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その他

アイケア眼圧計(iCare Rebound Tonometry)

1. アイケア眼圧計(反跳式眼圧計)とは

Section titled “1. アイケア眼圧計(反跳式眼圧計)とは”
アイケアPROとiCare IC200の本体外観および表示パネル(4パネル比較写真)
アイケアPROとiCare IC200の本体外観および表示パネル(4パネル比較写真)
Nakakura S, et al. Evaluation of rebound tonometer iCare IC200 as compared with IcarePRO and Goldmann applanation tonometer in patients with glaucoma. Eye Vis (Lond). 2021;8:25. Figure 1. PMCID: PMC8247177. License: CC BY 4.0.
(a)IcarePROの本体全景、(b)IcarePROのカラー表示パネル(両眼眼圧値と信頼性インジケーター)、(c)iCare IC200の本体全景(多体位対応モデル)、(d)IC200のカラー表示パネル(17.2 mmHg表示)を示す4パネル構成の写真である。本文「1. アイケア眼圧計(反跳式眼圧計)とは」の項で扱うiCareシリーズの機器外観と表示仕様に対応する。

アイケア(iCare®)は反跳式(リバウンド式)眼圧計であり、点眼麻酔なしで眼圧測定が可能なポータブル眼圧計である。小さなプローブを角膜に向けて射出し、その跳ね返り速度から眼圧値を推定する。GATとよく相関するが、GATよりやや高い数値が示されることが多い。測定値の信頼性は高く、小児の眼圧測定に特に使いやすい1)

接触力は約1.0 gと極めて小さく、測定時間は0.1秒程度である。角膜に対する侵襲がほぼないため、表面麻酔が不要となる。使い捨てプローブを使用するため患者間の感染リスクも低い。

  • iCare IC100(旧 iCare®): 標準ポータブル型。仰臥位での測定は不可
  • iCare IC200: チップを下方に向けると通常はプローブが落下するため測定できないが、IC200はこれを解決した設計で仰臥位を含む多体位での測定が可能1)
  • iCare HOME: 患者自己測定対応の家庭用モデル。2017年にFDAにより自己眼圧測定用として承認された
  • iCare HOME2: HOME の後継機。自動アライメント機能・内蔵メモリ・Bluetooth/クラウドデータ転送を搭載
眼圧表面麻酔体位特徴
Goldmann圧平眼圧計GAT必要座位のみ金標準・最高精度
iCare IC100不要座位・立位ポータブル・点眼麻酔不要
iCare IC200不要全体位(仰臥位含む)多体位対応
非接触型眼圧計(NCT不要座位スクリーニング向け
Tono-Pen®必要全体位ペン型ポータブル
Q アイケアは子どもでも痛くないですか?
A

ほぼ痛みはない。プローブの接触力は約1.0 g、接触時間は0.1秒程度であり、角膜への侵襲が極めて小さい。表面麻酔の点眼が不要であるため、点眼に伴う刺激もない。使い捨てプローブで患者ごとに新しいプローブを装着するため衛生面でも安全である。小児・乳幼児に対して最も広く使用されている眼圧計のひとつであり、先天緑内障をはじめとする小児眼圧異常のスクリーニングに有用である。

アイケアとGATの相関は良好であるが、アイケアはGATよりやや高値を示す傾向がある。その差はおおむね+0.5〜2.0 mmHgとされ、高眼圧域ではばらつきがGATより大きくなる傾向がある1)

GATとの比較研究ではおおむね±5 mmHg以内の一致が示されており、スクリーニングや経過観察において実用的な精度を持つ1)。ただし、高眼圧症緑内障の精密評価においては、異常値を確認した場合にGATによる再検を行うことが望ましい。

GATは中心角膜厚(CCT)の影響を大きく受け、薄い角膜で過小評価・厚い角膜で過大評価が生じる。アイケアはGATほどCCTの影響を受けないとの報告があるが、薄い角膜では過小評価が生じる可能性があるため注意が必要である。

アイケアは6回の自動測定を行い、上下限値を除いた平均値を眼圧値として表示する。同時に信頼性インジケーターが色で表示される。

  • 緑(Green): 信頼性が高く、測定値を採用できる
  • 黄(Yellow): 許容範囲内。必要に応じて再測定を検討する
  • 赤(Red): 測定値の信頼性が低い。再測定が必要

反跳式眼圧測定(rebound tonometry)の原理は以下のとおりである。

  • 磁気コイルにより、直径1.7〜1.8 mmの軽量磁化プローブを電磁場で角膜に向けて射出する
  • プローブが角膜に接触すると、眼球の硬さ(眼圧)に応じた跳ね返り(リバウンド)が生じる
  • 跳ね返り後のプローブの減速度(離脱加速度)を電磁誘導で計測する
  • 眼圧が高いほどプローブと角膜の接触時間が短く、離脱加速度が大きくなる
  • この物理的関係を解析アルゴリズムで眼圧値(mmHg)に換算する

接触力約1.0 gという極小の力での瞬間的接触(0.1秒)が、表面麻酔不要の根拠となる。測定時間が短いため、眼球運動や脈波の影響が最小化される。

中心角膜厚(CCT)の影響はGATより小さいとの報告があるが、薄い角膜では眼圧を過小評価する可能性がある。また、角膜剛性・眼球硬性も測定値に影響を与える因子として知られている。

診察室での測定手順(IC100/IC200)

準備:使い捨てプローブを機器に装着する。患者に前方の固視灯を固視させる。

位置合わせ:機器を眼前に構え、額当てで安定させる。角膜中央にプローブが向くよう自動アライメントを確認する。

測定:トリガーを引いてプローブを射出する。自動的に6回の連続測定が行われ、平均値と信頼性インジケーターが表示される。

IC200(多体位):仰臥位や下向き体位でも測定可能。ベッドサイドや手術室での使用に対応している。乳幼児は仰臥位または保護者の膝上で保持して測定する。

確認:信頼性インジケーターが赤の場合は再測定する。緑または黄の場合は測定値を採用する。

iCare HOME/HOME2 による自己測定手順

準備:患者は額当てと頬当てを調整し、機器を安定させて構える。LED ガイドライトを参照し、水平になると緑色ライトが点灯して測定可能を示す。

測定:ボタンを押すと自動的に6回連続射出が行われる。時刻・日付・左右眼の情報とともに測定値が内蔵メモリに保存される。

データ管理:HOME2 は Bluetooth/クラウド連携により、測定データを医師がリモートで確認できる。診察時にデータをダウンロードして経時変化を評価する。

測定タイミング:起床直後・就寝前・午後の少なくとも3時点の測定が推奨される。複数日にわたって測定することで24時間眼圧変動プロファイルを把握できる。

患者トレーニング:初回導入時は診察室でGATと同時測定し、自己測定の精度を確認してから自宅使用を開始する。

Q 自宅で眼圧を測定する意味はありますか?
A

診察室での眼圧測定は年3〜4回程度が一般的であり、この頻度では眼圧変動の全体像を把握するには不十分である。眼圧は1日を通じて変動し、夜間や早朝にピークが現れることがある。iCare HOMEによる自己測定を行うことで、以下の情報を得られる。まず、仰臥位と概日リズムの組み合わせにより夜間に生じる眼圧上昇(3〜5 mmHg)を捕捉できる。次に、正常眼圧緑内障のように診察時眼圧が正常でも測定時以外に高眼圧を示す症例のピーク眼圧を見逃さずに評価できる1)。さらに、点眼薬のトラフ効果(最も薬効が薄れた時間帯の眼圧)を確認し、治療効果を動的に評価できる。加えて、定期的な自己測定が治療への動機づけ(服薬アドヒアランス)の向上にも寄与する。

眼圧は動的なパラメータである。健常者でも1日4〜5 mmHgの変動が認められ、緑内障患者では最大10 mmHgを超える変動が生じる場合がある。診察室での測定を超えた眼圧モニタリングへのニーズが高まっている。

夜間には仰臥位と概日リズム(サーカディアンリズム)の組み合わせにより、座位測定と比較して3〜5 mmHgの眼圧上昇が再現性をもって生じる。この夜間眼圧上昇は、座位で行われる診療所の測定では捉えられない。

  • ピーク眼圧の把握: 診察時眼圧が正常であっても、測定時以外に高眼圧を示すことがある。正常眼圧緑内障で特に重要である1)
  • 治療効果の動的評価: 点眼薬のトラフ効果(薬効が最も薄れた時間帯の眼圧)を確認し、治療の網羅性を評価する
  • 体位変換の影響評価: 座位から仰臥位への体位変換で生じる眼圧上昇幅が緑内障進行リスクと相関するとされ、IC200での仰臥位測定が有用である
  • 服薬アドヒアランスの向上: 自己測定により患者が自身の眼圧変動を可視化することで、治療継続への動機づけが高まる
  • 小児緑内障の定期フォローアップ: 外来でのスクリーニングおよびフォローアップに活用できる

6. 測定誤差に影響を与える因子

Section titled “6. 測定誤差に影響を与える因子”

アイケアの測定精度に影響を与える主な因子を以下に示す。

  • 中心角膜厚(CCT): GATほど影響は大きくないが、薄い角膜では眼圧を過小評価する報告がある。角膜が非常に薄い患者(例: 先天性角膜混濁、LASIKなどの角膜切除後)では注意が必要
  • 角膜への当て方(プローブ角度): プローブが角膜中央に対して垂直でない場合に測定誤差が生じる。自動アライメント機能を活用して正確な位置合わせを行う
  • 体位: iCare IC100 および iCare HOME は下向き体位でプローブが落下するため測定不可。仰臥位や多体位が必要な場合はIC200を使用する
  • 測定回数と信頼性インジケーター: 6回の連続測定のうち、信頼性インジケーターが赤の場合は必ず再測定を行う
  • 涙液層: 涙液層の厚さや安定性の影響はGATより小さいとされているが、著明な角膜乾燥や角膜上皮障害がある場合は精度が低下する可能性がある
  • 角膜剛性・眼球硬性: 角膜の物理特性が測定値に影響を与える。屈折矯正手術後(LASIK等)の患者では測定値にバイアスが生じる

iCare HOME2 は前世代 HOME からの改良として自動アライメント機能を搭載し、患者自身による位置合わせの精度が向上した。内蔵メモリに測定データを長期保存でき、Bluetooth/クラウド連携により医師がリモートでデータを確認することが可能になった。これはテレメディスンとの統合による遠隔緑内障管理への応用に道を開くものである。

24時間持続眼圧モニタリングの展開

Section titled “24時間持続眼圧モニタリングの展開”

コンタクトレンズ型センサー(Triggerfish CLS)が欧州でCEマークを取得し、24時間連続モニタリングの臨床研究が行われている。ただし、測定値がミリボルト相当値(mVeq)でありmmHgへの直接換算ができない点が臨床応用上の限界である。植込み型眼圧センサー(EyeMate)は毛様体溝に挿入する永久植込み型デバイスとして欧州でCEマークを取得しており、オンデマンドかつ長期的な眼圧モニタリングを実現する。

AI による眼圧変動パターン解析

Section titled “AI による眼圧変動パターン解析”

iCare HOME で収集される大量の眼圧時系列データを機械学習・AI で解析し、緑内障進行リスクの予測や治療効果のリアルタイム評価に役立てる研究が進んでいる。眼圧変動パターンの個人差を考慮した個別化治療への応用が期待されている。

  1. 日本緑内障学会緑内障診療ガイドライン改訂委員会. 緑内障診療ガイドライン(第5版). 日眼会誌. 2022;126(2):85-177.
  2. Jorge JM, González-Méijome JM, Queirós A, Fernandes P, Parafita MA. Correlations between corneal biomechanical properties measured with the ocular response analyzer and ICare rebound tonometry. J Glaucoma. 2008;17(6):442-8. PMID: 18794677.
  3. Kim YJ, Moon Y, Kwon AM, Lim HW, Lee WJ. Intraocular Pressure According to Eye Gaze by iCare Rebound Tonometry in Normal Participants and Glaucoma Patients. J Glaucoma. 2021;30(8):643-647. PMID: 33979114.

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