カテゴリー1
全身性サルコイドーシスに関連:サルコイドーシス患者の25〜80%に眼病変を認める。
サルコイド性ぶどう膜炎の一型として発症する。
タトゥー関連ぶどう膜炎(Tattoo-associated uveitis)は、タトゥーを有する患者にぶどう膜炎とタトゥー部位の肉芽腫性炎症が同時に認められる稀な疾患である。1952年にLubeckとEpsteinにより初めて報告された。タトゥー部位には非乾酪性肉芽腫が認められる。
2018年のレビューでKlugerは本疾患を3つのカテゴリーに分類した2)。
カテゴリー1
全身性サルコイドーシスに関連:サルコイドーシス患者の25〜80%に眼病変を認める。
サルコイド性ぶどう膜炎の一型として発症する。
カテゴリー2
タトゥー肉芽腫に関連:タトゥー部位に肉芽腫反応を生じ、同時にぶどう膜炎を呈する。
サルコイドーシスの基準は満たさない場合がある。
カテゴリー3
タトゥー施術後のぶどう膜炎:タトゥー部位に肉芽腫を伴わない。
タトゥー施術が誘因と考えられるが、皮膚の炎症所見を欠く。
報告例は少なく、正確な有病率は不明である。1952年から2018年までにタトゥーの肉芽腫反応とぶどう膜炎を併発した記録はわずか39例にとどまる。ただしタトゥーの普及に伴い報告数は増加傾向にある。米国では18〜50歳の成人の約25%がタトゥーを入れているとの推定がある。
患者は若年層に多い傾向がある。カラーのタトゥーよりも黒色インクのタトゥーとの関連が多く報告されている。
1952年から2018年までの文献レビューで報告例はわずか39例であり、きわめて稀な疾患である。ただし報告不足の可能性があり、実際の有病率はこれより高いと推測される。
ぶどう膜炎の発症に伴い、以下の症状が出現する。タトゥー施術後、通常1年以内に発症する2)。ぶどう膜炎の症状とタトゥー部位の炎症は同時期に生じる。
タトゥー部位には以下の皮膚症状を伴うことがある。
一般に両眼性の前部ぶどう膜炎または全ぶどう膜炎を呈する。所見はぶどう膜炎の病型によって多彩である。
前眼部所見:
後眼部所見:
病因は十分に解明されていない。主に2つの仮説が提唱されている。
タトゥーインクは重金属と有機化合物の複雑な混合物であり、免疫機能に影響を与える可能性がある1)。インクは規制が不十分であり、その成分は標準化されていない。
| 要因 | 内容 |
|---|---|
| タトゥーの存在 | 最も重要なリスク要因 |
| インクの色 | 黒色インクとの関連が多い |
| 年齢 | 若年者に多い |
報告例では黒色インクのタトゥーとの関連が多いが、特定の色との因果関係は確立されていない。タトゥーインクは成分が標準化されておらず、色に関わらず注意が必要である。
タトゥー関連ぶどう膜炎の診断は、以下の2点に基づく。
他の潜在的な病因、特にサルコイドーシスの除外が不可欠である。
すべてのぶどう膜炎患者に対して以下を確認する。
散瞳下眼底検査を含む完全な眼科的検査が必要である。前部・中間部・後部および全ぶどう膜炎のすべてを評価する。後部病変がある場合は黄斑部OCTが有用であり、脈絡膜肉芽腫の描出と経時的な評価が可能である。
タトゥー肉芽腫とぶどう膜炎を認める患者には、以下の精査が推奨される。
| 検査項目 | 目的 |
|---|---|
| 胸部X線・HRCT | 肺サルコイドーシスの評価 |
| ACE・リゾチーム | サルコイドーシスの補助診断 |
| QuantiFERON | 結核の除外 |
炎症を起こしたタトゥー部位の生検では、タトゥー色素を含む非乾酪性肉芽腫が認められる。肉芽腫内にタトゥー色素が存在することは、色素が炎症反応とリンパ球活性化の引き金である可能性を示唆する。ただし異物肉芽腫とサルコイドーシスの肉芽腫を組織学的に区別することは困難である。
鑑別すべき主な疾患は以下の通りである。
感染性:
非感染性:
組織学的には両者の肉芽腫を完全に区別することは困難である。胸部画像検査、血清ACE値、リゾチーム値などの全身検索でサルコイドーシスの根拠を確認する。Klugerの分類では、サルコイドーシスを伴うものと伴わないものを別カテゴリーとして整理している2)。
治療の基本は炎症の抑制である。
炎症を示す孤立した小さなタトゥーについては、外科的切除により改善した報告がある。炎症の原因となるタトゥー色素を除去することで、眼の炎症も改善する可能性がある。
ぶどう膜炎およびステロイド治療に伴う合併症として以下がありうる。
眼圧上昇に対してはβ遮断薬や炭酸脱水酵素阻害薬の点眼を行う。併発白内障に対しては手術を検討する。
タトゥー関連ぶどう膜炎の病態生理は十分に解明されていないが、2つの主要な仮説がある。
タトゥーインクには毒性・変異原性・発がん性を持つ可能性のある化合物が含まれる1)。感受性の高い個人において、インク中の大量の抗原負荷がIV型(遅延型)過敏反応を引き起こし、タトゥー部位の肉芽腫形成とぶどう膜炎を同時に惹起するというモデルである。
タトゥーインクが眼内構造に直接到達した場合にも、炎症反応や透過性障害、線維柱帯の損傷による眼圧上昇、続発緑内障が生じうる1)。
タトゥーインクによる慢性的な軽度の抗原刺激が、感受性の高い個人でサルコイドーシスに合致する全身性の肉芽腫反応を誘導するという仮説である。実際にサルコイドーシスの診断基準を満たす症例が少なくない2)。
炎症を起こしたタトゥー部位の生検では、以下が認められる。
サルコイドーシスの肉芽腫と異物型肉芽腫は組織学的に区別が困難であり、臨床的な全身検索との総合判断が求められる。
Sullivanら(2024)のレビューでは、タトゥー関連ぶどう膜炎が全身性サルコイドーシスまたは遅延型過敏反応の状況で複数報告されており、視力に関わる合併症を惹起しうることが指摘されている1)。
タトゥー関連ぶどう膜炎は報告例が少なく、大規模な臨床研究はまだ行われていない。現在の知見の多くは症例報告や文献レビューに基づいている。
予後は多様である。多くの患者は局所・全身ステロイドで改善するが、一部の患者は全身性免疫抑制薬を要する。重症・再発例では生涯にわたる治療が必要となることもある。サルコイドーシスを伴わない症例でも長期経過観察が推奨される2)。