CZ70BD
素材:PMMAの一枚物レンズ
特徴:長期使用実績が豊富。縫着術(ab externo法)で広く用いられる。
注意:再縫着が必要になる場合がある。
鞏膜固定眼内レンズ(Scleral-Fixated Intraocular Lens; SFIOL)は、水晶体嚢またはチン小帯の支持が失われた眼に対し、眼内レンズのハプティクスを強膜に直接固定する術式の総称である。
SFIOLの安全性と視力予後は良好であり、長期追跡でも白内障手術の標準的手技と同等の成績が示されている1)。
近年のレビューでは、SFIOLの視力転帰と安全性は既存の二次眼内レンズ固定法と概ね同等と整理されている1)。
SFIOLに用いる眼内レンズの選択は、術式・眼軸長・術者経験などにより異なる。主要な製品は以下の通りである。
CZ70BD
素材:PMMAの一枚物レンズ
特徴:長期使用実績が豊富。縫着術(ab externo法)で広く用いられる。
注意:再縫着が必要になる場合がある。
Akreos / MX60
素材:疎水性アクリル
特徴:4点固定が可能で安定性が高い。折りたたみ可能で小切開対応。
注意:シリコーンオイル使用眼では石灰化リスクがある1)。
CT Lucia 602
Carlevale 眼内レンズ
疎水性アクリル眼内レンズ(Akreos等)は、硝子体手術後でシリコーンオイルを使用した眼での石灰化(calcification)が報告されている1)。
Carlevale眼内レンズなどの縫合不要デザインは、小切開での強膜内固定や角膜移植併用例への応用が報告されている1)。
小眼球や高度低眼圧眼では術野が狭く、通常の固定法の施行が困難となる。
小眼球など解剖学的制約のある症例では、強膜内固定法の選択や併用手技に工夫が必要となる1)。
SFIOLの固定法は大きく「縫合固定(縫着術)」と「無縫合強膜内固定」に分類される。
強膜外から縫合針を挿入して眼内レンズハプティクスを結紮固定する方法である。
眼内から操作してハプティクスを牽引し、強膜に固定する方法である。
独自のZ字型縫合でハプティクスを強膜固定する手法。先天性水晶体脱臼にも適用される。
小児やMarfan症候群などの先天性水晶体脱臼では、長期安定性を意識した固定法選択と長期フォローが重要である1)。
眼内レンズのハプティクス先端を低熱で変形(flange形成)させ、強膜トンネル内に嵌め込む方法。縫合糸を使用しない。
bent needle(湾曲針)の使用により精度が向上するとの報告がある1)。
前眼部OCT(AS-OCT)を用いた術中モニタリングは、固定の質を客観的に評価する手段として注目されている。
以下に縫着術と強膜内固定術の主な比較を示す。
| 項目 | 縫着術 | 強膜内固定術 |
|---|---|---|
| 縫合糸 | 要 | 不要 |
| 切開幅 | 大(PMMA等) | 小切開可 |
| 長期リスク | 縫合糸破断 | ハプティクス変形 |
SFIOL術中は硝子体出血(subhyaloid hemorrhage; SH)が生じうる合併症である。
SFIOL術中には硝子体出血などの合併症が起こりうるため、針の挿入角度やハプティクス操作を安定させる工夫が重要である1)。
どちらにも長所と短所があり、一概にどちらが優れるとは言えない。Yamane法は縫合糸破断リスクがなく小切開対応だが、ハプティクス素材の適合性の確認が必要である。縫着術はPMMA等で実績が豊富だが縫合糸の長期劣化が問題となる1)。
縫合を必要とするSFIOL術式では、縫合材料の選択が長期予後に大きく影響する。
従来から最も広く使用されてきた縫合材料である。
Prolene縫着術では、術後長期に縫合糸劣化や再固定を要する可能性があり、角膜合併症を含めた長期観察が必要である2)。
縫合強度・耐久性が高く、Proleneの代替として注目されてきた材料である。
しかし強膜融解(scleral melt)との関連が報告され、使用に際して注意が必要である。
Gore-Tex縫合糸では強度・耐久性が期待される一方で、強膜融解などのまれな合併症報告があり、長期経過観察が必要である2)。
縫合材料の種類に関わらず、露出した縫合糸は感染経路となりうる。
縫合糸露出は感染経路となりうるため、Gore-Texを含む縫合固定例では結膜被覆と感染徴候の確認が重要である2)。
縫合材料の主な特性比較を以下に示す。
| 材料 | 耐久性 | 強膜融解 | 感染 |
|---|---|---|---|
| Prolene | 破断あり | 少ない | 縫合露出で注意 |
| Gore-Tex | 高強度 | 報告あり2) | 真菌感染報告2) |
Yamane法などの無縫合強膜内固定では縫合糸破断や縫合糸関連感染は生じない。ただし、ハプティクスの固定の不安定化や偏位など別の長期リスクが存在する1)3)。
SFIOL術後の視力予後は全般に良好である1)。先天性水晶体脱臼に対するZ縫合法では術後5年追跡で20/20が達成された1)。小眼球例でもYamane法とglued法の組み合わせにより良好な視力が得られた報告がある1)。
Optic inversionなどの眼内レンズ位置異常は屈折異常や視機能低下の原因となるため、術中および術後早期の位置確認が重要である2)。
Prolene縫着後は長期経過で縫合糸破断や眼内レンズ脱臼が生じる可能性があるため、遠隔期にも定期的な観察が必要である2)。
縫合糸の破断や強膜融解、眼内レンズ偏位は術後10年以上を経て生じることがある2)。術後良好な視力が得られていても定期的な眼科受診を継続することが不可欠である。
水晶体嚢やチン小帯が欠損した眼では、通常のCPS(嚢内固定)やACS(毛様溝固定)が選択できない。その場合、強膜実質内に眼内レンズハプティクスを直接固定することで光学系を成立させる。
強膜内固定の安定性は強膜の組織強度に依存する。Yamane法のflange固定では、熱変形したハプティクス先端が強膜トンネル内に機械的に嵌合する。縫合固定では縫合糸の引張強度と組織との摩擦により支持される。いずれの方式でも、長期的には固定強度の変化(縫合糸の劣化、組織リモデリング)が生じる可能性がある。
強膜融解(Gore-Tex縫合糸)は異物に対する慢性炎症反応で、縫合糸周囲の強膜組織が壊死・菲薄化する機序で生じる2)。角膜内皮障害は術中の器具接触・術後炎症・眼内レンズの位置異常による慢性刺激などが複合的に関与する2)。
Yamane法およびCarlevale 眼内レンズなど縫合不要な固定法の技術改良が続いている。Carlevale 眼内レンズは2.2 mm切開での挿入が可能であり、DMEKとの同時施行も報告されるなど適応範囲が広がっている1)。
術中および術後のAS-OCT評価が眼内レンズ偏位の早期検出に有効とされる3)。将来的には術中リアルタイムガイダンスへの応用が期待されている。
小眼球や先天性水晶体脱臼など解剖学的制約のある症例に対する固定法の工夫が報告されている1)。長期の視機能発達や合併症の追跡が今後の課題である。