーCL使用者のケア行動遵守率は通常のCL使用者より低く、こすり洗いの省略・装用時間の超過・水道水使用などのリスク行動の頻度が高いことが示された2)。
インターネット通販・コンビニ・雑貨店での購入者は、角膜カーブに合ったフィッティング確認なしにカラーCLを装用する2)。フィッティング不良のレンズは装用中の動きが悪く、角膜上皮への機械的ストレスが増大する。また、ケア方法・装用時間・定期健診の指導を受ける機会がないため、問題が生じても眼科受診が遅れる傾向がある2)。
従来のハイドロゲル素材カラーCLはDk/tが低く、角膜低酸素リスクが問題視されてきた。近年、シリコーンハイドロゲル(SiHy)素材を採用したカラーCLの開発・普及が進んでおり、酸素透過性を維持しながら着色する技術が向上している4)。Sorbara らの研究(2020)では、カラーCLの酸素透過性特性を詳細に評価し、着色部と非着色部でのDk/t差異を検討しており、SiHy素材採用による改善効果が示されている4)。
カラーCLの色素安全性については、ISO(国際標準化機構)・JIS(日本産業規格)での基準策定が進んでいる3)。溶出試験・細胞毒性試験・皮膚刺激試験等の品質基準が整備されることで、市場に流通するカラーCLの安全性向上が期待される。薬剤溶出試験の厳格化により、色素成分の生体適合性を製品承認段階で担保する体制の強化が課題である3)。
カラーCL使用者の多くを占める若年層に対し、SNS・インフルエンサーを活用した安全教育キャンペーンの実施が提唱されている2)。若年層に対するリーチ力が高いデジタルメディアを通じた情報発信により、眼科受診の促進・適切なケア知識の普及が期待される。
CL装用時間の記録・ケアスケジュールの通知・眼科受診リマインダー機能を搭載したスマートフォンアプリの開発が進んでいる。装用管理アプリの利用により、使用者のケア行動遵守率向上につながることが期待されている。