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ぶどう膜炎

白点症候群

白点症候群(white dot syndromes)は、1977年にGassが命名した概念であり、眼底に白色または黄白色の斑点状病変を多発する一群の炎症性疾患を指す。対象疾患は研究者によって定義が異なるが、現在では外網膜RPE脈絡膜毛細血管板脈絡膜を主座とする非感染性の特発性炎症性疾患群として広く用いられる1)

ぶどう膜炎診療ガイドライン(日眼会誌 2019;123(6):635-696)では、後部ぶどう膜炎の病型分類として APMPPEMEWDSPIC・多発性脈絡膜炎・バードショット網脈絡膜症蛇行状脈絡膜炎AZOOR がそれぞれ独立した疾患として記載されており、「白点症候群」という包括的名称を用いる場合はこれらを総括する概念として扱われる2)

近年のマルチモーダルイメージング(OCT-A を含む)の進歩により、白点症候群は病変の主座となる層によって以下の3群に分類されるようになっている1)

外網膜主体型

MEWDSAZOOR

  • ellipsoid zone(視細胞内外節接合部)の一過性破壊が主座
  • choriocapillaris は原則温存(OCT-A での flow void なし〜軽微)
  • 可逆性が高く自然軽快傾向が強い

脈絡膜毛細血管板主体型

APMPPE蛇行状脈絡膜炎PIC

  • choriocapillaris の閉塞性血管炎が病態の中核
  • OCT-A で choriocapillaris flow void を認める
  • 網膜RPE 変化は二次的

脈絡膜間質主体型

Birdshot 網脈絡膜

  • 脈絡膜ストロマへのリンパ球浸潤が一次病変
  • OCT-A では Haller 層に flow void、初期は choriocapillaris 温存
  • 慢性進行性で HLA-A29 との強い関連

さらに、AZOOR complex という概念も提唱されており、MEWDSAZOORPIC・MFC・AMN・AIBSE・AAOR を遺伝的自己免疫/炎症機序の共通基盤を持つ連続体として統合的に理解する見方がある3)

日本眼炎症学会統計では、白点症候群各疾患のぶどう膜炎全体に占める割合は以下のとおりである2)

疾患ぶどう膜炎全体に占める割合
MEWDS約1〜2%(国内報告)
APMPPE稀(年間発症率は明確な統計なし)
PIC
蛇行状脈絡膜炎約0.3%
バードショット網脈絡膜症稀(白人に多く日本では極めてまれ)
AZOORまれ(近年報告数増加)

各疾患の症状は異なるが、以下の臨床的特徴が白点症候群群に共通する1, 2)

  • 視力低下:程度は軽度(MEWDSAZOOR)から高度(蛇行状脈絡膜炎PICCNV 合併)まで幅広い
  • 光視症(フォトプシア):外網膜視細胞の障害を反映する最も一般的な症状
  • 暗点・視野欠損:病変部位に対応した傍中心または中心暗点が多い
  • 変視症黄斑病変または CNV 合併時に生じる
疾患群前房硝子体炎症
MEWDSAPMPPEPIC通常なし(APMPPE は軽度あり)
MFC(MFCwP)前房炎症+硝子体炎あり(PIC との鑑別点)
Birdshot前房炎症なし〜軽微、硝子体炎あり
蛇行状脈絡膜炎前房炎症・硝子体炎は通常軽微
AZOOR通常なし

年齢・性別・片眼 vs 両眼・再発性による整理

Section titled “年齢・性別・片眼 vs 両眼・再発性による整理”

若年女性・片眼・自然軽快

MEWDSAZOOR・(PIC の一部)

  • 20〜40代の近視女性に好発
  • 片眼性が多い(MEWDS は95%以上が片眼)
  • 経過観察で自然回復する傾向が強い
  • MEWDS の年間発症率:10万人あたり約0.22例

若年〜中年女性・両眼・CNV リスク

PICMFC

  • 20〜40代の近視女性(女性比90%以上)
  • 両眼性が多い(PIC で80%)
  • 萎縮瘢痕を残し CNV 合併率が高い
  • PICCNV 合併:40〜76%

若年〜中年・両眼・急性発症

APMPPE

  • 20〜30代(平均25歳)に好発、性差なし
  • 両眼性・急性・自然軽快傾向
  • 脳血管炎合併に注意(神経症状の出現時は緊急精査)

中高年・両眼・慢性進行

Birdshot蛇行状脈絡膜炎

  • Birdshot:40〜60代、やや女性多い
  • 蛇行状:30〜50代、男性やや多い
  • 両疾患とも慢性・再発性・長期免疫抑制が必要
  • Birdshot の HLA-A29 陽性率(白人):80〜98%
眼底に白点状病変
├─ 片眼性?
│ ├─ YES → MEWDS・AZOOR・AMN を考慮
│ │ ↳ FA で初期過蛍光 → MEWDS
│ │ ↳ 眼底ほぼ正常・ERG 異常 → AZOOR
│ └─ NO(両眼性)
├─ 急性発症・後極部大型白斑?
│ └─ YES → APMPPE(FA 蛍光逆転現象を確認)
├─ 後極部小病変・近視女性・硝子体炎なし?
│ └─ YES → PIC を考慮(CNV 検索:OCTA 必須)
├─ 小病変・硝子体炎あり・周辺部にも病変?
│ └─ YES → MFC(MFCwP)を考慮
├─ 乳頭周囲から蛇行状に進展・男性多め?
│ └─ YES → 蛇行状脈絡膜炎(結核除外が最優先)
└─ 後極部散弾状病変・中高年・HLA-A29?
└─ YES → Birdshot 網脈絡膜症

メイン比較表:7疾患マトリクス

Section titled “メイン比較表:7疾患マトリクス”
項目APMPPEMEWDSPICMFC(MFCwP)Birdshot蛇行状脈絡膜炎AZOOR
好発年齢20〜30代(平均25歳)20〜50代18〜40代(平均36歳)平均30歳40〜60代30〜50代30代半ば中心
性別性差なし女性優位(1:4)女性優位(約90%)女性優位(白人女性多)やや女性多男性やや多女性優位(約75%)
片眼/両眼両眼性多片眼性(95%以上)両眼性多(80%)両眼性両眼性両眼性片眼→両眼進行(最終的に76%両眼)
主な症状視力低下・中心暗点変視症視力低下・光視症霧視暗点・視力低下・変視症飛蚊症視力低下・光視症視力低下・夜盲色覚異常視力低下・傍中心暗点光視症視野欠損(眼底ほぼ正常)
眼底白斑の特徴後極部に大型クリーム色白斑(1/4〜1/2 乳頭径)後極部〜赤道部に淡い灰白色多発小斑(100〜200μm)後極部に黄白色小斑(100〜300μm)、12〜25個後極部〜周辺に黄灰色斑(45〜350μm)、硝子体炎伴う後極部〜赤道部に散弾状クリーム色斑(1/4〜1/2 乳頭径)乳頭周囲から蛇行状に進展する地図状灰黄色病変眼底ほぼ正常(急性期)、後期に外層萎縮
OCT 所見ellipsoid zone 乱れ+外網膜高反射、回復後一部萎縮残存ellipsoid zone 著明乱れ・消失(急性期)→ 回復RPE 下高反射隆起+EZ 断裂(5段階進化)RPE 下高反射+EZ 断裂(PIC に類似)脈絡膜病変・嚢胞様黄斑浮腫EZ 消失が予後不良活動期:外網膜高反射・網膜下液。瘢痕期:RPE 萎縮EZ(IS/OS)消失が最重要所見(視野欠損部位と一致)
FA 所見早期低蛍光→後期過蛍光(蛍光逆転現象)初期から wreath-like(花冠状)過蛍光が持続活動期:動脈期初期過蛍光→後期漏出活動期:早期低蛍光→後期漏出病変過蛍光(漏出なし)+血管漏出・乳頭過蛍光活動期:早期低蛍光→後期過蛍光(漏出)通常正常または軽微な異常
ICGA 所見全相で低蛍光(脈絡膜毛細血管板虚血を直接反映)後期低蛍光(白点より広範囲)中期低蛍光、臨床下病変の検出に有用早期〜全相低蛍光早期・中期低蛍光→後期等蛍光(初期)→進行期:全相低蛍光全相低蛍光(脈絡膜循環障害を反映)通常正常
FAF 所見急性期:低 or 過自発蛍光。寛解期:低自発蛍光急性期:高自発蛍光(過蛍光多)。回復後:正常化活動期:低自発蛍光(hypoAF)、辺縁高自発蛍光ハロー活動期:低自発蛍光乳頭周囲の融合性低自発蛍光(73%に認められる)活動期:高自発蛍光辺縁+低自発蛍光ハロー。静止期:低自発蛍光帯状の高〜低自発蛍光異常
OCT-A 所見Choriocapillaris flow void(FA/ICGAと高い一致率)Choriocapillaris 原則温存(一部に transient flow void)Choriocapillaris flow void(炎症病変部位)Choriocapillaris flow voidHaller 層 flow void(初期)→進行期:全層 flow voidChoriocapillaris flow void(高度)Choriocapillaris 原則温存
再発性まれ(基本的に単回)約10%に再発高い(慢性再発性)高い(反復性炎症エピソード)高い(慢性・再発寛解繰り返す)高い(3ヶ月〜4年間隔で反復)多くは6ヶ月以内に安定。一部で進行
CNV 合併率まれまれ40〜76%(高リスク)最大60%網膜CNV:まれ最大35%ほとんどなし
HLA 関連なしHLA-B51(予備的報告)HLA-DR2・HLA-DRB1*15IL-10 ハプロタイプ関連HLA-A29(白人で80〜98%)HLA-B7・HLA-A2(関連報告)なし(免疫学的素因)
治療方針経過観察(自然軽快)、重症:ステロイド経過観察、重症:ステロイド短期投与、CNV:抗VEGF経過観察(CNVなし)、CNV:抗VEGF+ステロイド、免疫抑制薬ステロイド免疫調節療法CNV:抗VEGFステロイドミコフェノール酸モフェチルアダリムマブ(長期)ステロイド+免疫抑制薬(アルキル化薬含む)、CNV:抗VEGF経過観察、重症:ステロイドパルス
視力予後良好(自然軽快多い)良好(再発・CNV で注意)CNV 合併で不良リスク高CNV黄斑浮腫で不良リスク治療なしで10年に16〜22%が視力0.1以下中心窩に及べば不可逆、最大25%の眼で最終視力20/200未満多くは安定。外層障害進行例で不良
Q 白点症候群の中で最も視力予後が悪いのはどの疾患ですか?
A

蛇行状脈絡膜炎バードショット網脈絡膜症が最も視力予後不良です。蛇行状脈絡膜炎では最大25%の眼で最終視力が20/200未満となり、バードショットでは治療なしで10年間に16〜22%の患者が視力0.1以下になります2, 4)PIC・MFC は CNV 合併例で不良リスクが高くなります。APMPPEMEWDS は自然軽快傾向が強く予後良好です。

APMPPE(急性後部多発性斑状色素上皮症)

Section titled “APMPPE(急性後部多発性斑状色素上皮症)”

APMPPE は 20〜30 代(平均 25 歳)に好発し、性差はない。脈絡膜毛細血管板の輸入細動脈における閉塞性血管炎が本態と考えられており、ウイルス感染などが誘因として推測されている1, 2)

前駆症状と経過

  • 感冒様症状(インフルエンザ・EB ウイルス・水痘・連鎖球菌感染等)を約半数で認める
  • 両眼後極部に 1/4〜1/2 乳頭径のクリーム色円板状白斑が多発する
  • 白斑は数日のうちに中心部から消退し始め 7〜12 日で軽い脱色素を残して消失する
  • 通常は単回のエピソードで自然軽快する(再発はまれ)
  • 視力予後は通常良好だが、重症例や地図状脈絡膜炎に移行した症例では不良となることがある

特有の合併症:脳血管炎(MCAT)

APMPPE と中枢神経血管炎の合併(MCAT: multiple cerebral arterial thrombosis)は重篤な合併症であり、頭痛・発熱・神経症状が出現した場合は緊急で脳 MRI・MRA を施行する必要がある。脳血管炎合併例ではメチルプレドニゾロンパルス療法と神経内科連携が必要となる2)

placoid chorioretinitis spectrum との関連

APMPPEPPM(persistent placoid maculopathy)・RPC(relentless placoid chorioretinitis)とともに「placoid chorioretinitis spectrum」を形成し、脈絡膜毛細血管板虚血を共通病態基盤とする5)

APMPPEのマルチモーダル画像。両眼後極に多発する斑状病変がICGA・OCTA・OCTで示される。

Oliveira MA, et al. Management of Acute Posterior Multifocal Placoid Pigment Epitheliopathy (APMPPE): Insights from Multimodal Imaging with OCTA. Case Rep Ophthalmol Med. 2020. Figure 5. PMCID: PMC7094199. License: CC BY.
両眼後極部に多発する地図状・斑状の病変がICGAでは低蛍光、OCTAでは脈絡毛細血管板の血流低下領域、OCTでは外網状層からRPEにかけての高反射変化として描出されている。本文「APMPPE急性後部多発性斑状色素上皮症)」の項で扱うplacoid病変のマルチモーダル所見に対応する。


MEWDS は 20〜50 代の女性(男女比 1:4)に好発し、片眼性・急性・自然軽快を特徴とする。

特有の臨床像

  • 後極部〜赤道部の網膜深層〜RPE レベルに淡い灰白色多発小斑(100〜200 μm)
  • foveal granularity(中心窩顆粒状変化):74〜96% の患者で認められ、白点消失後も唯一の残存所見となることがある。近赤外 FAF(NIR-FAF)で特徴的パターンを描出9)
  • orange-dot appearance(橙色小点):眼底写真や近赤外線眼底撮影での特徴的所見
  • ivory lesion(象牙色病変):眼底後極部の淡いぼかした白色変化
  • 感冒様前駆症状が約 50% に先行する
  • 年間発症率は 10 万人あたり約 0.22 例、10% に再発例を認める

FA での wreath-like(花冠状)過蛍光

FA 早期からの特徴的な wreath-like(花冠状)過蛍光が MEWDS 診断の要点である。白点病変部は FA 早期から過蛍光になり後期に拡大を認めない。この早期過蛍光は APMPPE の早期低蛍光(蛍光逆転現象)との重要な鑑別点である1, 9)

AZOOR complex との連続性

MEWDS視細胞の ellipsoid zone(IS/OS ライン)の一過性破壊が主座であり、AZOOR complex に属する疾患として理解されている。OCT で急性期に ellipsoid zone の乱れ・消失が確認でき、視力回復とともに改善する3)

多発消失性白点症候群の多モダル眼底画像。後極部の白点状病変、ICGA低蛍光点、FAF高自発蛍光を示す。

Papasavvas I, et al. Choroidal vasculitis as a biomarker of inflammation of the choroid. Indocyanine Green Angiography (ICGA) spearheading for diagnosis and follow-up, an imaging tutorial. J Ophthalmic Inflamm Infect. 2024. Figure 5. PMCID: PMC11618284. License: CC BY.
後極部に淡い白点状病変が散在し、FAICGAでは点状の血流異常が、FAFでは対応する高自発蛍光がみられる。本文「MEWDS多発消失性白点症候群)」の項で扱うFA wreath-like過蛍光とICGA低蛍光点のマルチモーダル所見に対応する。


PIC近視(平均 -5D 前後)を有する 18〜40 代の若年女性(約 90%)に好発する。

特有の臨床像

  • 後極部のみに限局した 100〜300 μm の黄白色小斑、通常 12〜25 個
  • 前房炎症・硝子体炎なし(これが MFC との最重要鑑別点)
  • 活動性病変は RPE 下の高反射隆起として OCT で確認できる
  • 瘢痕化すると小さな萎縮病変を残す

CNV 合併(40〜76%)が最大の臨床問題

PIC で最も重要な合併症は CNV であり、その合併率は 40〜76% と報告されている7, 8)CNV は以下の要因で生じやすい:

  • 近視脈絡膜変薄による Bruch 膜脆弱性
  • RPE 下炎症による Bruch 膜破壊
  • 炎症性サイトカイン(VEGF 等)の局所産生亢進

CNV スクリーニングとして OCT-A が FA より高感度であることが示されており、定期的な OCT-A モニタリングが推奨される。変視症の突然の悪化は CNV 発症のサインであり、速やかな精査が必要となる。

全身疾患との関連

PICサルコイドーシスの合併が報告されており、多発性肺病変を有する症例では胸部 CT・血清 ACE・リゾチームの検査を行う。HLA-DR2・HLA-DRB1*15 との関連も報告されている3)


MFC(multifocal choroiditis with panuveitis; MFCwP)は PIC と同一スペクトラム上の疾患であるが、硝子体炎・前房炎症を伴う点が最大の鑑別点である7)

特有の臨床像

  • 後極部だけでなく中間周辺部にも 45〜350 μm の黄灰色斑が多発
  • 慢性再発性経過(反復性炎症エピソード)が特徴
  • 網膜前膜(epiretinal membrane; ERM の合併頻度が高く(最大 35%)、長期視力予後を左右する
  • 一部の症例では免疫抑制療法なしに炎症をコントロールできない

治療における注意点

MFC は自然軽快しにくく、長期的な免疫調節療法が必要となる症例が多い。ステロイドのみでは不十分な場合にメトトレキサート(MTX)・アザチオプリン(AZA)・ミコフェノール酸モフェチル(MMF)を使用する。CNV 合併時は抗 VEGF 療法と免疫調節療法の二方向性アプローチが重要となる7, 8)


Birdshot 網脈絡膜症(散弾状脈絡網膜症)

Section titled “Birdshot 網脈絡膜症(散弾状脈絡網膜症)”

Birdshot(バードショット)は 40〜60 代の中高年(平均 50 歳代)、やや女性多め(1.5:1)に好発する。白人に多く、HLA-A29 との関連が既知の疾患の中で最も強力な遺伝的関連の一つ(白人で相対リスク 50〜224 倍)である4)

特有の眼底所見

  • 後極部〜赤道部に散弾痕様のクリーム色斑(1/4〜1/2 乳頭径)が左右対称性に多発
  • 斑は色素沈着を伴わない瘢痕病巣へと移行する
  • 網膜血管炎・乳頭腫脹を合併することがある

特有の機能変化

  • 夜盲色覚異常:早期から出現し、視力低下より先行することがある
  • 全視野 ERG の negative type:初期に認められ、進行するにつれ a 波振幅が低下する
  • 30Hz フリッカー ERG 遅延:活動性モニタリングの最感度指標であり、視力低下よりも早期に異常を検出できる17)

日本人での注意事項

日本人は HLA-A29 の保有頻度が低いため、HLA-A29 の診断感度が制限される。SUN 2021 分類基準における臨床所見(眼底散弾状病変・前眼部炎症の軽微さ・硝子体炎の存在)を重視した診断が必要となる10)

長期合併症

  • 嚢胞様黄斑浮腫CME):視力低下の主原因
  • 乳頭腫脹・視神経萎縮
  • ステロイドインプラント(フルオシノロン)使用例では眼圧上昇が最大 40% に認められ、線維柱帯切除が必要になることがある

蛇行状脈絡膜炎(Serpiginous choroidopathy)

Section titled “蛇行状脈絡膜炎(Serpiginous choroidopathy)”

蛇行状脈絡膜炎は 30〜50 代(男性やや多い)の両眼性慢性脈絡膜炎で、乳頭周囲から蛇行状に進展する地図状灰黄色病変が特徴である。

特有の進展パターン

  • 視神経乳頭周囲(peripapillary)から求心性に始まり、病変辺縁部が徐々に蛇行状に拡大する
  • 活動期:病変辺縁に灰白色の縁取りが出現する
  • 瘢痕期:網脈絡膜萎縮病変として固定する
  • 再発時は必ず既存瘢痕の辺縁部から新たな炎症が出現する(これが特徴的)
  • 再発間隔は 3 か月〜4 年と個人差が大きい

最も重要:結核関連型(SLC)との鑑別

結核性蛇行様脈絡膜炎(serpiginous-like choroiditis; SLC)は蛇行状脈絡膜炎と画像所見が酷似するが、治療方針が根本的に異なる:

鑑別点蛇行状脈絡膜炎結核関連型(SLC)
病変分布乳頭周囲中心・求心性後極部〜周辺部・多発性
IGRA/TST陰性陽性
病変の形地図状・連続性多発不連続な小病変が多い
治療ステロイド+免疫抑制薬抗結核薬が必須

SLC に免疫抑制薬を使用すると結核が著明に悪化するため、治療前の IGRA(クォンティフェロン)検査は絶対に省略できない2)

CNV 合併(最大 35%)への対応

蛇行状脈絡膜炎では CNV が最大 35% に合併し、中心窩に及ぶと不可逆的な視力障害を来す。抗 VEGF 療法(ベバシズマブラニビズマブ)の硝子体内注射が有効である18)

蛇行状脈絡膜炎のマルチモーダル画像。視神経乳頭周囲に蛇行状の脈絡網膜病変を認める。

Macedo S, et al. Optical coherence tomography angiography (OCTA) findings in Serpiginous Choroiditis. BMC Ophthalmol. 2020. Figure 1. PMCID: PMC7325353. License: CC BY.
眼底自発蛍光蛍光眼底造影OCTで、視神経乳頭周囲から遠心性に広がる蛇行状の脈絡網膜病変が描出されている。本文「蛇行状脈絡膜炎(Serpiginous choroidopathy)」の項で扱う乳頭周囲からの蛇行状進展パターンに対応する。


AZOOR(急性帯状潜在性網膜外層症)

Section titled “AZOOR(急性帯状潜在性網膜外層症)”

AZOOR は 1992 年に Gass が提唱した疾患概念であり、眼底がほぼ正常にもかかわらず急激に視力低下・視野欠損光視症を来す外網膜である3)

AZOOR complex の概念

Jampol らが提唱した AZOOR complex は、MEWDSAZOORPIC・MFC・AMN(acute macular neuroretinopathy)・AIBSE・AAOR を遺伝的自己免疫/炎症機序の共通基盤を持つ連続体として理解する概念である3)

特有の臨床像

  • 近視を有する 20〜50 代の若年女性に好発
  • **photopsia(光視症)**が発症初期に出現することが多い(特に帯状・弧状に見える光)
  • 片眼性で始まり、最終的に 76% が両眼性となる
  • 眼底は急性期にはほぼ正常視力低下と眼底所見の乖離が特徴)
  • 視野欠損は不規則な帯状パターン(盲点に連続することが多い)
  • 自己免疫疾患(橋本病・多発性硬化症)合併例もある

OCTERG が診断の鍵

  • OCT での ellipsoid zone(IS/OS ライン)の消失・不明瞭化が最重要所見
  • OCT で外層が消失した部位の機能回復は期待できない(予後予測にも有用)
  • 多局所 ERG での振幅低下が眼底正常でも検出できる(全視野 ERG よりも多局所 ERG が感度高い)
  • 赤外 FAF で病変部と正常部位の境界が描出されることがある

治療と予後

AZOOR に確立された治療法はない。軽症例は経過観察のみでよいが、重症例(視力低下または広範な視野欠損)にはメチルプレドニゾロンパルス療法(1,000 mg × 3 日)に続くプレドニゾロン内服を行う2)。多くの症例は 6 か月以内に安定するが、外層障害が残存した部位の視野は回復しない。

Q AZOORと球後視神経炎はどう鑑別しますか?
A

AZOOR と球後視神経炎はともに眼底ほぼ正常で視力・視野低下を来すため鑑別が必要です。鑑別のポイントは、①AZOOR では多局所 ERG の振幅低下があるが球後視神経炎では ERG は正常、②AZOOR では視野欠損が不規則な帯状・弧状パターンを示すのに対し球後視神経炎では中心暗点が多い、③AZOOR では RAPD は通常軽微ですが球後視神経炎では顕著な RAPD を認める、④OCT では AZOOR が ellipsoid zone 消失を、球後視神経炎が乳頭腫脹や RNFL 菲薄化を示す点が鑑別に役立ちます2, 3)


各画像検査の役割を明確に把握することが、白点症候群の正確な診断と活動性評価に不可欠である1, 5)

モダリティ最も強い適応・役割
FAフルオレセイン蛍光造影)網膜血管・RPE・choriocapillaris の漏出評価。APMPPE の蛍光逆転現象確認。MEWDS の wreath-like 過蛍光確認。血管炎(Birdshot)の評価
ICGAインドシアニングリーン蛍光造影脈絡膜循環障害の直接評価。FA より早期に病変検出可能(特に Birdshot・APMPPE・蛇行状)。臨床所見より広範な病変の検出(MEWDSPIC)。活動性病変の検出に最も鋭敏
FAF眼底自発蛍光RPE 障害の非侵襲的評価。活動性判定(APMPPE・蛇行状)。MEWDS の診断(早期白点部が高自発蛍光)。Birdshot の慢性化評価(乳頭周囲低自発蛍光73%)
OCT光干渉断層計Ellipsoid zone 評価(MEWDSAZOOR の診断的所見)。病変の5段階進化評価(PIC)。CNV黄斑浮腫の評価。予後予測(EZ 消失 → 視力予後不良)
OCT-AChoriocapillaris flow void の非侵襲的検出(APMPPE・蛇行状・PIC)。CNV の早期・鋭敏な検出(PIC・MFC で FA より高感度)。Birdshot の脈絡膜層別血流評価。治療効果モニタリング
多局所 ERG / 全視野 ERGAZOOR の診断(眼底ほぼ正常でも ERG 振幅低下)。Birdshot の活動性モニタリング(30Hz フリッカー遅延が最感度)。治療効果判定

疾患別「まずどの検査から」ガイド

Section titled “疾患別「まずどの検査から」ガイド”

MEWDS が疑われるとき

  1. FAF を最初に施行(感度が最も高い。白点が見えない症例でも検出可)
  2. FA(wreath-like 過蛍光の確認)
  3. OCT(ellipsoid zone 評価)
  4. OCT-A(choriocapillaris 評価・CNV 検索)

APMPPE が疑われるとき

  1. FA(蛍光逆転現象の確認)
  2. ICGA(choriocapillaris 虚血の直接評価)
  3. OCT-A(flow void 評価)
  4. 神経症状があれば:脳 MRI・MRA(血管炎除外)

PIC/MFC が疑われるとき

  1. OCT-A(CNV の早期検出)
  2. FA(病変の漏出・CNV ネットワーク評価)
  3. ICGA(臨床下病変の検出)
  4. FAF(活動性モニタリング)

蛇行状脈絡膜炎が疑われるとき

  1. IGRA(結核除外が最優先)
  2. ICGA(病変活動性評価)
  3. FAF(活動性辺縁の高自発蛍光)
  4. OCT-A(choriocapillaris flow void・CNV 検索)
Q FA と ICGA はどちらを先に行うべきですか?
A

疾患によって戦略が異なります。APMPPE蛇行状脈絡膜炎では ICGA脈絡膜循環障害をより直接的に描出するため、FA と同時またはあとに ICGA を施行することで病態理解が深まります。MEWDS では FA の wreath-like 過蛍光が診断的に重要です。ただし侵襲的検査であるため、現在では OCT-A で代替できる情報も多く、FAFOCT-A の組み合わせが初期評価として活用されています1, 5)

ICGA で白点症候群病変が示す低蛍光は、**脈絡膜血流途絶(choriocapillaris 閉塞)**の直接的反映である1)ICGA脈絡膜循環を評価するモダリティとして FA より感度が高く、以下の特徴を持つ:

  • 全相低蛍光APMPPE蛇行状脈絡膜炎PIC・MFC で認められる。脈絡膜毛細血管板虚血の高度な閉塞を反映する。
  • 後期低蛍光(FA では異常なし)MEWDSICGA 後期低蛍光は、choriocapillaris 主座ではなく RPE 異常による ICG 取り込み変化として説明されている(OCT-A で choriocapillaris は原則温存)1)
  • Haller 層 flow void → 進行期に全層 flow void:Birdshot に特有の脈絡膜間質(stroma)主座から choriocapillaris への二段階進展パターン14)

ICGAFAOCT-A に比べて**臨床的に見えない隠れた病変(subclinical lesions)**を検出できる点でも優れており、特に MEWDSPIC では白点よりも広範な脈絡膜病変を描出する1, 15)

FAF の低・高蛍光パターン別疾患マップ

Section titled “FAF の低・高蛍光パターン別疾患マップ”

FAF眼底自発蛍光)のパターンは RPE の代謝状態を反映し、白点症候群の診断と活動性評価に有用である16)

FAF パターン疾患・病期意味
高自発蛍光(過 AF)MEWDS 急性期・Serpiginous 活動辺縁視細胞変性産物(A2E 等)の RPE への蓄積
低自発蛍光(低 AF)APMPPE 瘢痕期・PIC 活動病変・Birdshot 乳頭周囲RPE 消失・機能喪失
中心部低 AF+辺縁高 AF ハローSerpiginous 活動辺縁・PIC活動辺縁での RPE 障害パターン
帯状異常 AFAZOOR視細胞外層障害の分布に一致
中心窩顆粒状過 AFMEWDS(NIR-FAFfoveal granularity の非侵襲的描出

Birdshot では乳頭周囲の融合性低 AF が 73% に認められ、慢性化の指標として有用である17)

OCT での ellipsoid zone(EZ)欠損パターン

Section titled “OCT での ellipsoid zone(EZ)欠損パターン”

EZ(ellipsoid zone、旧 IS/OS ライン)の評価は白点症候群の活動性と予後予測において中心的役割を担う1)

EZ 所見疾患・病期予後
EZ 著明乱れ→回復MEWDS 急性期→回復期良好(EZ 回復と視力回復が連動)
EZ 消失(病変部一致)AZOOR 活動期消失部位の機能回復なし
EZ 乱れ+外網膜高反射APMPPE 急性期回復後に一部萎縮残存あり
RPE 下高反射隆起+EZ 断裂PIC・MFC(5 段階進化)CNV 合併で不良
EZ 消失(嚢胞黄斑浮腫合併)Birdshot 進行期視力予後不良の危険因子

OCT-A での choriocapillaris flow voidFAICGA 所見と高い一致率を示す(APMPPE蛇行状脈絡膜炎で特に有用)5, 13)

FA の蛍光パターン:充満遅延 vs 過蛍光 vs 漏出

Section titled “FA の蛍光パターン:充満遅延 vs 過蛍光 vs 漏出”
FA パターン疾患臨床的意味
早期低蛍光→後期過蛍光(蛍光逆転現象)APMPPE脈絡膜毛細血管板虚血。早期流入障害→周囲組織からの遅延色素漏出
早期 wreath-like(花冠状)過蛍光MEWDSRPE/視細胞障害を直接反映。後期に拡大しない点が鑑別
早期低蛍光→後期漏出Serpiginous・MFC 活動期活動性脈絡膜炎の証拠
動脈期初期過蛍光→後期漏出PIC 活動期炎症性 CNV の存在を疑わせる
血管漏出+乳頭過蛍光(漏出なし)Birdshot網膜血管炎の直接証拠
通常正常〜軽微AZOORFA 陰性でも視野欠損ERG 異常が認められる乖離が特徴

白点症候群の治療は疾患の自然経過・重症度・CNV 合併の有無によって大きく異なる。

経過観察(治療不要)が原則の疾患

Section titled “経過観察(治療不要)が原則の疾患”

MEWDSAPMPPE(軽症例)

  • 自然軽快傾向が強く、特別な治療なく回復することが多い2)
  • MEWDS:数週で白点消失・視力回復。重症・乳頭浮腫合併時のみステロイド内服
  • APMPPE:白斑は7〜12日で退縮、視力予後は通常良好

ステロイド療法が主体となる疾患

Section titled “ステロイド療法が主体となる疾患”

APMPPE(重症・乳頭炎合併)・PIC中心窩近傍活動性病変)・AZOOR(重症例)

  • プレドニゾロン 30〜60 mg/日より開始し漸減
  • APMPPE で脳血管炎が合併した場合はメチルプレドニゾロンパルス+神経内科連携が必要
  • AZOOR の重症基準:視力の良好な眼の矯正視力 < 0.3(日本眼科学会診断ガイドライン)

長期免疫抑制療法が必要な疾患

Section titled “長期免疫抑制療法が必要な疾患”

バードショット網脈絡膜症蛇行状脈絡膜炎・MFC

バードショット(長期管理)

蛇行状脈絡膜炎(長期管理)

  • プレドニゾロン 40〜80 mg/日で開始(漸減)
  • アザチオプリン 1〜2.5 mg/kg/日(第一選択維持療法)
  • ミコフェノール酸モフェチルメトトレキサート(代替)
  • 難治例:クロラムブシル(最も強力;0.2 mg/kg/日以下、毎週血液検査必須)
  • 生物学的製剤アダリムマブ(91.0%が推奨第一選択)
  • 結核除外(IGRA 陽性なら抗結核薬先行)確認後に免疫抑制薬を導入

MFC は慢性再発性経過をたどるため、ステロイド漸減後の維持療法として免疫調節薬が必要となる症例が多い。

薬剤用量目安特記事項
メトトレキサート(MTX)10〜25 mg/週葉酸 1 mg/日を併用。肝毒性モニタリング
アザチオプリン(AZA)1〜3 mg/kg/日TPMT 活性確認推奨。血球抑制に注意
ミコフェノール酸モフェチル(MMF)1〜3 g/日消化器症状が副作用として多い
シクロスポリン(CsA)3〜5 mg/kg/日腎機能・血圧モニタリング必須
アダリムマブ40 mg/2 週(皮下注)難治・ステロイド依存例。結核スクリーニング必須

CNV視力予後を左右する最重要合併症であり、PIC・MFC・蛇行状脈絡膜炎で特に高頻度に合併する。

疾患CNV 合併率治療
PIC40〜76%抗VEGF 硝子体内注射ベバシズマブラニビズマブアフリベルセプト)+ステロイドOCTA PRN 戦略
MFC最大60%抗VEGF 硝子体内注射免疫調節療法
蛇行状脈絡膜炎最大35%抗VEGF(ベバシズマブラニビズマブ硝子体内注射
MEWDSAPMPPEまれ抗VEGF(CNV 合併確認された場合)
Birdshotまれ全身免疫抑制療法CNV 合併時は抗VEGF
Q CNV に対して抗VEGF 療法だけで十分ですか?
A

炎症性 CNV(iCNVM)は加齢黄斑変性CNV と異なり、根本の炎症をコントロールすることが CNV の再発防止にも重要です。PIC・MFC では抗VEGF とステロイド(あるいは免疫抑制薬)の二方向性アプローチが有効とされており、抗VEGF 単独では再燃リスクが残ります7, 8)

注意点該当疾患
結核除外を最優先(免疫抑制前)蛇行状脈絡膜炎・MFC
HLA-A29 を考慮(診断)バードショット(日本人では感度低い)
ステロイドインプラントの眼圧上昇リスクバードショット(最大40%で線維柱帯切除が必要)
クロラムブシルの骨髄抑制・悪性腫瘍リスク蛇行状脈絡膜炎(毎週血液検査必須)
COVID-19 感染・ワクチン後の再燃PICMEWDS(再燃報告あり)
脳血管炎合併時の緊急対応APMPPE(頭痛・神経症状→脳 MRI 緊急施行)
Q 免疫抑制薬を使う際に最初に確認すべき検査は何ですか?
A

白点症候群に対して免疫抑制薬を開始する前に確認すべき必須検査は以下のとおりです。①IGRA(クォンティフェロン)による結核除外(蛇行状脈絡膜炎では最優先)、②HBs 抗原・HBc 抗体・HCV 抗体によるウイルス性肝炎スクリーニング(免疫抑制による再活性化防止)、③胸部 X 線・CT(結核・サルコイドーシスの除外)、④全血算・肝腎機能検査(ベースライン値の確認)。アダリムマブ等の生物学的製剤では結核スクリーニングが薬剤添付文書上も必須となっています19, 20)

Q 抗VEGF療法の回数・投与スケジュールはどのように決めますか?
A

炎症性 CNV(iCNVM)は加齢黄斑変性と異なり、炎症コントロールが改善すると CNV が自然退縮する場合があります。一般的に PRN(必要時投与)戦略が用いられ、OCT-A で活動性 CNV が確認されるたびに投与します。初期負荷投与(3 回連続)を行う場合もありますが、免疫抑制療法と組み合わせることで必要投与回数を減らせる可能性があります。抗 VEGF 単独では再燃リスクが高く、根本の炎症コントロールとの二方向性アプローチが重要です7, 8)


白点症候群の各疾患は特定の全身疾患・感染症との関連が知られており、治療前の系統的な除外検索が重要である。

疾患関連する全身疾患・状態臨床的意義
APMPPE脳血管炎(MCAT)・連鎖球菌感染・EB ウイルス頭痛・神経症状→緊急脳 MRI
BirdshotHLA-A29(白人 80〜98%)・サルコイドーシス類似HLA 検査が診断補助(日本人では感度低い)
蛇行状脈絡膜炎結核(SLC)・HLA-B7/A2IGRA 陽性→抗結核薬先行が原則
PICサルコイドーシス・HLA-DRB1*15胸部 CT・ACE 測定を考慮
MFCIL-10 ハプロタイプ・EBV・サルコイドーシス慢性再発例は全身精査を再評価
MEWDSCOVID-19 感染・ワクチン接種後・HLA-B51SARS-CoV-2 感染が免疫トリガーとして機能
AZOOR橋本病・多発性硬化症・自己免疫疾患甲状腺機能・自己抗体検査を考慮

7. 各疾患の特記事項と最新知見

Section titled “7. 各疾患の特記事項と最新知見”

APMPPE と placoid chorioretinitis spectrum

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APMPPE は persistent placoid maculopathy(PPM)・relentless placoid chorioretinitis(RPC)と共に「placoid chorioretinitis spectrum」として統合的に理解されるようになっている。これら3疾患では OCT-A で choriocapillaris flow void が共通のパターンを示し、脈絡膜毛細血管板虚血が共通の病態基盤であることを示す5)

Klufas ら(2017)は APMPPEPPMRPC の3疾患において OCT-A が FAICGA と高い一致率で choriocapillaris flow void を検出することを報告し、placoid chorioretinitis spectrum の概念を支持した5)

中心窩顆粒状変化(foveal granularity)は MEWDS の74〜96%に認められる診断的所見であり、白点消失後も唯一の所見として残ることがある。近赤外 FAF(NIR-FAF)で特徴的な中心窩顆粒状パターンが描出される9)

PIC と MFC(MFCwP)は共通の遺伝的背景(IL-10 ハプロタイプ・HLA-DRB1*15)を持ち、同一疾患スペクトラムの異なる表現型と考えられる。主な鑑別点は硝子体炎・前房炎症の有無と病変分布域である1, 3)

鑑別点PICMFC(MFCwP)
硝子体なしあり(重要な鑑別点)
前房炎症なし軽度あり
病変分布後極部に限局後極部+中間周辺部
病変サイズ100〜300μm45〜350μm
CNV 合併率40〜76%最大60%

Birdshot と HLA-A29 の関連は既知のあらゆる疾患の中で最も強い遺伝的関連の一つであり、白人患者では相対リスクが50〜224倍に上昇する4)。ただし日本人では HLA-A29 保有者が少ないため、診断における HLA-A29 陽性率の感度が限定的となる点に注意が必要である。SUN 2021 分類基準の臨床所見項目(眼底所見・前眼部炎症の軽微さ・硝子体炎)を重視した診断が重要となる10)

AZOOR は遺伝的素因(IL-10 ハプロタイプ等)にウイルス感染・ワクチン・薬剤などの環境トリガーが加わって発症すると考えられ、MEWDSPICAMN・AIBSE と共に AZOOR complex として理解される3)。COVID-19 感染・ワクチン接種後の MEWDS 発症例が世界的に増加しており、SARS-CoV-2 が免疫トリガーとして機能する可能性が示唆されている11)

Q 白点症候群はコロナ感染やワクチン接種後に起こることがありますか?
A

はい。MEWDSPIC蛇行状脈絡膜炎での COVID-19 感染後発症・再燃が複数報告されており、SARS-CoV-2 感染が免疫トリガーとして機能する可能性が示唆されています11, 12)MEWDS では COVID-19 ワクチン接種後27例の系統的レビューがあり、mRNA ワクチン(Pfizer-BioNTech)が最多でした。既往歴のある方はワクチン接種前後の経過観察について眼科医に相談するとよいでしょう。

Q 初診で白点症候群を疑ったとき、最初に行うべき検査の優先順位は?
A

白点症候群を初めて疑う場合の検査優先順位は以下を推奨します。①FAF + OCT(非侵襲的でほぼ全疾患の初期評価が可能。MEWDS の高 AF・ellipsoid zone 評価・PICRPE 下隆起が描出できる)→②OCT-ACNV の早期検出・choriocapillaris flow void の評価)→③FA + ICGA(確定診断・活動性評価が必要な場合)。蛇行状脈絡膜炎を疑う場合は FA 前に**IGRA(結核除外)**を最優先する。AZOOR 疑いでは ERG(多局所 ERG)が必須です1, 2)



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